Pto6(ぴーとろっく)

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どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は、豪華リリースラッシュ第2弾ということで、今週発売されたRHYMESTERの新作【ダンサブル】について書きたいと思います。そのタイトル名に違わず、心躍りだす快作になっています。

それでは、いってみましょう。

【ダンサブル by RHYMESTER】
ダンサブル 

<収録曲>
1.スタイル・ウォーズ  [Produced by DJ WATARAI]
2.Future Is Born feat. mabanua [Produced by mabanua]
3.Back & Forth [Produced by ALI-KICK]
4.梯子酒 [Produced by SONPUB]
5.Don't Worry Be Happy [Produced by DJ JIN]
6.ゆれろ [Produced by LIBRO]
7.爆発的 feat. サイプレス上野 & HUNGER (GAGLE) [Produced by DJ JIN]
8.Diamonds feat. KIRINJI [Produced by 堀込高樹(KIRINJI)]
9.カミング・スーン [Produced by SHIMI from BUZZER BEATS & Yota Kobayashi(D.O.C.)]
10.マイクの細道  [Produced by BACHLOGIC]



私はこのアルバムをできるだけ事前情報を頭に入れないようにして聴きました。半分は忙しさにより事前情報を読み聞きする暇がなかったということもあるのですが、残りの半分はタイトルやジャケットから感じ取った“体感型のアルバムだろう”というインスピレーションを元にした意識的な遮断でした。

そして実際に本作を聴いてみると、タイトルから私が勝手に想像していた、EDMやTRAPなどの現在のクラブミュージックの主流サウンドを取り入れたアルバムなどではなく、古き良き時代のダンスミュージックがフレッシュに彩る音楽愛溢れるアルバムだったのです。そうだ、ライムスターはこういうことをやってくれる愛すべき人達だった。ただ一辺倒に飛び跳ねさせるだけではない、あらゆる形でのエモーションの発露を許容する、包容力あるダンスミュージックが、このアルバムには詰め込まれていました。

ヒップホップはもちろん、ジャズやテクノ、ポップスなど様々な音楽要素が取り入れた楽曲群。ヒップホップにおいてもオールドスクール寄り、もっと言うとニュージャックスウィング的なマインドを本アルバムからは強く感じました。そのため私は、最初にアルバムを聴き終えた際には、ニュージャックスウィングにおける一番好きな曲、Bobby Brown【Every Little Step】が自然と頭に流れてきたくらいです。懐かしい空気感を纏った、本当に大好きなテイスト感です。

【Every Little Step by Bobby Brown】


アルバムを何周か聴いた後は、遅ればせながら本人たちによるインタビューや楽曲解説を読ませてもらいました。そこでとても腑に落ちたのが、前作【Bitter, Sweet & Beautiful】がコンセプチュアルで重い作品だったからこそ、今作はとにかくスカッとする爽快なアルバムを作りたかったと語る本人たちの言葉でした。それはまさに、アルバムを聴いた後に私が感じた印象の通りでした。堅苦しくなくユーモア満載で、エンタメ性の強いノリに任せて楽しく聴き通すことができるアルバム。長いキャリアと盤石なる支持を得ている彼らだからこそできる、アルバムをまるごと使ったある意味贅沢な作品の作り方ですよね。


そんな軽快でフィジカル的要素の強い本アルバムですが、そんな中でもひとつひとつの言葉に目を向けると、彼らだからこそ紡ぐことのできる強度を持った言葉達が、楽曲を支えているということに気づかされます。気持ちよく音楽に身を委ねているときに不意に突き刺さってくるパンチラインの数々。そういう意味では、本人達が語っていた通り“脳細胞を一個も動かさずに済むような”楽しみ方ができる作品でありながら、しっかりと聴き込むこともできる奥深さも同時に具えた、聴くときの気分で味わい方を選べる、二度おいしい作品と言えるのではないかなと思います。

この作品の1週間前に発売され、前回の記事でも紹介したKICK THE CAN CREWの最新作【KICK!】と同様に、10曲というコンパクトな構成もとても好印象です。現在の音楽の聴かれ方や時代の潮流を読んだ、戦略性を感じるアルバム構成。もともとアルバム単位で作品を聴きたい派の私にしてみても、最近流れができつつあるコンパクトなアルバム構成の傾向は非常に大歓迎です。濃度が凝縮され、最初から最後までをひと流れの中で楽しむことができるアルバムには、小さい鞄にスッと忍ばせられるちょうどよいサイズの文庫本に抱くのと同じような愛おしさを感じてしまいます。


さて、それではそんな愛すべき本作において、私が特に印象に残った楽曲たちについての感想を書いていきたいと思います。これから何度も繰り返し聴いていく中で、印象がどんどんと変わっていきそうな予感のある10者10様のカラフルなアルバムですので、あくまで10周ほど聴き返した現時点での印象曲ということにさせてもらいます。ちなみに、既に本人たちによる読み応えある全曲解説が公開されていますので、そちらも是非読まれてみることをお薦めいたします。

◇◇◇◇◇

■Future Is Born feat. mabanua


ディスコ/ブギー調なトラックの上で、ヒップホップ誕生の歴史をたどっていくというRHYMESTERらしさ溢れる楽曲。本アルバムのリード曲で、まさにアルバム全編を体現している楽曲と言えると思います。本人たちも語っていた通り、“Yes yes y’all and you don’t stop”、“Keep on y’all to the beat box”、“Throw ya hands in the air”と、HIPHOPにおける歴史ある言い回しをバッチリと日本語に落とし込んだブリッジがこの曲の肝となっています。Netflixドラマ『ゲットダウン』の影響が強く反映されているらしいのですが、私は残念ながら視聴できていないので、いつかドラマを見た後にもそういう目線でもう一度味わってみたいです。これまでの歴史、そして今まさに作られていく未来。ヒップホップのことを更に一層好きになってしまう一曲です。


