Pto6(ぴーとろっく)

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どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は2017年の筆納め記事として、ついに今年発売されたPUNPEE待望の1stアルバム【MODERN TIMES】について書きたいと思います。

これまでもこのブログでは、毎年年末にその年印象に残った思い入れのある作品について書いてきました。そういう意味では、今年のこの【MODERN TIMES】も、2017年HIPHOPシーンの思い出にもし表紙をつけるとしたら、是非とも選びたいと思っている作品です。


それでは、この名盤を振り返っていきたいと思います。

【MODERN TIMES by PUNPEE】
moderntimes 

1. 2057
2. Lovely Man
3. Happy Meal
4. 宇宙に行く
5. Renaissance
6. Scenario (Film)
7. Interval
8. Pride
9. P.U.N.P. (Communication)
10. Stray Bullets
11. Rain (Freestyle)
12. 夢のつづき
13. タイムマシーンにのって
14. Bitch Planet
15. Oldies
16. Hero


日本語ラップ史上最もハードルの高いアルバムにして、それを悠々と飛び越えてみせた作品。きっとこの作品は、今後もそのように語り継がれていくことでしょう。発売から2か月、HIPHOP・音楽・芸能の多方面から多くの賞賛が寄せられ、ネット上でも日々様々なことが語られています。ブログを一時休業していたこともあり、かなり遅ればせながらにはなりますが、私もこの作品に対する“賞賛の声”を、ここにひとつ増やさせていただきたいと思います。

多くの魅力に溢れたこのアルバムですが、私は以下3つの観点で語っていきたいと思います。

①アルバムとしての黄金比
②総合エンターテイメント
③ファミリー・クラシック


①アルバムとしての黄金比

まずは、この作品がもつ絶妙なるバランスについて。私は良いアルバムをつくるには良いバランスが必要だと常々考えています。それは野球チームにおいて、一番から九番まで強打者ばかりを集めてもまともな試合ができないのと同じように、様々な特徴をもった楽曲をバランスよく配置することが、アルバムを心地よく聴き通させるための肝だと感じているからです。

出塁率の高い選手、バントの上手い選手、足の速い選手、流し打ちの上手い選手、ここぞとばかりに長打を打つ選手・・・。それら特徴をもった選手が集まることで、初めてまとまった強いチームになるのです。そういう意味では、本アルバムはとてもバランスの良い強いチームではないでしょうか。しかも単なるチームではなく、オールスターチームの風格を漂わせています。どの打順にも、各チームのスター級選手がぞろり。つまりは、アルバムの目玉曲となり得る名曲が、最初から最後までぎっしりと詰まっているのです。

40年後の年老いたPUNPEEの語りではじまる【2057】。未来の自分にアルバムを振り返り語ってもらう、というこの作品の方向性を決めたアイデアが、素晴らしい物語の導入をつくっています。つづく【Lovely Man】は、脱力感・怠惰感をのぞかせるひねくれ者のPUNPEEらしい1曲。パンピーこども探偵団によるコーラスが可愛らしく、アルバムにおける配置も踏まえKanye Westの【We Don't Care】を思い浮かべてしまいました。3曲目【Happy Meal】は前曲から一転、すっかり目を覚ましたシャカリキなPUNPEEが登場します。その後は中毒性の高い【宇宙に行く】、過去作にも収録された代表曲【Renaissance】、ポップとヒップホップとの融合具合が絶妙な【Scenario (Film)】と勢いのある名曲が並び、アルバム序盤の盛り上がりを見事に作り上げます。

【Interval】では再びPUNPEEおじいちゃんが登場。次の楽曲への橋渡しとして客演ISSUGIを紹介します。そしてそんなお膳立てを受けての【Pride】。将来的に伝説のラッパーとして語り草になると言われるに遜色のない、見事なラップをISSUGIがみせてくれています。つづく【P.U.N.P. (Communication)】はいわゆる自己紹介ソングで、ぶっちゃけトークや身内ネタ、マイナーな過去曲からのセルフサンプリングなど、とにかく好き放題楽しそうにやっています。「俺はパンピー(一般人)、君はおれで俺はきみなんだ」、とさらりと言っちゃうところにPUNPEEの魅力がありますよね。そして10曲目【Stray Bullets】では、ファン待望PSGメンバーの5lack、GAPPERが登場します。もう一枚PSGでアルバムを出してほしい、誰しもがそんな願望を抱いてしまうほど、相変わらず最高のコンビネーションを発揮しています。

