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名曲の提供⑩(FLASH by 崇勲)

どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は、久しぶりに“私的”名曲について書きたいと思います。この名曲シリーズもこれで第10回という区切りのよいナンバリングになりました。今回は、そんな特別な回にふさわしい大好きな楽曲をご紹介したいと思います。崇勲の1stアルバム収録曲【FLASH】です。

それでは、いってみましょう。

【FLASH by 崇勲】


“俺が認められねえって言うなら100%世間は節穴って事さ”

この楽曲が世に出てから、ちょうど一年が経ちました。しかし未だにこの楽曲は、そしてこの楽曲が収録されているアルバム【春日部鮫】は、折に触れて聴き返す私にとって大切な作品であり続けています。

DJ RINDが手掛けた、郷愁の念をくすぐる煌びやかなトラック。そのイントロが流れるたび、私は初めてこの曲を聴いたかのような新鮮さを抱きながら、いつも曲の世界に引き込まれてしまいます。

そして、そのトラックの上で紡がれていく崇勲らしさ溢れるリリック。この楽曲を聴いただけでも、彼の作詞家としてのセンスの高さと独自性の一端を感じることができると思います。飾らない等身大の言葉しか使わないにも関わらず、その表現ひとつひとつは個性的で面白く、彼の体温や匂いすら感じてしまうほど、“リリックのどこを切っても崇勲”といったラインが並んでいます。

この楽曲のフックにおけるリリックは、そんな崇勲のリリシストとしての才を私に強く印象付けた部分でした。少し野暮かなと思いつつも、大好きなリリックですので、少しだけ私の解釈を書いてみたいと思います。

“let it go まだだ回る時計が
Merry-go-roundの様眩しくなる
スネアが刺さる 記憶のダーツ
一生残ってくれると願う”

フック前半の比喩。“回る時計(過ぎ去っていく時間)”“Merry-go-round”に例えることで、その表現自体に輝かしさ懐かしさといった哀愁の念と、思い出たちに対する暖かい崇勲の胸の内を聴く者に想像させてくれます。それでいて、“let it go”と“Merry-go”で韻を踏んでいることは言うまでもありません。

また、“記憶に刺さるスネアの音”“ダーツ”に例えることで、その音が崇勲の記憶のど真ん中に勢いよく突き刺さるイメージが鮮明に浮かびますよね。そして、この楽曲における記憶の象徴“picture”や“フォトグラフ”の印象が残っていることで、その“スネアの音”が記憶を写し取る“シャッター”の役割を果たしているというところまで連想させてくれます。

そんな巧みな比喩表現もさることながら、私が最も感銘を受けたのは実はフックの後半部分でした。

“One scene,picture 照らすFLASH
影があってこそ光る歌
One scene,picture照らすFLASH
影があってこそ光る歌”

この曲を聴き終えた後、最も強く印象に残る言葉は、おそらくこの“影があってこそ光る歌”というリリックでしょう。崇勲がこの楽曲のテーマとして掲げ最も伝えたかったであろうこの言葉が、これほどまで強く印象に残る理由。それは、まさにリリックの中で歌われている“影”と“光”の対比効果と同じように、“英語”と“日本語”という表現の対比が効果的に機能しているからではないかと私は思っています。

直前に挟まれたほぼ“英語”のリリック。そのリリックが、直後の“日本語”の歌詞を際立たせ、その意味を聴く者の心にすっと沁み込ませる効果を発揮しているように感じるのです。まさに“影があってこそ光る”というリリックのそのもののように。

日本人にとって(あるいは、英語に明るくない私のような人だけなのかもしれませんが、、)“英語”の歌詞は、まず音として捉えそのあとで意味に転換するといった、内容を理解する上である種の“影”があります。それに対し“日本語”の歌詞は、まさに“光”のように明確に、聴くと同時にその意味が胸の中で響きます。

そのような聴く側における言語による響き方の違いが、このフックでは効果的に作用しているように私には感じられます。さらにそのリリックの意味においても、前者の歌詞は“抽象的”な単語の羅列なのに対し、後者は“具体的”な意味をなした文章です。その“抽象”と“具体”の対比というのも、後者の印象を強める上で効果的にはたらいているのかもしれません。

もちろん上記は単に私の勝手な解釈に過ぎません。もしかしたら意図してそのような構成にしているわけではないのかもしれませんし、反対に私が読み取れていない隠された意図がまだあるのかもしれません。しかしどちらにせよ、“影があってこそ光る”というメッセージが私の胸に強く迫ってくることに変わりはありません。そして、そのメッセージが、私の背中を強く押し続けてくれているということも。

FLASH 

自身のブログにおいて、近々MCバトルの引退を示唆した崇勲。バトルに出場することで得た大きな経験と楽しい思い出たちに感謝しつつ、彼は“次のステージ”へと向かう決意を固めたそうです。彼のブログにはこのように綴られていました。

「バトルを無くして居場所が無くなったらそれは俺がそこまでの男だったという話で。」

しかし、崇勲のアルバムを聴いた人、そしてこの【FLASH】という曲を聴いた人で、彼の今後のことを心配する人は少ないのではないでしょうか。少なくとも、私は全く心配をしていません。だって、彼は“言葉”だけで戦える本物のアーティストだと思うからです。

ただ、こんな風に言われたら、崇勲は嫌がるのかもしれませんが。

“背伸びするのがArtistってならその枠は俺にゃ向いちゃいねえな”

残り少しとなった崇勲のバトルでの活躍、そして彼の次なるステージへの挑戦を、心より応援しています。そして【FLASH】のような素晴らしい楽曲を、これからも楽しみにしています。

では、今回はこのへんで。








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