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新作音源に小さく貢献㉖(SWEET HELL by I-DEA)

どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は、本日発売日(iTunesは先行発売)を迎えたI-DEAのニューアルバム【SWEET HELL】について書きたいと思います。

本作は、もともとCPF(CREATIVE PLATFORM)のプロジェクトとして製作され、会員限定に配布されていた【DeAtmosphia】という作品を元に、Remix曲や新曲を追加して再構築したアルバムとなっています。市販での発売がアナウンスされたときは、CPF会員を中心にネット上で大いに物議をかもしていた問題作です。

しかし作品の中身はというと、「流石はI-DEA!」と賞賛したくなる素晴らしい出来栄えになっています。ここでは、そんな本作を聴いた私の感想について書いていきたいと思います。

【SWEET HELL by I-DEA】
sweet hell 

<収録曲>
01. Free feat. MILES WORD
02. Wake Up feat. SALU
03. Where are you now Remix feat,道, MEGA-G
04. Ma $hit feat. Sticky
05. 俺の使い道 Remix feat,L-VOKAL, R-指定
06. DeA Boyz feat. D.O
07. Walk Remix feat. D.D.S, BES
08. Sweet Hell feat. BES
09. 花籠 feat. NORIKIYO
10. Paranoid feat. GOODMOODGOKU
11. あの夢から覚めたら feat. GOODMOODGOKU
12. I know I feel feat. FAKE-ID a.k.a FRAME



私がI-DEAというプロデューサーを明確に意識しだしたのは、SEEDA【GREEN】という作品を聴いた時でした。その作品以前にも既にシーンでは名前が売れていたI-DEAですが、【GREEN】における彼のトラックメイクは私に稲妻のような大きな衝撃を与えました。それゆえ、以前このブログで【GREEN】について書いた時は「“SEEDAという類まれなる個性をもった楽器”を使いこなしたプロデューサーI-DeAの作品」であるとまで書いています。そしてこの作品に出会って以来、I-DEAは私にとって特別なプロデューサーとなりました。


そんなI-DEAの新作である【SWEET HELL】。導入にも書いた通り、全てのファンが望む形ではない“物議をかもすリリース”となってしまいましたが、それでも本作を聴いた人は、アルバム内容については確実に満足できるのではないかと私は思います。(さりとて私はCPF会員でないため、本作の元となった【DeAtmosphia】は未視聴で、それとの比較はできないのですが・・・)

I-DEAらしい繊細さ力強さを兼ね備えた、HIPHOPミュージックとしての純粋なるカッコ良さを発揮する瑞々しいトラック。当然のことながら前作と比べてみても、そのトラックは“らしさ”を残しながらも、確実な進化の歩みも感じさせてくれます。

彼のトラックからは、音がつくりあげる空間の広さを感じます。音が三次元に配置されていて、それゆえに立体的な世界が耳の中に広がっていくようです。その為、大きめの音で聴いていてもうるさい感じが無く、音に包まれるような感覚を得ます。もしかしたら、プロデューサーとしてだけではなく、サウンドエンジニアとしてのスキルも有する彼だからこそ、作り上げることができる世界なのかもしれませんね。

◇◇◇◇◇

1曲目【Free】。本アルバムは、ビートの上を転がる艶やかなピアノの旋律で幕を開けます。その上に乗るMILES WORDのリリカルな詞と抑揚の利いたフロー。なんとも贅沢な冒頭曲でしょうか。続く2曲目【Wake Up】は、始まりこそ静かですが、その抑制された漲るテンションはフックを機にみるみると高まっていきます。次々と場面が切り替わるイメージ映像が頭に浮かんでくるようです。そして途中からはダークなSALUの一面が表れ、そのラップは徐々に攻撃性をも纏っていきます。下記のリリックには私は思わず唸ってしまいました。

“人生や芸術の先は君が思うよりもずっとずっと長い
 全て取り払った先に残るモノの話 そこで勝負できる奴らだけで話している話”


3曲目【Where are you now Remix】は本アルバムにおけるキラーチューンのひとつです。いつも通りメカニカルで心地よいラップを披露するMEGA-Gですが、そのフローはいつも以上に滑らかで気持ちよさそうです。I-DEAのトラックが潤滑油の役目を果たし、押韻と押韻の幾重にも嚙み合った無数の歯車が、いつもよりも勢いよく廻っているかのようです。Remixということで、原曲にはいなかったが新たにフィーチャリングしていますが、こちらもMEGA-Gに呼応するかのように完璧な仕事をしています。メリハリの利いた滑舌良いラップがとにかくカッコよく、音数をばっちりとビートに合わせた早口ラップ部分は必聴です。


