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新作音源に小さく貢献⑲(嘘と煩悩 by KREVA)

どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は、先日2/1に発売されたKREVAの4年ぶりとなる新作【嘘と煩悩】について書きたいと思います。

【嘘(800)と煩悩(108)】という自分自身(KREVA=908)を表す、謂わば"セルフタイトル”を冠された今作には、まさにKREVAこれまでの集大成といえる彼のあらゆる要素が詰め込まれています。レーベル移籍後の初作品ということもあり、KREVA自身、高いモチベーションで臨んだであろう本作は、聴き終えた後「これでこそKREVAだ!」と思わずスタンディングオベーションを送りたくなってしまうほどの快作となっています。

それでは、本作を聴いた感想を書いていきたいと思います。

【嘘と煩悩】
嘘と煩悩 

<収録曲>
1. 嘘と煩悩
2. 神の領域
3. 居場所
4. 思い出の向こう側 feat. AKLO
5. FRESH MODE
6. Sanzan feat. 増田有華
7. ってかもう
8. あえてそこ(攻め込む)
9. タビカサナル
10. もう逢いたくて
11.君に夢中


KREVAはいつだって私の"背中を押してくれる存在”でした。"人の背中を押す楽曲”を歌うアーティストは数多くいますが、いつでも最も効果的に背中を押し、前へと進ませてくれたのが私にとってはKREVAでした。"ミスター向上心”と呼ばれるストイックな彼の言葉だから。私が男として、人間として、KREVAという存在を尊敬しているから。おそらく理由はたくさんあるでしょう。4年ぶりの最新作となる今作【嘘と煩悩】も、そんな彼が長い時間をかけて洗練させた”押し方”で、力強く聴く人の背中を押してくれる、そんな作品に仕上がっています。

前作【SPACE】は、サウンドがアルバム全体を引っ張る作品でした。"ブレイクビーツと激しいシンセサイザーの融合”というテーマを見つけ、「頭に聞こえてきたものを生かして作った」と語られていた【SPACE】。それを経て作られた今作【嘘と煩悩】は、【SPACE】で培ったサウンドを更に深化させ、最先端の流行も取り入れてアップデートさせながら、その上に"徹底的に研ぎ澄ました言葉たち”を丹念に積み上げた極上の作品となっています。KREVAは本作についてのインタビューで下記のように語っていました。

"自分自身を削ることによって見つけた言葉を、濾して濾して濾しまくって、残った本質の1滴をさらに尖らせる”

4年の月日を掛け、濾して尖らせた深く突き刺さる言葉たち。そんな研ぎ澄まされた言葉が本アルバムには詰め込まれています。これまでもKREVAのリリックには感銘を受けることが多かったのですが、今作ほど多くの言葉が心に刺さる作品はなかったような気がします。歌詞カードを読んだだけでも胸に迫ってくるクオリティ。それが音に乗って体に入ってくるわけですから、そのパワーたるや計り知れません。

そんな、とにかく”リリック”に感銘を受けた本作。サウンド面も"鳴り”"ノリ”両面を兼ね備えた素晴らしいものばかりなのですが、今回この記事では敢えて、"リリック”だけに着目した感想を書いてみたいと思います。本作におけるKREVAの"言葉”の持つ魅力を感じて頂ければ幸いです。



"嘘と煩悩”リリックの魅力


言いたいことを突き詰めた結果、本作に込められたメッセージは曲によって表現こそ違えど、いくつかの限られたものに集約されています。以前、KICK時代から伝えたいメッセージはあまり変わっていないと語っていたKREVAですが、本作でも、そんな昔からの信念を更に研ぎ澄ませたKREVAの"想い”が、言葉を変えて何度も繰り返し登場しています。

その為この記事では、それぞれの楽曲を語る上で便宜上4つのグループに分類させてもらいます。分類としては、①セルフボースト系《1. 嘘と煩悩、2. 神の領域》、②自ら切り拓け系《3. 居場所、5. FRESH MODE、8. あえてそこ(攻め込む)》、③大事なのは今系《4. 思い出の向こう側、6. Sanzan、7. ってかもう、9. タビカサナル》、④また逢いましょう系《10. もう逢いたくて、11.君に夢中》。下記では、それぞれのグループ毎に感想を書いていきたいと思います。

それでは、いってみましょう。


①セルフボースト系
《1. 嘘と煩悩、2. 神の領域》

もはやお家芸とも言えるKREVAの"俺様”リリック。【ストロングスタイル】【基準】のように、これまでもセルフボースト系の楽曲からアルバムが始まるパターンはありましたが、今作における導入曲【嘘と煩悩】も、気持ち良いくらいのKREVA節が炸裂した楽曲です。タイトルに沿って綴られる"嘘”と"煩悩”に関わる描写。それらの集合体"人間”の悲しき性を前半ではコミカルに描いていきますが、後半では種明かしの要領で908=KREVAが提示され、一気に楽曲のボースト感が増していきます。

"くれば 抜け出せない世界 さ”
"908  はなくならない”

