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日本の名盤・基本の定番㉘(GOOD MUSIC by KICK THE CAN CREW)

どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は、長年私が聴き続けている大好きな作品をご紹介します。KICK THE CAN CREWの3rdアルバムにして活動休止前最後のアルバム【GOOD MUSIC】です。いつまでも色褪せない、私にとっての究極のスルメアルバムです。

それではいってみましょう。

【GOOD MUSIC】
kick good music 

<収録曲>
 1. OPENING
 2. 性コンティニュー
 3. パレード
 4. MISSION 1
 5. 脳内VACATION (album edit)
 6. ALL NIGHT LONG
 7. 裏表
 8. 揺れ
 9. MISSION 2
 10. 自由TIME (album edit)
 11. ナビ
 12. LIKE THIS (GOOD!)
 13. GOOD MUSIC
 14. MISSION 3
 15. パンク寸前のFUNK
 16. もしも

初めてこのアルバムを聴いた時は、もしかしたらあまりピンとこないかもしれません。特に、「KICK THE CAN CREWの作品」という先入観を持って聴いてしまうと、肩透かしを食らってしまう人もいるのではないかと思います。この作品の前年に出したベストアルバム【BEST ALBUM 2001-2003】こそが、おそらく多くの人が抱いているKICKのイメージであり、そこに収録されている楽曲たちが彼らの代表曲であることは疑う余地もないでしょう。だからこそ、そういった作品と同様な期待を抱きこのアルバムを手に取った人は、一聴すると地味な印象を抱いてしまうのではないかと思ってしまいます。

誤解を恐れずに言うならば、この作品は薄味な作品です。そのため、一度口に含んだだけでは、パンチのある印象は残らないのではないかと思います。それどころか、どこにも一切引っ掛かることなく、一枚さらりと流し聴きしてしまう人すらいるかもしれません。その理由は、この作品が徹底的に無駄な音を削ったシンプルな楽曲づくりを目指して作られているからでしょう。これまでのKICKの楽曲のような、一聴しただけで強く印象に残るキャッチーさとはかけ離れた作風だと思います。しかし、その薄味であるところ、そして引っ掛かりなくアルバム通して最後まで聴けるところに、本作品の他作品とは異なる素晴らしさがあると私は考えています。

強い印象が残らないにも関わらず、いや、もしかしたら、印象が残らないからこそ、このアルバムは思わず何度でも聴き返したくなる気持ちを聴き手に抱かせる作品です。そして、その薄味ゆえに食傷せずに、何度も何度も飽きずに聴き返すことができるのです。それどころか、聴けば聴くほど、そのシンプルな音ひとつひとつの素材の良さと組み合わせの妙に気づかされ、まるでオーガニック料理を食べたかのような味わい深い喜びを感じることができるのです。そして、それを感じた時には、すでに替えのきかない、あなたにとって生涯欠かすことのできない大切な一枚になっているのではないかと思います。

また、収録した楽曲たちをシンプルに統一しただけではなく、アルバムとして聴けるように絶妙に構成されているところも、私がこの作品を愛してやまないポイントです。曲の配置はもちろんのこと、時にはインスト曲を挟んででも繋げる、その楽曲たちのシームレスな繋ぎには本当に心地良さを感じます。DJのミキシングにも明るく、トラックもつくれるKREVAならではのスキルと拘りを感じることができます。その心地良さは、アルバムを聴き終わったときに「まさにこれぞGOOD MUSICだ」と、ひとり悦に入ってしまうほどです。

ちなみに、本作のトラックはそのほとんどをKREVA※が制作しており、シンプルがゆえに強固で味わい深い、HIPHOP原理主義のKREVAならではのトラックが全編通して堪能できます。本作でKREVAが見せているトラックメイク術は、その後のKREVAソロ活動における初期作品にも引き継がれていくことになります。多種多様なレコード音源から良質なドラムやベース音を抽出し、サンプラーでリズムを再構築して作られるそのビートは、ひとつひとつの音に対する愛と拘りが感じられる、思わず癖になる味わい深さをもっています。余計な音を排除した引き算の美学ともいえるシンプルなカッコ良さを、是非とも本アルバムで堪能してもらいたいと思います。

※プロデュース名義は“顔PASSブラザーズ”(KREVAとDJ TATSUTAのプロデュース・ユニット)

脳内VACATION


このアルバム発売の2か月後、彼らは活動休止を宣言することになります。きっと本アルバムを制作しているときには、そのことは既に決まっていたのでしょう。その事実を頭に入れて聴いてみると、心なしかそれまでの作品に比べ、メンバの掛け合いが少なく、各々のパートが明確に分けられているような印象を受けます。顕著なのが【MISSON】という楽曲です。それぞれKREVA、LITTLE、MCUの3パートが楽曲として分けられ、アルバムの中に散りばめられ配置されているのです。KREVA曰く、一曲にするには長くなってしまったので曲を分けたということでしたが、どうしてもその後のソロ活動を暗示しているのではないかという深読みをしてしまいます。

本作は3人の掛け合いが減り、それぞれの単独パートが増えたことで、それぞれのMCの個性がこれまで以上に顕著に表れた作品になっています。8小節なり16小節をじっくり一人で歌うことで、ある者はリリックにストーリー性を取り入れ、ある者はそのフローの多彩さを際立たせることで、これまで以上に自分というMCを表現しているように思います。そのような3人それぞれのラップが見られるというところも、私がこの作品を好きな理由のひとつです。もちろん、3人の掛け合い部分も大好きなのですが。

アルバムとして聴くことを前提につくられた本作だからこそ、単曲でのご紹介はできるだけしたくはないのですが、表題曲の【GOOD MUSIC】については、少しだけ書かせていただきたいと思います。この曲は、アルバムの流れの中においても、この楽曲に入る前に丁寧なお膳立てが設けられているほど大切に扱われ、またメイン料理としての重要な役を与えられている楽曲です。

ギター、ドラムの音を中心に据えられたシンプルなトラック。その上で語られるKICK3人のそれぞれの音楽に対する想い、「ただただ良い音楽を作りたいんだ」という純粋な想いがとにかく胸に響きます。まさに、このアルバムを象徴するような、本作のテーマとも言える楽曲だと思います。そしてこれまた素晴らしいことに、この楽曲はアルバムの流れで聴いてこそ、その魅力が最大化されるようなつくりになっているのです。是非とも単曲ではなく、アルバムの流れで聴いていただきたいと思います。

ちなみに、本楽曲はシンガーソングライターの秋山羊子によるカバー曲も発表されています。こちらも原曲の良さを残した味わい深いアレンジになっているので、原曲を知っている方は是非とも聴いてみてください。

【GOOD MUSIC 秋山羊子COVER Ver】


さて、今回はKICK THE CAN CREWの作品の中で私が一番好きなアルバム【GOOD MUSIC】について書いてきました。とにかく飽きが来ない味わい深さと、ジャンルという概念を抜きに音楽を聴く喜びを再確認させてくれるような素晴らしいアルバムだと思います。おそらく私はこれからも、末永くこの作品を聴き続けていくことでしょう。ずっとずっと大切にしていきたいと思える作品です。

幸いなことに、この作品の楽曲はYouTube等の動画投稿サイトにはあまりアップされておりません。上記でもクドイほど書いてきましたが、とにかく本作はアルバムで味わってこその作品です。興味をもった方は、是非ともアルバムを手に取り聴いていただければと思います。そして、長く長く、本作を聴いていただけたら嬉しく思います。

では、今回はこのへんで。



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