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新作音源に小さく貢献㉒(Jasmine by 唾奇 x Sweet William)

どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は、先月発売された唾奇Sweet Williamによるダブルネームの作品【Jasmine】について書きたいと思います。ラッパーとして、トラックメイカーとして、現在、多方面から熱い視線を送られている二人が、ここぞというタイミングでリリースした本作は、その高い期待感を裏切らない素晴らしい作品になっています。

ここでは、そんな本作を聴いて私が感じたこと等について書いていきたいと思います。

【Jasmine by 唾奇 x Sweet William】
jasmin 

<収録曲>
1. South Side Ghetto
2. 語リ
3. 白内
4. Kikuzato(Pianiment Remix)
5. 街から街
6. The Girl From Yosemiya
7. Good Enough feat. kiki vivi lily
8. Made My Day
9. Frenchness
10. Girl feat. Jinmenusagi
11. Let Me
12. 道 -Tao-(Soulera Remix)
13. Profile



天気に恵まれた今年のGW。外出することが多くなり、そのせいで久しぶりに音楽から遠ざかる日々を送っていました。そんな期間を経て、数日ぶりにイヤホンを耳にした今日の昼下がり。最初のアルバムに選んだのは、連休前から愛聴していた本作でした。耳にした瞬間、全身に沁みわたる心地よい音楽。昂りに昂った“音楽欲”が一気に満たされていく幸せな快感を感じることができました。その沁みわたる感じはまるで運動後に飲むポカリスウェットのよう。沖縄アーティスト特有の“ユルさ”溢れる唾奇のラップと、それに絡みつくSweet Williamの甘美なビートが、GW終盤戦に漂う怠惰な空気感と絶妙にマッチして、リラックスした幸福なひと時を過ごすことができました。

そんな素晴らしい二人のコンビネーションが冴えわたっている本作。これまでも、いくつかの楽曲でコラボしてきたこの二人ですが、このアルバムでは贅沢にも1枚を通して綿密に、この両名にしか創り得ない唯一無二の世界観を築き上げています。昨年あたりから、他アーティスト楽曲へのフィーチャリングやプロデュースで徐々に注目とプロップスを集めてきたこの二人ですが、その高い注目に釣り合うだけの実力を、いや、それすらもまだ過小評価であったということを、本作によって見事に証明して見せたのではないでしょうか。

ビートを奏でるはSweet William。私は彼が作るトラックの“音の輪郭”がたまらなく大好きです。彼の音は私に、削ってからしばらく経った“一番書きやすい状態にある鉛筆の芯の丸さ”を想起させてくれます。そのほどよい丸みを帯びた心地の良い音は、シャープでありながらもどこか温もりを感じさせ、繊細な支流と力強い本流を滑らかに描き分けることで、奥行きのある立体的な世界を作り上げ、その音の世界に我々を気持ちよく誘ってくれます。また、端々でみせるサンプリングの良質なネタ使いにも終始ニヤニヤとさせられてしまいます。個人的にはNujabesLuv(Sic)と同じネタを使った(というか、声ネタも一緒のところをみるとLuv(Sic)そのものがサンプリング元?)【白内】のネタ使いは大のお気に入りです。


そして、その極上のビートに跨るのはラッパー唾奇です。全編通してリラックスした“カジュアルなラップ”が魅力的な彼。一聴するとラフにビートと戯れているかのようにも感じてしまいますが、どこをとってみても、彼の手にはビートの手綱がしっかりと握られているということに気づきます。私は初めて彼のラップを聴いた時「ビートに対する音の抜き方が上手いラッパーだなぁ」と感銘を受けたことを覚えています。そんな唾奇の“ユルさの中にある緻密さ”を感じることができるのは、ビートアプローチだけではなく、リリックにおいても同様です。開けっ広げな飾らない日常描写の中に散りばめたリリカルな表現の数々。不意に心掴まれること請け合いです。

さて、そんな魅力的な二人がつくった楽曲についてですが、ここでは現時点でMVが公開されている2曲を用いて書いていきたいと思います。他の楽曲達もどれも素晴らしいものばかりなのですが、如何せん彼らの楽曲についていえば、百聞は“一聴”に如かず。実際に聴いてみるに勝るものはありません。彼らの迸る魅力は、この2曲を聴いただけでも十二分に感じ取ってもらえるのではないかと思います。

【Good Enough feat. kiki vivi lily】


fakeで固めた丸裸 
テレビと同じ人の愛し方

唾奇の過去の恋愛事情が生々しく垣間見れる一曲。他の楽曲と同様、等身大の言葉だけで淡々と赤裸々に語られていきます。『小さくもならないし身の丈も超えない』ことに拘りを持っているとインタビューで語っていた唾奇ですが、まさにその飾らないスタンスがこの楽曲でもしっかりと貫かれているのがわかります。唾奇は曲だけを聴いていると、世間一般でいう“だらしのないダメ男”のようなのですが、HIPHOPという音楽を通すとなぜこんなにも魅力的に感じるのでしょうね。この楽曲に限りませんが、彼が繰り出すざっくばらんな言葉達は、上品なSWのビートと不思議にも調和し、互いが互いの良さを引き立て合うという、まさに狙い通りの化学反応が起きているように思います。

【Made My Day】


今日を生きるタメだけの現実をたらふく食う

気候のいい晴れた昼下がりにお酒を飲みながら是非とも聴いてみたい一曲。その洒脱なメロディと軽快なリズムは、もはやボサノバミュージックとしても成立してしまいそうな心地よさです。先ほどの楽曲【Good Enough】では“何かと元カノとかのことを書いてるのは手っ取り早くMONEY作るためだから”なんて言っておきながら、次のこの曲では“金が無いから歌ってんじゃ無ぇ ふざねんじゃね”と平然と唄ってしまうところに、照れ隠し等を駆使してなかなか掴ませてくれない唾奇のミステリアスな人物像がよく表れているなと感じました。そんなところにも、彼が持っている魅力の秘密が隠されているのかもしれませんね。

◇◇◇◇◇

上記2曲は、本アルバムを象徴するかのような楽曲たちです。そのため、この2曲が好きだという方は、アルバムとして聴いてみても間違いなく気に入るのではないかと思います。ただ、そんな全編通してムーディで心地の良いトラックが並ぶこのアルバムにおいて、最初と最後の楽曲に他とは毛色の異なる楽曲を敢えて配置し“単に心地の良いアルバム”としていないところに、唾奇とSWの“一筋縄ではいかせない”という拘りのようなものを私は感じました。まだまだ底知れない魅力を持っていそうなこの二人。それぞれのソロ作品がリリースされるのも今から楽しみで仕方ありません。

では、今回はこのへんで。



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