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日本語ラップ・MCバトルの“今”を語るブログ

名曲の提供⑪(LOVE by C.O.S.A. × KID FRESINO)

どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は、このブログにおける今年の筆納め記事として、個人的に思い入れのある2016年の楽曲をご紹介したいと思います。C.O.S.A.×KID FRESINOのアルバム【Somewhere】に収録されている楽曲【LOVE】です。

それでは、いってみましょう。

【LOVE by C.O.S.A. × KID FRESINO】


“FRESINOがN.Y.に発つ理由 今も知立の角に立つC.O.S.A.”

やはり毎年年末になると、その一年を思い返してみては、ひとりしみじみとしてしまいます。昨年もブログにて書いていましたが、如何せん作品に“点数”を付けたり、“優劣”を付けることが苦手な私には、年間ベストのような順位付けをすることはできそうにありません。しかし、そんな私にも、その一年を振り返ってみた時、気づけばいつも頭の中で鳴っていたその年を象徴するマイBGMソングというものはあったりします。今年2016年でいえば、そう。今回ご紹介する【LOVE】が私にとってそれにあたるのです。

発売以来、多方面からの高評価を獲得し、1年通して話題が尽きなかったC.O.S.A.、KID FRESINOという魅力的な二人によるコラボアルバム【Somewhere】。2016年を象徴する作品はなんだろうかと思いを巡らせてみたとき、私の中で真っ先に頭に浮かんだのはこの作品でした。そして、中でもリード曲となったこの【LOVE】は、何かに付けては聴き返す、年間通じて私に寄り添ってくれた楽曲のひとつでした。

まずは、なんといってもjjjの手掛けた哀愁漂うトラックが印象に残ります。明るい陽の光と吹き抜ける穏やかな風を感じるような心地の良いトラック。元ネタは、多様なジャンルで多数の作品を残したアーティストTodd Rundgrenの楽曲【Marlene】です。ボーカル含めた音全般と、原曲における少女Marleneに向けられた“愛”という要素をもサンプリングし、全編通して魅力的なループトラックに仕上げています。

【元ネタ:Marlene by Todd Rundgren】


jjjのプロデュース曲はこのアルバム【Somewhere】の中でも他に2曲あり、更に今年で言うと他のアーティストにも多数の楽曲提供をしていました。それら今年リリースされた楽曲群を聴いただけでも、私はすっかりjjjワークの虜になってしまいました。シーンにおいても、今最も注目度の高いクリエイターのひとりではないでしょうか。少なくとも私にとっては、プロデュースクレジットを見ただけで楽曲を買いたくなってしまう、数少ないプロデューサーのひとりです。“アルバムを作る上で重要なのはBeat選びだ”と口をそろえていたC.O.S.A.とKID FRESINOも、jjjに対し絶対的な信頼を寄せているに違いありません。

さて、話を【LOVE】に戻します。そのような極上のjjjトラックなのですが、この曲を名曲足らしめているのは当然ながらトラックの力だけではありません。そのトラックの上に乗る魅力的な2MCを含めた三位一体の組み合わせの妙、そこでの化学反応が、この楽曲一番の魅力のように思います。C.O.S.A.KID FRESINOというタイプの異なる二人が築き上げる絶妙なバランス。その一見相反する二つのピースは面白いように凸と凹が合わさり、なんとも魅力的な絵を完成させ私たちに提示してくれているのです。

直接的に熱い胸の内を吐露するC.O.S.A.。そのビジュアルから受ける印象通りのパワーと印象に反する繊細さが彼のバースには内包されています。以前インタビューで、USと日本ではリリックのテーマに差があることを感じていると語っていたC.O.S.A.。その上で、“ストリート感を残しながらも普通の日常を歌う”ということに拘り、これまでも曲を書いてきたといいます。もちろん、そんな彼の拘りは、この楽曲【LOVE】においても健在です。

中でも、HIPHOPを通じて彼に起きた変化を、自分自身で改めて実感している下記のリリックには個人的にも感じ入るところがありました。過去作においてほとんど客演を呼ばずに楽曲制作をしてきたC.O.S.A.が、今ではこのようにダブルネームのアルバムを作っているのです。その事実に、C.O.S.A.自身も驚いているかのようです。

