Pto6(ぴーとろっく)

Pto6(ぴーとろっく)

どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は、先月末に発売された環ROY待望の5thアルバム【なぎ】について書きたいと思います。たゆたう音像が煌びやかに世界と反射する、なんとも心地よい作品です。

ここでは、本作を聴いて抱いた感想やその魅力について書いていきたいと思います。

【なぎ by 環ROY】
環ROYなぎ 

<収録曲>
01. あらすじ(環ROY)
02. Offer(K.A.N.T.A)
03. 食パン(Shingo Suzuki)
04. はらり(三浦康嗣)
05. On&On(K.A.N.T.A)
06. 都会の一枚の本(環ROY)
07. ことの次第(Daisuke Tanabe)
08. exchange//everything(Ametsub)
09. ゆめのあと(Taquwami)
10. フルコトブミ(Arμ-2)
11. めでたい(蓮沼執太)


本作は、聴いていると鮮明な映像が目の前に浮かんでくるアルバムです。しかもそこに立ち上がる映像は、聴く環境やタイミング、聴き手のその時の心境によって幾重にも変化していきます。音楽というフィールドに留まらない、柔軟で幅広いそのアーティスト活動を体現するかのように、まさに“環ROY”そのものが色濃く反映された、これまでのキャリアの集大成とも言える素晴らしい作品に仕上がっています。

「凪」「薙」「梛」・・・。多層化されたイメージが込められたというタイトル「なぎ」ですが、私がアルバムを聴いてもっともイメージとして残ったのはやはり「」という印象でした。全編通して纏った穏やかで心地よい空気感。それでいて、どこか張り詰めた緊張感が微かに保たれていて、“嵐の前の静けさ”という趣も帯びている。そんなふうに一言では言い表せられない、複雑で入り組んだ、相反する情景をも内包した奥深い世界観が、繊細で美しいトラックと暖かみのある環ROYの声によって構築されています。

「日本人として、母語である日本語をもっと自覚をもって扱おう。」そのように志し、丹念に言葉を選別し作られたという本作は、日本語の味わい深さ、言語としての面白さを再確認させてくれる、そんな作品に仕上がっています。それら日本語に対する高い意識は、本作について語られたいくつかのインタビューの中で本人により丁寧に説明されており、環ROYの真摯で生真面目な性格と、本作に込められた尋常ではない拘りを垣間見ることができます。

察すること、空気を読むことに長けた“高文脈言語”である日本語。環ROYはそんな日本語の特性を最大限に活かし、解釈を呼び込めるたくさんの余白を意図的に楽曲の中に設けたと言います。歌詞の行間を埋めるのは聴き手ひとりひとりの自由な想像力。そこには十人十色のストーリーが自然と立ち上がるのです。そのため、環ROYは曖昧性を排除した合理的な和製漢語(漢字二文字の熟語)を極力避け、作品全体の曖昧性≒余白を至る所に残しています。そのことにより、言葉にしていない部分の情報でも伝えることができる“日本語ならではの歌詞”の力を存分に堪能することができるのだと思います。

また、アルバムの曲間において、2首の短歌が詠まれるというのも本作がもつ大きな特徴のひとつです。特にIntroである1曲目【あらすじ】の後に詠まれる短歌は不意を突かれることもあり、思わずはっとさせられてしまいます。日本語の美しさ、その表現の奥深さを、自身の歌詞だけでなく、このように様々な形で私たちに提示してくれようとしているのが伝わってきますよね。そこで詠われる内容からも、日本古来から受け継がれている“目には見えないもの”を感じようとする、そこにこそ意味を見出そうとする日本人特有のイズムを感じることができます。

さて、そんな特徴をもった本アルバムですが、アルバムを通しての流れがとにかく素晴らしく、心地良い音楽に身を任せているうちに気づけば一枚聴き通しているほどアルバムとして纏まりがあります。しかしここでは、その中でも私が特に好きな楽曲をいくつかピックアップし、それぞれの曲について一言ずつ書いていきたいと思います。

【Offer】


“期待は決して恐れないための祈り”

アルバムに先駆け発表されたMVにより、私にこのアルバムの購入を決定づけさせたほど大好きな楽曲です。繊細で美しいトラックの上に、伝えることに比重を置いた耳馴染みの良いラップと、ジャンルを超越した普遍的なメロディが乗せられた、環ROYの良さがすべて集約されているといっても過言ではない楽曲です。楽曲において一番の盛り上がりを作るべきフックでドラムの音が消えるという珍しいつくりになっていますが、そのことによりなんとも心地の良い“浮遊感”が生まれているのがこの曲の大きな特徴です。トラックを構成するひとつひとつの音がとにかく良質で、そのことにより、そこに生まれる“無音”の部分にまで上品さを漂わせています。イヤホンでじっくり聴いていると、なんともいえない幸福感に包まれてしまう楽曲です。

【はらり】


“想いを口にすれば失くしてしまいそう、言葉はただの記録”

タイトルからもわかるように、“擬音語・擬態語”という日本語ならではの表現の妙味を味わえる楽曲です。これら表現のひとつひとつで、四季や風景、吹き抜ける風や草花の手触りまでをも想像させる力を日本語はもっていますよね。日本の自然や情景を感じさせる楽曲が多く収録されている本アルバムですが、その中でもこの楽曲は、それらにおける細部の息遣いまでをも私たちにリアルに感じさせてくれます。丸みのある日本語と親和性の高い環ROYの暖かい声が、神秘的なトラックと溶け合う様はとにかく美しく、いつまでもこの音楽に身を委ねていたいという欲求を聴き手に自然と湧き上がらせます。シンプルなフックは繰り返し聴く度に癖になり、全身と共鳴しながら身体に少しずつ沁み込んでいくのを実感することができます。

【めでたい】


“微笑みはもろく、涙は深い”

前作【ラッキー】の楽曲達と地続きになっているようなポップで明るい楽曲。前作がとにかく大好きだった私にとっては、アルバム最後に添えられたとても嬉しいデザート曲でした。2曲ずつが“対”になるように構成したと環ROY本人に語られていた本アルバム(【あらすじ】と【Offer】が対、【食パン】と【はらり】が対というように)。そういう意味では、この楽曲だけが単独で自立しており、1曲だけ聴いても成り立つと同時に、だからこそ、アルバムのどの楽曲とも繋がっているようにも感じさせてくれます。本アルバムを最初から通して聴いてきて、最後にこの楽曲が流れて来た時に感じる全身を駆け巡るような幸福感は、きっと体感した人にしかわからない、そんな格別な感覚です。是非とも、この感覚を多くの人に味わってほしいなと思います。


さて、今回は日本語の美しさ、味わい深さを再確認させてくれる素晴らしい作品【なぎ】について書かせていただきました。とにかくジャンルの好みを問わない、普遍性をもった作品となっていますので、HIPHOP好き/そうでないに関わらず、多くの人に聴いてみてほしいと思う作品です。気になった方は是非とも手に取り聴いてみ下さい。幸せな気持ちになれること請け合いです。

それでは、今回はこのへんで。 



関連記事
最終更新日2017-07-18
Posted by

Comments 0

There are no comments yet.

Leave a reply

ブログパーツ