Pto6(ぴーとろっく)

Pto6(ぴーとろっく)

Pto6(ぴーとろっく)です。

突然の訃報にとまどいながらもPCを開きました。

そんなはずがない。まだ信じられない気持ちに依然包まれながらも、誤報であることを心から願いながらも、この混乱する頭と心をひとまず落ち着かせるために、私はFEBBのアルバムを再生しこの文章を書きはじめました。

私のFEBBとの出会いはFla$hBackSでした。その衝撃の出会いから約1年後、その中心メンバーであるFEBBは、このソロアルバムを発表しました。彼は当時、若干19歳でMC、DJ、トラックメイクをこなす新進気鋭の存在として、既にシーンでは名が轟きはじめていました。そんな中リリースされたこのアルバム【The Season】は、そんなシーンに向けた最後の一押しとなりました。それ以降、シーンにおける誰しもが彼のことを“天才”と称すようになったのです。

◇◇◇◇◇

そういえば、年始に書いた記事でも、私はFEBBのことを“天才”と書いていました。そのことについて、記事を読んで下さったある方とTwitterで会話を交わしたことを思い出します。私がFEBBを“天才”と称したことに理解を示して下さりながらも、FEBBの驚異的な才能を“天才”という括りですら、カテゴライズしたくないのだとその方は仰っていました。それを聞いて、私は本当にその通りだなと思いました。それと同時に、“天才”に変わる言葉を必死に探し始めたのですが、私の貧相なボキャブラリーではそれ以上の的確な言葉が浮かんできませんでした。その後、その方との会話自体は楽しく幕を降ろしたのですが、私はその日以降、折に触れてはそのことを思い出し、ぼんやりと考えるようになっていました。

◇◇◇◇◇

FEBBの凄さを語ろうとする時、そこには様々な切り口があります。

たとえば、その才能のマルチさという切り口です。前述したとおり、生粋のヒップホッパーであった彼は、MCのみならず、DJ、MPCをもこなし、更にはトラックメイクもできるというパーフェクトな才人でした。それに加えHIPHOP4大要素への造詣が深いことも、このアルバムにおけるアートワークひとつをとっても垣間見ることができますよね。とにかくHIPHOPを体現したような男、それがFEBBでした。歩けば足音がビートを鳴らし、言葉を発すればフロウが生まれ、ターンテーブルの回転により身体のネジが巻かれ、それを原動力に彼が動いているのではないかと想像を巡らせてしまうほどでした。それほどまでに、彼の全身からはHIPHOPのフレイバーが放出されていたのです。

このアルバムにも、そんなFEBBの溢れんばかりのHIPHOPフレイバーが充満しています。ソロ1stアルバムということで「FEBBが詰まったアルバムにしたかった」と彼が語っていたとおり、端々で彼の迸るセンスを感じられます。選ばれたトラックのうち、ひとつとしてケチのつけられるものがあるでしょうか?蹴られているバースの中で、ひとつとして芯を捉えていないものがあるでしょうか?HIPHOPであることを、HIPHOPを表現することを、決して妥協しないその信念が、これ以上ない形で具現化されているように思います。

また彼の凄さを語る切り口といえば、そのビートアプローチの巧みさについてもよく話題にされます。トラックメイクもこなせるがゆえの音への造詣の深さ。それは自身でつくったトラックはもちろんのこと、外注したビートにおいても、作り手がビートに込めた想いを確実に汲み取り、音がはまるべきポイントへ、必然性と充足感、なによりも心地よい音楽性を伴って、言葉をパシリとはめていくのです。それゆえに、フロウ自体に派手さがあるわけではないにもかかわらず、華のある、色気漂うフロウとして聴き手の耳に響くのです。そこに甘美な余韻を残すことができるのです。

◇◇◇◇◇

この文章を書きだして、すでにこのCDは2周目を回りきろうとしています。改めて聴き返してみても、なんて音楽的多幸感に包まれるアルバムなのでしょう。最高級のトラックと、耳を愉しませるFEBBのラップ。Instrumentalも適宜配置された、流れるようなアルバム構成。相性バッチリのKNZZの客演。そして、Fla$hBackSメンバーJJJとKID FRESINOのトラックも1曲ずつ使用されています。本当に、FEBBの信じているヒップホップを、彼が愛するあらゆるものを、余すことなく詰め込もうとした作品なんだろうなぁと感じ入ることができます。このアルバムがFEBBのすべて。このアルバムこそが彼の思うHIPHOPのすべて。そんなアルバムを作ることができたなんて、彼はアーティストとしてなんて幸せ者だったのでしょうか。

