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日本語ラップ・MCバトルの“今”を語るブログ

Pto6の備忘録⑤(ZORNの新曲“Letter”を聴いて)

どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は、先日発売されたZORNの6thアルバム【生活日和】のラストに収録されている楽曲【Letter】について書きたいと思います。

これまでの楽曲紹介とは異なり、今回このように『備忘録』という形で記事に書くのは、ZORNが自身の娘たちに向けたとてもパーソナルな楽曲に対し、聴いた私も極めてパーソナルな感情を抱いてしまったからです。

そのため、いつもに増して個人的な感想になってしまうのですが、この楽曲から受けた感動を文章として残しておきたい。そんな気持ちになったので、今回はこのような形で記事を書かせてもらいたいと思います。

生活日和 

私はこの楽曲を初めて聴いた時、思わず泣いてしまいました。このように書くと訝しがる方もいるかもしれません。でも、これは決して誇張した比喩などではなく、実際のところ嗚咽混じりに涙を流してしまったのです。通勤途中、家から駅に向かう路地を歩いている時のことでした。イヤホン越しに聴こえてくるZORNの愛情溢れる言葉たちに、私は堪えることができませんでした。

この曲が私にそれほどまでの感動を与えたのは、二つの要素がはたらいた結果なのだろうと今では考えています。一つはもちろん楽曲自体が持つ力。そして、もう一つは私の個人的なタイミングとたまたま重なったことです。

まず、一つ目の楽曲自体が持つ力。これはこの曲を聴いただけで、おそらくほとんどの人が説明などを受けずとも理解できるものだと思います。ZORNが自身の娘たちに贈った愛情あふれる“Letter”。そのたった二人だけに向けられたとてもパーソナルな言葉達だからこそ、多くの人の心を揺さぶり、誰しもが持つ普遍的な情愛の念に強く訴えかける力を具えているのだと思います。

とにかく、一つひとつの言葉にただただ胸を打たれてしまいます。ZORN家族における複雑な境遇。しかし、そんなことを物ともしないZORNの愛情と幸せな家族の日常が、輝くほどの美しさを放ちながら、しかしあくまでZORN自身の語り口は崩さずに、ありのまま等身大に歌われているのです。

“そして二年 あの日を忘れない 初めてパパと呼ばれた日”

“印鑑だけじゃない責任感 この背中におんぶして知った”

“お前らが産まれた日は知らない けど過ごした時間は血よりも濃い”

ZORNの前作における代表曲【My life】は、ZORNの仕事、家族、音楽活動で成り立つ自身の日常をありのままに歌いあげた素晴らしい楽曲でしたが、今回のこの【Letter】は、その中の要素“家族”についてより深く掘り下げ、また対象も娘たちに絞った内容の濃い楽曲になっています。楽曲プロデュースはEVISBEATS。暖かい楽曲テーマにぴったりな、ぬくもりのある素敵なトラックがこの楽曲に優しい色合いを添えています。


まだ小さいZORNの二人の娘たち。この楽曲の内容をしっかりと理解できる年齢になったとき、彼女達はこれほどまでに深い父親の愛情を知り、どんなに嬉しい気持ちになるでしょう。そんな近い将来ZORN家に訪れるであろう幸せな情景を想像するだけでも、私はなんだかとてもあったかい気持ちになってしまいます。

【Letter by ZORN】


次に、私がこの曲に感動したもう一つの要素、私の個人的なタイミングと重なったという件について。これについても、少しだけ書かせていただきたいと思います。

実は私にも先月、第一子となる娘が生まれました。私の場合はZORNのような複雑な要素もなく、いたって平凡な家庭ではあるのですが、それでもこの楽曲で歌われている父親が娘に抱く想いや、そんな娘と過ごす幸せな日々の描写には、とてもタイムリーなだけに、より深い共感を抱いてしまいます。

そしてこの楽曲を聴いていると、現在の暖かい日々が決して“当たり前なことではない”こと、そしてこの幸せな時間が“永遠に続くわけではない”ことに改めて気づかされます。そしてその事実に、私の胸は強く揺さぶられてしまうのです。

“あとどれくらい風呂に入れる?
 あとどれくらい隣で寝れる?
 あとどれくらい髪に触れる?
 あとどれくらい手を繋げる?”

