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MOL53新作インタビュー(2ndアルバム“ANTITHESIS”について)

どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は、11/30に発売されたMOL53の2ndアルバム【ANTITHESIS】について、MOL53ご本人にインタビューさせて頂きましたので、その模様を掲載したいと思います。

発売後、アルバムを聴いた各方面から“最高傑作”との声が早くもあがっている本作。そんな今回の作品に込められた想いや制作の背景、そして、現在のシーンやHIPHOPに対する熱い想いについて、一問一答形式で10個の質問に答えていただきました。是非、多くの方に読んでいただき、MOL53というアーティストが持つ魅力の一端を感じてもらえたらと思っています。

それでは、いってみましょう。

【ANTITHESIS by MOL53】
ANTITHESIS 

<収録曲>
1. Introduction -Scratched by KAZUHIDE-
2. OutSide -Scratched by 呼煙魔-
3. Swisher Sweet Sh※t
4. Self Control feat. AKATSUKIi & TYK(ODJ)
5. Ill Bred Soul
6. Skit -interval-
7. Operation feat. DOWNTOWN SWINGAZ - Scratched by 呼煙魔
8. Back Miller feat. kiddblazz(LMS)
9. MeltDown
10. Light Case -Scratched by 呼煙魔-
11. Bule Submarine feat. LafLife(AGL)
12. No.6
13. Skit -Shout by Young-Cee-
14. Anti Eliet feat. FAT SLIDE
15. Justice
16. For Cee
17. Next Episode Pt'2
18. Keep It Real -OutLow-

MOL53インタビュー
 [ 青字:MOL53  灰字:Pto6 ]

--本作も“濃密”という表現が似合う、とても素晴らしいアルバムでした。1stも聴き応えのある作品でしたが、今作はよりアルバムとしての完成度に磨きがかかったような印象を受けました。ご自身では1stと比べて本作はどのような手応えを感じていますか?また制作をする上で前作からの変化はありましたか?

「ありがとうございます。1stは15~23歳ぐらいまでに経験したことやその当時食らった出来事など書きました。今回はそんな1stとは違って、シーンを描写したり、自分がカッコイイと思ってた2000年代の雰囲気などディテールして、新しく自分らしくしたって感じです。1stとはまた別物になりました。初めてラップした時を思い出せたし、その頃やりたかったラップがやっと出来るようになったと思います。そのへんがうまく消化できていく感触を、呼煙魔くんとKiddblazzと確かめながら進めることできました。」

--今作はすべてのトラックを呼煙魔さんが仕上げていますが、これまでも1stではNEZUMI、その後はkiddblazzと、作品毎にプロデューサーを代えながら、それぞれにフルプロデュースを任せていますよね。それについては、どのような拘りや意図があるのでしょうか?また今回、数ある選択肢の中から呼煙魔さんをパートナーに選んだ理由と、MOL53さんから見た呼煙魔というトラックメイカーについて教えてください。

「1人のプロデューサーで制作する方がやり易いってのが理由ですね。中身も統一できるかなと。自分が書きたいトピックも自然とまとまってくるんです。呼煙魔くんに依頼した理由は、単純に音が自分の好みだったんですよね。呼煙魔くんはサンプリングだしグルーヴがいい感じ。一緒に制作してて勉強になります。ズバズバ言う性格なのか媚びてなくて自分と合うなって。勝手ながら(笑)」

--今回アルバムに呼んでいる客演も、AKATSUKI & TYK(ODJ)、DOWNTOWN SWINGAZ、kiddblazz(LMS)、LafLife(AGL)、FAT SLIDEという、いつもにも増して濃いメンツが揃っていますよね。自身の作品に呼ぶ客演についてはどのように選ばれているのですか?