◇◇◇◇◇

FEBBを語る上での切り口としては、当然リリックもあげられます。B.D.のラップでの“言い切り”にカッコ良さを感じ、影響を受けたと過去に語られていた彼のラップ。その言葉のブツ切り感は、じわじわとクセになります。思えばHIPHOPにおける往年のリリシスト達も、無造作げに並べた言葉の配置だけで、深淵なる世界を描き出してくれたものです。FEBBのリリックにおける『センテンスの長さ』と『描き出すその世界観』の間には、少なくとも質量保存の法則は適用されていません。耳を澄まし、そこにある言葉たちが描く圧倒的な世界の実像に、思わず手で触れてみたくなります。

このアルバムに収録されている楽曲は、すべてにおいて一聴の価値がある素晴らしいものばかりです。dopeと称されるほどヒップホップなサウンドであるにもかかわらず、そこには重さだけでなく、心地よさ、美しさがあります。ヒップホップにおけるルール、枠組みを強く意識しているFEBBが、溢れんばかりの音楽的才能をその枠の中にぎゅうぎゅうに詰め込むことで、ヒップホップというフィルターを通した、濾された濃厚なる音楽要素が、どろりとアルバム全体に沁みわたっています。

一聴しても満足感高く聴き通せるアルバムですが、充実感こそあれ、作品としての実態はなかなか掴むことができません。それゆえに、何度も何度も繰り返し聴いてしまいます。得られる音楽的快感を再度味わう為に。その快感の秘密を、この作品の実態を、手で触れて確かめたいが為に。そうこうしていると、十回、何十回と聴き返してしまうこととなります。俗にいう“スルメアルバム”というやつですが、そんな生半可な噛み応えではないので、手にするときは覚悟してください。一生このアルバムと付き合う覚悟で聴き始めてください。

◇◇◇◇◇

この文章を書いてきて、改めて再確認できたことがあります。ひとつは、FEBBが自分の信念に対して、いつにおいても純粋さを貫いていたということ。そしてもうひとつは、彼がヒップホップを心から愛し、ヒップホップからも真に愛された男であったということです。彼はその信念ゆえに、ときに自身の近くの人に対しても牙をむくことがありました。周りの人にとって、彼と付き合っていくことは容易いことばかりではなかったのかもしれません。でもそれはあくまで、彼が純粋だったから、ヒップホップを誰よりも愛していたからなのではないでしょうか。そう思うと、少なくとも私はとても納得することができます。そのような不器用な男であったからこそ、彼はどの瞬間もFEBBであり続けることができたのではないでしょうか。

彼を“天才”と称さず、なんと称するべきか。結局、私には記事の最後までその答えを見つけることができませんでした。でもたしかに、彼は“天才”という括りに当てはめるに留めてはいけない、その気持ちは文章を書けば書くほど強くなってきました。それゆえに、私は決めました。彼を言い表すに足る言葉に出会えるまで、私は彼のことを“FEBB“としか称さないことを。FEBBはFEBBとしか言い表せない。こんなアーティストは、他にはいないのですから。

そして、これからも私は彼の作品を聴き続け、今回も宿題に持ち越してしまったその言葉を探し続けていきたいと思っています。FEBBよ、私はあなたの音楽を聴き続けます。これから何年経ったとしても。どんなアーティストが今後出てきたとしても。私はあなたの音楽を聴き続けます。だって、こんなにも大好きなのですから。

◇◇◇◇◇

【The Season by FEBB】
FEBB 1st 

<収録曲>
1. No.Musik / track by Dopey
2. Time 2 Fuck Up / track by E.Blaze
3. Walk On Fire (ft. KNZZ) / track by Febb
4. Time Is Money / track by QRON-P 
5. Hustla / Rapper track by jjj
6. On U / track by Rhythm Jones
7. This Town / tack by Golbysound
8. Deadly Primo / ***
9. The Test / track by Serious Beatslyric
10. PeeP / track by Ski Beatz
11. Season A.K.A Super Villain / track by Febb
12. Another One / track by Febb
13. Skip / track by Kid Fresino
14. Navy Bars / track by Dopey







関連記事
最終更新日2018-07-27
Posted by

Comments 0

There are no comments yet.

Leave a reply

ブログパーツ