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日本語ラップ・MCバトルの“今”を語るブログ

日本の名盤・基本の定番㉖(イテツクアカツキ by Meiso)

どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は、Meiso(ex 外人21瞑想)のセカンドアルバム【イテツクアカツキ】について書きたいと思います。アルバムとしての見事な構成、豪華プロデューサー達による秀逸なトラック、そしてMeisoによる流暢なラップと奥深いリリックといったように、どの面においても非常に聴き応えのある作品になっています。

それでは、いってみましょう。

【イテツクアカツキ by Meiso】
meiso

<収録曲>
1. 光の波紋/break of dawn (prod. by Young-G)
2. 買ってはいけない (prod. by DJ Whitesmith)
3. Be the change (prod. by CAV3)
4. 学問の門弟 (prod. by CAV3)
5. オロボロス (prod. by Young-G)
6. コントロール feat. Shing02 (prod. by CEASE)
7. Nakanaka (prod. by EVISBEATS)
8. ダンス (prod. by EVISBEATS)
9. このスタイル (prod. by EVISBEATS)
10. イエティ (prod. by ION MYKE)
11. 浄火 (prod. by ION MYKE)
12. SLEEP (prod. by おみゆきCHANNEL)


この作品は、私が「何か良質な音楽に浸りたい」と思った時によく聴いている作品です。しかし、それはつまり「この作品が聴きたい」という衝動に駆られるというよりも、聴く作品を探している時に不意に目に留まり聴き始めることの方が多いということの裏返しでもあります。そのように言うと、なんだか求心力を欠いた作品のように思われてしまうかもしれません。しかし、そのような場面で何度も繰り返し聴いているということは、逆に凄いことではないかと私は思っています。

なぜなら、それは聴く度に私が満足感を得ているということの裏付けでもありますし、それだけこの作品に対してポジティブな印象を抱いているからだと思うからです。そういった意味では、この作品は私にとって、いつ出番が来るかはわからないけれどいつでもポケットに忍ばせておきたいと思える、そんな少し変わった形で信頼を寄せている作品と言えるかもしれません。

私はMeisoの吐き出す言葉にとても魅力を感じます。日本で生まれ高校生の時にハワイのホノルルに移り住んだMeiso。そんな二つの島国文化を知る彼が語る世界は、やはりどこか多面性があり、スケールの大きさ異国の空気感を感じさせてくれます。具体的にどこにそれを感じるのかと問われると応えに窮してしまうのですが、彼の音楽を聴いた後に彼がハワイ在住だと知ったとしたら、「なるほど、どうりで」と感じてしまう人が、きっと私以外にもいるのではないかと思っています。

本作を初めて聴いた時、前作【夜の盗賊】と比べ、その表現がより幅広く、より深くなったように私は感じました。

まずは、その表現の幅広さについて。前作【夜の盗賊】ではタイトルからもわかるように、夜のもつ暗い印象が作品全体を包んでおり、Meiso自身もリリックを夜に書き、聴き手も夜に聴くことを想定して作ったと語っていました。しかし今作は、アルバムのジャケットや、イテツク(陰)アカツキ(陽)というタイトルにおいても、の両面が込められており、前作において象徴的だったMeisoの内省的描写や社会へのアンチテーゼのみならず、生の喜びや愛といったポジティなメッセージも多く込められています。その両面を描き出すことによって、彼が語る世界はより広がりを見せ、その彩りは鮮やかさを増しているように思います。そして、その世界の広がりがあるからこそ、彼のメッセージはより説得力を増し、聴く者の心に多角的に突き刺さってくるのです。

次に、進化したその表現の深さについて。彼は今作をつくる上で「より平易に表現したかった」とインタビューで語っていました。その言葉の通り、今作のリリックは、前作と比べ普遍的で聞き馴染みのある言葉が意識的に多く使われています。しかし、それにも関わらず、描き出すその世界観はより深みを増しており、伝わってくるメッセージは、より鋭利なものになっているように思います。

これはどの分野においても共通なことですが、私は“難しいことを簡単な言葉で表現できる人”に対し尊敬の念を抱いてしまいます。誰かにメッセージを“伝える”ことを目的とした表現においては、それ以上に目指す境地は無いのではないでしょうか。シンプルな故にそのメッセージの強度は増し、聴く人に深く突き刺さります。そして、そのメッセージがわかりやすく普遍性があるが故に、多くの人に刺さり得るのです。

さて、それではこの良曲揃いなアルバムの中から、MVが発表されている楽曲についていくつかご紹介していきましょう。単曲で聴いても素晴らしい楽曲ばかりですが、アルバム通して聴くとまた違った印象を抱きます。これを聴いて気になった方は、是非アルバムとしても聴いてみて欲しいと思います。

【買ってはいけない】


“毎日の買い物が本当の投票ってわけ”

消費社会となった現代社会に対し、ストレートに警鐘を鳴らした楽曲です。トラックの良さ、ラップの上手さから音楽としても純粋に楽しめる一方で、その強烈なメッセージが心に引っ掛かりをつくり、思わずリリックを文章として追ってしまいます。頭では理解しているつもりでいる現代の社会構造。しかし、改めて振り返ってみると、自分がまんまとコントロールされる側に立たされているということに気付きます。上記に書いた“毎日の買い物が~”というリリックが、特に私には刺さりました。改めて日々の行動を見直し、正しい目を持って生活していこうという思いが胸に湧き、襟を正される気がしました。

