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日本語ラップ・MCバトルの“今”を語るブログ

新作音源に小さく貢献⑯(Carlito's Way by CHICO CARLITO)

どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は、先日発売されたCHICO CARLITOの1stアルバム【Carlito's Way】について書きたいと思います。新曲が発表されるたびに期待値が高まっていた本アルバムでしたが、遂にその全容を聴くことができましたね。

それでは、このアルバムを聴いて感じたことについて書いていきたいと思います。

【Carlito's Way】
CarlitosWay 

<収録曲>
01. Intro
02. C.H.I.C.O (Album Edit)
03. 那覇のクラブ
04. 47
05. Orion's belt feat. RITTO
06. Skit
07. 末裔 feat. D.D.S
08. Rainy blue
09. Sons of Kuragaly feat. TENGG, ARISTO
10. secret garden
11. Carlito's Way
12. 一陽来復 feat. CHOUJI, 唾奇
13. RH-


沖縄で「やることねぇ」とくすぶっていた数年前のチコ。このアルバムの物語はそんな場面から始まります。その後、HIPHOPと出会い、進むべき自分の道が定まり、チコは運命に導かれるようにどんどんとその歩みを加速させていきます。このアルバムは、タイトル【Carlito's Way】がまさに示す通り、そんなCHICO CARLITOがこれまで歩んだ道程を振り返るような構成で作られています。

その歩みの中で、改めて見つめなおした自分自身の出生の背景、そして振り返る故郷『沖縄』の持つ悲しい歴史や現在の状況。【Skit】前の5曲で構成されるアルバム前半の『沖縄パート』では、“セルフボースティング”や“レペゼン”という文化を持つ『ラッパー』を志したからこそ深くまで見えてきたであろう事柄が赤裸々に語られています。

中でも、“おばあ”の人生を軸に、沖縄の歴史について歌われた楽曲【47】には心を震わされます。学校の教科書じゃ、ほんの数ページで説明されていたこの島の壮絶な歴史が、実際にその時代を生きた人の目に寄り添った語り口で、神妙に丁寧に描かれていくのです。どんな書物を読むより、私にはその悲しさややるせなさが伝わってきました。(タイトル“47”は沖縄返還の年(昭和47年)からとったもの?)

そして、その歴史は何も過去の出来事ばかりではありません。現在の沖縄においても、その歴史の爪痕と負の遺産が住人の生活に影響を与え続けているのです。先日MVが公開された【Orion's belt】では、そんな今の沖縄を生きる人の目線で、先人から引き継がれた歴史と故郷に対する想いが歌われています。

【Orion's belt ft. RITTO】


“昭和から平成 渡されたこのバトン”

アルバムはこの曲の後、愉快な【SKIT】が入り、神妙な空気は一転、後半の『内地パート』に入っていきます。それにしても、この【SKIT】が実に楽しく秀逸です。実際にあったのであろうチコの節目節目での電話トークが時系列で配置されており、大学進学を機に沖縄を出て埼玉に移り住んだチコに起きたここ数年間の劇的な変化がわかりやすくまとめられています。

その【SKIT】の後は、同じく沖縄出身で現在関東にいる先輩D.D.Sや、自身のクルーBang Da RhythmのメンバーであるTENGGARISTOとの客演曲をはさみながら、埼玉に出てきた後の出来事が中心に描かれていきます。騒々しい都会で生きる日々とその想いを綴った【secret garden】。人生の転機において、その後の進む道を決意した時の想いを書き上げたタイトル曲【Carlito's Way】。どの曲からも、関東での仲間との出会いがチコを支え、現在の成功を導いてきたのだなと感じさせてくれます。

そしてアルバム最後の二曲【一陽来復】、【RH-】は、そんな第二の故郷“埼玉”ができたことで、更に想いを強くした故郷“沖縄”について、そして改めて成長した目線で見つめ直した自分自身について歌われた楽曲です。

【一陽来復 ft.CHOUJI,唾奇】


“繰り返す日々に出会いと別れ”

この楽曲【一陽来復】については、以前このブログでも書かせてもらったのですが、改めてアルバムの流れで聴くと、その楽曲で歌われていることが、そして、タイトルにある『一陽来復(悪いことが続いたあと、ようやく物事がよい方に向かうこと)』という言葉が、単曲で聴くときよりも強く心に迫ってきます。


最後の楽曲【RH-】は激動だったここ数年の出来事、起きた変化、感じたこと、固めた決意を振り返る集大成的な楽曲です。自身の出生、体を流れる血についても改めて認めた上で、自分自身、そして、これから歩もうとしている目の前の道に対し確信の笑みを浮かべたところで、このCHICO CARLITO第一章となるアルバムは幕を降ろします。聴き終えた後の気持ち良い余韻、そして、この物語の続編に早くも期待してしまう想いがじんわりと込み上がってきます。

チコ 

私はこのアルバムを最初に聴いたとき、実は人知れず小さな驚きを感じました。といいますのも、これまでのチコの楽曲、そして現在のチコの境遇から私が“勝手に想像していたアルバム像”と、実際に聴いた今回のアルバムが大きくかけ離れていたからです。

