Pto6(ぴーとろっく)

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どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は、久しぶりに海外クラシック作品について書きたいと思います。日本のヒップホップを中心に扱ってきたこのブログですが、本シリーズも今回で第10回となりました。そんな節目となる今回は、私が特に思い入れの強い作品であるPete Rockが手掛けたInIの名盤【Center of Attention】について書きたいと思います。

一聴しただけで名盤とわかるほどハイクオリティであるにも関わらず、制作された当時はレーベルの都合でお蔵入りとなっていた曰く付きの作品です。その後は一部の楽曲がブート盤としてアンダーグランドで出回っていたのですが、晴れて2001年にPete Rock名義で正式に発売されることとなりました。そのため現在ではそのような経緯も踏まえ“アンダーグランド・クラシック”としても知られている作品です。

それでは、本作についての感想を書いていきたいと思います。

【Center of Attention by InI】
Center of Attention 

<収録曲>
1.Intro
2.No More Words
3.Step Up
4.Think Twice [Feat. Pete Rock]
5.Square One
6.The Life I Live
7.Kross Roads
8.To Each His Own [Feat. Q-Tip & Large Professor]
9.Fakin Jax' [Feat. Pete Rock]
10.What You Say
11.Props
12.Center Of Attention
13.Grown Man Sport [Feat. Meccalicious]
14.Mind Over Matter
15.Don't You Love It
16.Microphonist Wanderlust


その名の響きをペンネームにお借りしてしまうほど、私が敬愛してやまないプロデューサであるPete Rock。今でも現在進行形でシーンに多大なる影響力をもっている彼ですが、これまでも数多くの偉大なる作品を世に生み出してきました。そんな彼の作品の中で私が最も好きな作品はというと、以前このブログでもご紹介していたPete Rock & CL.smooth名義の作品【The Main Ingredient】です。ちなみに私はこの作品を墓場まで持っていきたいと思っています。

それでは、その次に好きなPete Rock作品は何かと問われると、おそらく私はしばし考えた上で、今回ご紹介するこのアルバムを選ぶのではないかと思います。本作は【The Main Ingredient】の少し後(1994年~1996年頃)に作られた作品なので、そういう意味では、私の中での“PeteRock黄金期”は、ちょうどこの辺りの時期なのかもしれません。

繊細な上モノ力強いファットなドラムが放つピュアなHIPHOPサウンド。ブラック・ミュージックからの絶妙なるサンプリングが生みだす唯一無二のグルーヴ。どこまでも掴みきれない曖昧模糊な輪郭が描きだす深淵なる音世界。ときに哀愁を帯び、ときに郷愁の念をもくすぐるその味わい深いビートは、穏やかに、そしてじんわりと、聴く者の内側へと沁み透っていきます。聴き終えた後に残る心地よい余韻はしばし尾を引き、それがすっかりと消えた頃には、再び彼のビートへと手を伸ばしたくなる衝動に駆られるのです。

そんなふうに、一度魅了されたら容易に抜けだせないほどの中毒性が、Pete Rockのビートには具わっているように感じます。ひとことで特徴はと問われても、端的に言葉にできるほど強烈な個性があるわけではないのですが、それにも関わらず、ビートを一聴しただけでも彼のものとわかる特殊な個性が確実に存在しているのです。それって、よくよく考えてみるととても凄いことですよね。

そんな不思議な魅力をもっているからか、私はPete Rockのビートで「これがずば抜けて好きだ!」というようなものはすぐには思い浮かびません。そのような楽曲単位というよりはやはりアルバム単位、もっというと、許されるのであれば彼が手掛けるどんなビートも「ぜんぶ好きだ!」と言いたくなってしまいます。あらゆるビートが易々と私の心のK点を飛び超えてくるのです。

このアルバムは、そんなPete Rockが全編プロデュースを手がけています。InIのメンバーは、リードラッパーのRob-Oを筆頭に、RAS LUVMarco Polo、そしてPete Rockの実弟でもあるGrap Luvaという、同級生4MCで構成されています(Live DJはDJ Buddah Kan)。現在は残念ながら解散していますが、ラッパー同士の親和性、ビートとラップとの相性からは、とてもバランスのとれたグループだという印象を受けますよね。制作当時に正式にデビューできていれば、歴史に大きく名を刻む偉大なるグループになっていたかもしれません。