■梯子酒

本アルバム収録曲の中、一番初めに制作したという楽曲。そういう意味では、前作から本作への気分の入れ替え、スイッチの役割を果たした楽曲といえますよね。本人達からも“くだらない曲”、“どうでもいい曲”、“悪ふざけ”と、愛ある罵りを受けている楽曲ですが、私はこの突き抜けた剽軽さが大好きです。楽曲を聴いていて声を出して笑ってしまったのは久しぶりの経験でした。ライムスターはこれまでもいくつか酒ソングを作ってきましたが、この期に及んで更にこのような“本気でふざけた楽曲”をつくれるというところからも、ベテランの余裕を感じてしまいますよね。LIVEでは「ヘパリーゼ!」「ウーロン茶!」と大声でレスポンスを返してみたいです。SONPUBの作ったトラックを「サウンドにユーモアがある」と評し、「ユーモアはファンクネスの一部」だと語っていたMummy-D。その言葉をこの曲を聴く度に実感しています。


■ゆれろ

RHYMESTER×Libroという、私的になんとも嬉しいコラボレーション楽曲。なんでもAbemaTVで鶴亀サウンドとして共演した際にLibroのトラックに惚れ込み、宇多丸の方からトラック提供依頼を持ち掛けたのだとか。テクノを彷彿とさせるエレクトロなサウンドが気持ち良いグルーヴを生み出すトラックの上に、日本古来のダンスミュージック“音頭”のノリを取り入れるという、新鮮な和洋折衷が楽しめる曲となっています。LIVEでは会場全体で大きく左右に揺れるんでしょうね。その光景がありありと想像できます。“初めて恋を患う乙女心のように”、“終電で寝過ごす酔っ払いのように” 、“ワカメのようにヒジキのように”という比喩表現に、Dさんのセンスが光っています。Libroは自身の楽曲でもそうですが、日本人に合ったHIPHOPトラックをつくるのでライムスターとの相性もとても良いように思います。今後もまた一緒に曲作りをして欲しいものです。


■Diamonds feat. KIRINJI

KIRINJI名義の楽曲【The Great Journey】に続く2度目の共演となるライムスターとKIRINJI。こちらも私が学生時代にバンドをやっていた頃から好きなグループだったので個人的に嬉しいコラボレーションでした。ライムスター史上かつてないほどメロウな楽曲ですが、この曲があるからこそ、この【ダンサブル】のアルバムとしての説得力が増しているように思います。ジャンルの枠組みなんて関係ない、良いものは何でも取り入れる、とにかく音に酔い踊れ、と。また楽曲で歌われているテーマもとても素敵です。“なにかひとつでも夢中になれるもの/誇れるものをがあると世界が輝いて見える”。この曲を聴きながら自分に好きなものがあることの幸福感を改めて噛みしめてしまいました。子供に向けてリリックを書いたと語っていたDさんの言葉の通り、自分の子供にもいつか聴かせてあげたいなと思った曲でした。


マイクの細道


ドラマ『サイタマノラッパー』の主題歌で今春にシングルとしても発売されていた楽曲。BACHLOGICによる提供曲ですが、彼のテーマを汲んだプロデュースっぷりには宇多丸も手放しで賞賛していました。確かにドラマの、そしてこの曲のテーマとなっている“「夢」別名「呪い」”について、その道を歩む険しさ、その道中での五里霧中感が、これ以上ない形で表現されていて、聴けば聴くほどに関心してしまうトラックです。【ダンサブル】の中では唯一といえるほど重たい曲ですが、今作同様、アルバムごとにテーマの振り戻しをする傾向にあるライムスターのことですので、この曲が既に次回作への伏線となっているのかもしれませんね。アルバムを通して聴くと、現実を忘れて気持ちよく踊っていても、最後はこの曲がしっかりと現実へと引き戻してくれます。もしかしたら、そのような役割を期待して、この楽曲が最後に配置されているのかもしれません。

◇◇◇◇◇

今回も10曲のアルバムなので、せめて半分には絞らなくてはと上記の5曲を選ばせてもらいましたが、残りの曲も本当に聴き応えある曲ばかりです。導入曲【スタイル・ウォーズ】は、前作からの橋渡し曲となるテーマが歌われており、近年のMCバトルブームも背景にあると語られていた楽曲です。“スタイル・ウォーズ≒粋/意義を競う”という定義付けも最高にカッコいいですよね。【Back & Forth】はこれぞライムスターという楽曲。オーセンティックな、オールドスクールHIPHOP節が全開です。二人の息の合った掛け合いが非常に聴き応えあります。

【Don't Worry Be Happy】は【梯子酒】同様に、ユーモアラスなストーリー展開が面白い楽曲。それをJazzyでアダルトなトラックの上でやるというバランス感覚がライムスターですよね。【爆発的】はフューチャリングのサイプレス上野とHUNGERがいい仕事をしています。なによりTigerの荒ぶるドラムが最高にカッコ良くて、本作の中でも最もフィジカルで野性的な魅力を放っています。そして【カミング・スーン】は、キャッチーでポップな本アルバムのエンドロール曲です。そう捉えると、やはり続く【マイクの細道】は次回予告ですよね。

さて、このように今作もとても聴き応えある快作を届けてくれたライムスター。【マニフェスト】で再始動した2010年以降、コンスタントにクオリティの高い作品を出し続けているライムスターですので、次回作にも今から期待してしまいますよね。それまで本作を擦り切れるほどに聴き返し、楽しみに待っていたいと思います。

では、今回もこのへんで。
次回も、新譜についての記事を書く予定です。





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最終更新日2017-09-10
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