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新作音源に小さく貢献⑬(Outside the Frame by AKLO)

どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は、先日発売されたAKLO待望の新作【Outside the Frame】について書きたいと思います。これまで日本のHIPHOPシーンをネクストレベルへと牽引し続けてきたAKLO。そんなAKLOの今回の作品は、一筋縄では味わいきれない、これまでの作品以上に奥深い作品でした。

それではいってみましょう。

【Outside the Frame by AKLO】
OUTSIDE 

<収録曲>
01.Fly Like a Dragon
02.Good Morning
03.247365
04.Outside the Frame
05.サーフィン feat. JAY' ED
06.Bob Dylan
07.Me Myself and I
08.McLaren
09.Sometimes
10.Your Party feat. JAY' ED
11.We Go On feat. SALU(Album Version)
12.3D Print Your Mind


“Hanging out with my レベチdogs”


聴けば聴くほど、どんどん好きになっていくと共に、聴けば聴くほど、タイトルOutside the Frame”という言葉を何度も噛みしめることになる、そんな作品だと私は感じました。

まず、私が最初に出会ったのは、予想“外”の作風という“Outside the Frame”でした。

戸惑いそれが本作を初めて聴いた時に私が抱いた率直な感想です。前作のセカンドアルバム【The Arrival】を一聴した時に得た未体験のカッコ良さに出会った感動”その前のファーストアルバム【THE PACKAGE】を聴いた時に感じた“シーンの新たなスタンダードが打ち立てられた興奮”。本作を聴く前の私は、それらに似た感情を抱くことを想像しながらプレイボタンを押しました。しかし、抱いた感情は上記の通りだったのです。

“メジャーレーベルに移籍して初めての作品”そのように聞いた時に抱く作風とは、本作は真逆といってもいいほどのつくりになっています。装飾的な派手さやわかりやすいキャッチーさとはかけ離れた、シンプルで、クールで、余裕すら感じさせる落ち着いた佇まいその掴みどころのない予想“外”の作風が、私に“戸惑い”を与えたのです。


次に感じた“Outside the Frame”は、本作がシーンという枠の“外”を意識して作られているという点についてです。

AKLOが本作を語るインタビュー記事が現時点でいくつか公開されていますが、私はそれらを読んでいて、AKLOが“シーンを意識せずに、とにかく自分がカッコいいと思うことをやった”と本作について語っていたのが印象に残りました。しかし、そのように語っている一方で、今の最新のHIPHOPシーンのトレンドもしっかりと取り入れたとも語っているのです。

一見、矛盾するようなその二つの言動ですが、おそらくそのどちらの想いも嘘ではなく、つまりは、シーンの最新形も高い次元で取り入れながら、同時にシーンにはない自分だけの新たな価値観も追い求めるという、なんとも意欲的なテーマを掲げ本作は作られたのだと感じました。これまで日本のHIPHOPシーンを牽引していたAKLOらしい、使命感と矜持に満ちた作品ですね。


また、本作は規格“外”のスキルという“Outside the Frame”も感じることができます。

BACHLOGICJIGGが作るクールで都会的なトラック(作曲名義はOYWM)。アルバム全編を通してしっかりと雰囲気が統一されたそれらトラックの上で、AKLOは自身のラップスキルを用いて多岐にわたる変化を生み出していきます。

公開以来、そのMVのクオリティの高さが話題となっている楽曲McLarenも、ラップのフローやライムの置き所に注意しながら聴いてみると、楽曲の持つポテンシャルの高さを改めて堪能することができると思います。

McLaren


“捲られん”と“McLaren”でかける辺りが、実にAKLOらしいなと感じますよね。この【McLaren】の他にも、AKLOがアルバムの中で最も新しいフローをした」と語るサーフィン feat. JAY' EDも必聴です。AKLOの代表曲のひとつでもある【サッカー feat. JAY' EDとのシリーズ曲としても見てとれる本楽曲は、世間の流行という波を乗りこなす”というテーマでつくられた楽曲ながら、音の波も華麗に乗りこなす”AKLOのラップも堪能することができると思います。