この楽曲のように、知的で社会性の強いリリックがMeisoの代名詞とも言えます。しかし、これだけストレートなメッセージを訴えている楽曲であるにも関わらず、そのリリックからは必要以上の説教臭さを感じません。それは、彼があくまでも詩的にリリックを構成しているからだと思います。巧みな表現を用いながら、切り取られていく現代社会の実態。それをまざまざと見せつけられたリスナーは、自らの頭で色々なことを考えはじめるでしょう。押し付けではなく、あくまでも自分の意志で行動を促すところに、この楽曲の強さがあるのではないかと私は思っています。

【Nakanaka】


“小さな喜び見つけていんじゃない 生きているだけでありがたい”

EVISBEATSの珠玉のトラックと、Meisoの囁くような優しいラップが心地よい、穏やかな楽曲です。前述した“陰と陽”の話でいえば“陽”に属する、本アルバムにおいても象徴的な楽曲です。この楽曲は、Meisoの曲としては珍しく、レトリックを極力用いずにストレートに語りあげているのが特徴的だと思います。日常における些細な風景と、それに伴う心理描写がわかりやすく描かれていて、生活を吹き抜ける風の音まで聞こえてくるかのように感じられます。

このアルバムは、タイトルからもわかるように「暁(夜明け)」から物語が始まります。一曲目「光の波紋/break of dawn(明け方)」から最後の曲「SLEEP(眠り)」まで、一日を表すようにアルバムが構成されています。そして、この楽曲はそんなアルバムにおいて、後半戦の始まり部分に据えられている楽曲です。つまりは一日でいうところの夕方くらいを指す曲ですね。どこか気怠い空気を漂わせながらも、同時に充実感をも感じさせてくれるこの楽曲から、素敵な一日を想像させられてしまいます。

【このスタイル】


“そちら井の中の蛙 こちら見ろ意のままのカラス”

こちらもEVISBEATSのトラック。まるでMCバトルのように、“こちら”と“そちら”で言い争う構成が面白い楽曲です。その一つ一つの言葉選びや表現が非常に機知に富んでいることにより、単純な構成にも関わらず、聴くものを決して飽きさせません。B-Boy Park 2003での優勝により、MCバトルシーンにおいて“外人21瞑想”としてその名を轟かせることになったMeiso。そんなバトル巧者な彼らしい、アイデアに満ちた楽曲だと思います。

Meisoはバトルと音源、そのどちらでも実力を発揮することのできる本物の表現者だと思います。彼の場合、バトルきっかけで知って音源を聴いても、またその逆でも、きっと高い満足感を得ることができるでしょう。バトルの強さと音源の良し悪しが必ずしも比例しているとは言いがたい現在のシーンにおいては、彼は貴重な存在と言えるかもしれません。MCバトルにはしばらく出場していませんでしたが、ここ最近復活し、また少しずつバトルに参戦しているようですね。戦極14章でのタッグバトルにも出場が決まっているようです。アーティストとして更に進化した今のMeisoが、果たしてどのようなバトルを見せてくれるのか、非常に楽しみです。



今回ご紹介した3曲以外にも、このアルバムには素晴らしい楽曲がまだまだいっぱいあります。Shing02との相性抜群なコラボが光る【コントロール】、娘へのアドバイスという視点で描かれた【Be the change】、そして私がこのアルバムで一番好きな楽曲【学問の門弟】などなど。興味のある方は、是非アルバムとして聴いてみて下さい。

MeisoがHIPHOPを始めるきっかけだったと語っていた<言xTHEANSWER>をはじめ、今の若い世代においても絶大の支持を獲得しているMeiso。今後もフィールドを選ばずどんどん活躍して欲しいですね。そして良質な音楽をこれからもたくさん届けてもらいたいと思っています。

では、今回はこのへんで。



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2 Comments

いち読者  

管理人さんは妄走族はお聞きになりませんか?
00年代の日本語ラップを語る上で外せないグループだと思っています。
ぜひ管理人さんの解説を聞いてみたいです

2016/05/13 (Fri) 04:03 | EDIT | REPLY |   

Pto6  

Re: タイトルなし

> 管理人さんは妄走族はお聞きになりませんか?
> 00年代の日本語ラップを語る上で外せないグループだと思っています。
> ぜひ管理人さんの解説を聞いてみたいです

いち読者さま
コメントありがとうございます^^妄走族もいいですよね!私も昔よく聴いていましたよ!
たしかに、日本語ラップを語る上では重要なクルーだと思っております。
その為、いつかこのブログでも書きたいと思っています^^

ただ、音源の記事については、ある程度その作品を心から聴きたい気分になった時に書くようにしています。
その作品が好きな気持ちが高まった状態になった時に文章を書いたほうが、
私の場合は筆が進み、気持ちを乗せて書くことができるからです。

そのように、私は融通のきかない面倒な質なので、正直いつ妄走族について書けるかはわかりませんが、
いつか書きたい気持ちになりましたら、書かせていただきたいと思います。
どうか気長にお待ちいただけたら幸いです。

このたびはリクエストありがとうございました。
解説を聞いてみたいとおっしゃっていただき、大変光栄でした^^
何卒ご理解いただきますよう、お願いします。

2016/05/14 (Sat) 01:31 | EDIT | REPLY |   

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