Pto6(ぴーとろっく)

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どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は、先日リリースされた裂固の1stアルバム【TIGHT】について書きたいと思います。

本名“泰斗”と掛け合わせたそのタイトルからも感じ取れるとおり、進化し続ける等身大の彼を余すことなく詰め込んだ、まさに名刺代わりに相応しい見事な1stアルバムになっています。

【TIGHT by 裂固】
TIGHT by 裂固 

<収録曲>
1. INTRO 
2. MUSIC PANDEMIC
3. BEFORE&AFTER
4. 英雄の唄 
5. Brand New
6. アドベンチャー
7. Open Mic (feat. 梵頭)
8. All Right 
9. Next Level
10. Lullaby
11. Poker Face
12. Wake Up
13. Coast to Coast (feat. 輪入道)
14. Keep On Runnin'
15. WALK to REMEMBER
16. 覚めない夢



【Keep On Runnin'】をリリースしてから1年と少し。彼は相も変わらずハイペースに走り続けているようです。そしてそれは、キャリアも長くない若手MCの彼が、自身に説得力を纏わせるための術を心得ているという証でもあります。そのことについては、楽曲【Wake Up】のリリックをみてもわかります。

“全速力このスピード感を常に継続することでやっと宿る説得力”

本アルバムは、全体としてポジティブな心意気若者らしい溌剌さに満ちた爽快な作品となっています。それゆえに、おそらくこの作品を手に取った多くのファン達にとっては、期待していた通りの満足感を覚えたのではないでしょうか。早いキャリアで躊躇せずに放つ1stアルバムに相応しいフレッシュさと勢い。沸き上がる制作意欲にぐいぐいと引っ張られながら、とにかくラップをすることが、曲を書き進化を重ねていくことが楽しくて仕方がないというような、裂固の抑えきれぬ衝動を感じ取ることができます。

それでいて、作品としてのクオリティも兼ね備えており、自身の感情を掘り下げた上で丹念に綴られたリリックは、裂固という人物像をしっかりと浮かび上がらせ、その思考の深みを聴く者に感じさせてくれます。

また、本作を何度も繰り返し聴いているうちにふと気が付いたことは、自分がライムを全然意識せずに聴き入っているということでした。これまで裂固といえばライミングという特徴で捉える機会が多かったので、このことに気づいたときには自身でも驚いてしまいました。

当然、本作においても裂固のライミングは相変わらず冴え渡っています。量と質を兼ね備えた、フリースタイルの時以上のパフォーマンスを楽曲の上で見せつけてくれています。しかし、これだけの量の韻を踏んでいるにも関わらず、耳がライムに引っ張られずにしっかりとリリックの意味を追って聴くことができるのです。

おそらくそれは、聴き手の耳がもはや韻が踏まれることは当たり前として捉えているからではないでしょうか。押韻は音とリズムを生みだす役割に徹し、リリックとしての意味とメッセージを気持ちよく響かせてくれています。つまりは、ライムがリリックを一切邪魔していないのです。よくよく考えてみると、それってすごい境地ではないでしょうか。ライミング巧者のラッパーは数多くいれども、この境地に達している人はなかなかいないのではないかと思います。

もちろん、意識してライムを追って聴いてみても、そのリリック構成の緻密さを堪能でき、じっくりと楽しむことができます。そして、リリックを指でなぞりながらこのアルバムを聴いているうちに、裂固は本当に文章を読むことが、言葉で表現することが好きなんだろうな、というシンパシー混じりの好意的な感情を抱くことができました。

ボキャブラリーを増やすツールとして読書をするラッパーは多いと思いますが、そういう人達の表現においては得てして、仕入れたばかりの言葉を無理矢理に入れ込むというような、背伸びしている感を感じさせられることも少なくありません。他で用いている言葉とのギャップに違和感を感じさせられるわけです。

しかし、裂固のリリックにおいてはそのような臭みが一切ありません。ウィットに富んだ言葉たちがあくまで自然に、座り良くリリックの中に収まっているのです。言葉のバリエーションを増やすためという功利的な目的だけではなく、純粋に読書と親しみながら自身の言葉の幅を自然と広げていったのだろうな、ということが想像できました。だからこそ、彼の言葉はあくまでナチュラルに響き、そのメッセージがストレートに伝わってくるのだと思います。

ちなみにリリックで言えば、私は【Next Level】に感銘を受けました。ライムとメッセージが綿密に編み込まれており、タイトルのとおり、自身の表現力をもう一段上に引き上げようとする裂固の飽くなき向上心を感じさせられます。

“リリックの質を高めりゃ高めるほど増えた苦悩”

またリリックの面で言えば本作は、踊る筆の勢いのまま書かれたような軽快なリリックと、深く自身と向き合い何度も書き直しながら綿密に書き綴られたリリックが、よい塩梅で混在しているような印象を受けます。もともとはじっくり歌詞を練るスタイルだったようですが、うまく力を抜くことも覚えたことで、この絶妙なバランスが生まれたようです。そのことについては、【Brand New】で歌われています。