これまでもUSの最新フローを日本語ラップに取り入れてきたアーティストは数多くいました。しかし、それらが作る楽曲の多くは、“USのフローを日本語ラップに取り入れる”ことを“目的”としているように感じるものも少なくありませんでした。しかし、本作におけるAKLOは、あくまでビートを乗りこなす“手段”として、その最新のフローを取り入れているように思います。形だけを真似るのではなくしっかりと習得することで、自分の引き出しにあるスキルの一つとして、ビートに対する必然性をもたせて自然と使っているような印象を受けるのです。ビートに対してあまりに自然にラップが乗っているので、私は一聴しただけではそのラップの凄さに気づくことができなかったくらいです。


次に感じた“Outside the Frame”は、AKLOが自分という枠の“外”の手段を効果的に活用している点についてです。

まずは厳選された絶妙な客演使いについて。アルバムの世界観を強度高く作り上げる為、本作は客演を必要最小限に絞って作られたと語られていました。しかしそんな中で、過去作でもお馴染みのSALUJAY' EDいう信頼の置ける二人を効果的に使い、アルバムに絶妙なアクセントを付けることに成功しています。その客演陣の活躍によるアクセントと、アルバム全体が纏う統一感の塩梅がちょうどよく、それが作品の完成度を高めているように私は感じました。(ちなみにiTunesのボーナストラックには、RHYMESTERのMummy-Dが客演で参加しています。そちらもボーナストラックにするには勿体無いほど素晴らしい楽曲です。)

We Go On feat. SALU


上記はSALUが客演で参加した楽曲のMVです(アルバムにはAlbum Versionで収録されています)。とにかく客演のSALUが抜群に良い働きをしていることがわかるかと思います。「たまには猿も落ちるよ木から」の言葉に呼応するように颯爽と登場し、「もう一度登る楽しみを与えてくれてありがとう」で去っていく構造がとにかく秀逸です。単曲としても素晴らしい楽曲ですが、アルバムを通して聴くとまた違った印象を抱く曲ですので、是非一度はアルバムの流れで聴いて欲しい楽曲です。

そして、本作は客演ではない形でも、他人の力を効果的に活用しています。先ほど紹介した【McLaren】や【Bob Dylan】のように、本作には実在の人物の名前が多く登場するのです。このように実在の人物を楽曲中に登場させることで、その人物の持つイメージを聴く者の頭に想起させ、言葉以上にメッセージや楽曲の世界観を広げる効果を発揮させているように思います。特にBob Dylanという楽曲では、人物像だけでなく彼の代表曲【風に吹かれて】のもつイメージも強く反映されており、それ無しでは作り得ないほど魅力的な世界観を構築しています。本作の中でも私が特に好きな楽曲のひとつです。


さて、最後にご紹介する“Outside the Frame”は、アルバムで繰り返し一貫して訴えられる“枠の外に飛び出せ”というメッセージそのものです。

AKLO楽曲の特徴といえば、セルフボースティングの要素だと思います。本作でも、これまでの作品と同様に、言葉巧みな表現で自身を誇示するリリックが多くでてきます。しかし、本作におけるそれらのリリックは、ただ自身を誇るだけではなく、自分を通して日本のHIPHOPシーンに、そして何かに挑戦する全ての人に対する、“既存の枠や過去の自分から飛び出せ”という強いメッセージが内包しているように感じられるのです。

“早く抜け出せよそのVillage”

“過去の栄光にしがみついた時点で時代遅れ”

“抜け出した者勝ち 誰にもさせないジャッジ”

“肩慣らし気晴らしに新しいことしてくだけ”

“また作るとしますか明日のHipHop”

これらの力強い言葉がアルバム中何度も違う言葉でリフレインされてくるので、まるでAKLOのカッコいい価値観や生き方までもが、自分自身に刷り込まれていくような、そんな感覚を得ることができるのです。そしてその時、自分にとってのOutside the Frame”を、改めて見つめなおすことができるのです。

AKLOアー写 

このように、本作は聴けば聴くほど魅力が見つかる、そんな作品になっています。発売日に購入して、これまで1週間以上本作を聴き続けてきましたが、まだまだ新たな発見は尽きることがありません。是非ともこの作品が既存のHIPHOPファンという枠をも超えて、そしてゆくゆくは日本、アジアという枠をも超えて、多くの人に聴いてもらいたいなと思います。

では、今回はこのへんで。







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