「ODJはcrewなんですが、ずっと一緒にやってるし遊んでるし好きだしってことで『いつも通り書こうや~』ってノリで。LMSは流れで(笑)DSとの客演は呼煙魔くんが『自分のcrewでこんな感じのラップなんですけどやりません?』って曲聴かせてくれて、自分的にイイと思ったので作りました。久しぶりに九州外でオールドなスタイルに出会ったなと。LafLifeに関しては同世代で自分が関東いた頃に片方のOOgと一緒に住んでて、何かと曲書いたりフリースタイルしたりで毎度の流れで声かけて。FAT SLIDEは昔知り合ってちょこちょこ遊んでたんですけど2人ともカッコイイし、ずっとやりたかったんでこのタイミングでやりました。」

【Operation feat. DOWNTOWN SWINGAZ】


--今回のアルバムは、これまでの作品と比べてもアルバムとしての流れや構成がとても洗練されている印象を受けました。アルバムの構成を練る上でいつもポイントとしていること、そして特に今回拘った点はどのようなものがありますか?また、どのアルバムも曲数が多く、イントロとアウトロまでリリックがぎっしり詰まっている点もMOL53作品のひとつの特徴な気がするのですが、その点についても拘りがあったら教えてください。

「流れや構成は基本、自分が提示しながら呼煙魔くんと確認しつつ、善し悪し判断してもらって決めました。今回は頭からいなたいやつを詰めて、中間で硬くして、後半で緩くしていった感じです。ラップを詰めたのは、リリック書きまくってかなり曲も溢れてしまって。。やっぱこれも入れたい、これもってなってしまったんですよね(笑)」

--MOL53さんのラップを聴いていると、その言語センス、言葉のチョイスに私は強く惹かれてしまうのですが、リリックはいつもどのようにして書かれているのでしょうか?また、普段から言語感覚を磨く上で意識していること、言葉を選ぶ上でのポリシーがあれば教えてください。

「どうなんですかね。。昔から好きな曲もジャンル問わず言い回しが良かったり、後は小説だったり漫画だったり新聞とか活字が好きだったり、そういうルーツからきてるかもです。ただ、ワードをチョイスする上で流行りのモノや無駄に難しい言葉ってのは避けてるかもです。」

--それぞれの曲についても聴きたいのですが、まずはアルバムのリード曲【OutSide】について教えてください。この曲は、まさにこのアルバムを象徴するような楽曲のひとつだと感じたのですが、この曲はどのような想い、背景で作られた楽曲なのでしょうか?また、その他の曲で特に思い入れの強い曲があれば教えてください。

「【OutSide】はDisですね(笑)今の日本語ラップって大半がいなたくないなって。リスナーの目線に合わせにいってるように感じるし、入り口を広げ過ぎててお金儲けしようとしてるのかとか勘繰る。もっと自然にやったがいいし、トラックも時代に寄せてる感が否めない。『誰も言わないなら俺が言うよ』って曲です。他でいえば【Justice】、【For Cee】、【SKIT】ですかね。【Justice】は元々Gotit君が使う予定だったんですけど、戦極のLIVEで俺が使って『そのまま使わせてください』ってお願いして譲ってもらいましたね(笑)

【OutSide by MOL53】


--アルバムタイトル【ANTITHESIS】がまさに言い得ているように、このアルバムでは、様々なものに対し中指を立てている印象を受けました。その対象としては、現在の日本HIPHOPシーンも含まれていましたが、MOL53さんは現在のシーンをどのように捉えていますか?またそれに対して、今後どのようなアプローチをするつもりでしょうか?

「10年前のシーンから飛躍して前よりはラップしやすくなっただろうし、上が下を上げようとしてくれるってのは凄く良くなったって思います。ハッキリ境い目も見えてる。表と裏がうまい具合に。当然かもしれませんが。でもバトルとライブは別物だし、フリースタイラーかラッパーかだけはハッキリさせたい。それを曖昧にしてるのがシーンだと思いますね。発展の為ならキッカケは何でもいいなんて思わない。先駆者が残してきた音や色って無駄に混ぜん方がいいと思うし、しっかり伝え方を考えないと。今は間違ったまま発展していってるように見えます。ラップをする人は増えてきたけどカッコイイのは増えてないなと。だから自分はハッキリもの言う、媚びない、自分を出すに徹底してます。身の振り方は時代や流れに絶対合わせなくていい。」

--MOL53さんのLIVEでは、同じ楽曲でも音源で聴くときとはまた違った魅力を感じることが多いです。バイブスを漲らせるLIVEでのラップ、言葉を丁寧に紡いだ音源でのラップ。どちらからもそれぞれの魅力を感じるのですが、LIVEと音源それぞれの位置づけについてはどのようにお考えですか?