KREVAが書籍【ラップのことば2】の中で、ヒップホップをやる上で大事にしていると語っていた「それでいいの?」感半笑い感が、これらのリリックにはよく表れていると思います。ベテランになっても変わらず自身の美学を貫くあたりに、彼の一本通った筋を感じますよね。それにしても、"嘘と煩悩が無くならないのと同様に、KREVAも決して無くなることはない”なんて、これ以上の自己賛美があるでしょうか。

続く【神の領域】は、よりストレートなボースト曲です。とにかく絶好調な時に勢いで書きあげたと語られていた本楽曲では、まさにタイトルの通り"神がかり”的なスキルを見せつけています。歌詞を全部暗記してカラオケで完コピして歌いたいと思える"ラップ課題曲”に久しぶりに出会えた気がします(笑)

"数々の困難も真っ平らまるでアスファルト 踏み固めてきたのさ頂点に立つ覚悟”

この楽曲もスキル同様、リリックもとにかくカッコイイものばかりです。これでもかというほどの"俺様”発言の連発。それでもその圧倒的スキルによって、これ以上にない説得力が伴っているのです。そして、そんな勢いをふっと弱め、フックではこんなことも歌っちゃうツンデレ感。ほんとにズルいです。

"とか言って本当は君だけが 好きでいてくれるかが気になってんだ”

曲全体として緩急が利いた楽曲ですが、メロウな部分はもちろん、アップテンポな部分でも確実に日本語が聴き取れるKREVAのラップには改めて凄みを感じます。しっかりと聴き取れるもんだから意外と簡単のように思えるのですが、歌ってみるとその難易度の高さに気づくんですよね。これぞ熟練されたスキルというものではないでしょうか。


②自ら切り拓け系
《3. 居場所、5. FRESH MODE、8. あえてそこ(攻め込む)》

本作におけるメインテーマの一つ目。"本作における”というより、このテーマに関しては、KICK時代を含め、KREVAがこれまでもずっと唄い続けてきたテーマでした。しかし、その伝えたいメッセージは同じであれど、その"伝え方”がこれまで以上に洗練されているように感じます。

【居場所】は、"守るだけじゃ増えない居場所”というテーマで歌われた、ストレートに聴く人の背中を押す楽曲です。とにかく全編にわたるリリックが秀逸で、"とにかくやってみて、気に入ったら続け、そうでなければ別の何かを探せばいい”という歌詞が、まさにラッパーとしての枠を超えて様々なことにチャレンジしてきたKREVAを体現しているように思います。

”行けるなら行け 綺麗な姿勢で 間違ったフォーム 後で変えるのは一苦労”

KREVAのリリックは、自身の実体験を踏まえた血の通った助言で構成されている為、歌詞が心に響きます。上記の歌詞でいえば、以前KREVAが語っていた、水泳フォームについての苦労話を思い出します。このように、自身のこれまでの失敗・成功体験を元に書かれた本楽曲のリリックは、KREVAが書いた自己啓発本のようなものだと言えるかもしれませんね。



他の曲でいえば、淡いトーンの曲調が印象的な【FRESH MODE】は、どちらかというと音や雰囲気重視の楽曲ではあるのですが、リリックでは"ここにいられたのは運命ではなく、自分で選び続けた結果だ”というメッセージに収斂していく、実にKREVAらしい楽曲です。そして【あえてそこ(攻め込む)】では、そのタイトルと同様に、より直接的に”自ら切り拓け”と私達に訴えかけています。

"様々経験積んで危険知る そしてなってくディフェンシブ”
"大切なのは進むこと 可能性の隅をつつくこと”
"新しい先生 きっかけはいったいどこに転がってるかわかりませんね”

このように、KREVAは"自ら切り拓け”というメッセージを、様々な表現でもって繰り返し、まるでサブリミナル効果のようにポジティブな感情を聴く人に刷り込ませてくれます。そして、これほどまでにそれらの言葉を響かせることができるのは、まさに自らの努力と実力で、これまでの道を切り拓いてきたKREVAだからこそではないでしょうか。


③大事なのは今系
《4. 思い出の向こう側、6. Sanzan、7. ってかもう、9. タビカサナル》

本作におけるメインテーマの2つ目。②のテーマにも通ずるところがありますが、過ぎ去った過去ではなく、未来に繋がる今を大切にしようというメッセージが込められた楽曲たちです。

まずは、直接的にそのテーマで歌われた楽曲【思い出の向こう側 feat. AKLO】。以前、フリースタイルダンジョンにおける般若の挑発に対するアンサーではないかと憶測を生んだ楽曲ですが、主軸としては「あの頃の◯◯が良かった」と口にする懐古主義者たちへと向けられた嘆きがテーマとなっています。

KREVAでいうと「フリースタイルしてた時が・・・」「KICK時代が・・・」「心臓までが・・・」などと言う声がこれにあたるのかもしれません。客演のAKLOでいうと「ミックステープ時代のほうが・・・」「1stが・・・」などでしょうか。そんな声に対する二人のやりきれない想いを綴ったリリックは、そんな人達の目をも覚まさせるようなパンチの利いた表現ばかりです。