私が勝手に想像していたアルバム。それは、現在のチコに向けられているシーン全体の期待感を一身に背負ったような、少しも隙も見せない肩の力の入った作品でした。どの曲もシングルカットできるほどの普遍性とキャッチーさを持ち合わせ、“傑作”を作るという使命感に駆り立てられたどこか“気負い”すら感じさせる作品。そんな作品を漠然とイメージしながら、そしてどこかで小さな懸念を抱きながら、私はアルバムの発売を心待ちにしていました。

しかし、このアルバムを聴いて、そんな“勝手な想像”“小さな懸念”は見事に吹き飛んでいきました。

変な気負いは微塵も感じさせないどころか、自分の描きたいこと、伝えたいことを純粋に突き詰め、伸び伸びと歌うチコの姿がこの作品には詰められていました。そして、自分の“オリジナルアルバム”だからこそ収録できるパーソナルな楽曲や、自分自身を包み隠さずさらけ出した楽曲があることで、より一層チコのことを、そしてこれまで以上の彼の魅力を知ることができました。(私はそのような“アルバムだからこそ輝く楽曲”というものが大好きなのです。)まさに名刺代わりというのに相応しい、素晴らしい1stアルバムではないでしょうか。

チコの人懐っこい人柄をそのまま投影したように、このアルバムは誰の懐にもすっと入り込み好きにさせてしまうような、そんな魅力をもっています。楽しいSKITや語りによる楽曲への繋ぎがあることで肩の力を入れずに聴け、その反面、要所要所でしっかり締めることで、アルバム全体としての緊張と緩和を絶妙に保っています。楽曲それぞれのもつ内容の濃さも相まって、何度でも聴きたくなってしまう作品です。

今回、このような素晴らしい1stアルバムを作り出し、ラッパーとしての道を遂に歩みだしたCHICO CARLITO。これからも周囲の期待とプレッシャーは大きいでしょうが、これまでと変わらず自分自身のスタイルで歩いていって欲しいなと思います。きっと彼が陽気に歩んだその足跡の後ろにこそ、明るい日本語ラップの道が拓かれていくのではないかと私は信じています。

では、今回はこのへんで。






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4 Comments

寝坊主  

いつも面白いです

いつも楽しく拝読させていただいています!
いつも多角的な視点でレビューを書いていらして、とても参考になります。
まことに勝手ながら、個人的にはインターネットを飛び出せるほどのライターとしての才能をお持ちの方だと思っています。
これからも頑張ってください!

2016/12/18 (Sun) 20:28 | EDIT | REPLY |   

Pto6  

Re: いつも面白いです

> いつも楽しく拝読させていただいています!
> いつも多角的な視点でレビューを書いていらして、とても参考になります。
> まことに勝手ながら、個人的にはインターネットを飛び出せるほどのライターとしての才能をお持ちの方だと思っています。
> これからも頑張ってください!


寝坊主さま
コメントありがとうございます。
とても褒めていただき、恐縮です。そのように言っていただけて僭越ながら嬉しい気持ちになりました^^
これからも、そのような感想を抱いていただけるようなそんなブログを書いていけたらと思います。
また興味があったら、読んでいただけたら幸いです。

ちなみに、私的には、プロのライターさんの文章を読むたびに、やっぱり世界が違うなと感じています。
もちろん、私はあくまで趣味で書いていますので、その方々と張り合う気持ちは露ほどもないのですが、それでも同じ文章を書く者として圧倒的な筆力の違いを感じてしまいます^^;

それと、私はどちらかというと個々の記事というよりも、ブログ全体としての在り方を保つことに重きを置いていたりします。
つまりは、どこか別なところに文章を掲載するということにはあまり興味がなく、自分で運営するブログに書き続けることに意味を見出しているのです。そういう意味では、インターネットという世界から私は出ないほうがいいように思っています。笑

なにはともあれ、コメントいただきとてもうれしい気持ちになりました。
本当にありがとうございました。これからも続けるところまでブログを書かせていただきます^^

2016/12/24 (Sat) 00:10 | EDIT | REPLY |   

-  

carlito's way はそもそもアルパチーノ主演のギャングスタ映画「カリートの道」(原題がアルバムタイトルと同じ)
からとっていると思われます(恥ずかしながら映画は見たことありません……)

フリースタイルダンジョンでR指定がそのラインをニガリに向けて言っていましたね。

2017/01/04 (Wed) 16:57 | EDIT | REPLY |   

Pto6  

Re: タイトルなし

> carlito's way はそもそもアルパチーノ主演のギャングスタ映画「カリートの道」(原題がアルバムタイトルと同じ)
> からとっていると思われます(恥ずかしながら映画は見たことありません……)
> フリースタイルダンジョンでR指定がそのラインをニガリに向けて言っていましたね。


コメントありがとうございます。

そうです。この作品についてのインタビューでも、CHICO自身が映画の「カリートの道」からとったといっていましたよ^^
その映画のタイトル、映画の内容から影響を受け、自身の歩んだ道を描いたこのアルバムのタイトルに選んだのだと思います。
粋なタイトルの付け方ですよね^^そこらへんのCHICOのセンスも私は大好きです!

2017/01/04 (Wed) 21:42 | EDIT | REPLY |   

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