HIPHOPの必須トーク

日本語ラップ・MCバトルの“今”を語るブログ

日本の名盤・基本の定番㉕(マネーメリーゴーランド by キエるマキュウ)

どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は、<キエるマキュウ>の2ndアルバム【マネーメリーゴーランド】をご紹介しようと思います。実はこの作品、このブログに頂いたコメントをきっかけに出会った作品でした。

それでは、いってみましょう。

【マネーメリーゴーランド by キエるマキュウ】
マネーメリーゴーランド

<収録曲>
1. NEXT WORLD
2. ガラスの森
3. MOZU
4. ICE CUBE
5. CHECK
6. 破戒僧
7. STAY REAL
8. スマイル
9. MAIL MAN
10. マネーメリーゴーランド
11. 大江戸捜査網
12. CANDY GIRL
13. Kierumakyu-kierumakyu…pt.2
14. ファーブルチョコレート
15. DO THE HANDSOME

キエるマキュウについては、この作品に出会う前までは、最も評判が良く傑作と名高い3rdアルバム【SUPER FREAK】と、故MAKI THE MAGICが最後に残した4thアルバム【Hakoniwa】しか私は聴いたことがなく、そのどちらかの作品についていずれ記事を書くつもりでいました。ところがコメントでお薦めを頂き、本作を聴いてからというもの、キエるマキュウのそれまで気づかなかった魅力に気付かされ、それ以外の全作品についても貪るように聴き漁る程の衝撃を与えられました。そういった意味で本作は、私にとってキエるマキュウの中で最も大切な作品となりました。

キエるマキュウは、日本の伝説的クルー<BUDDHA BRAND>のMCである<CQ>と、2013年に逝去された日本が誇るトラックメイカー兼MCである<MAKI THE MAGIC>によるユニットでしたが、本作から後に正式メンバーとして迎えられるDJ、トラックメイカー兼サウンドエンジニアの<ILLICIT TSUBOI>が加わっています。その完成度の高いトラックと、そこに乗る猥雑で自由なラップから、敬意をもって“日本が誇る変態集団”と称される彼らの作品達には、“唯一無二”という言葉は、こういった作品に対して使うのだということを改めて痛感させられます。

そんな彼らの作品の中でも、本作【マネーメリーゴーランド】は最もアルバムを通した流れが心地よく感じた作品でした。頂いたコメントでも“バラエティに富んでてまとまってる稀有なアルバム”とご紹介いただいたのですが、実際にアルバムを聴いてみると、まさにそれは言い得て妙だと関心してしまいました。この作品に出会えた今、お薦めいただかなければこの作品に一生出会わなかったかもしれないと思うと、それはとても損なことのように思えてなりません。

このアルバムは、個々の楽曲のクオリティも素晴らしく、アルバムの流れがとにかく秀逸だと思うのですが、その高揚感の高まりきったアルバムの最後に、この作品を傑作と至らしめる“とどめの一撃”ともいえる極めつけの楽曲が収録されています。最初に聴いた時、イントロが流れだした数秒間だけで、思わずため息を漏らしてしまった程に美しいその楽曲は、キエるマキュウのファンの間でも最も人気が高く、不朽のクラシックとも言われている楽曲です。アルバムの順番は前後してしまいますが、まずはその名曲【DO THE HANDSOME】からご紹介させていただきます。

【DO THE HANDSOME】


“消えるわけない 首すじに残るメモリー”

温かい毛布に包まれた甘美なまどろみを想起させるような極上のトラックがとにかく心地よい楽曲です。タイトルも含めて【Tall Dark And Handsome】という楽曲のサンプリングを中心に構成されています。EDM的な音も増えてきた最近のHIPHOPトラックを耳にしている中で、改めてこの楽曲のような良質なサンプリングトラックを聴くと、やはり少しばかりの郷愁の念を抱いてしまいます。

ちなみにこの楽曲は、CQが元ネタと基本となるループをレコーディング当日に持ってきたものを、ILLICIT TSUBOIがその場でトラックに仕上げたという逸話があり、以前インタビューで紹介されていました。同じインタビューでは、サンプリングネタ選びにはレコーディング環境の異なる「国の音質」にまで拘るとTSUBOIが語っており、もはや素人では理解できない領域だと思ってしまいました。それだけの莫大な知識と拘り、幾度とない試行錯誤による経験、そして何より、天性的なセンスを持つ者の手によって、このような名曲が生まれてくるのだと改めて思い知らされてしまいました。

客演で参加した<KASHI THE HANDSOME>による男らしさの光るラップに触発されてか、心なしかキエるマキュウの二人のラップもいつになく冴え渡っているように思います。最後の最後に照れ隠しのように入れられた下ネタリリックも、キエるマキュウ印。トラック、ラップどちらをとっても、キエるマキュウを代表する楽曲のひとつではないかと思います。

【ICE CUBE】


“俺とMAGIC混ぜると危険です 水とドライアイス混ぜると危険です
煙吐く絶妙なコンビネーション”


この【ICE CUBE】は【MOZU】と共に先行シングルとして発表された楽曲です。この楽曲でも、まずキエるマキュウ印のトラックが耳を魅了してくれます。そして、そのトラックに乗る抽象度が高く、一聴して支離滅裂なリリックは、最初は完全に“音”として耳に入ってきます。しかし、不意に印象的な言葉が“意味”として耳に入ってきたとき、楽曲のイメージが途端に広がる感覚を得ます。深読みしようとすれば幾らでも出来る、聴き手に自由な余白が設けられたリリックだと思います。

アメリカのラップのスタイルや雰囲気を“意訳”して日本語ラップに変換したとされるBUDDHA BRAND。その特徴は、キエるマキュウのラップスタイルやリリックにも引き継がれています。もともと私は、リリックについては、“言葉で言い表す表現の妙”を楽しみたいと思っているタイプだった為、“イメージの連想ゲームで世界観を構築する”抽象的なリリックには敬遠しがちでした。しかし、キエるマキュウに出会ってからは、トラックを邪魔せず、楽曲のイメージを広げ、対比によりいっそうトラックの美しさを際立たせるという、リリックの副次的効果に気付かされ、新しい価値観を学んだ気がします。随所に挟まれる猥雑な表現も、“綺麗なトラック”には“繊細なリリック”を求めがちになるという凝り固まった固定概念を、優雅に脱臼させてくれるようなアプローチではないかと思います。



さて、今回は頂いたコメントをキッカケに出会えたキエるマキュウの作品についてご紹介しました。それまで出会っていなかった素晴らしい作品に出会えるのは、何度体験しても嬉しいことです。改めて、ご紹介いただいたことに感謝を申し上げます。この作品以外にも、他の方からコメントでご紹介をいただいたものや、Twitterでフォローしている方々がお薦めしている作品についても、随時チェックさせてもらっています。SNSが広く浸透して以来、口コミをキッカケにいい作品に出会う度に思うことですが、今の時代は本当に“音楽を楽しむ”にはいい時代ですよね。

ただその反面、若い世代から“音楽を買って聴く”という文化が衰退してしまっているという記事も出ていましたし、アーティストの方々については大変な時代なのかもしれません。なんとか、アーティストにとっても、リスナーにとっても、音楽を楽しめる方法はないものかなと、改めて感じてしまいました。

では、今回はこのへんで。

関連記事

0 Comments

Leave a comment

ブログパーツ