新作音源に小さく貢献㉝(VIRIDIAN SHOOT by BES & ISSUGI)

2018.03.04 21:12 *Sun
Category:国内作品

どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は、先日発売されたBESISSUGIのジョイント・アルバム【VIRIDIAN SHOOT】について書いていきたいと思います。どこまでもオーセンティック純度の高いHIPHOPフレーバーを閉じ込めた、ヘッズの高い期待を裏切らない素晴らしい作品に仕上がっています。

【VIRIDIAN SHOOT by BES & ISSUGI】
BES&ISSUGI 

<収録曲>
1. ALBUM INTRO / Prod by 16FLIP
2. SPECIAL DELIVERY / Prod by GWOP SULLIVAN
3. NO PAIN MO GAIN / Prod by GWOP SULLIVAN
4. GOING OUT 4 CASH / Prod by GWOP SULLIVAN
5. NEW SCHOOL KILLAH / Prod by 16FLIP
6. 247 / Prod by BUDAMUNK
7. RULES / Prod by GWOP SULLIVAN
8. BIL pt3 (feat. MICHINO) / Prod by GWOP SULLIVAN
9. EYES LOW / Prod by 16FLIP
10. HIGHEST (feat. MR.PUG, 仙人掌) / Prod by GWOP SULLIVAN
11. VIRIDIAN SHOOT / Prod by GWOP SULLIVAN
12. SHEEPS / Prod by DJ SCRATCH NICE & GRADIS NICE
13. BOOM BAP / Prod by DJ SCRATCH NICE
14. WE SHINE / Prod by GRADIS NICE
15. GOING OUT 4 CASH REMIX / Prod by GWOP SULLIVAN
16. SPECIAL DELIVERY REMIX (feat. MR.PUG) / Prod by GWOP SULLIVAN



“BES & ISSUGI”という組み合わせを聞いたとき、私の頭に過ぎったことは、「もしもこの二人の特徴を持ち合わせたラッパーがいたとしたら、さぞかし最強だろうな」ということでした。

しかしその思いつきは、すぐさま自らによって否定されることとなります。いやいや、彼らの持つ個性が、そもそも一人で両立し得るほどの“生半可な個性”であったとすれば、こんなにも魅力的な存在になっているわけがないじゃないか、と。

ストイックなまでに自身の長所を磨き上げ、研ぎ澄ませてきたそれぞれの個性。それをラップにおいて、欲張りにも同時に再現してみようとしたところで、きっと上手くはいかないでしょう。どちらか立たせば、どちらかが立たず。せっかくの長所が反発し合い、たちまち良さが打ち消されてしまうことでしょう。

それは漫画ONE PIECEの世界において、悪魔の実を2つ以上食べたら死んでしまうのと似ているかもしれません。“悪魔じみた強烈な能力”というものは、きっと1つの体内に1つしか宿すことができないのでしょう。それこそ、身体の構造が異形でもない限りは。

しかし、それほど強烈な2つの個性も、作品においては共存することが可能です。こと楽曲やアルバムにおいていえば、それぞれが自分の個性を発揮し合うことで、反発するどころか互いに引き立て合い、魅力的な相乗効果を生み出すことができます。

本作において具体的に言えば、ISSUGIのタイトなラップBESの華のあるフロウを引き立て、BESの煙に巻く奔放なライムISSUGIのリリカルさをより際立たせているのです。

また嬉しいのは、このアルバムが“話題先行の体だけを整えたジョイント作品”には決してなっていないというところです。その楽曲数、ひとつひとつにおけるクオリティの高さをみても、彼らの本気度この作品にかけている想いが伝わってきます。なんなら、このBES&ISSUGIという名義は、今後も定期的に使われていくのではないかという、そんな期待感すら抱いてしまいます。

互いが互いのHIPHOPを認め合い、尊敬し合っているこの二人ならではなのでしょう。この貴重な機会に、なにかひとつでも自身の上達に向けたヒントを掴もうとする貪欲な姿が、公開されたレコーディング映像でも映し出されていました。切磋琢磨し合えるというのは、本当に素晴らしい関係性ですよね。

また実際アルバムを聴いてみても、そのお互いの影響をありありと実感することができます。互いに刺激を受け合ったことで、いつもより心なしか、BESは吐き出す言葉の強度が増しており、ISSUGIのフロウは角が取れなめらかになっているような気がします。

これまでも客演としては何度も共演している二人ですが、やはり腰を据えてアルバムをつくるとなれば、こんなにも互いの影響が出てくるものなのだなぁと、本作を聴いていてしみじみと感じました。

アルバムトータルで41分とコンパクトな作品ですが、曲数はボーナストラック含め16曲と多く、バラエティに富んでいます。それはまるで、貴重な2つの物質を使いじっくりと実験ができるこの稀有な機会に、せっかくなので多種多様な触媒につけてその化学反応を確かめてみたいというような、二人の探求心を感じ取ることができました。

