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このDVDが良い雰囲気⑫(Straight Outta Compton)

どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は、久しぶりにBlu-rayで見返した映画【Straight Outta Compton】について書きたいと思います。伝説のヒップホップグループN.W.Aの誕生から破綻までを描いた伝記映画ですが、彼らのファンはもちろん、彼らを知らない人が見ても楽しめる、そんな映画になっています。

それではいってみましょう。

【ストレイト・アウタ・コンプトン】
Straight Outta Compton 

アメリカのカリフォルニア州コンプトン。アメリカの中でも最も犯罪率が高いといわれる悪名高いこの町で、その後西海岸の伝説的ヒップホップグループとなるN.W.Aは生まれました。リーダーを務めた元ギャングスタのEazy-Eを筆頭に、Dr.DreICE CUBEMC RenDJ Yellaと豪華メンバーによる3MC2DJ※で構成されたN.W.Aは、1988年に1stアルバム【Straight Outta Compton】発表すると、全米に嵐の様な旋風を巻き起こしました。(※1988年に脱退したArabian Princeは本映画では描かれていません)

この映画を見てまず思ったのは、純粋に映画としてとても面白いということです。本来、伝記映画というものは、その対象の人物に興味のある人達が見ることが多いのでしょうが、N.W.Aにまつわる実話自体がとてもドラマチックであること、そしてそれをとても魅力的に描いていることで、この映画は彼らのことをよく知らない人でも楽しめる内容になっていると思います。興行収入が2億ドルを超え、音楽伝記映画として全米歴代No.1となったことも、その映画としての面白さゆえに、多くの人が楽しめたからではないでしょうか。

とは言え、やはりN.W.Aについての基礎知識がある人にとっては、より楽しめる内容であることも間違いありません。私も本などを読んで彼らの成り立ちや、N.W.Aの内紛、その後のデス・ロウ・レコードの崩壊などは知っていたのですが、時間軸に沿った物語としてそれらの歴史を改めて見られたことで、その背景やそれぞれの人物の想いがよくわかり、より理解を深めることができました。そういう意味では、この映画はアメリカ西海岸のヒップホップ史の教養を深める為にも、よい映画ではないかと思います。

しかし、なによりこの映画の最大の魅力は、N.W.Aの人物、そしてヒップホップという文化がとても魅力的に描かれていることではないかと思います。もちろん、暴力的で犯罪的な側面を持っている文化であり、それについては全面的に肯定することはできません。そういった理由で、ヒップホップを毛嫌いする人が多いことも理解できます。しかし、この映画で描かれる、良いところも悪いところも全てひっくるめたヒップホップの真の姿を見たとき、私は「やっぱりヒップホップって最高だ!」と心から叫びたくなる衝動に駆られてしまいました。

劇中に登場する音楽シーンも、Dr.DreやICE CUBE本人たちが全面協力をして制作された内容なので、どれも素晴らしいものばかりです。こんなにも低音が気持ち良い映画がこれまであったでしょうか。劇場で見ることができなくなった今としては、是非とも少しでもより良いオーディオ環境で鑑賞して欲しいと思います。純粋に迫力あるライブ映像としても楽しむことができること請け合いです。また、本人たちの協力はもちろんストーリーにも細かく反映されています。彼らの協力によって、本当のN.W.Aの歴史を、あの当時の出来事を当事者の目線で、私たちは知ることができるのです。(もちろん映画なので脚色しているところはありますが。)

【ストレイト・アウタ・コンプトン予告編】


この映画は過酷なストリートや、ギャング犯罪を描写している一方で、当時のアメリカの社会問題(貧困、人種差別、警官の暴力等)についても描かれています。また、ヒップホップや音楽業界の闇についても触れてあり、それに加え、仲間たちの友情、決別、死など、ヒューマン映画としてみても魅力的な要素が詰まっているのですから、映画として盛りだくさんの内容ですよね。

劇中でも語られるN.W.Aの意味、Niggaz Wit Attitudes(主張する黒人たち)。当時の世の中の黒人に対する不当な扱いへの反抗がこの名前には込められています。当時大きな問題となっていた黒人に対する警官の暴力や殺人事件。それが、現在のアメリカにおいても繰り返されているということについては、深い悲しみと憤りの感情を抱いてしまいます。アメリカでのこの映画のヒットも、そういった現在社会への憤りが表れた結果なのかもしれません。映画の中でも象徴的に描かれている【F**k the Police】は、現在のアメリカ社会にも強く響く楽曲なのだと思います。

この映画を観るまで、私は正直ギャングスタ・ラップというものが苦手でした。その暴力的で猥雑な歌詞やメッセージにまったく共感できないというのが、苦手である最大の理由です。しかし、この映画を観て、私はギャングスタ・ラップを少し誤解していたということに気が付きました。

不良のただの悪自慢ではなく、彼らは自分たちが生きる過酷な現実を、忠実かつリアルに切り取っているだけなのです。そして、それらを持ち得るテクニックやユーモアを駆使して、音楽として、アートとして昇華させようと試みているのです。確かに攻撃的なディスや単なる犯罪自慢、過激さ際立たせるためのリリックもあるでしょう。しかし、そういう自分を大きく見せたり、周りに噛みついたり、嘘をついたりすることすらも、彼らが生きる上では必要なことであり、それこそが彼らのリアルなのだと思います。

きっと、ここまでハードなギャングスタ・ラップが生まれたのも、ここまで過酷なストリート環境があるコンプトンだからこそでしょう。おそらく他の環境で同じようなラップをスタイルだけ真似してみたとしても、これほどまでのパワーは生まれなかったと思います。そして、そんな楽曲を真の意味で理解するには、そのような背景や環境を理解することが必要なのではないでしょうか。

私はそのことを、この映画に教えてもらいました。貧困で苦しみ、町は荒れ果て、犯罪に怯えながらも、警官すらも信頼できない。そんな状況下に育った彼らが音楽に込めた想いを、私は知ることができました。そのことで、これまであまり好きになれなかったギャングスタ・ラップというものを、私は少しだけ好きになることができました。

映画のエンドロールで流される映像は最高に興奮します。表題曲【Straight Outta Compton】の音楽とともに、MVや当時の本人たちの映像が流されるのです。また後半には、彼らに影響を受けたという有名アーティスたちのインタビューもあります。Kendrick Lamar2PACSnoop DoggEminem等、錚々たるメンバーです。N.W.Aの影響力の大きさを改めて痛感させてくれると共に、【Straight Outta Compton】という曲のカッコ良さを再確認させてくれる映像だと思います。

【MV:Straight Outta Compton


この楽曲ひとつをとっても、N.W.Aが個性的で魅力的な集団だということがわかりますよね。そして、きっと映画を観た後にもう一度この曲を聴くと、もっともっと彼らのことを、そしてこの曲のことを好きになっていることに気がつくと思います。是非試してほしいと思います。

さて、今回は映画【ストレイト・アウタ・コンプトン】について書かせていただきました。夏休みの時期なので、普段より時間に余裕がある方も多いことでしょう。興味のある方、まだ観ていない方は、是非これを機にこの映画を観てみてください。きっと楽しめると思いますよ。

では、今回はこのへんで。

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