Pto6(ぴーとろっく)

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どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は、久しぶりに“私的”名曲についての記事を書きたいと思います。唸るような暑さの中、ここのところず~と繰り返しで聴いてしまっている楽曲、スチャダラパー【サマージャム'95】です。

日本HIPHOPシーンが誇る夏のクラシック・チューンのひとつである本楽曲ですが、20年以上経った今聴いても未だ色褪せない、素晴らしい魅力を纏った楽曲です。

改めて、この曲について書いていきたいと思います。

【サマージャム'95 by スチャダラパー】


“誰のせい?それはあれだ!夏のせい”

久しぶりに一人で迎えた週末の朝。汗でべたつく身体。ムッとする部屋の熱気。急いでクーラーをつけ、氷入りの麦茶を喉に流し込む。この週末は普段家族がいたらできないことを思いっきり楽しもう、と意気込んだ昨夜の決意はどこへやら。とりあえずはと再びベッドに寝ころぶと、脇に積まれていた本を手に取り気まぐれにページをめくりだす。しばらくして文章を目で追うことにも疲れてくると、次はテレビのリモコンに手を伸ばし録り溜めていた映画を見始める。・・・そんな感じで、最小限の行動範囲の中、ダラダラと生産性の無い時間を過ごしているうちに、いつの間にか週末最後の夜を迎えてしまう。誰のせい?それはもちろん、夏のせいに違いない。

そんな怠惰な夏の時間を送っている時、私の頭にはいつもこの楽曲が自然と流れてきます。夏特有の気だるさとそこに漂う哀愁をテーマとしたヒップホップ曲は数多くありますが、やはりこの楽曲のもつ独特の空気感と、いつ聴いても心掴まれてしまうその“魔法”のようなキャッチーさは、他の曲には無い特別な魅力を持っているように私には感じられます。もったいないようで、実はすごく贅沢なダラダラとした儚くも煌びやかな時間。悪いのは全部夏のせいにして、夏だからこそできるゆったりとした過ごし方を思いっきり肯定してくれる。この曲は、そんな我々怠け者にとってはなんともありがたい存在なのです。

“再放送のドラマでも見て 気がつくと昼寝になってたりね”

私がこの楽曲に出会ったのは、リアルタイムではなかったもののまだ学生の頃でした。しかし、出会った当時はそこまでピンとこなかった為、これほどまでに好きになったのは、実はある程度大人になってからのことでした。思い返してみると、学生時代の夏は何かと忙しいものですもんね。部活でいえば大きな大会があったり、青春を謳歌するにはうってつけの楽しいイベントは多かったり、時には受験に向けてとにかく勉強に打ち込んだりと・・・。自分の当時を振り返ってみても、夏はどちらかというと「夏だ!アガレ!」系のアップテンポな楽曲を好んで聴いていたような気がします。

そういう意味で言うと、この曲のようなゆったりとした夏曲というのは、大人になればなるほどその良さが沁み込んでくるものなのかもしれません。また、「'95」とタイトルにもついているように、リアルタイムでその夏を知っている人達、そしてイベントSUMMER JAMを愛する人達にとっては、当時の思い出も蘇りながら一層この曲に浸れるんだろうなぁと想像します。

“ "サマージャム'95"なんつって 必ず直球のタイトルつけちゃってね”

スチャダラパーの魅力は、パッと聴きでも意味がわかる言葉遣いと音に乗る気持ちの良いフロウ、お笑い好きな3人ならではのユーモアと斬新な切り口、そして何より、BOSEとANIのナチュラルな掛け合いにより組み立てられる面白いリリック構成だと私は思います。ちなみにスチャダラパーは、2MCのBOSEANIとDJのSHINCOを含めた3人で、すべての楽曲リリックを書いていると以前語られていました。

最近復活したKICK THE CAN CREWもインタビューの中で、リリックには3人で意見を出し合う為、ソロの時とは違うクルーとしてのリリックが出来上がると語っていましたが、やはりクルーというのはそういうものなのかもしれませんね。しかし、スチャダラパーの場合は、誰かのソロ曲であっても、スチャダラパーにおけるキャラクター像を踏まえ3人でリリックを書くほどの徹底ぶりらしいです。それにより、他には無いスチャダラパー独特のリリック構成ができているんでしょうね。この曲でもユルい二人の日常描写や掛け合いによりストーリーが展開していくという他にはない面白い構成が光っています。

そのような“スチャダラパー的な面白さ”を常に探求しつつも、“今この瞬間”を切り取るヒップホップ的な要素と、いつの時代も変わらない“普遍性”を纏ったポップ的な要素が、バランスよく両立されているのも彼らの楽曲の特徴です。まさに、この曲でも「'95」という当時の切り取りと、今聴いてもなお心に響く普遍性の両方を発揮していますよね。また、彼らの哲学である“ファック・ザ・システム”という要素も、本楽曲の端々で歌われる自分たちへも向けられた皮肉的リリックによく表れています。

“みんなそそのかされちまう ついつい流されちまう 結局暑さでまいっちまう”

そんなファニーでシニカルなリリックを支えているのが、なんとも心地よいグルーヴ煌びやかなまどろみを運んできてくれるSHINCOの名トラックです。ユルい空気感と穏やかな熱気を帯びたこの素晴らしいトラックは、20年以上経った今でも一切の輝きを失っていません。ず~とこの音楽に包まれて身を揺らせていたい気持ちになってしまいます。多少の変化はあるものの、基本的には同じループが繰り返されるだけのシンプルな構成のトラックですが、そこに前述の発展性のある面白いリリックが乗ることにより、絶妙のバランスを生み出しています。何かしたいけど特別な何かが起こるわけではなく、特に何があるわけではないけどなぜか楽しくなっている。そんな夏の心境をリアルに映し出しているように思います。

ちなみに、この楽曲は昨年、鎮座DOPENESS環ROYU-zhaanによりカバーされ話題になりました。こちらのカバーも、これまた素晴らしい出来になっています。

【サマージャム'95 by 鎮座DOPENESS×環ROY×U-zhaan】


オリジナル楽曲の良さはそのままに、鎮座と環というKAKATOのふたりが纏う本家にも負けないほどの心地よい脱力感と、U-zhaanが演奏するインドの打楽器タブラとカンジーラがとにかくクセになるリズミカルなトラック。なんとも素敵なカバーではないでしょうか。そしてそれと同時に、スチャダラパー原曲の偉大さを改めて痛感させてくれますよね。

サマージャム'95 

以前、BOSEは書籍【ラップのことば】の中で、完璧なリリックについて問われた時に、このように答えています。

“「どうだ!」みたいなガチガチのものより、少し隙があってみんなが受け入れやすい曲こそが完璧なのかもしれないね。”

本当にその通りだと私も思います。そして、この曲【サマージャム'95】はまさにそれを実現させている楽曲なのではないでしょうか。これから何年経っても、いつまでも皆に愛され続ける楽曲ではないかと私は思います。

・・・そうこういっているうちに、リピートで流していたこの曲がまた終わりを迎えてしまいました。もうこれで何回目のリピートでしょう。そろそろ別の曲に変えようか。・・・いや、次は何を聴こうかと考えるのすら今は億劫だ。すべては夏のせいにして、しばらくはまだリピートを続けることにしたいと思います。

それでは、今回はこのへんで。



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最終更新日2017-08-04
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