中盤の大きな盛り上がりの後に添えられた【Rain (Freestyle)】は、フランスのコース料理に挟まれるグラニテ(お口直し用のシャーベット)のような楽曲。あえてFreestyleと書くところも実に彼らしいですよね。またそんなムーディな空気を引き継ぐ【夢のつづき】では、バックDJの原島宙芳がラップを披露しています。そのようにして、アルバムは終盤へと向け確実にその歩を進めていきます。そして最高のポップチューン【タイムマシーンにのって】。毎回思わず口ずさんでしまうほどキャッチーな楽曲ですが、実はリリース直前に他の曲との差し替えとして急遽収録されたのだとか。この楽曲が無いこのアルバムは考えられないくらい私にとっては大事な曲です。ほんとうに収録されてよかった。

つづく【Bitch Planet】では終盤に漂っていたムーディな空気を少し緩和させ、最後の盛り上がりをつくります。弟分のRAU DEFが茶目っ気たっぷりに乱入してくるところは、実生活での楽し気なやりとりをも想像させてくれます。そして本アルバムのエンディングを飾る【Oldies】。メロディ、リリック共に暖かい哀愁に満ちた素晴らしい楽曲です。最後に再びおじいちゃんPUNPEEの語りが挿入され美しい幕引き。本当に秀逸な構成ですよね。そして本当のラスト曲。現在のPUNPEEが登場すると、5分あると語られていたエンドロール曲【Hero】が流れ始めます。ここまで聴いてきた誰しもの頭の中に、スクリーンの上から下へと流されていくスタッフロールのイメージが浮かんだでのではないでしょうか。涙を乾かすためのエンドロールだと言っておきながら、この曲を聴いてまた涙がこぼれそうになってしまいます。

このように16曲それぞれが魅力的な個性を持っており、各曲がアルバムにおける役割を楽し気に果たしながら、曲同士で仲良さげに手を繋ぎあっている。それがこの【MODERN TIMES】というアルバムです。これ以上に素晴らしいチームが果たしてあるでしょうか。


②総合エンターテイメント

次は、このアルバムのエンターテイメント/アート作品としての総合力の高さについて。映画のような構成力。アメコミのようなハチャメチャな爽快感。SFのような想像力に満ち溢れた壮大さ。それら様々なエンタメ要素が詰め込まれ、出来上がったものは宇宙のスケールで展開されるヒップホップ・オペラ。私は初めてこの作品を聴き終えたとき、“パンク・オペラ”と称されたグリーン・デイの名盤【アメリカン・イディオット】を聴いたときと似た衝撃を胸に抱きました。ブックレットにおいて、すべての曲が“lyric(歌詞)”ではなく“Script(脚本)”と表記されているところにも、PUNPEEのこだわりが見えますよね。

そのような高いエンタメ性を発揮している要因はなにか。まず一点目は前述したとおり、PUNPEEが自身の大好きなモノ達の要素を心置きなく詰め込んだことでしょう。映画、アメコミ、SF、そして音楽。彼がこれまで純粋に親しみ楽しんだものを詰め込んだ結果、そこにはエンタメとしての幅が生まれました。もちろんHIPHOP的な要素もこの作品には豊富に詰め込まれています。自身の過去曲やリスペクトする他アーティスト楽曲からのリリックの引用、クラシックトラックからのサンプリング、そして社会風刺。それに加え、時事ネタ、自虐ネタ、実話ネタ、身内ネタ、妄想ネタ等、PUNPEEらしい愉快なトピックスも満載。もはやジャンルを超越した独自のアート表現にまで昇華していますよね。

次に二点目は、それら趣味を通じて触れてきた様々な作品達から多くのことを学び、それを器用に自身の作品へと取り入れていることです。そのやりくちは、ヒップホップ独自の文化でもある“サンプリング”そのもの。自身が作品から受けた純粋なる感動を因数分解し、その因子を巧みに自身の作品へと忍ばせる。感銘を受けたギミック、インスピレーション、アイデアを自分なりに咀嚼し、効果的にトレース、または再構築して生まれ変わらせる。それらを緻密な計算に基づき、あるいは生まれながらの天性のセンスでもって軽々とやってのける鬼才PUNPEE。ほんとうに恐るべき才能ですよね。

