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日本の名盤・基本の定番㉗(THE CITY OF DOGG by D.O)

どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は、先日のさんぴんCAMP20でも持ち前の存在感を発揮していた、練マザファッカーのリーダーD.Oの4thアルバム【THE CITY OF DOGG】について書きたいと思います。是非アルバムを通して聴いていただきたい作品です。

それでは、いってみましょう。

【THE CITY OF DOGG by D.O】
D.O 

<収録曲>
1.RAPPER IS
2.悪党の詩
3.THE CITY OF DOGG
4.DOGG RUN TOWN
5.ガマンの印の HIGH GRADE DELIVERY feat. PIT GOb , T2K
6.ドアを叩け
7.東京 SURVIVAL 2010
8.世界新秩序
9.BAD NEWS
10.イキノビタカラヤルコトガアル -REMIX-
11.SEVEN DAYS WAR feat. JAZZY MINOR
12.Bye bye feat. 響
13.最終勧告

アルバムを一枚通して聴きたくなる作品。そんな作品が私はやっぱり大好きです。これまでこのブログでご紹介してきた作品達もそうでしたが、今回ご紹介するこの【THE CITY OF DOGG】もその例に違わず、いや、もしかしたらこれまでの作品達以上に、アルバムを通しての流れが好きな作品かもしれません。

この作品は、聴き始めてすぐに抱く印象と、聴き終わってから胸に残る感覚が異なる作品です。言うなれば、アルバムの前半部と後半部の二章構成で構築されているような、そんな印象すら受けます。もちろん、それぞれの章がブツ切りに隔離されているわけではなく、全編通して統一的なテーマで歌われており、更に言えば、一章があることにより二章が際立ち、楽曲に込められたメッセージがより説得力を増すような構成をしています。

そういったストーリー性のある構成や、情景が目に浮かぶ描写的なリリック、そしてそれらを牽引するバラエティに富んだトラックたち。私はこの作品を通して聴くたびに、まるで映画を見終わったかのような満足感を得ることができます。

それでは、この作品をアルバムの流れに沿ってご紹介していきましょう。便宜上、1曲目から7曲目までを本アルバムの“第一章”、8曲目から13曲までを“第二章”としてご説明させていただきます。

まずは第一章。第一章は、クライム(犯罪)映画のようなスリリングでスピーディな展開が楽しめる章になっています。トラックをBGMにD.Oが自らリスナーに話しかける“語り”を曲間に効果的に挟み込み、短めの曲をテンポよく矢継ぎ早に送り込むことで、スピーディで変化の速いストリートの状勢が、リリックの内容以上に雄弁に語られています。そのスリリングな展開に、リスナーは冒頭から心を掴まれ、このアルバムの世界観に一気に引きずり込まれてしまいます。

リリックは、ストリートに生きるD.O自らの実体験を元に作られたと語られています。そこで描かれる世界は、怪しげで危なげで、暴力的で血生臭い、犯罪の匂いが終始漂う、私のような一般人は知る由もないイリーガルな世界なのですが、それを犯罪歴もあるギャング顔負けのD.Oが語ることによって、情景が目の前にありありと浮かび上がってくるのです。クライム映画を観るときと同様に、そこで描かれる世界に共感は得られないにしろ、自分の知らない世界への恐いもの見たさの好奇心で、どんどんと先の展開を聴きたくなってしまいます。

第一章における代表曲である【悪党の詩】もそんな楽曲のひとつです。

【悪党の詩】


“悪党が奏でるこの詩 馬鹿にされたって構わないさ”

「ヒップホップ的な“お題”のなかで、誰がよりフレッシュな表現をできるかどうかを競うゲーム。(中略)ラッパーはある意味、全員役者でもある。」これは以前RHYMESTERの宇多丸が、ヒップホップの一つの側面について語っていた言葉です。私はD.Oを見るといつもその言葉を思い出してしまいます。彼がその唯一無二のキャラクターで、そして、あくまでもリアルにリリカルに語ることによって、誰も真似することができない彼だけの表現を実現させていると思います。この楽曲もそんな彼にしか歌えない曲ではないでしょうか。楽曲後半の急展開と息を飲むような映像的な描写も魅力的ですよね。

また、トラックがどれも秀逸なのがこのアルバムの特徴のひとつでもあります。この楽曲もJASHWON for B.C.D.Mによるトランペットの音色を活かした聴き応えのあるトラックが楽曲に彩りを添えています。ちなみにこの楽曲の他で言うと、DJ MUNARI & PRAWDUKの煌びやかで都会的なトラックが冴えわたった【DOGG RUN TOWN】も是非聴いていただきたい楽曲のひとつです。本アルバムでは、JASHWON for B.C.D.Mが13曲中8曲を、DJ MUNARI & PRAWDUKが残り5曲をプロデュースしており、そのすべての楽曲をI-DeAがMIXしているいう、とても豪華な布陣で制作されています。D.Oのリリックだけでなく、トラックにも是非注目して聴いていただきたいと思います。


