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日本語ラップ・MCバトルの“今”を語るブログ

Pto6の備忘録⑦(MCバトルの好きなミカタ:名前踏み)

どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は、以前書いた“着地”の記事に引き続き、私がMCバトルを観る上で楽しみにしている要素について書きたいと思います。

今回取り上げる要素は“名前踏み”です。これまた“着地”の時と同様、様々な意味合いで使われている言葉ですが、ここでいう“名前踏み”とは、“MCバトルにおいて対戦相手のMC名を韻で踏みつけること”と定義させていただきます。

この“名前踏み”のライムは、即興でなくても、ある程度事前にネタとして準備することが可能なものです。更に言えば、有名なMCと対峙する際には、これまでの先人達が生み出した多彩なネタのストックもあるため、使い古されたものでもよければ、比較的どんなMCでも繰り出すことができる技なのではないかなと思います。(使い古された代表的な例でいえば、晋平太⇒新鮮さ(真剣さ)、呂布カルマ⇒欲張るな、等が思いつきます。)

しかし、そんな使うことに関しては比較的ハードルが低いありふれた技だからこそ、これまでなかった新鮮さやユーモア、攻撃性を纏わせることができた時、人々の記憶に残る印象的なバースを生み出すことができます。そして私はそんな印象に深く刻まれる巧みな“名前踏み”が大好きでたまらないのです。

それでは、さっそく私が強く印象に残っている“名前踏み”の例について、いくつか書かせていただきたいと思います。ただ、“着地”の記事の時と同様ですが、なにも“名前踏みが凄いバトル10選”的なものを作るのが目的ではなく、あくまで“名前踏み”について語りたいだけなので、今回も比較的有名で且つ私が個人的に好きなバトルから選出しています。その点を踏まえて、読んでいただければ幸いです。それではいってみましょう。



好きな名前踏み


“MC松島 俺が始末しま~す!”
ふぁんく vs MC松島@UMB2014


対戦相手への宣戦布告会場への宣誓という立て付けながらも、聴く人をくすりとさせるユーモアと、気持ちが良いほどの韻の固さを兼ね備えたこのバースは、出会って以来何度も口にしてしまうほどお気に入りのラインです。実のところ、このラインについて書きたいが為に、このテーマの記事を書いたといっても過言ではありません。このラインは単体でみても、母音のみならず子音まで同じ音を使い韻を踏み、それで且つ意味を通すという高次元なことをやっているのですが、その前に繰り出したバース“早く帰る支度しな”ともしっかりと韻を踏んでおり、これはもはや凄いとしか言いようがありません。このバースに続くラインで言っているとおり、“ユーモア”、“ライム”、“リズム”、“フロー”、“バイブス”、その全てを兼ね備えたふぁんくの魅力を味わうことのできる、らしさ溢れるラインのひとつだと思います。ちなみに、同じくUMB2014にて、ふぁんくがサイプレス上野に繰り出した“臭いブレスの不細工なサイプレス上野”も、同じくらい大好きなラインです。


“お~すまん すまん 押忍マンだったな”
R-指定 vs 押忍マン@フリースタイルダンジョン1st season Rec6-2


MC名というのは、当たり前な話ですがMC達にとって大切なものです。親から授かった名前とはまた違い、自らが、自らの拘りや想いを込めて自分自身に授けた名前であるからです(もちろん例外もありますが)。そんな大切なMC名を踏みつける“名前踏み”では、それゆえ滑稽な踏み方をすればするほど、相手へのダメージを増すことができます。ICE BAHNの有名なパンチラインに“ダサい言葉ほどライムは美しい”というものがありますが、まさにバトルにおける“名前踏み”では、韻を踏む言葉や踏み方がしょうもないほど、その効果がより発揮されるのです。このバースにおけるダジャレ感溢れる馬鹿馬鹿しさは、会場の笑いの誘い水として、そして相手をイラつかせる挑発として最大限効果を発揮しているように思います。R-指定は本当に相手をおちょくるのがうまいなぁと改めて関心してしまったラインです。


“MC☆ニガリ 赤い稲妻? 腐った名前で馬鹿粋がるな!”
SURRY vs MC☆ニガリa.k.a.赤い稲妻@UMB2014


着地の記事でもご紹介したこのバースですが、“名前踏み”という観点でみてもやはり大好きなバースです。このように、a.k.a.の別称をいじるライムも面白いですよね。このバースに関していえば、おちょくりというジャブを通り越して、完膚なきまで打ちのめす強力なストレートとしてもはや機能しています。もしこれがニガリでなく精神力の弱いMCだったら、その後別称を使い続けられないほどに心が折られてしまったとしてもおかしくありません。ちなみにニガリでいえば、最近バトルで触れられることの多いブラックサンダーCMネタへのアンサーとして自らが繰り出した“黒いイナズマ 帰ってきたんだよ強いニガリが”(vs Rude α@第10回高校生RAP選手権)という“セルフ名前踏み”のラインも大好きでとても印象に残っています。


