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このDVDが良い雰囲気⑬(ラッパーの一分 by THA BLUE HERB)

どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は、先日発売されたTHA BLUE HERBのライブDVD【ラッパーの一分】について書きたいと思います。映像化の知らせを聞いて以来、本当に楽しみに待っていた作品でした。

それでは、行ってみましょう。

【ラッパーの一分】
ラッパーの一分 

発売日の前日にフラゲして今日までの5日間で、私はこの作品を3回鑑賞しました。2時間45分という長時間のライブをノーカットで完全収録しているこの作品は、観る側としても大変です。今日は途中までにしよう。そう思いながら最初は観だすのですが、観ていると途中で止めることができず、結局は最後まで観てしまうということを繰り返してしまいました。

ライブを観た感想を申し上げるなら、「最高のライブだ」という言葉がやはり真っ先に出てしまいます。月並みな表現なのですが、まずはそう言わないことには、今目にした光景を自分の中でうまく処理することができないのです。そして、このライブを称えたくなるそんな想いは、観れば観るたびに高まってきているような気がします。

そもそも、私がこの映像作品を強く観たいと思ったのは、このライブツアーのキッカケであるtha BOSSのソロアルバム【IN THE NAME OF HIPHOP】が大好きだからに他なりません。その作品については、発売直後にこのブログでも書かせてもらいました。


そして、記事を書いた後も、私は何度となくこの作品を手に取り、繰り返し聴いてきました。何度聴いても新たな発見があり、聴けば聴くほど好きになる。そんな作品としての深みをもったこのアルバムを聴いている内に、ライブでも観てみたい、そんな気持ちが高まってきたのです。

BOSSという男はデビュー以来、変わらずに、変わってきた男です。きっとファンの中には、初期作の頃の彼が好きだったという人もいるかもしれません。私ももちろん初期の作品は大好きですし、今でも聴き返しては心を揺さぶられてしまいます。でも、進化を続け、更に一層言葉の深みが増した現在のBOSSに、私は今まで以上に惹かれてしまいます。冒頭曲【HELL-O MY NAME IS...】のこのリリックを聴くたびに、大きな頷きを彼に返してしまうのです。

“俺は今ピークにいる はっきり言い切る”

DVDは、ライブに向かうBOSSの映像から始まります。嵐の前の静けさを暗示するかのような無音の映像が、その後の熱気への期待感を煽ります。そうして幕を開けるライブの第一章。【IN THE NAME OF HIPHOP】の楽曲を中心に据えながらも、THA BLUE HERB(TBH)名義の名曲たちも惜しげもなく投下されていきます。そして、2015年に作ったソロ曲と、1999年にデビューしたTBH初期楽曲のリリックが、絶妙にリンクし絡み合っていくという見事な構成でライブが繰り広げられていくのです。

ライブ中に見せるBOSSのMCは、TBHのライブの醍醐味とも言えます。このライブでも、惹き込まれるトークから気持ちよく楽曲へと観客の気持ちを誘っていく、巧みなマイク捌きを堪能できます。MCでは何度も「2015年年末、ここLIQUIDROOM」という言葉が発せられます。この日、この場所でライブをやることが、どれだけBOSSにとって重要なことなのかが、その言葉を聞いただけでもわかると思います。そう、彼はこのライブの一年前、ここLIQUIDROOMでの般若との2マンライブの際にこう宣言していました。「一年後はソロアルバムを出して、ここをソールドアウトさせてやる」と。彼はその想いでこの一年を走ってきたのです。そして、1000人の大観衆を前に見事、有言実行を成し遂げたのです。

また、今回のライブにおけるMCでは、随所に他のラッパーやDJたちの名前がBOSSの口から発せられます。NORIKIYOをはじめとする、現在シーンを引っ張るMCたちや、RHYMESTERなど、かつては目の敵にしていたさんぴんCAMP出演者たちの名前。MC漢などBOSSが本物と認めるラッパーたちや、DJ KRASHをはじめとするシーンに貢献するDJたち。本当に多くのHIPHOP関係者の名前が、BOSSの口から大きなリスペクトととも発せられるのです。私はその光景に、今のBOSSだからこそ口にできる、このシーンに対する彼の大きな愛を感じることができました。