“流れる時間をそっと噛みしめて
 小さな身体をぎゅっと抱きしめる
 忘れないこの日々 感謝や愛その意味”

まだ私は育児をはじめてほんの一か月やそこらです。きっとこれから大変なこともたくさんあるのでしょう。しかし、現在毎日がそうであるように、楽しいことや嬉しいことも、きっとそれ以上にあるのではないかと信じています。この楽曲を聴いて感じた今の想いを、いつまでも忘れずに、大切に日々を過ごしていきたいなと思いました。

こんな風にラップという自分の表現方法で、娘たちへの愛を形として残せるZORNのことを本当に羨ましく思います。それに対し自分は、娘にいったい何を残すことができるのだろう。そんなことを真剣に考えながら、この曲を何度でも聴いてしまう今日この頃です。

musume 

さて、今回は感動のあまり思わず涙を流してしまった楽曲【Letter】について書かせてもらいました。きっと誰の胸にも響き得る本当に素敵な楽曲なので、是非ともたくさんの人に聴いてもらいたいなと思っています。

そして、今回は少しだけ私のプライベートのことを書かせていただきました。生活の中に“育児”が加わったことで、今後これまで以上にブログの更新ペースは遅くなるかもしれません。実はこれを機にブログをやめることも検討しました。でも、やっぱりヒップホップを聴くこと、そして文章を書くことは、私にとってはささやかですが大切にしたいことのひとつです。仕事や家族をおろそかにしない程度に、細々とではありますが、これからもできるところまで続けていきたいなと思っています。

“オムツ取り換えるのもHIPHOP”

楽曲では決してそんなこと歌われていません。しかし、この曲を聴いていると、なんだか私はそんな言葉でZORNから励まされたような気がしました。いつかこの曲を娘と一緒に聴く日がくることを密かに楽しみにしながら、毎日の幸せを噛みしめ過ごしていきたいなと思っています。

では、今回はこのへんで。







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10 Comments

-  

おめでとうございます

2016/10/30 (Sun) 19:58 | EDIT | REPLY |   

-  

こんにちは! ここのレビューはいつもチェックしてます! ご出産おめでとうございます! 育児で大変なこともあると思いますが、ここのブログは続けて下さいね。「月1ペースで 出さなきゃミックステープ」ですよ!

2016/10/31 (Mon) 15:50 | EDIT | REPLY |   

EROC  

No title

こんばんは、いつも楽しく見させて頂いています。
私も
“お前らが生まれた日は知らない けど過ごした時間は血よりも濃い”
というラインが胸をうたれました。
夕方ノスタルジーも個人的にすごく好きで、最近はZORNの曲をずっと聞いています。
なんといっても声がすごく好みですw
最後となりましたが、赤ちゃんの無事なご出産おめでとうございます!

2016/10/31 (Mon) 19:29 | EDIT | REPLY |   

-  

No title

 度々コメントしている者です。
 私はZORNの魅力を筆者様とは違うところに感じています。先に言っておくと、私の意見は少数派であると思うし、ZORN自身もこちらの路線は目指していないと思います。
大多数の人やZORN自身が目指しているのは「何気ない日常への想いに対するラップ」だと思います。これは家族をもったこと、特に子供が産まれたことからの心境の変化からでしょう。実際、今回のアルバムや前作「The Downtown」では「My Life」のような曲が評価されています。もちろん、このようなラップも良いとは思います。
 しかし私はZORNのダーク、トラップなトラックの上でのアンダーグラウンドのリアルや、社会派なラップをしたような音源が好きです。うまくは表現できませんが、昭和レコード加入後の音源で言うなら、「Japanese Hiphop 不適合者」や「Escape」、「Reverse」、「Get money」や「Backbone」です。また、彼はfeat.で加わった時の方がそのような持ち味を遺憾なく発揮できている気がします。NORIKIYOの「Hey Money Remix」やJAZEE MINORの「100 Remix」、KEN THE 390の「Make Some Noise」は異常すぎるかっこ良さでした。
 個人的には、ラップやヒップホップには家族愛などを持ち込むのはあまり賛成できません。もちろん、この考え方が相応しくないのは承知です。しかし、ラップというジャンルにはハードな現実を歌っていてほしいというのが、本音です。少しズレますが、バトルにおいてはFSDのR-指定 vs 掌幻戦でのRの「そんなことなら結婚なんてしなくていい」や「結婚は男の墓場」等のラインが自分的には刺さりました。ラップにおいては、家族をもつことが必ずしもプラスに働くわけではないのかと思います。かといって、あちらを否定しているわけではなく、リスナーにとってはそういうラップの題材の方がリアルだと思うし、私自身刺さった音源は何曲もあります。これまでのは、あくまでも1つの意見として、捉えていただきたいです。
 長くなってしまいました。このような主張に対して、どう思われますか。もし、お気を悪くされたなら、申し訳ありません。