“TKda黒ぶち もしくは 陰険な嘘つき”
NAIKA MC vs TKda黒ぶち@UMB2012


韻を踏まないスタイルをとることで有名なNAIKA MCですが、そんな彼の固いライムがみられる珍しいラインです。その後のインタビューでの発言によると、このライムはネタとして事前に仕込んではいたものの、嘘をつかないTKに対しては使いどころがないだろうと思っていたものだったそうです。それが、この日に限ってTKが“今日は会社に嘘ついてUMBに来てる”という意味合いのラインを出したものですから、NAIKAはそれを逃さずにこのラインを放ち、それが見事に相手に突き刺さり勝利を掴むことになりました。やはり“名前踏み”はMC名が長ければ長いほど難しいわけですが、それゆえに、その長さで的確なライムを繰り出せたときには、このようにとても印象に残るラインになりますよね。真面目で硬派なイメージだったTKの印象を、言葉ひとつでひっくり返すNAIKAの手腕。その凄さをを改めて痛感したラインでした。


“仙台のGIL 自分の限界を知る”
R-指定 vs GIL@UMB2013


さきほど、“名前踏み”は長いMC名であるほど印象に残るラインが出しやすいと書きましたが、このようにMC名に修飾語を付けることで、短いMC名でも印象的な“名前踏み”ラインを繰り出すことはできます。もちろん、その修飾語は韻を踏むためだけに取って付けたようなものでない方が好ましいわけですが、このラインはその点も抜かりありませんよね。また、韻というのは“踏む言葉同士の意味的距離”が離れているほど気持ちが良いわけですが、このラインはその点も見事です。ここ数年、着々と実力を伸ばしプロップスを獲得してきたGILに対し“仙台のGIL”と、「もはやお前は仙台を背負うMCだ」(GILは福島のMCですが、UMBには宮城代表・仙台代表として出場した為)と認めるような発言をしたかと思いきや、“自分の限界を知る”と続け、「ただ、所詮お前はそこまでのMCだ」と言い放つわけです。この“持ち上げて落とす”というDISのお手本のような構図が見事で、とても印象に残っているラインです。

名前踏み 

さて、今回は久しぶりに、MCバトルにおける個人的に好きな要素“名前踏み”について書かせていただきました。上記には、このテーマで考えた時に私がすぐに思い浮かんだもの(それだけ印象に残っていたということですが)を書かせていただきましたが、きっと、私が思い出していないものや、知らないバトルでも、印象的な“名前踏み”のラインは数多くあることでしょう。私にとって大好きな要素ですので、もしご存知の方がいらっしゃれば教えていただけると幸いです。

ライム、フロー、バイブス、アンサー、パンチライン・・・。MCバトルには、王道の楽しみ方としても様々な要素が提示されています。しかし、それ以外の細かいポイントにも目を向けてみると、その楽しみ方は無限に広がっていくのではないでしょうか。ある意味“フェチ的”とも言える、そんなMCバトルの細かい好きなポイントについて、これからも定期的に書いていけたらなぁと思っています。もしご興味のある稀有な方がいらっしゃれば、次回も読んでいただければ幸いです。

それでは、今回はこのへんで。




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2 Comments

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はじめまして。いつも更新楽しみにしています。
僕はUMB2014予選のR-指定の「ガーリー君」と「ガーリック」の踏み方が好きです。その後の「筋ジストロフィー」までの流れも含めてですが。

2017/05/03 (Wed) 05:39 | EDIT | REPLY |   

Pto6(ぴーとろっく)  

Re: タイトルなし

> はじめまして。いつも更新楽しみにしています。
> 僕はUMB2014予選のR-指定の「ガーリー君」と「ガーリック」の踏み方が好きです。その後の「筋ジストロフィー」までの流れも含めてですが。


コメントありがとうございます。
DVDにも収録されたそのライン(たしかUMB Podcastでも紹介されましたね)は、私も印象に残ってます^^コメントいただいて、改めて見返してみましたが本当にすごいですね!ガーリー君→ガーリック→ニンニク料理→金色のトロフィー→筋ジストロフィー→真実を決める日。ほんとライミングによる連想ゲームのはずなのに、話も見事につながってますし、語彙のトピックも本当に多彩です(筋ジストロフィーという病名は、私はこのバトルで初めて知りました。笑)

素敵な名前踏みを思い出させてくださりありがとうございました^^この勢いでUMB2014予選を見返そうと思います。笑

2017/05/06 (Sat) 19:40 | EDIT | REPLY |   

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