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日本の名盤・基本の定番㉙(David by PSG)

どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は、聴くたび楽しい気持ちにさせてくれる愛すべき作品、PSG【David】について書きたいと思います。PSGは、PUNPEES.L.A.C.K.(5lack)という才気溢れる兄弟と、そのスクールメイトであったGAPPERにより結成されたグループです。

発売当時シーンに大きなインパクトを残した本作ですが、今聴いてみてもその魅力は少しも色褪せません。そんな本作の魅力について私なりに感じたことを書いていけたらと思います。

それでは、いってみましょう。

【David by PSG】
david

<収録曲>
  1. Hello David (Intro)
  2. Yes.
  3. PSG現る 1972
  4. かみさま
  5. 楽しくなった
  6. M.O.S.I
  7. 愛してます
  8. I Dub You (残響の詩)
  9. Space (skit)
  10. 2012 feat. Bach Logic
  11. Monster
  12. エスケープ from 東京
  13. きゃつら
  14. Thank You David (Outro)
  15. この曲で最後になるだろう。


このアルバムのプレイボタンを押すとき、私の頭にはいつも“おもちゃ箱をひっくり返す”イメージが浮かびます。箱から賑やかに飛び出す色とりどりの大好きなおもちゃ達。そんな子供時代の幸せな情景を想起させるほどの高揚感を、PSGの音楽は私に抱かせるのです。

絶妙な力の抜き加減と、感性を刺激する高い音楽性。そんな魅力的な特徴を具えた本作は、おそらく言葉で説明するのには適さない作品だと思います。“クラブで普通にかけられるような、シンプルでダンス・ミュージックとして機能するモノを”という思いで作ったとPUNPEEにより語られていた本作は、まさに“右脳的作品”といえるかもしれません。

そんなテーマに沿って作られた本作は、多彩な音が気持ちよく配置されたトラックはもちろんのこと、ラップにおいても、フロウがしっかりと曲の中に落とし込まれ、三人のラップが魅力的な音のひとつとして機能しています。それゆえリリックはメッセージ性を極力排した、どこか道化的なスタンスで綴られており、とにかく“踊らせる”ことに特化させた作品なのだと感じ取ることができます。(そして、そのことについては曲中でも何度も語られています。)

ただ、とはいえリリックにもそれぞれの拘りをもつこの三人です。そんな音楽性を特化させたラップの中にも、ドキッとさせられる言葉や、不意に心に刺さるラインがあり、そのギャップに思わずやられてしまいます。そこらへんの塩梅が実に良いところが、本作が一過性のインパクトを残すだけでなく、長年聴き続けられる作品となったひとつの理由ではないかと感じます。

そんな素晴らしい本作ですが、もともとはPUNPEEがプロデュースした他アーティストの作品(【三十路の投げKISS】by カトマイラ)が、当時FILE RECORDに在籍していた増田岳哉氏の目に留まったことで、発売されるに至ったそうです。そんな偶然的なきっかけで発売された本作でしたが、発売後はHIPHOPシーンの内外で大きな反響を生むこととなりました。そして、当時まだコアなファンにしか知られていなかったPUNPEEやS.L.A.C.K.の才能を広く世に知らしめ、その後シーンの重要人物にまでなっていく二人の礎を築くこととなったのです。

では、そんな本作の中からいくつか楽曲をご紹介しましょう。

【Hello David (Intro)/PSG現る 1972】


こども鼓笛隊と思われる幼げな演奏から幕を開ける本アルバム。このIntroが流れ始めただけでも、このあと展開されるファニーで気持ちよい音のパレードへの期待感に胸が高まってしまいます。

このMVでは、Introに続き【PSG現る 1972】が流れます(アルバムでは間に【Yes.】が入ります)。このタイトルについている“1972”は、PUNPEEが付けたものです。なんでも、1972年はソウルミュージックのあたり年で、その年のレコードを買えばだいたい良いネタが入っているらしく、それにあやかって付けたそうです。(S.L.A.C.K.は命名当初呆れていたそうですが。笑)

本アルバムは13曲をPUNPEEが、残り3曲をS.L.A.C.K.がトラックを作っていますが、この【PSG現る 1972】はS.L.A.C.K.によるプロデュース曲です。不穏なヴォイスが楽曲通して鳴っているので、一聴すると奇抜さを感じますが、よくよく聴いてみるとビートが中心に据えられた、これぞHIPHOPというシンプルなループトラックだということに気づきます。

PUNPEEは他の音楽ジャンルをHIPHOPに混ぜ込むことを憚りませんが、S.L.A.C.K.は混ぜることを好まず、あくまでHIPHOPというジャンルの中で新しい味わいを生み出すことに拘りをもっていると以前語っていました。このアルバムにおいても、それら二人の似ているようで似ていない微妙な違いが感じられ、その点も本作を聴くうえでの楽しみ方のひとつになっています。(とはいえ、アルバム全体としてはトータルプロデュースをしたPUNPEE色が前面にでた作品にはなっていますが。)