 別件なのですが、Switchの日本語ラップ特集に対する記事などは予定されていますか。私自身はいくつかの本屋を巡っても、見つからないので多分Amazonで購入します。

2016/11/01 (Tue) 21:45 | EDIT | REPLY |   

Pto6  

Re: タイトルなし

> おめでとうございます

コメントありがとうございます。
そして、ご祝福のお言葉をいただきたいへん恐縮です^^
とても幸せな気持ちになりました。本当にありがとうございました。

2016/11/08 (Tue) 21:54 | EDIT | REPLY |   

Pto6  

Re: タイトルなし

> こんにちは! ここのレビューはいつもチェックしてます! ご出産おめでとうございます! 育児で大変なこともあると思いますが、ここのブログは続けて下さいね。「月1ペースで 出さなきゃミックステープ」ですよ!

コメントありがとうございます。
そして、いつも読んでいただけるなんて光栄です^^
育児は始めるまでもっと大変なのかなぁって覚悟していたのですが、今のところ大変さよりも娘かわいさで楽しくてしょうがありません。あくまでまだ2か月目なので、これから大変なことも多いのでしょうが^^;
お祝いのお言葉ありがとうございました。

そして、絶妙なサンプリングに思わず唸ってしまいました。笑
そしてやる気もいただきました^^
みんなちがって、みんないい世の中ですので、
私のペースで(そしてできる限りのペースで)ブログを続けていければと思ってます^^
これからもよろしくお願いします。

2016/11/08 (Tue) 22:02 | EDIT | REPLY |   

Pto6  

Re: No title

> こんばんは、いつも楽しく見させて頂いています。
> 私も
> “お前らが生まれた日は知らない けど過ごした時間は血よりも濃い”
> というラインが胸をうたれました。
> 夕方ノスタルジーも個人的にすごく好きで、最近はZORNの曲をずっと聞いています。
> なんといっても声がすごく好みですw
> 最後となりましたが、赤ちゃんの無事なご出産おめでとうございます!

EROCさん
コメントありがとうございます。
そしてTwitterの方でもこの記事をご紹介いただきとても嬉しかったです。ありがとうございました^^

“お前らが産まれた~”のラインは本当にZORNにしか歌えない最高のラインですよね^^
何度聴いても思わず身震いしてしまいます。。

あと【夕方ノスタルジー】私もヘビロテしております。この曲も素敵なライン満載ですよね!!
アルバム通してもいまのところ通勤の行き帰りで毎日のように聴いています。
他の楽曲もインストゥルメンタル含めて全曲いい曲ばかりですよね。
またしばらく時期を空けたのちに、アルバム紹介としても記事を書けたらなと思っています^^

最後に、ご祝福ありがとうございます^^嬉しいです。
今後とも、Twitter含めて末永くよろしくお願いします!

2016/11/08 (Tue) 22:11 | EDIT | REPLY |   

Pto6  

Re: No title

> 度々コメントしている者です。


いつもコメントありがとうございます^^


>私はZORNの魅力を筆者様とは違うところに感じています。先に言っておくと、私の意見は少数派であると思うし、ZORN自身もこちらの路線は目指していないと思います。
>大多数の人やZORN自身が目指しているのは「何気ない日常への想いに対するラップ」だと思います。これは家族をもったこと、特に子供が産まれたことからの心境の変化からでしょう。実際、今回のアルバムや前作「The Downtown」では「My Life」のような曲が評価されています。もちろん、このようなラップも良いとは思います。
>しかし私はZORNのダーク、トラップなトラックの上でのアンダーグラウンドのリアルや、社会派なラップをしたような音源が好きです。うまくは表現できませんが、昭和レコード加入後の音源で言うなら、「Japanese Hiphop 不適合者」や「Escape」、「Reverse」、「Get money」や「Backbone」です。また、彼はfeat.で加わった時の方がそのような持ち味を遺憾なく発揮できている気がします。NORIKIYOの「Hey Money Remix」やJAZEE MINORの「100 Remix」、KEN THE 390の「Make Some Noise」は異常すぎるかっこ良さでした。
>個人的には、ラップやヒップホップには家族愛などを持ち込むのはあまり賛成できません。もちろん、この考え方が相応しくないのは承知です。しかし、ラップというジャンルにはハードな現実を歌っていてほしいというのが、本音です。少しズレますが、バトルにおいてはFSDのR-指定 vs 掌幻戦でのRの「そんなことなら結婚なんてしなくていい」や「結婚は男の墓場」等のラインが自分的には刺さりました。ラップにおいては、家族をもつことが必ずしもプラスに働くわけではないのかと思います。かといって、あちらを否定しているわけではなく、リスナーにとってはそういうラップの題材の方がリアルだと思うし、私自身刺さった音源は何曲もあります。これまでのは、あくまでも1つの意見として、捉えていただきたいです。
>長くなってしまいました。このような主張に対して、どう思われますか。もし、お気を悪くされたなら、申し訳ありません。

