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珍しく海外クラシック⑧(The Score by Fugees)

どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は、久しぶりに海外作品について書きたいと思います。ご紹介する作品は、96年に発売されたFugeesの2ndアルバム【The Score】です。聴き返すたび、その魅力を何度でも再確認させてくれる、長く長く付き合うことのできる作品です。

それでは、いってみましょう。

【The Score by Fugees】
The score 

<収録曲>
  1. Red Intro
  2. How Many Mics
  3. Ready Or Not
  4. Zealots
  5. The Beast
  6. Fu-Gee-La
  7. Family Business
  8. Killing Me Softly
  9. The Score
  10. The Mask
  11. Cowboys
  12. No Woman, No Cry
  13. Manifest/Outro

90年代を代表するクラシックアルバム。このアルバムは多くの人から現在そのように認識されています。もちろん、この作品が名盤であることについては私も疑う余地はありません。しかし私は、この作品が名盤らしからぬ“脇の甘さ”を残しているところに他にはない魅力を感じています。当然ですが、それは完成度が低いと言っているわけではありません。聴き手の自由な解釈を促すために敢えて“隙”を与えているような、そんな印象を私はこの作品から感じるのです。

あるいは、そのように感じるのは私だけなのかもしれません。現に、ネット上で見つけられる本作のレビューをいくつか読んでみても、手放しに賞賛するものばかりで、私と似たような感想は見つけることができませんでした。そもそも、グラミー賞まで獲得した世紀の大傑作に対し“隙がある”なんて書いたら、もしかしたら誰かからお叱りを受けてしまうのかもしれません。

それでも誤解を恐れず、あえて自分の感じるままに言わせてもらうと、このアルバムは“誰にいつ聴かせても同じ感銘を与えられる”ような精巧さと確固たる強度を求めて作られた作品ではないように感じます。それどころか、作品における大部分を聴く側に委ねた、いわば“隙だらけ”のアルバムのように私は感じるのです。

遊び心満載の“脇の甘さ”をいたるところに残すことで、彼らは意図的に作品における敷居を下げているように感じます。そのような“見えざる配慮”が施された本作は、クラシック作品であるにも関わらず、一切構えることなく気軽に聴くことができる作品に仕上がっています。少しでも肩に力を入れて聴きだしたなら、拍子抜けをしてしまう方もいるのではないでしょうか。

私は、“隙のないアルバム”を聴くのももちろん好きなのですが、このように“脇の甘さを残した隙のある作品”達の方が聴き返す回数は多いような気がします。人間にしてみてもそうですが、私はその“隙”にこそ親近感とその作品固有の味わいを感じてしまうのです。

“脇の甘さ”があるというのは、そのぶん“懐が深くなる余地”を残しているということ。もちろん、そこには誤った解釈といったリスクの入り込んでくる隙もあるわけですが、そのようなリスクすら織り込んだところ、あるいは受け入れようとしたところに、私はこの作品のもつ“器の大きさ”のようなものを感じます。そしてそのことにより、この作品のことがより一層好きになってしまうのです。

Fugeesは、ラップもこなす女性ヴォーカリストのローリン・ヒルと、二人の男性MCワイクリフ・ジョンプラーズで構成された3MCのヒップホップグループです。有名曲からの多様なサンプリング、ソウルやレゲエといったヒップホップ以外の要素を取り入れた音楽性に特徴をもつ彼らは、本作【The Score】を1,800万枚売り上げ世界的な有名アーティストとなります。

中でも圧倒的な存在感を放っているのはやはりローリン・ヒルでしょう。【天使にラブ・ソングを2】等の映画に出演し、女優としても活躍していた彼女ですが、このFugeesでの成功以降ソロ活動の方でも大ヒット作品を生み出し、後にグラミー賞を総なめすることとなります。この作品でも、そんな彼女の溢れんばかりに迸る才気を十二分に堪能することができます。

それでは、いくつかアルバムから楽曲を取り上げて紹介していきましょう。

【Ready or Not】


ローリン・ヒルの伸びやかな歌声がとにかく心地よく響く、本アルバムにおける代表曲のひとつです。トラックにEnya【Boadicea】をサンプリングしたことで話題となった反面、そのことで起訴にまで発展してしまった楽曲です。印象に残るフック部分も他曲のカバーになっており、The Delfonics【Ready Or Not Here I Come】が元ネタとなっています。