「LIVEって生なんで、その時その時に応じてスタイルも発言も変えてます。構成以外決めないし、後はトップオブサヘッド。音源はトピック一つ決めて広げていく、思考する、遊ぶ。消化して書くって感じです。CDを売るってことに関しても、自分がどんなラッパーなのかってことに関しても、LIVEありきですね。」

【MOL53 LIVE@O-EAST】


--戦極CAICA所属が発表されてからもうすぐ2年が経とうとしています。現在、CAICAというレーベルに対して、ライブや制作活動を通じて普段どのようなことを感じていますか?また、レーベルオーナーであるMC正社員さんについても、抱いている想いがあれば教えてください。

「戦極CAICAはポップでもいいし、テレビに出てもいいと思ってます。それが吉田君の野望というか。だからガッツリ成功してほしいと思います。自分は戦極CAICAにいるけど、好きなようにやらせてもらってるしありがたいです。吉田君はいい人です。『頭おかしいなこの人』って思うことあるけど、それも吉田君の良さかと。オーナーとか正社員ってよりは、親みたいで友達みたいな感じの距離感です。長電話しますし(笑)」

--MOL53さんからは、いつも一本筋の通ったHIPHOP精神を感じます。最後に、MOL53さんにとってのHIPHOPとはどのようなものか教えてください。

「まだ、自分にその答えは出せないかもです。まだまだ知らんこともあるし、深いモノ。ただ、人生これに対して費やす価値はあると思います。」

(interview by Pto6 [2016.12.2] )


“1stは秀作 2ndでぶっ刺す”これは田我流の2ndアルバムに出てくる言葉ですが、私はMOL53の【ANTITHESIS】を聴いて、まず真っ先にその言葉が頭に浮かびました。

前作【REVIVAL】は、以前このブログでも“遅効性の毒”と表現させてもらっていたように、聴けば聴くほど良さが全身に沁み渡っていく味わい深い作品でした。introを流すたびに高揚感を感じてしまう、今でも大好きな作品です。しかし、今回の2ndアルバム【ANTITHESIS】は、その味わいと聴き応えを更に深めただけではなく、一聴しただけでも唸ってしまうほどの“即効性”までをも纏った、とんでもなく殺傷能力の高い作品に仕上がっています。


その即効性をアルバムに具わせる上で、呼煙魔の功績を語らざるを得ないでしょう。全編通してとにかく秀逸なトラック群。90年代のフレバーを漂わせつつも、それでいて“今”鳴らす必然性を伴わせたフレッシュなアプローチ。上記インタビューでMOL53も「好みの音」だと語っていましたが、私もこの作品を聴いて、改めて自分がこのようなビートが好きでたまらないということを痛感することができました。また、アルバムとしても曲のバリエーションが幅広く、“統一感”と“振れ幅”が抜群な塩梅で構成されています。

しかし、そんな極上の呼煙魔ビートに対しても軽々と手綱を握り、完璧に乗りこなしながら常にアルバムの中心であり続けるのがMOL53の凄さです。音のハメ方、言葉の詰め方、発声法、アクセント。どこをとっても前作より数段パワーアップしており、奇をてらったような多彩なフローを取り入れなくても、これほどまでにバリエーションと聴き応えを作れるのだということを証明してくれています。

そして、MOL53一番の魅力であるリリックについても、前作にも増した洗練さを感じます。濃密に練り込まれた言葉達が気持ちよく音に乗り、効果的かつ的確に聴く者の心に刺さってくるのです。彼にしか吐けないパンチラインの応酬、その言葉の雨の中にいつまでも佇んでいたい、そんな気持ちにさせてくれます。