続く4曲目【Ma $hit】は、哀愁溢れるトラックの上に、Stickyストリート感溢れるリアルな詞が書き綴られていきます。SCARS時代から変わらない、孤独感不信感から湧き出たシリアスな言葉達が心を打ちます。5曲目【俺の使い道】も楽曲テイストこそ違えど、これまたひとつの紛うことなき“リアル”が赤裸々に語られていきます。R-指定節全開のシニカルでコミカルでスキルフルなラップ。彼にしかできないラップ、彼にしか書けないリリックがこの曲でも健在です。こちらもRemixということで原曲にはいなかったL-VOKALが新たにフィーチャーされています。シニカルな視点をRと共有しながらもその独特のフローで楽曲に彩りを添えています。先日の引退宣言について撤回してくれないものでしょうか・・・。


6曲目【DeA Boyz】本アルバムにおける白眉です。ハートフルスキルフルD.Oのラップが冴えわたる珠玉の一曲。人の温もりを感じるI-DEAの暖かいトラックがそのラップを引き立てています。D.Oの普段のキャラクターからみるとギャップのあるこのような真っすぐな一面は、これまでもいくつかの楽曲の中で見ることができました。しかし、この楽曲で彼が語るポジティブな独自の哲学は、これまでのどの楽曲以上に私の心を打ちました。自らを“悪党”と語る彼の目に映る社会。それを真っすぐに歌い上げる路上のリリシストの声に、ぜひとも耳を澄ませてみてください。

“悪党すらも奏でる路地裏のブルース この時代に生きる理由”


7曲目【Walk Remix】BESの最新アルバム【THE KISS OF LIFE】に収録されている楽曲のRemix曲です。新たにD.D.Sがフィーチャーされています。BPM遅めのビートにどっしりとしたラップを落としていく二人の相性の良さたるや。続く8曲目【Sweet Hell】BESの楽曲。そして元のアルバム【DeAtmosphia】にも収録されていなかった新曲で、本アルバムのタイトル曲になっています。SweetなHell。まさにそのタイトルが示すとおり、地獄のようにハードな生活と光り輝く救いが共存するこの世界について歌われている楽曲です。この楽曲を聴いていると缶コーヒーBOSSのCMにおける“このろくでもない、素晴らしい世界。”という名フレーズが久しぶりに頭に浮かんできました。


9曲目【花籠】NORIKIYOによるナンバー。過去の女性に対して語りかけるようなリリックの内容から、もしかしたら離婚したという奥さんに宛てた歌なのかな、なんて勝手な想像を膨らませてしまいました。トラックが彼の哀愁を更に引き立てているように思います。手紙を読むような自然な文脈によるリリック構成なのですが、それでもラップとしてもカッコよく聴こえるのは、NORIKIYOのスキルゆえにできることなのだと思います。


続く10曲目【Paranoid】はGOKU GREEN改めGOODMOODGOKUによる楽曲です。相変わらず、脱力感ダウナー感漂う独特のフローで、本アルバムの中でも“ナチュラル・ボーンMC”の名に違わない唯一無二の存在感を発揮しています。続く11曲目【あの夢から覚めたら】も引き続きGOODMOODGOKU。こちらの楽曲は元アルバム【DeAtmosphia】にも収録されていなかった新曲です。前曲からの地続きとなっているような印象を受け、どうしても2曲セットで聴きたくなってしまいます。この2曲により本アルバム後半は完全にGOKUワールドが支配しているように感じます。そして本アルバム最後を飾る12曲目はGOKUと同じく北海道出身ラッパーFAKE-ID a.k.a FRAMEによる【I know I feel】。少ししんみりとした空気から一転、爽快感とともに気持ちよくアルバムを締めてくれています。エッジの利いたビートが力強く鳴り響くトラックに、思わず身体を預けてしまいます。

◇◇◇◇◇

I-DEA 

さて、今回は本日発売日を迎えたI-DEAの新作【SWEET HELL】について書きました。まだまだ十分に堪能しきれていませんので、夏季休暇も利用してこのアルバム世界を満足いくまでじっくりと味わっていきたいと思います。興味のある方は是非とも手に取って聴いてみてください。

それでは、今回はこのへんで。








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