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新作音源に小さく貢献㉑(Bouquet by NORIKIYO)

どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は、3/31に発売したNORIKIYO待望の7thアルバム【Bouquet】について書きたいと思います。期待に違わない完成度と聴き応え。嬉々として何度も繰り返し聴いてしまう、そんな素晴らしい作品に仕上がっています。

それでは、本作についての感想を書いていきたいと思います。

【Bouquet by NORIKIYO】
Bouquet by NORIKIYO 

<収録曲>
1. 朝へ運べ (Produced by Alix Balan)
2. Lost Sign (Produced by DOPE B)
3. It Ain’t Nothing Like Hiphop (Produced by T-Jonez)
4. 1人の人として (Produced by DOPE B)
5. コンビニ (Produced by Paper Boy Business)
6. 相模見聞録 (Produced by K.Royale)
7. お好きな様に feat. SHINGO★西成 (Produced by Mitchell)
8. やるなら今 (Produced by K.Royale)
9. 何で? (Produced by J.C)
10. Crazy World (Produced by Mitchell)
11. Learn 2 Learn feat. ZORN (Produced by K.Royale)
12. Memories&Scars feat. 七尾旅人 (Produced by T-Jonez)
13. 枯れない花束 (Produced by DOPE B)
14. 満月 (Produced by IGOR)
15. この手に (Produced by K.Royale)


NORIKIYOは私にとって、“ラッパー”としてはもちろん、それ以前に“ミュージシャン”として好きなアーティストのひとりです。ラップ、ヒップホップ特有のカッコ良さを超えた、“音楽”としての普遍的なクオリティ、そこへの強い拘りと作り手としての誠意を彼の作品からは(特に、最近のものになればなるほど)感じるのです。

そんな彼の前作【如雨露】は、まさにジャンルという壁の向こう側を意識した、普遍的テーマで作られた作品でした。恋、失恋、逢瀬、別離・・・。メロウなナンバーが基幹を担った、敢えてヒップホップ的トピックを排除した作品。音楽としての普遍的な強度を持ち合わせたこの作品は、ヒップホップ・ミュージックとしての射程距離を飛躍的に拡大させる、大いなる可能性を秘めた作品でした。

そんなチャレンジングな前作を経て作り上げた今回のアルバム【Bouquet】。NORIKIYOは、更に研ぎ澄ませた普遍的な音楽性をベースにしながらも、本作で再びHIPHOPが持つ可能性に真正面から向き合っているように私は感じました。ラップだからこそできる詳細な描写、躊躇しない自由な表現、棘のあるユーモア、ストレートな社会風刺・・・。前作とは一転、HIPHOP作品に求めるあらゆる要素が今作には詰め込まれているように感じたのです。そういう意味では、なんと総合力の高いHIPHOPアルバムなのでしょうか。NORIKIYOという、ラッパーとして、表現者としての総合力の高さが如実に表れている作品だと思います。

“REGRET”、“SECRET”、“LOVE”が前作におけるテーマでしたが、今作ではその中のひとつ“REGRET(後悔)”を改めて深くまで突き詰め、再びアルバムテーマとしています。後悔という負の感情を、生きていく糧、先へと進んでいくためのモチベーションにまで昇華させている今作は、HIPHOP的テーマを扱っていながらも普遍性の高いメッセージを内包し、多くの人の心に響きうる音楽的強度を持ち合わせています。まさに、現時点でのNORIKIYOの全てが詰め込まれた“集大成的作品”といえるのではないでしょうか。是非ともジャンル関係なく、多くの人に聴いてもらいたい作品です。

さて、そんな素晴らしい今作において、ここでは私が特に印象の残ったいくつかの楽曲について書いていきたいと思います。しかし、本アルバムは、タイトルの通り15輪の“言葉の花”が束ねられ構成されている“花束”のような作品です。ネガティヴなものも含め、全ての言葉が集結することではじめて、この作品は“花束”(=人への贈り物)にまで昇華されるつくりになっています。そのため、感想は“花”単位で書かせていただきますが、是非とも“花束”の中の“一輪の花”として、流れの中で味わっていただければ幸いです。

◇◇◇◇◇

■Lost Sign


言葉を扱うプロフェッショナルなアーティストとして、私はNORIKIYOのことを尊敬しています。そんな彼の“歌詞力”が遺憾なく発揮されている本楽曲では、その言葉のひとつひとつが、確実に私たちの心の急所を捉えてきます。本アルバムのテーマである“後悔”についてストレートに語られている楽曲ですが、最終的には、それらを受け入れて生きていくんだという力強いメッセージへと収斂していきます。このような、謂わば“ありきたり”なテーマですらも言い回しの妙で聴く人の心に響かせてしまう、NORIKIYOのリリカルな力量を再確認することができる一曲です。