【かみさま/M.O.S.I】


上記は【かみさま】と【M.O.S.I】の二曲のMVです。まず、【かみさま】これぞPUNPEE節といえるほどジャンルネスな音が鳴り響く愉快なトラックになっています。バイオリンのループがあることで装飾的な印象を持ちますが、実はこの曲も改めて聴いてみると、音数自体は少なく、シンプルな構成をしていることがわかります。しかし、その上に載せるラップの表現法や、声の出し方が多彩なために、とても音幅のある楽曲のように感じますよね。特に三人の中で唯一低音よりの声色をもつGAPPERの存在により、楽曲が引き締まっているような印象を持ちます。

PUNPEEのつくるトラックからは、中学時代に聴いていたというオルタナティブ・ロックアーティストBECKからの影響を感じることが多いです。その多彩なサンプリングと演奏を混ぜた前衛的なスタイルが、しっかりとした心地よさを携えて耳に届くところに二人の共通項があるように思います。PUNPEEは他にもBlurOasisなどUKロックも好んで聴いていたようで、それらアーティストから学んだポップなメロディセンスも自身の楽曲に取り入れているように感じます。

続いては【M.O.S.I】、こちらもPUNPEEのトラックで、前曲と比べるとそのビートメイクの幅の広さを感じることができます。このトラックからは、高校時代に聴いていたというケミカルブラザーズファットボーイ・スリム等のテクノミュージックからの影響を感じることができます。このようにPUNPEEは貪欲なまでに、そしてその化学反応を楽しむかのように、HIPHOPに他ジャンルを取り込んでいるように感じます。それゆえに、彼はHIPHOPシーンに限らず、様々なジャンルのアーティストから支持を得ているのでしょう。そして、だからこそ多くの人の心に響く楽曲を作れるのだと思います。


【愛してます】


本アルバムの中で一番人気が高いと思われる楽曲です。ストレートなタイトルのとおり愛について歌われた楽曲で、リリック的にもしっかりと書かれており、三者三様のストーリーを感じ取れるつくりになっています。S.L.A.C.KやPUNPEEに至ってはそれぞれの恋愛感も垣間見れ、本作に収録されているどの楽曲にも増してファンにとっては聴き応えのある内容になっています。

また、この楽曲はわかりやすく元ネタの原型を残したサンプリングが施されています。元ネタは日本のソウルグループORIGINAL LOVE【I Wish】という楽曲です。原曲の素材を活かした心地よいサンプリングになっているので、機会があれば原曲の方も聴いてみてください。

“楽曲それぞれにはいろんな暗喩も入れるし、深読みもできるように作ってはあるけど、俺にとっては大前提として聴いていて楽しいものをっていうのがいちばん大事”

以前PUNPEEは書籍【街のものがたり】の中でこのように語っています。そして本作Davidについてもエンターテイメント性を重視した作品だと言い、洋楽を聴いた時のリリックの意味が分からないなりにも感じる“カッコ良さ”や“メロディの良さ”のようなものを目指していると語っています。

確かに、PUNPEEの作る楽曲からは、音楽を作ることへの素朴な喜びを感じられますよね。彼のつくる自由で気持ち良い音楽が私は大好きです。これからも、自身の感性に従いながら、様々な試みを取り入れた彼だけにしか作れないミュージックをたくさん届けてほしいなと思います。


さて、今回はPSGの名作【David】について書かせてもらいました。既に多くの人から愛されていると思われる本作ですが、改めて聴き返す誰かのキッカケにでもなれれば幸いに思います。是非とも、何度でもこの作品の世界を味わってみて下さい。

では、今回はこのへんで。





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2 Comments

-  

PSG現るはかなり好きな曲です!
不気味な感じとPSGのフロウがマッチしてますね。

MCバトルだと12章で使われてましたね

2016/10/18 (Tue) 00:34 | EDIT | REPLY |   

Pto6  

Re: タイトルなし

> PSG現るはかなり好きな曲です!
> 不気味な感じとPSGのフロウがマッチしてますね。
> MCバトルだと12章で使われてましたね


コメントありがとうございます。
いい曲ですよね!私もあの不気味な感じ好きです^^

おっしゃる通りで、戦極12章では
呂布カルマvsMOL53でこの曲が使われてましたね。
呂布カルマが選んだだけあって、曲の感じがカルマにマッチしていました。

コメントいただいて、思わずDVDを見返してしまいました^^笑
ありがとうございました。

2016/10/18 (Tue) 19:58 | EDIT | REPLY |   

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