最後三点目は、作品細部にまでいきわたる異常なまでのこだわりです。映画【バックトゥザフューチャー】等のイラストも手掛けたサム・ギルビーによる美しくキャッチーなアートワーク。リリックだけでなくアメコミ調のイラストが多数添えられ、見ているだけでも楽しめる豪華なブックレット。誰が出るかはアルバムを聴くまでのお楽しみ、客演表記のないクレジット。そしてCD再生でしか発見できない隠しトラック、スペシャルサンクス欄に潜ませた愉快な仕掛け・・・。CD1枚でこれほどまでに人を楽しませたアーティストが果たして他にいたでしょうか。CDというパッケージで出来得るすべてのギミックへの挑戦、そんな気概すら感じさせられるほどの強いこだわりようです。この作品を手にした人達を、音楽以外の形でも存分に楽しませたい。そんなPUNPEEの強い想いが、この作品を“総合エンターテイメント”にまで昇華させたのではないでしょうか。


③ファミリー・クラシック

最後は、この作品が家族全員で楽しめる内容だということについて。大衆の心をつかむ耳障りのよいポップな音像、楽曲ひとつひとつの高いクオリティ、アルバムトータルとして発揮される豊潤なエンタメ性。そんな長所をもったこの作品は、HIPHOP好きに限らず、音楽や芸術を愛す全ての人に、つまりは全世界のあらゆる人の琴線に触れうる作品だと思います。

少なくとも我が家だけの例でいうと、妻と1歳の娘含め家族全員でこの作品を楽しんでいます。もともとHIPHOPには縁がなく、結婚してから私を通じて間接的にHIPHOPを耳にするようになった妻も、PUNPEEのアルバムは一聴しただけでお気に入りに。歌詞カードを自ら手に取り、一緒に口ずさんでくれるまでになりました。一方娘の方も、最初はそのカラフルなアートワークと手触りのよい紙ジャケ仕様のパッケージに。立ち上がり歩き回れるようになった今では、私と一緒にトラックに合わせ手足を振りながら踊ってくれるようにまでなりました。PUNPEEが嗜好を凝らして整備した誰もが入りやすいその広い入口のおかげで、HIPHOP初心者の妻は心を掴まれ、娘は愉快に踊らされたのだと思います。

そんな家族との楽しい思い出を多くもたらしてくれたこのアルバム。年末の帰省の際にも妻のリクエストにより持ち出す予定なので、その効力は実家にまで広がるかもしれません。なにはともあれこの【MODERN TIMES】は、我が家においては既にクラシックと化しています。これからも家族の日常にたくさんの彩りを添えてくれることを期待して、末永く聴いていきたいなと思っています。


さて、今回は2017年を締めくくる1枚としてPUNPEEの【MODERN TIMES】について書かせていただきました。振り返ると今年のHIPHOPシーンは大変盛り上がり、作品という面でみても豊作の年だったのではないかと思います。またMCバトルブームも未だ継続中で、去年にも比べ更にその波は大きくなっているように思います。一過性のブームではなく、少しずつ文化として一般層にも定着しつつあるようにも見受けられますよね。

今年もこのブログは、相変わらず好きなことを自由に楽しく書かせていただきました。途中、以前から計画していた通りプライベートの事情で2か月間のお休みをいただきましたが、その休載期間があったことで、このブログを更新することの喜びも改めて確認することができました。来年もマイペースに楽しく更新していきたいなと思っています。

今年も多くのHIPHOP関係者、そしてHIPHOP好きの皆様に大変お世話になりました。自分が好きなものについて書いたものを、誰かに読んでもらえるということは本当に幸せなことだと感じています。来年もみなさまに気軽に覗いてもらえるような、そしてその際には少しばかりの気づきや共感を持ち帰っていただけるような、そんなブログを書いていければと思っています。来年も気になる記事がありましたら、是非ともお立ち寄りいただければ幸いです。

それでは、今年はこのへんで。





“エンドロールなら 5分あるから 涙 乾かしな”