インタビューでの発言によると、もともと本作は他アーティストの既存ビートを用いた“ビートジャック作品”にするつもりでラップを録りだしていたらしいですが、権利の面倒もあり途中から現在のオリジナルビートに変えられたようです。つまり二人は収録された曲数以上のビート(触媒)で興味深い化学実験をしたということになります。是非ともお蔵入りとなったバージョンも聴いてみたいですよね。そして、どの曲においても後付けでビートを当て直したとは思えないほど、違和感なく音とラップが親和しているのが凄いなと感心してしまいます。

さて、それでは本作の魅力について、BESとISSUGIそれぞれの観点からも書いてみたいと思います。

■BES

近年のBESは、作品を出す毎にブランクの影響がなくなってきているように感じていましたが、今作を聴いて、彼はもうすっかり全盛期におけるスキルを取り戻したように感じました。とにかく、それほどまでに本作におけるBESは全編通してキレッキレなのです。

どのビートにおいても、常人では真似できないような卓越したフロウを遺憾なく発揮しています。それでいてISSUGI曰く「リリックを書いて録るのがクソ早い」というのだから驚きですよね。

Intro終わりの2曲目【SPECIAL DELIVERY】を聴いただけでも、そのフロウの凄さには舌を巻いてしまいます。私は思わず、以前ISSUGIがインタビューの中で取り上げたBESの「指で追えなかったらそいつのフロウをわかってるとは言えない」という発言を思い出してしまいました。そういう意味で言うと私は、BESのフロウを理解できているとは、まだまだ口が裂けても言えそうにありません。

GWOP SULLIVANのスリリングなビートに乗せた4曲目【GOING OUT 4 CASH】も、BESの流れるようなフロウが印象的です。またリリックにおいても、自身のラップを金に換えることに貪欲なBESのマインドがよく表れていると思います。

そしてBES自身が最も好きな曲だと語っていた7曲目【RULES】でも、彼の信仰するHIPHOPマインドの真髄を垣間見ることができます。誰も俺たちのHIPHOPを壊すことはできない。本当にそれだけの確固たる信念を感じ取ることができますよね。

ビートの後ろにレイドバック気味に乗りながら、優雅なフロウを纏い、吐くバースすべてが旋律を奏でるBESのラップ。本作は、そんなBESの“音として言葉を響かせる”華麗なるスキルを、十二分に堪能することができます。

【VIRIDIAN SHOOT Teaser】


■ISSUGI

ビートが変わるたび、それに合わせて最高のフロウを叩き出すBESも凄まじいですが、どの曲においても急所を突く的確なラインをはき続けられるISSUGIも、それに負けず劣らず驚異的なことをしています。

特に私は、終盤13曲目【BOOM BAP】で歌われている、変わらないものを持ち続けながらも、留まるのではなく、無理に変えるというわけでもなく、あくまでナチュラルに進化を重ねていくことが大切なんだ、ということを詩的に綴ったISSUGIのリリックに感銘を受けてしまいました。

また、MONJUのメンバMR.PUG仙人掌を客演に招いた【HIGHEST】では、短い小節内でも確実に印象に残るラインを放ち、最後に全てをかっさらうという、マイクリレーにおけるいつもの仕事人ISSUGIを味わうことができます。

もちろんISSUGIはラップだけでなく、ビート面においても本作では多大なる貢献をしています。16FLIPS名義でのビート提供はもちろんですが、本作のメインプロデューサGWOP SULLIVANのビートをはじめ、その他GRADIS NICEらのビートについても、これまで深い関係性を築いてきたISSUGIだからこそ取り寄せることのできたビートだと言えるのではないでしょうか。

良質なBOOM BAPサウンドを共通項に、よくぞここまで統一感がありバラエティもある、“間違いないビート”を集められるものだなと思います。これらの秀逸なビートを集められた時点で、本作が名盤となることは既に決まっていたといっても過言ではないのかもしれません。

ちなみに、本作のアルバムジャケットもISSUGIが制作したそうです。本当にマルチな才能を持っていますよね。そして、心底HIPHOPを知り尽くした男だなと改めて思います。最後【WE SHINE】で高らかと歌い上げられているように、彼らの前に拓けているHIPHOPの航路は、輝かしいものであるに違いありません。

堅実でタイトなフロウ心を射抜くいぶし銀のライン吐く言葉すべてが金言となるISSUGIのラップは本作でも健在です。BESの華やかなフロウが即効性の毒ならば、ISSUGIのリリカルさは遅効性の毒です。音のBES言葉のISSUGI。やはり、この二人のタッグは、反則級に最強だなと改めて思います。

ISSUGI BES 

さて、今回はシーンに新たな金字塔を打ち立てたBES & ISSUGIのアルバム【VIRIDIAN SHOOT】について書かせてもらいました。最初から最後まで、ボーナストラックも含め、本当に何度でも何度でも聴き返したくなる作品になっています。

そして、このアルバムを聴き終えてから思ったことは、結局私はHIPHOPの中でも、このアルバムのようなBOOM BAPサウンドが好きで好きで堪らないんだな、ということでした。

時代の主流はもはや別のサウンドなのは重々承知していながらも、やっぱりいつまで経っても私におけるHIPHOPの中心はこんなサウンドです。ISSUGIの言うように、今後もナチュラルに進化を続けていくBOOM BAPを、心より楽しみにしたいと思います。

それでは、今回はこのへんで。




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