ちなみにこのフック部分は、以降多くのアーティスト達にサンプリングされることとなります。もちろん日本においても同様です。有名なところでいえばAKLO【The Arrival】や、JUSWANNA【Ready or Not】などでしょうか。誰もが使いたくなってしまうほど一発で印象に残るフック。それをローリン・ヒルのこの歌唱力で歌い上げるわけですから、一度聴くといつまでも耳から離れてくれません。

【Fu-Gee-La】


先ほどの【Ready or Not】と同様、フックが印象に残る曲といえばこの曲も負けてはいません。こちらもフックは他曲からのカバーで、元ネタはTeena Marie【Ooh La La La】です。またこちらの楽曲も、以降多くのアーティストにサンプリングされており、日本でいえば、以前このブログでもご紹介したANARCHY【Magic Hour feat. Pushim】などがあります。


Fugeesのトラックは、日本のMCバトルでもよくバトルビートして使われています。この【Fu-Gee-La】でいえば、歴史的名勝負といわれるUMB2010“R-指定 vs 晋平太”でも延長ビートとして使われていました。原曲を聴いてみればわかる通り、多彩なフローを許容できる余白をもったビートですよね。ハードなラップ、メロディアスな歌、そのどちらも引き立てています。音数は少ないにも関わらず、それでいて味のある雰囲気を醸し出す。改めて聴いてみても優れたヒップホップトラックだなぁと感じ入ってしまいます。

【No Woman, No Cry】


上記2曲ではローリン・ヒルの歌声にばかり注目してきましたが、この楽曲におけるワイクリフ・ジョンの歌声もそれに負けじと素晴らしいです。レゲエの神様ボブ・マーリーの名曲をカバーした楽曲ですが、少し擦れたジョンの声が絶妙な哀愁を醸し出しています。カリブ系サウンドを得意とする彼らの持ち味も、楽曲アレンジによく表れているように思います。

カバー曲で言えば、本アルバムには【Killing Me Softly】も収録されています。こちらはロバータ・フラックの楽曲をカバーしており、カバー曲にも関わらずFugeesにおける最大のヒット曲となりました。このアルバムは上記で書いてきた通り、他曲からのサンプリングやカバー曲が多く収録されています。しかし、原曲と聴き比べていただければわかるように、彼らのすごいところはその独自のアレンジ力持ち前の表現力で、原曲にも勝るとも劣らない“オリジナリティ”を曲に吹き込むところにあります。他にはない個性を持った彼らがやるからこそ、新たな魅力をもったオリジナルな楽曲として成立させてしまっているのです。

◇◇◇◇◇

さて、今回はFugeesの名盤【The Score】について書いてみました。とにかく気軽に聴けて、自由に楽しめるのが本作の魅力です。是非とも、それぞれの楽しみ方で味わい尽くしていただきたいなと思います。

ちなみに、様々な音楽ジャンルの良質な素材達が、魅力的な3人によりことごとくFugees味に調理される様を味わうのも、本作の楽しみ方のひとつです。今回は意識的にサンプリング元や原曲を記載させていただきましたが、そのような情報も含めて味わっていただけたら、より一層その魅力を掴んでいただけるのではないかと思っています。是非とも原曲とセットで楽しんでみてください。

では、今回はこのへんで。



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2 Comments

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まだウータン取り上げられてないのは意外です

2017/01/29 (Sun) 03:54 | EDIT | REPLY |   

Pto6  

Re: タイトルなし

> まだウータン取り上げられてないのは意外です

コメントありがとうございます。
確かにWu-Tang ClanはHIPHOPの歴史を語る上では欠かせない存在ですよね^^ただ、このシリーズはクラシック作品を網羅的に書かせてもらうことが目的ではなく、あくまで聴き返してみて"記事として書きたくなった作品”について、そのタイミングで書かせてもらっています。そもそも重要な作品から語るのであれば、ウータン以外にもRunDMCやらパブリックエネミーやら、これまでご紹介してきた作品よりもっと先に書くべきアーティストはたくさんいることになりますし^^;

ちなみに"記事として書きたくなる作品”の共通項としては、"クラシック”であることを抜きにしても、現在の音源と横並びにして聴いてみたとしても"凄い”"良い作品”と感じられる、そんな作品です。これからもそんな作品達をマイペースに書いていきたいなと思っています^^そういった観点で、このシリーズを楽しんでいただけたら幸いです^^

コメントありがとうございました!

2017/02/04 (Sat) 18:00 | EDIT | REPLY |   

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