”昔の曲はネットの宇宙で書いたグラフィティの様なモンだけどもTatoo”
"もうすでに昨日の自分は雑魚 明日の俺なら言えるだろう 今日の俺にすらFuck Off”

同じ事するのは嫌いじゃないけど 同じ事だけする機械じゃない
"「あの日のままで」って 今現在のように受け止めてる いやもう俺すでに上のレベル”

【Sanzan feat. 増田有華】は、音楽劇《最高はひとつじゃない》で共演し、先日KREVAトータルプロデュースでのソロデビューを発表した増田有華をフューチャリングした楽曲です。この曲では、過去のことを振り返りながら、”今”の大切さに気づいていく心境の変化を巧みに描いています。フックにおける"これでいいの”という歌詞が、最後には"これがいいの”と変わるまでの過程に、思わずぐっときてしまいます。それに続く楽曲【ってかもう】でも、未来に繋がる"今”の大切さが、より直接的に歌われています。

"過去があって今がある そして今をどうするかで未来が変わる”

そして【タビカサナル】は、47都道府県ツアーを経て着想を得たという楽曲です。"度重なる”"旅重なる”というKREVAらしい洒落の利いたダブルミーニングが中心に据えられた、"一期一会”ひいては"一度きりの今”の尊さを歌った楽曲です。このように、何れの曲においても、過去ではなく未来に繋がる"今”を大切にしようと、KREVAは繰り返しメッセージを送っているのです。


④また逢いましょう系
《10. もう逢いたくて、11.君に夢中》

LIVE終盤を意識して作られた楽曲たち。こちらのテーマも、これまでのKREVAアルバムでもお馴染みの楽曲テーマですよね。

【もう逢いたくて】では、愛する人への想いを綴ったラブソングの形式を用いながら、LIVE終わりに感じる自身のファン達に対する心境を歌った楽曲です。"ファンへの気持ち”を取り入れることが、アルバム作成途中からの裏テーマであったと語っていたKREVA。この楽曲では、その気持ちが最も色濃く出ているように思います。

"世に必要とされるのは誇らしいよ本当
 でもそれ以上に俺は君がいつも必要
 永久不滅だよ未来の地図上からも”

KREVAのLIVEは行く度に「また来たい!」という満足感を感じることができます。ファンのそういう想いと同様、ステージに立つKREVAも「また演りたい!」と思ってくれているようですね。先日始まったこのアルバムのコンサートツアー【TOTAL908】でも、きっとそんな最高のLIVEが繰り広げられることでしょう。

そして、本アルバムにおいて"Bonus Track”と位置づけられた【君に夢中】も、"君”に様々な人を当てはめて解釈することができる楽曲です。短い楽曲でありながら、"暗闇のネジ回し”という表現や、"Thinkin’ about You”と"四六時中”といったライミングなど、少ない言葉数ならではの細部までの拘りを感じる楽曲です。

アルバムの末尾に収録されたこの2曲を聴いていると、LIVE同様、アルバムが終わることへの一抹の寂しさを感じてしまいます。早く次のアルバムが聴きたい。早くもそんな想いを抱きながら、私は何度でも何度でもこのアルバムを繰り返し聴いてしまいます。

KKK 
さて、今回は研ぎ澄ませた言葉が詰まった作品【嘘と煩悩】について、リリックに特化した感想を書かせて頂きました。いくつかに楽曲を分類させて語ってきましたが、それらを総合させ、私がこのアルバムから最も強く受け取ったのは"大切なのは今、自ら切り拓け”というシンプルで力強いメッセージでした。

これからもいろんな場面で、このアルバムの楽曲達が私の背中を押してくれることでしょう。高い壁に立ち向かう時、現実に押しつぶされそうになった時、ネガティブな感情が心を支配してしまうそんな時。私はこのアルバムから力をもらいたいなと思っています。是非とも多くの人に本作を聴いてもらい、その"言葉の力”を感じていただければと思います。

では、今回はこのへんで。






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2 Comments

kk  

はじめまして。最近このブログを知って
よく拝見しています。
改めてリリックを噛み締めたり
知らない事もあり勉強になっています。
ありがとうございます。

2017/02/22 (Wed) 08:57 | EDIT | REPLY |   

Pto6(ぴーとろっく)  

Re: タイトルなし

> はじめまして。最近このブログを知って
> よく拝見しています。
> 改めてリリックを噛み締めたり
> 知らない事もあり勉強になっています。
> ありがとうございます。


kkさま
コメントありがとうございます^^
そんな風に言っていただき、ブログ書き冥利に尽きます。
読んでいただき嬉しいです。本当にありがとうございます。

私もブログを書きながら、改めてリリックを味わったりしています^^
そして、そのたび、HIPHOPの魅力を再確認しています。

更新頻度は遅いですが、今後もたまに覗いていただければ幸いです。
このたびは、暖かいコメントありがとうございました^^

2017/03/10 (Fri) 18:46 | EDIT | REPLY |   

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