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新作音源に小さく貢献⑭(Feelin29 Feat.Kojoe by 5lack)

どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は、先日発売された5lack(S.L.A.C.K)Kojoe共作のシングル作【Feelin29】について書きたいと思います。晩夏の夜に聴くのにぴったりな心地よい楽曲です。

それでは、いってみましょう。

【Feelin29 Feat.Kojoe by 5lack】
Feelin29 

帰省先で不意に立ち寄ったタワーレコード。その視聴機を一通り聴き漁っていた時に、心を鷲掴みにされたのが本作品でした。最新のUSフローを取り入れた他アーティストの最新作たちの中で、本作は異質な輝きを放っていました。

出先だったこともあり、後でiTunesで購入しようとその場を立ち去りましたが、帰ってみて本作品は配信されてないことを知りました。予想外の事態に、5lackを聴きたい衝動が一気に湧き上がった私は、それを抑える為に手元にあったPSGのアルバムを一晩繰り返し聴いてみたりしたものの、結局は欲望は高まるばかりで、翌日帰省からの帰り道に店に直行し購入するに至りました。なんだか、シングル作を盤で買うのはとても久しぶりな気がします。

このように、5lackやその実兄PUNPEEが作る楽曲には、一度心を奪われると他の楽曲が聴けなくなるくらいハマり込んでしまうという魅力があるように思います。彼らのつくる才気溢れる楽曲たちに、私はこれまで何度心奪われたことでしょうか。そして、彼ら二人の作るトラックやラップには、兄弟ならではの素晴らしい共通点もありますが、今回のようなソロ作品を聴くと、それぞれの異なる個性というものにも改めて気づかされます。今回のシングルも、5lackならではの魅力溢れた作品になっていると思います。

極上のタイトル曲と、それと対比的なカップリング曲。そして、それらの楽曲を十二分に堪能させてくれるインスト版がついた計4曲。再生したら最後、しばらくは繰り返しループで聴いてしまうことでしょう。ここでは、それぞれの楽曲について、感想(のようなもの)を書いてみたいと思います。


1.Feelin29 Feat.Kojoe


“もう過去は見ない お前がいた日戻らない”

Feelin29(フィーリン・トゥナイト)と題された本楽曲。夏の夜特有の気怠さ失恋の哀愁が、スローテンポでムーディなトラックの上を漂います。kyneによる本作のアートワークは、本楽曲の世界観を非常によく表現していると思います。夜の街を走る車。その助手席に座る物憂げな表情を浮かべる女性。この楽曲を聴きながら、このシングルジャケットを眺めていると、二人のバットエンドへと向かう虚しい車内の雰囲気や、やるせない息苦しさが肌で感じられるように思います。

5lackの楽曲で、夏の気怠さと空気感といえば【サマー・シンフォニー Ver.2】(曽我部恵一 feat. PSG)を。失恋の哀愁といえば【愛してます】(PSG)を思い浮かべてしまう人も多いと思いますが、今回の楽曲はそれらの要素を程よくブレンドしたような、それらの楽曲が好きな人なら間違いなく気に入るような楽曲に仕上がっています。気怠さと哀愁を、こんなにも気持ちよく音で表現できるアーティストが他にいるでしょうか。心地よいまどろみに包まれ、いつまでも聴いていたい気持ちにさせられてしまいます。

過去作でいくつか共作を発表している5lackとKojoeの相性の良さは、もはや多くを語る必要もないでしょう。Kojoeの擦れたブルージーな声が、本楽曲の哀愁を一層引き立て、世界観の陰影をより深めているように思います。そして、これだけスローテンポなトラックを流暢に乗りこなす、二人のラップスキルにも感銘を受けてしまいます。他の誰でもない自分だけのフローを確立している二人ならではの、心地よいビートアプローチを堪能することができます。

また、インストトラックを聴いて気づいた発見としては、女性の吐息やハミングが効果的に挿入されているという点です。何度もループされる官能的な熱を帯びた吐息音が、本楽曲に煌びやかさと甘美な色気を加えています。過去の甘い思い出を一層引き立たせることにより、それを喪失させた後の哀愁を更に深いものにさせているように思います。こういった5lackの細かいトラックメイクの妙が、私はたまらなく大好きです。


2.Movin Feat.Kojoe

“これで上がれないならば君はどんな曲聴いたりすんだろう”

ムーディな楽曲【Feelin29】から一転、攻撃的なカップリング曲【Movin】です。アコースティックギターのギターリフを中心に据えたループトラックですが、このトラックにも人の声の挿入や細かいサンプリングが施されており、とても聴き応えのある、単調からはかけ離れた作りになっています。

リリックも、愛のナンバーであった【Feelin29】とは対照的に、セルフボースト等もあるヒップホップ要素の強い楽曲になっています。二人のラップもよりスキルフルな内容になっており、そのテクニックと多彩なフローには強い衝撃を受けてしまいました。英語を効果的に挟み、日本語特有の臭みを一切感じさせない二人のラップからは、「日本語ラップはダサい」と揶揄されていた時代が懐かしく思えてしまうほど、日本におけるヒップホップミュージックの驚異的な進化を改めて実感することができます。

本シングルに収録されている2曲間のギャップが大きく、異なるテイストに仕上がっているということが、本シングル作から得られる2曲だけとは思えない充足感に繋がっているように思います。この2曲を原曲・インストと交互に繰り返すループ再生から抜け出すことは、一度入り込んでしまったら至難の業ではないでしょうか。


【Style'20】


さて、今回は5lackの最新シングル作について書いてきました。ちなみに5lackといえば、現在docomoのCMで起用されている上記の楽曲も話題沸騰ですよね。フリースタイルブームの波に乗り、日本語ラップを起用した賛否両論の企業CMが量産されていく中、その圧倒的なカッコ良さで各方面からの大絶賛を獲得している本CM。このようなカッコいいラップが世の中に広まり、日本のヒップホップが良い意味で再注目されると嬉しいですよね。2020年の東京オリンピックに向け、5lackの更なる活躍も期待しています。

さて、まだまだ暑い夏の夜。夏休みの楽しかった思い出と、夏の終わりが近づく寂しさに思いを馳せながら、5lackの心地よい楽曲に身をゆだねてみてはいかがでしょうか。今聴くことにうってつけな、とてもおすすめな楽曲です。気になる方は是非チェックしてみてください。

では、今回はこのへんで。


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