HIPHOPの必須トーク

日本語ラップ・MCバトルの“今”を語るブログ

Pto6の備忘録⑥(好きなライム集 Part.3)

どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は、“箸休め記事”として久しぶりに好きなライムについて書きたいと思います。好きなライムについてただただ好きなように書くという自分本位なこのシリーズも、今回でPart.3となりました。


Part.1を書いて以来つけ始めた“好きなライムメモ”の方にも、気が付けば相当の数のライムが溜まっていました。心を惹かれたライムに出会う度、もしくは思い出す度に備忘の為つけていたメモなのですが、それらを改めて見返すのはとても楽しい作業です。今回もそんなメモの中から、特に思い入れの強いライムについていくつかご紹介させていただきたいと思います。


好きなライム集Part.3

それでは好きなライムを、好きな理由や感想と併せてご紹介していきたいと思います。単なる個人的な備忘目的のまとめではありますが、誰かの何かのキッカケになれたら幸いです。


“目の前のお前のスマイルが栄養ドリンク それが俺の成長とリンク”
 【円】 by ふぁんく


ユニークな押韻が魅力のライム巧者ふぁんくが紡いだ、音と意味が丹念に編み込まれた美しいラインです。まず押韻という面でみると、短い韻が連続する小気味いい前半部分と、長めの言葉でしっかりと踏まれた句末という構成が、ベーシックな構成ならではの“確実な心地良さ”を聴き手に与えてくれます。また意味の面でみてみても、サイファーの円を囲む仲間の笑顔が、“現在における元気の源(栄養ドリンク)”にもなり、更には“今後における成長の糧(成長とリンク)”にもなるという、時間軸の異なる二つの効能があると表現されています。そして、そんな異なる二つの効能が、一つの押韻に寄り添い表現されているというところに、私は聴くたび感銘を受けてしまいます。ふぁんくにとっての仲間の大切さ、伝えたい感謝が伝わってくるラインですよね。



“言葉の無数の順列 いつも制作は苦痛の分娩”
 【雨ニモマケズ】 by ZORN


私は作品に、特に文章や歌詞といった“言葉”が生み出す作品に強い関心を持っています。それゆえ、“言葉”を用いたアーティスト、ZORNが吐露した上記のラインには心惹かれるものがありました。比較するのもおこがましい話ですが、こんなブログの記事でさえ一つひとつの言葉の選択には頭を悩ませてしまいます。それが、音や文字数といった多くの制約のある楽曲リリックを書こうものなら、その苦悩たるやどれほどのものでしょう。ちなみに私がこの楽曲を初めて聴いた頃は、ちょうど妻の出産に立ち合い、まさに“苦痛の分娩”を目の当たりにしたばかりでした。制作における生みの苦しみとは、あれほどまでの壮絶な痛みが伴うものなのか。このラインを聴いて、私はこれまで以上にアーティストに抱く尊敬の念が強くなりました。


“唾飛ばし罪と罰 次々と突き飛ばす 月とスッポン並みのスキルで証明”
 【オンリーNo.1アンダーグラウンド】 by LIBRO feat.漢(漢a.k.a.GAMI


思わず声に出して読みたくなるライム。やはりこのような純粋に音として気持ちの良いライムも私は大好きです。漢が得意とする“頭韻”を軸にしながら、リズミカルに配置されたライムがスピーディに展開されていく印象に残るラインです。私がラップを聴いていて漠然と抱いているイメージでは、“頭韻”はボクシングでいうところの“ジャブ”、そして“脚韻”“ストレート”です。前者はパンチにリズムを与え、後者は確実に急所を捉えます。そのイメージを用いるなら、この漢のラインはジャブとストレートをテンポよく繰り出すワン・ツーのような押韻の連打が見られますよね。そして、その気持ちの良いほどの華麗なパンチの応酬に、聴き手は見事にノックダウンされてしまうのです。

関連記事【風光る by LIBRO】


“自分を疑って肯定出来ない気持と敵対し原動力にしてきたい”
 【SEARCH】 by 鶴亀サウンド(ポチョムキン


自戒の念が込められたメッセージ性の強い文章の中にさりげなく韻を潜ませた、私が好きなタイプのラインです。「出来ない」「敵対」「てきたい」と、それぞれの韻が使い古されたものであればあるほど、その組み合わせの妙、格言とまで成立させた構成の妙が際立ちますよね。フロー、ライム、リリック、そのどれをとってもポチョムキンはその“緩急”が魅力のMCです。独特の空気感を纏い脱力した緩いバースを繰り出しながらも、時として、このような鋭いラインを澄まし顔で放り込んでくるのです。その緩急のギャップが勢いとなり、不意をつかれた聴き手の心へと深く突き刺さってきます。普段は自然体で、締めるところはしっかり締める。なんとも理想的な大人の男性像ではないでしょうか。そんなポチョムキンの魅力溢れる、味わい深いラインです。



“明日どっかへ旅立つ時 溜まったものを吐き出す時 考えてることと言ってることとやってることが交わる時 最終的に間に合う時 最高の為の最悪の日 乗り越えた朝が始まる時 感じる喜怒哀楽の喜”
 【HAPPY HAPPY】 by ICE BAHN(FORK


日常におけるささやかな幸せを切り取った、純粋に文章としても味わえる趣深いラインです。その幸せシーンの切り取り方も実に鮮やかで心惹かれてしまうのですが、それぞれの末尾はしっかりと6文字の押韻で繋ぎ合わされています。このように意識しないと押韻に気が付かないほど、あくまで自然にライムを散りばめるのがFORKの凄さですよね。そして、このラインの肝はなんといってもラストの部分でしょう。それまで「時」「の日」という同じ母音が句末で何度も繰り返されてきたこのラインにおいて、最後の直前、その母音を反転させた「喜怒」という音が、しかも句の途中に登場します。そのことが絶妙なハズしの効果を生み、その後で「の喜」と再び同じ母音が句末に戻る気持ちよさを際立たせているのです。最後がバッチっとハマるこの爽快感は、そんな周到なフリと絶妙なハズし、そして最後の華麗な落としによって生み出されているのではないでしょうか。


ライム3 

さて、今回は【好きなライム集Part.3】を書かせていただきました。Part.4につきましても、また好きなライムのストック(思い出したり、新たなものに出会ったり)が溜まったら書かせていただきたいと思っています。もし興味を持っていただける稀有な方がいらっしゃれば、次回も読んでいただけたら幸いです。

では、今回はこのへんで。
関連記事

0 Comments

Leave a comment

ブログパーツ