第二章は、いきなり二連続で客演が投入されます。YOU THE ROCK★B.I.G.JOE。その気持ちの大きさゆえに、力がこもりすぎて歌詞を飛ばしてしまうYOU。だけどその姿からは、誰よりも熱い男気を感じることができました。そして、そんなYOUに最大級のリスペクトを送り続けるBOSSの姿にも。B.I.G.JOEは華麗なフリースタイルで登場すると、BOSSとの完成された札幌のコンビネーションを見せつける圧巻のライブを見せてくれます。完全にアルバム音源を超えたカッコ良さでした。私はこの映像を観て、JOEのラップスキルの高さを改めて痛感しました。BOSSが口にする「あいつは天才だ」という言葉を疑う余地もありません。

客演2人が去った後、盛り上がった会場の熱はそのままに、再びBOSSとDJ DYEの1MC1DJスタイルでライブは進行していきます。HIPHOPライブの基本にして最小単位とも言えるこの1MC1DJスタイル。そのスタイルのもつ潔さが、TBHのライブのカッコ良さを増幅させていると思います。節々で見せる、二人ならではの絶妙のコンビネーションもたまりません。

言葉に強い思い入れをもっているBOSSのつくる楽曲は、そのリリックが大きな魅力です。軽く聴き流すことなど到底できない力強い言葉たちが、聴く者の心を掴んで離しません。しかし、ライブを観ていると聴き慣れたはずの楽曲たちにも「こんなことを歌っていた曲だったのか」という新鮮な気づきを与えられることが多々あります。BOSSが汗をかきながら心を込めて歌い上げる姿を観ていると、音源を聴いているだけではわからなかった、その言葉に込められた熱や想いを感じることができるのだと思います。ライブを観たことで、その楽曲たちが更に好きになることができました。

第二章における印象的な場面として、BOSSのMC中に観客からヤジが飛ぶシーンがあります。そのマナーの悪い観客に対してBOSSは、あくまでライブホストとして紳士的な立ち振る舞いを見せます。そして、そのヤジすらも利用して盛り上がりをつくるどころか、その観客の存在すらも利用した見事なまでの楽曲への繋ぎを見せるのです。これが、周りに自然と「BOSS」とまで呼ばれるようになった男の偉大なる器なのだと、改めて感じることができたシーンだったように思います。

ライブは【RIGHT ON】で一度エンディングを迎えますが、その後アンコール的に最後2曲を披露することになります。その一曲目は3人目の客演、般若を呼び込んでの【NEW YEAR'S DAY】。前年の2マンライブからの1年は、般若にとっても大きな変化と収穫がもたらされた1年だったのでしょう。そんな二人の充実感を感じられるような、最高のパフォーマンスを見せてくれます。そして、正真正銘のラストソングは、【IN THE NAME OF HIPHOP】の初期購入特典CDに収録されたAND AGAINでした。ソロアルバムの楽曲をすべてやりきる合計30曲を披露した伝説のライブは、こうして幕を降ろします。

ライブ序盤でのMCで、このライブは自分と観客1000人たちとの1対1の勝負だと宣言していた通り、このライブ中のBOSSからは終始、観客の期待値に対して勝負を挑んでいるような張り詰めた熱気を感じました。しかし、その緊張感から解放されたライブのエンディング。そこには、幸福感に満ち溢れたBOSSの笑顔がありました。

特典 
前回のCDの時もそうでしたが、このDVDの初期購入特典のCDも、特典にするには勿体ないほどクオリティの高い内容になっています。これまでTBHのライブで使用してきたインストトラックをビートジャックした全8曲。TBHファンなら聴きながら思わずニヤけてしまうような極上の内容です。可能な方は是非ともゲットして聴いてもらいたいなと思います。

BOSSというラッパーが歩いてきたこれまでの道程。その全てが込められたこのライブは、まさに【ラッパーの一分】(それ以上は譲る事の出来ない名誉や面目)と題されるに相応しい素晴らしい内容だと思いました。

そして、ノーカット完全収録となっている本DVDは、当日のライブの空気感が本当にひしひしと伝わってきます。ジャケット等には敢えて収録曲や曲順が書かれていないので、次の曲が流れるたびに興奮できるライブと同様の楽しみ方ができると思います。是非とも、BOSSの生き様が反映された、濃度の濃い言葉と音をこのDVDで堪能していただければと思います。

では、今回はこのへんで。


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