アルバム単位で味わうべき素晴らしい作品ですが、その魅力の一端を伝えるという意味で、ここでいくつか私の好きな楽曲たちについて書いていきたいと思います。琴線に触れる楽曲があった場合は、是非ともアルバムで通して聴いてみてください。

【No More Words】


アルバム冒頭を飾る心躍る名曲です。どこか牧歌的でピースフルなビートの上に、ラッパー達がそれぞれ自然体のラップを乗せています。ちなみにフックはPete Rockが歌っており、ビートだけでなく歌の面でも本楽曲の表情づくりに一役買っています。【The Main Ingredient】が【In The House】でアルバムの幕を開くのと同じくらい、この楽曲で始まるということが本アルバムにおける一つ目の好きなポイントです。

【To Each His Own】


InIのもとに、Pete RockQ-TipLarge Professorという偉大なるプロデューサー達が一堂に会したなんとも豪華な1曲。Pete Rockのビートの上で2人がラップを乗せています。聴いていると夢心地になってしまうような、おぼろげな雰囲気に包まれているビートです。それでいて人肌の暖かさを醸し出せるのは、電子音ではなくサンプリングを用いているからこそできることでしょう。多層的に音が重ねられたビートが玉虫色にその表情を変えていきます。

【Fakin Jax'】


InI名義で唯一シングルとして正規にリリースされた楽曲です。この曲はなんといっても大ネタの使い方が絶妙です。日本で言うとPUNPEEの【お嫁においで2015】でもサンプリングされたことが記憶に新しい、定番ブレイクビーツの【Impeach The President】を大胆にも使用しています。当時においても散々擦り尽くされたネタであったにもかかわらず、他とは一線を画す独自のグルーヴを作り上げてしまうところには脱帽してしまいます。

【Props】


遊園地を彷彿とさせるような愉快でポップなビートが特徴の楽曲。端々で用いられている声ネタの使い方が絶妙で、このようにして楽曲のファニーな空気感を作り出すんだなと、とても学べることが多いビートです。多幸感あふれる楽曲の雰囲気、跳ねるようなリズム、挿入される多種多様な声ネタ・・・。書いていて気づいたのですがこの曲、LIBRO【風光る】ととても通じる点が多いですよね。もしかしたらこの曲をベースに作られたものなのかも・・・なんて想像を膨らませてしまいました。

【Center of Attention】


本アルバムのタイトル曲です。一聴すると印象に残りづらい、しっとりとした地味目の曲調なのですが、聴けば聴くほど深みがでてくる不思議な魅力を具えています。ピアノの繊細な旋律淡々とリズムを刻むビートどこか寂しい空気感を醸し出していますよね。雨の休日に本でも読みながらしんみりと味わいたいような、スローテンポでじっくりと聴かせる大人のHIPHOPです。そして“Center of Attention(注目の的)”という言葉が、いつまでも心の中でリフレインされます。

ini 

さて、今回はInIのアルバム【Center of Attention】について書かせてもらいました。ちなみに本作は、iTunesではアルバム単体でも購入可能ですが、CDの場合はDeda【The Original Baby Pa】と2枚組としてリリースされています(Pete Rock名義:【Lost & Found Hip Hop Underground Soul Classics】)。ちなみにDedaのアルバムは、本作より更に“黒い音”でアダルトな雰囲気の作品です。興味のある方はそちらも是非聴いてみてください。

また、昨年末この【Center of Attention】に収録されなかったInI用の秘蔵トラックを集めたアルバム【Lost Sessions】が、Pete Rock名義でリリースされました。こちらはインスト盤となるのですが、ラップなしでも聴き応えのあるPete Rockビートを十二分に堪能することができます。本作が好きな人は間違いなく満足できるテイストに仕上がっていますので、そちらも機会があれば是非。

それでは、今回はこのへんで。

参考記事【Main Ingredient by Pete Rock & C.L.Smooth】

[InIの表記についての補足]:メディアによっては、I.N.I、INI、Ini、iniなどと表記される場合があるInIですが、元来の意味がI&I(≒WE)からつけられているということ、アルバムジャケット上の表記がInIであることを踏まえ、本ブログではInIと書かせてもらっています。ご了承下さい。



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最終更新日2018-02-10
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