“随分変化してきた生活
見渡すと信頼できる人たちが
少しずつ増えてきてる
事実 俺はマイクを回すことを覚えてる”

一方、KID FRESINOは情景描写を駆使し、あくまで間接的に自身の心情を描きます。現在彼が住んでいるN.Y.の街の空気感を漂よわせたクールなリリック。それを飄々と、滑らかに歌い上げるFRESINO。風貌や佇まい戦うフィールドリリックにおける表現歌い方、どれをとっても前述したC.O.S.A.とは対照的な魅力を持っています。

私はこの曲におけるFRESINOのリリックを初めて聴いた時、大好きな小説【The Catcher in the Rye(ライ麦畑で捕まえて)】の主人公ホールデン・コールフィールドの姿が頭に浮かびました。そのどこか冷めた目線で世界を見つめ、客観的に自身を描写する語り口がとても似ているように感じたのです。ミステリアスで少しシャイな人物像も、私の中のホールデン像と見事に重なりました。思わず本棚から久しぶりに手に取り、小説を読み返してしまったほどです。

“今夜俺は歩いて帰れるだけの酒を飲み
そして潰れたfriendsを跨いで振り返る
片側だけlightが灯るClubの
朝方のノリを遠くから眺める”

このように、まったく異なる魅力をもったこの二人。しかし、FRESINOはインタビューで“C.O.S.A.とは同じ精神性と主義・嗜好をもっている”と語っていました。まさにその言葉がすべてを表しているように、タイプや表現方法が異なっていても、二人は目に見えない要素、まさしくマインドの部分で強い繋がりを持っているのです。この楽曲は、そんな二人の共通項とそれぞれの個性が黄金比的にブレンドされた、まさにこの二人にしか作れない素晴らしい楽曲だと私は思います。

彼らのコラボ作品が出たこと。それは、2016年の日本のHIPHOPシーンにおいても、素晴らしい出来事だったのではないでしょうか。少なくとも私にとって、彼らの楽曲が2016年という1年に素晴らしい彩りを添えてくれたのは間違いありません。

COSA×KID FRESINO 

さて、今回は2016年最後の記事として、私にとってこの1年を象徴する楽曲【LOVE】について書かせていただきました。実は今年の締めとしてこの曲について書くことは、結構前からぼんやりとではありますが考えていたことでした。このようにやっと書けたことをとても嬉しく思います。私個人としても、そしてHIPHOPシーンにおいても、良いことが多かったように思う2016年。最後に“LOVE”を添えて、このブログも2016年を締めさせていただきます。今年もご愛読いただきありがとうございました

ちなみに、来年最初の記事についても少し前から既に決めております。年始のおめでたい空気にぴったりな、あの縁起の良いアーティスト名の作品について書かせてもらう予定です。そちらも読んでいただけたら幸いです。今後もゆるりとブログを更新していきたいと思っております。来年も引き続きどうぞよろしくお願い致します。

では、今年はこのへんで。
皆様におかれましても、どうぞよいお年をお迎えください。







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2 Comments

岐阜の人  

あけましておめでとうございます!

いつも拝見させていただいてます!
pto6さんはmpcプレイヤーのstutsさんのアルバムとかは聞いたことありますか?
出来れば感想とか聞きたいです!

2017/01/04 (Wed) 12:24 | EDIT | REPLY |   

Pto6  

Re: あけましておめでとうございます!

> いつも拝見させていただいてます!
> pto6さんはmpcプレイヤーのstutsさんのアルバムとかは聞いたことありますか?
> 出来れば感想とか聞きたいです!

コメントありがとうございます。
そして、明けましておめでとうございます^^

もちろんStutsのアルバムも持っておりますよ^^
2016年の年間ベストアルバムにも選ばれているような素晴らしいアルバムですよね。
ただ、私はまだ十分に聴き込めていない(書きたいことがまとまっていない)為にまだ記事は書けておりません。。
ただ、とても大好きな作品ですので、いずれ「名盤シリーズ」にて書きたいと思っています^^
いつ書けるかはわかりませんが、おそらく2017年のどこかで書くと思いますので
気長にお待ちいただけると幸いです^^

リクエストありがとうございました。
これからも何卒よろしくお願いします^^

2017/01/04 (Wed) 21:37 | EDIT | REPLY |   

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