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[HIPHOPの必須トーク 2017]


-Blog entries-
日本の名盤・基本の定番㉝(MODERN TIMES by PUNPEE)
名曲の提供⑬(JUST by 田我流)
新作音源に小さく貢献㉛(here by KOJOE)
名勝負の継承文⑮(ヤングたかじん vs MOL53 UMB2016)
新作音源に小さく貢献㉚(祝祭の和音 by LIBRO)
Pto6の備忘録⑩(HIPHOPについて語るときに私の語ること)
新作音源に小さく貢献㉙(柴又日記 by ZORN)
新作音源に小さく貢献㉘(ダンサブル by RHYMESTER)
新作音源に小さく貢献㉗(KICK! by KICK THE CAN CREW)
旬な話題は損なわない⑭(フリースタイルダンジョン2代目モンスター)
新作音源に小さく貢献㉖(SWEET HELL by I-DEA)
Pto6の備忘録⑨(好きなビート集 Part.2)
このDVDが良い雰囲気⑭(UMB2017 THE CHOICE IS YOURS)
名曲の提供⑫(サマージャム'95 by スチャダラパー)
新作音源に小さく貢献㉕(なぎ by 環ROY)
日本の名盤・基本の定番㉜(REBUILD by BES from SWANKY SWIPE)
動画を投下㉚(千% by KICK THE CAN CREW)
新作音源に小さく貢献㉔(軌跡 by DJ KRUSH)
Pto6の備忘録⑧(好きなビート集 Part.1)
新作音源に小さく貢献㉓(INDIGO by SALU)
珍しく海外クラシック⑨(Paid in Full by Eric B. & Rakim)
名勝負の継承文⑭(ふぁんく vs MC松島 UMB2014)
新作音源に小さく貢献㉒(Jasmine by 唾奇 x Sweet William)
Pto6の備忘録⑦(MCバトルの好きなミカタ:名前踏み)
日本の名盤・基本の定番㉛(BLACK BOX by JUSWANNA)
新作音源に小さく貢献㉑(Bouquet by NORIKIYO)
現場の伝播②(Pete Rock & CL Smooth LIVE@WE WANT CIRCUS)
Pto6の備忘録⑥(好きなライム集 Part.3)
新作音源に小さく貢献⑳(HIKARI by JJJ)
名勝負の継承文⑬(NAIKA MC vs FORK フリースタイルダンジョン3rd)
新作音源に小さく貢献⑲(嘘と煩悩 by KREVA)
新作音源に小さく貢献⑱(助演男優賞 by Creepy Nuts(R-指定&DJ松永))
珍しく海外クラシック⑧(The Score by Fugees)
動画を投下㉙(Keep On Runnin’ by 裂固)
新作音源に小さく貢献⑰(AWAKENING by 鶴亀サウンド)


-Special thanks-
(敬称略)
アンドリ
すめら
misahot
junkoro
タイラー
IDECCHI51
らうる
@DJやってみたい
W.M.S
藤野枝豆 EDY WOOD
湯葉八千枚
つねまげ
新潟のオタクビーボーイ
ザレ
hzm
MAME TANK
мαѕαмσяι 
CHELSEA
knicr
風呂上り
まーaka伊達女
あなざー
えりか
イザナギ
伸縮亭すぱつ
ニーダ
Shodai
原口燿
爆走子牛
Co-mo
DJ Rotten
ガッキー
ナスティ海峡冬景色
みのるさん(MC未納)
ハジメ
llucaじゅか
Kyothough / 元祖サイゼリヤ
草野
ぷさん
ピッツァ
キチペン
Luke
しゅーと

ツクダ
カッフィ・アルシャマン・ヨシヨシーダ‏ 
ウシロフa.k.a.ごっち
RIT
WATA SON
ちゃん梅
からあげ太郎
シュナ
小澤ですセカオザ
目覚まし
ハイ
Ryoma
野口誠也
ねここ
Eroc
かみ ちぇぶ
どぐ
lobby
りょたたたたた
松下幸之助兼ナポレオン
小川fuckの人(FDT)
紅茶花伝
肥後トとロ
かきぴー
りょんりょん
まりおふ
NN
kk
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らる
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岐阜の人
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赤落亭かぶき
シカマル
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最終更新日2018-04-14
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