【ANTITHESIS Trailer】


今回、このような素晴らしいアルバムについて、MOL53ご本人とインタビューをさせていただく機会もらえたことを、心から幸せに思います。お忙しい中、紳士的にご対応いただいたMOL53さんには感謝の念が尽きません。本当にありがとうございました。

是非とも多くの人にこのアルバムの衝撃を味わってほしいなと思っています。今回のインタビュー記事が、そのことに少しでも貢献できたとしたら、それ以上の喜びはありません。

では、今回はこのへんで。




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2 Comments

けむし  

凄く興味深いインタビュー内容でした。

いつも楽しく拝見させて頂いてます。何度か“名勝負の継承文”でコメントさせてもらってるのですが覚えて頂いてますでしょうか?
覚えて頂いていれば幸いです。

今回のインタビューも物凄く興味深いものでした。
mol53さんは僕の大好きなMCの1人なのですが、Twitter等で本人が発信する以外にあまり情報がない中、僕自身今回のアルバムについてお聞きしたい内容が語られていてとても充実していました。
僕の愛するHIPHOP感を現在のシーンで表現してくれている数少ないMCの生の声を一般人である僕が得れるというのは本当に幸せな事です。
ところで、ご質問なのですがpeat6さんは業界の方なのでしょうか?
情報の質やトピックが他のブロガーさんより抜きん出ているように感じて少し気になりました。

お忙しい中だと思いますが返信して頂ければ幸いです。
今回も素晴らしい記事をありがとうございました。

2016/12/06 (Tue) 01:32 | EDIT | REPLY |   

Pto6  

Re: 凄く興味深いインタビュー内容でした。

> いつも楽しく拝見させて頂いてます。何度か“名勝負の継承文”でコメントさせてもらってるのですが覚えて頂いてますでしょうか?
> 覚えて頂いていれば幸いです。


けむしさん。お久しぶりです。
RvsGILの記事以来ですね。もちろん覚えていますよ^^
またコメントくださり嬉しいです。


> 今回のインタビューも物凄く興味深いものでした。
> mol53さんは僕の大好きなMCの1人なのですが、Twitter等で本人が発信する以外にあまり情報がない中、僕自身今回のアルバムについてお聞きしたい内容が語られていてとても充実していました。
> 僕の愛するHIPHOP感を現在のシーンで表現してくれている数少ないMCの生の声を一般人である僕が得れるというのは本当に幸せな事です。


そのように言っていただけると、今回この記事を書いてよかったなと心から思います。
私も、MOL53のことが大好きでしたので、このような機会をいただけて本当に光栄でした。
また、アルバムとしても今作は本当に素晴らしくって、その作品について聞けたことが純粋にファンとして嬉しかったです^^
質問事項も悩んだのですが、けむしさんの聞きたかったことを少しでも代弁できていたとしたら幸いです^^


> ところで、ご質問なのですがpeat6さんは業界の方なのでしょうか?
> 情報の質やトピックが他のブロガーさんより抜きん出ているように感じて少し気になりました。
> お忙しい中だと思いますが返信して頂ければ幸いです。
> 今回も素晴らしい記事をありがとうございました。


そのようなお褒めのお言葉をいただけて恐縮です^^
ただ、私は業界人などではありませんよ。どこにでもいる平凡なヒップホップ好きのひとりです^^
このブログでは私自身が「こんなブログがあったら読みたいな」と昔から思っていたことを
「誰もやってくれないなら自分でやってしまえ」と、自己満足の為に始めさせてもらったものです。
そのため、トピックなどは自分の偏った好みなので、これまであまり周りからの評価は気にせずやってきたのですが、
そのようにブログの内容を褒めていただくと、やはりとても嬉しいものです。
半分以上は自分自身の為に書いているこのブログが、けむしさんのように他の誰かに喜んでもらえているなんて
本当に幸せなことだなと思います。ありがとうございます。

これからも、好きなように書かせていただきますので、
また興味のある記事がありましたら、読んでやってください。

あたたかいコメント、本当にありがとうございました^^

2016/12/11 (Sun) 00:54 | EDIT | REPLY |   

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