ご意見くださりありがとうございます。気を悪くなんてしませんよ。
自分と違う考えをお聞かせいただくのはとても参考になります^^
ご認識いただいているとおり、私は現在のZORNの変化に“肯定派”の人なので、ヒップホップに「家族愛」や「日常」を持ち込んだZORNの“挑戦”もとても好意的に捉えています^^なぜなら「リアル」を重視するヒップホップにおいて、ハードな生活を送っている人にとってはハードな日常を歌うことが「リアル」であるのと同じように、一般的な生活を好んで送っているZORNにとっては、その平凡な日常を歌うことが「リアル」であるのではないかと思うからです。もし今のZORNが無理してハードなことを歌うと、それは所謂「フェイク」ということになるのでそれもできないとすると、ZORNのような平凡な生活を送るラッパーはヒップホップができなくなる、もしくはある限定的なテーマでしか歌えなくなってしまうのではないかと思ってしまいます。(あくまで極論ですが^^;)それに、ZORNは多くの人に自分の音楽を響かせるため、普通の人の目線で楽曲を作りたいと語っていましたし、その結果、現在、コアなヒップホップファンだけじゃなく、ZORNの音楽が広がってきているように私は感じています^^

とはいえ、コメント主さまのご意見も、実はよくわかります^^
私も今回のような楽曲が好きなのと同時に、挙げてくださっている楽曲をはじめ、アンダーグラウンドのリアルや、社会派なラップを歌っていたZORNも好きです、また客演の時の方がスキルフルで、ラップとして面白い曲が多いというのもわかります。というか、その傾向はZORNに限らず、KREVAやSKY-HI、SALUなどにもみられる傾向ですよね^^自分のアルバムではメッセージとか統一感を重視してる分、客演曲では言葉遊びや、今風のフロー、マイクリレーで埋もれないため早口などわかりやすいスキルを見せる等。私も以前の記事で書きましたが、KREVAとかの客演曲はオリジナル曲とは違った意味で好きです^^

私もうまく書けませんでしたが、私もコメント主さんのご意見を否定するつもりなどは毛頭なく、お考えを詳しく教えていただいたので、私もしっかりと自分の考えを述べさせていただこうと思い書きました。色んな好みや需要に対して応えてくれる、多種多様なHIPHOPがある現在のシーンは素晴らしいのではと思います。私たちリスナーは、その中から自分が聴きたいHIPHOPを選んで聴けるわけですからね^^こちらこそ、もしお気を悪くさせてしまったのならすみません。それは、私の意図するところではありません。願わくば、私の想いが伝わってくれればうれしく思います。


>別件なのですが、Switchの日本語ラップ特集に対する記事などは予定されていますか。私自身はいくつかの本屋を巡っても、見つからないので多分Amazonで購入します。

私も何個か本屋巡ってみましたが、未だ見つけられていません。笑
私もアマゾンで買うかもしれません。そんな状態ですので記事にすることは現在は未定です^^;
でも正直、ブログ更新の時間も少なくなってきたので、ブログを続けられるうちに書きたいと思っている音源について一つでも多く書いておきたいと今は思っています。。

熱のこもったコメントありがとうございました。
また何かあれば、コメントいただけると幸いです^^

2016/11/08 (Tue) 22:40 | EDIT | REPLY |   

えど  

いつも見させてもらってます、
この記事を読んで
アルバム購入の後押しになりました。

結果、大満足してます。

ありがとうございます。

これからも様々な記事、
楽しみにしています。

2017/01/09 (Mon) 22:15 | EDIT | REPLY |   

Pto6  

Re: タイトルなし

> いつも見させてもらってます、
> この記事を読んで
> アルバム購入の後押しになりました。
> 結果、大満足してます。
> ありがとうございます。
> これからも様々な記事、
> 楽しみにしています。


えどさん
コメントありがとうございます^^
そのようにいっていただけると、ブログ書き冥利に尽きます。
大好きな作品が私の記事キッカケで誰かに聴いてもらえたということがすごく嬉しいです。

これからも誰かの何かのきっかけになれるように書いていきたいと思います。
気になる記事がありましたらまた読んでいただけると幸いです^^
暖かいコメントありがとうございました。

2017/01/16 (Mon) 23:21 | EDIT | REPLY |   

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