“歌詞を綴る時は常に礼儀もって向き合ってた俺も音と肩を組んで遊ぶことを覚えた”

それゆえに、流し聴きをしてみても気持ちよく聴き通せ、じっくりと聴いてみても十二分に味わえるという、深みのあるアルバムになっていると思います。だからこそ、何度繰り返し聴いてみてもそのたび新たな発見をすることができるのでしょう。

さて、この良曲揃いのアルバムについて、それぞれの楽曲についても語っていきたいと思います。

冒頭【MUSIC PANDEMIC】は、等身大でいることと、音楽でポジティブなマインドを広げていきたいという想いが高らかに宣言されている楽曲です。つづく【BEFORE&AFTER】はMVが公開されて以来ずっと大好きな楽曲で、最初に聴いたときはFReECOolが手掛けたHi-Fiトラックとの相性の良さにとても驚いた記憶があります。この二人のタッグ曲は他にももっと聴いてみたいですよね。

【BEFORE&AFTER】


攻撃的なボースト曲【英雄の唄】では切れ味あるラインでシーンに警鐘を鳴らし、つづく【Brand New】【アドベンチャー】では好奇心と向上心に満ちあふれた自身を軽やかに歌い上げています。いずれの曲においても、とにかく軽快なラップが冴え渡っており、心掴まれるキャッチーな楽曲に仕上がっています。そして、裂固はフックを作るのが本当に上手いなと改めて感じ入ってしまいました。

つづく【Open Mic】では、客演に招いたレーベルメイトの梵頭が鋭いラインを連発し、よい仕事ぶりをしています。また次の【All Right】ではこれまであまりなかった曲調のトラックを用いており、新鮮な裂固を味わうことができます。今作ではたくさんのビートメイカーと組んでいますが、それゆえにいろいろな裂固の表情が見られ、そのバリエーションの豊富さも魅力のひとつとなっています。

その後、前述した【Next Level】からはじまる【Lullaby】【Poker Face】という流れにおいては、作詞家としての裂固の凄みを堪能することができます。裂固は普段において口数が多いというイメージをもっていないのですが、音の上では本当に饒舌になるなぁと感じさせられます。彼は普段このようなことを考え、こんな風に自分とシーンのことを捉えているのかと、裂固のことをなんだかよく知れたような気持ちにさせてくれます。また、外に向けた意思表示と内省的リリックのバランスが絶妙で、そのことがリリックに奥行きを与えているのではないかと思います。

冒頭でリリックを引用した【Wake Up】も私が大好きな楽曲のひとつです。おそらく裂固にとっても自身の原点を歌っているという意味で、とても大切にしている楽曲なのではないかと想像します。裂固がラッパーとして目覚めたその時の気持ちを、いつまでも忘れないようにと綴られた曲なのではないでしょうか。

つづく【Coast to Coast】では、裂固がラッパーを志すきっかけとなった輪入道を客演に招き、情熱とバイブスに満ち溢れた楽曲を作り上げています。輪入道のラップはいつ聴いても、熱い気持ちを沸き上がらせてくれますよね。裂固もそれに引っ張られるように、いつにも増して言葉に熱が帯びているように思います。

裂固の代表曲【Keep On Runnin'】と次曲はICE BAHNのメンバーBEAT奉行とのタッグ曲です。前者については、シングルとして発売された時にも記事を書いているのですが、アルバムを通して改めて聴いていると新しい発見も数多くありました。アルバム全体のポジティブなマインドと共鳴し、楽曲が纏うメッセージがより説得力を増して響いているように思います。


後者【WALK to REMEMBER】では、ミドルテンポな心地よいトラックの上で、過去を振り返っていきます。岐阜の仲間達に対する愛がにじみ出たリリックに心震わされてしまいます。そして最終曲【覚めない夢】では、更にストレートにマイメンに対する愛地元に対する愛が歌われています。大切なものの為に、これからも夢を追い走り続ける。そんな爽やかな決意によって、このアルバムは幕を降ろします。そんな作品の締めくくり方ひとつとってみても、実に裂固らしさが表れている作品だなと感じてしまいますよね。

【WALK to REMEMBER】


さて、今回は裂固の1stアルバム【TIGHT】について書かせてもらいました。

裂固が「このアルバムを言葉で表すなら変化と等身大」と語っていた通り、裂固という人物への理解を深め、更なる進化へと向けた予兆を感じることができる作品ではないかなと思います。少しでも裂固に興味があるという方は、是非とも聴いてみることをおすすめします。本当に何度でも繰り返し聴くことのできる味わい深い作品ですよ。

それでは、今回はこのへんで。







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最終更新日2018-03-20
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