さて、続いては第二章について。第一章でも、悪党の目線での現代社会に対する問題提起がいくつかでてきますが、8曲目の世界新秩序と題された“語り”以降、一層と社会風刺の色合いの強い楽曲たちが登場します。このアルバムが発売されたのは2012年の5月。そう、この作品は、2011年3月の東日本大震災をきっかけに政府やマスコミへの懐疑心と不満の暗雲が日本中に立ち込めていたあの頃、作られたものなのです。

“防護服、マスク、眼鏡、カウンタ、人々の希望すら遥か彼方
デタラメを言うマスコミ、メディア、御用学者、政治家は犯罪者”

9曲目の【BAD NEWS】では、そんな日本全土を包んでいたどんよりとした気持ちがストレートに歌われています。そしてそれに続くイキノビタカラヤルコトガアルでは、そんな日本においてでも、自分にも出来ることがあると歌っているのです。

イキノビタカラヤルコトガアル


“生き延びたからやることがある この僕の様な悪党さえも”

第一章における悪党っぷりが、この楽曲のメッセージをより重くしていると思います。“この僕の様な悪党さえも”日本の現状に嘆き、国家の在り方に失望し、そしてそれでも誰かのために出来ることがあると歌っているのです。第一章との振り幅の大きさがそのまま助走となり、大きな勢いをもって聴く者の胸に突き刺さってきます。

私はこの楽曲を聴いていて、漫画【ONE PIECE】を読むときに感じるものに似た感覚を得ました。世間から見たら悪者であるはずの海賊の目線で世の中を描いたとき、一般に正義とされている海軍や世界政府のやっていることが、実は“悪”の側面を持っているということに気づくのです。私はD.Oという悪党の目線で日本社会を見ることで、より明確に、そしてよりシリアスに今の問題点がわかったように感じました。

この楽曲【イキノビタカラヤルコトガアル】のあと、より日常的な社会へと目を向けた【SEVEN DAYS WAR】へと続き、徐々にアルバムはドラマチックなムードで終焉に近づいていきます。そしてこのアルバムのエンディングとなる【bye bye】は、女性ボーカルを客演に迎えたバラードになっており、このアルバムに心地よい良い後味を残してくれます。その後、エンドロールとして【最終勧告】と題された不穏なインスト曲が流れ、秀逸な映画のようなこのアルバムは幕を降ろします。第一章の血なまぐさい犯罪の匂いと、第二章の灰色の空気に包まれた日本の現代社会を背景に、徐々に映像がフェードアウトしていく様が目に浮かぶようです。

40分にも満たない短いアルバムですが、そこから得られる充足感はどんな長編作品にも引けを取りません。逆に、その短いアルバム構成が、一枚通して聴くことを助勢しているようにさえ思うのです。この作品を十分に味わう為には、アルバムを通して聴くことが必要だと私は思います。

興味をもたれた方は単曲で聴くのではなく、是非ともアルバム単位で聴いてみて欲しいと思います。これまでに得たことのないような感覚と不思議な感動が味わえる、そんな素晴らしいアルバムです。

では、今回はこのへんで。









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2 Comments

raru  

いつもたのしく
拝見しております。

フリースタイルダンジョンモンスターズウォーに関して感想が聞きたいな、なんてことをおもったりしてます(笑)
いつかおまちしております。

2016/07/19 (Tue) 23:16 | EDIT | REPLY |   

Pto6  

Re: タイトルなし

> いつもたのしく
> 拝見しております。
>
> フリースタイルダンジョンモンスターズウォーに関して感想が聞きたいな、なんてことをおもったりしてます(笑)
> いつかおまちしております。


raru さん
コメントありがとうございます^^
ブログを読んで下さりありがとうございます。
フリースタイルダンジョンのモンスターズウォー楽しかったですよね。
AbemaTVではなんでも149万viewを達成したらしいですね。本当にすごい人気です。

今や、これだけ大人気になった番組に対して私なんかの感想を書くのはおこがましいですが
とにかく、モンスターズウォーではタッグマッチの面白さを再確認させられました^^
個人戦とは違い、「チームワーク」という評価基準が加わるから面白いですよね。
そして、チームメンバーとの掛け合い、マイクリレーで、一人の時にはできない
「コンボ攻撃」ができるのも魅力です。全員の力が合わさったラインは超強力でした。

いつまでこのブームが続くかわかりませんが、ブームが去った後に
何人ヒップホップファンを残せるかが今にかかっている気がします。
そういう意味ではフリースタイルダンジョンには、もっともっと盛り上がりを作ってほしいと
一人のヒップホップファンとしては思ってます。
そして、一人のヒップホップファンとして、純粋に番組の今後の展開を楽しみにしています^^

2016/07/24 (Sun) 01:12 | EDIT | REPLY |   

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