It Ain’t Nothing Like Hiphop


jazzyなトラックの上に、これぞHIPHOPといった王道でストレートなラップを乗せた、とにかく音としてだけでもカッコいい軽妙洒脱な楽曲です。そして、上記のリリックの引用部分からもわかるように、楽曲の端々にHIPHOPや仲間に対するNORIKIYOの溢れんばかりの愛が詰め込まれています。フックにおける英語表現の変更に伴い再編集され話題となったMVも、HIPHOPカルチャーへの敬意が込められた昔ながらの王道なつくりとなっていて、とてもいいですよね。1stアルバムの発売から10年経ったという記念も込めて、そのアルバムの代表曲【DO MY THING】のMVと同じ場所で撮られているというところにも、ファン心をくすぐられてしまいます。


1人の人として


日本HIPHOPシーンで起きている現在のブーム、流行を追いかけることに躍起となるラッパー達・・・。それらに対するNORIKIYOの正直な心情と、チクリとしたディスっ気を含ませた攻撃的な楽曲です。特に私は、他のラッパー達へのメッセージとも取れる一部のリリックが胸に刺さりました。USの流行に対する日本のラッパー達がとるアクションはラッパーによって様々で、これまでもシーンにおいてその是非が何度も議論されてきましたが、当然ながら、どちらがどうという明確な答えはありません。しかしリスナーからすると、それだからこそ、それぞれのラッパーがどう考え、どのようなスタンスをとるのかに興味を持ってしまいます。曲中のバースからは、ピカソを引き合いに出してしまう程のアーティストとしての高い志と、他のラッパー達を鼓舞したいというNORIKIYOの熱い想いを私は感じ取ることができました。


Learn 2 Learn feat. ZORN

若かりし頃、それぞれヤンチャしていた過去をもつNORIKIYOZORNの二人が、その愚かしい過去を振り返りながら、それに対する後悔、そこから学んだこと、気づいた大切なものについて、心を込めて歌い上げている楽曲です。利き手で掴める大切なものはひとつだけ。過去からの学びを通し、NORIKIYO“自分が満足できる作品を作ること”に、ZORN“家族と過ごす普通の幸せな日々”に人生の価値を見出します。中でも、安定した平凡な生活に対し嫌悪感を示していたかつてのZORN少年が、ストリートでの過酷な経験を経て、大切なものを徐々に見つけていく成長の過程は、鮮やかに描かれています。「いいかyoung gun見失うな」という【DO MY THING】の引用から入るラストバースは、今のZORNにしか書けない出色のパンチラインだと思います。


Memories&Scars feat. 七尾旅人

NORIKIYOの人生における転機となった、ビル4Fからのダイブ事件のことが改めて詳細に語られた楽曲です。楽曲の構成としても、その“ダイブ”を転換点として、曲調がガラッと変わるトラック構成となっています。前半をMemoriesパート、後半をScarsパートと呼んでもいいかもしれませんね。客演の七尾旅人による、飄々としながらも心情の機微を繊細に表現した歌声が、当時のNORIKIYOの不安定な心中を巧みに映し出しています。これまでもインタビューや楽曲の中で、何度も語られてきたこのエピソードですが、改めてあの日に対するNORIKIYOの深い後悔の念を感じることができます。しかし、あの日がなければ今のNORIKIYOがないのも事実です。後悔するだけでなく、その後立ち上がることがいかに大切なのかを、しみじみと噛みしめることができる楽曲です。


枯れない花束


タイトルにも“花束”とついている通り、本アルバムのコンセプトが固まるキッカケをつくったという重要な楽曲です。初めてこの楽曲を聴いた時、曲中にでてくる「お前」や「君」とは一体誰なんだろうかといろいろ想像をしていたのですが、先日公開されたインタビューで、この曲が離婚した奥さんと幼い娘さんに宛てられた曲だということが自身の口から明かされていました。その事実を知ってから聴きなおすと、また違った響き方をしますよね。ちなみに、前述の【1人の人として】にもピカソの例がでてきていましたが、この楽曲でも自身の作品を絵画のように例えた表現がでてきて、面白いなと感じました。NORIKIYOが“表現”や“アート”というものをどのように捉えているかが、垣間見れる気がしますよね。

◇◇◇◇◇

今回上記で取り上げなかった楽曲達も、どれも聴き応えのある楽曲ばかりです。冒頭からアルバムテーマを明確にした素晴らしい導入をつくる【朝に運べ】。様々な人や情報が蔓延する現代を巧みに描いた【コンビニ】。地元の話を歌った【相模見聞録】と、客演のSHINGO★西成の存在感が光る【お好きな様に】は、とにかく楽曲としてのカッコ良さが際立っています。ストレートなメッセージをユーモアを織り交ぜ歌うNORIKIYOらしさが溢れた楽曲【やるなら今】。繰り返しのフックがやるせない現世と共鳴する【何で】。世の中の悲しき矛盾を嘆いた社会風刺曲【Crazy World】。本アルバムの曲で一番最後に完成したという神秘的な楽曲【満月】。そして、傑作アルバムを締めるに相応しい、決意に満ちた力強い楽曲【この手に】

NORIKIYOにしか作れない、言葉の“花”を丹念に束ねてつくった“花束”。何度でも言いましょう。本作は、是非ともアルバムとして一枚通して聴いていただきたい作品です。本作を通じてアーティストNORIKIYOのその高い感性と志を、HIPHOPや人生に対する彼の愛を、是非とも感じ取ってもらいたいなと思います。

それでは、今回はこのへんで。






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