Pto6(ぴーとろっく)

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どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は、先日発売されたTKda黒ぶちの2ndアルバム【Live in a dream!!】について書きたいと思います。

ラップ、ビート、メッセージ、作品性。本作はそのどれをも妥協せずに作り上げられた素晴らしい作品となっています。とにかく聴いていると様々な想いが沸き上がってしまった為、この記事では5つのカテゴリーに分けた上で、それぞれに対して感じたことを書いていきたいと思います。

【Live in a dream!!】
live in a dream 

<収録曲>
1. JUST [Pro. Aaron Chourai]
2. FiREE [Pro. STUTS]
3. Dream [Pro. MURO]
4. Make It Better/HeART [Pro. ELIONE]
5. After The Morning [Pro. DJ PERRO]
6. Do The Right Thing [Pro. Aaron Chourai]
7. Change [Pro. Aaron Chourai]
8. From... [Pro. MICHITA]
9. New Day [Pro. FK]
10. 終わらない夜に [Pro. ELIONE]



1.表現における流儀

私はこのブログを書く上で意識していることが二つあります。一つは『自身の感情に対し誠実に向き合うこと』。もう一つは『持ちうる力を尽くして精一杯に表現すること』です。

私はTKda黒ぶちのラップを聴いていると、それに似たポリシーを感じてしまいます。非常に恐れ多いことながら、表現の流儀において、とてもシンパシーを感じてしまうのです。彼は楽曲【HeART】の中でこんなことを歌っています。

“自分は自分であれ無言の問いかけ それを言葉にするため感情を追いかける”

またそれと同時に、彼の表現に対して少しばかりのジェラシーも感じてしまいます。自身との向き合いにおける誠実さ深さ、表現における正確さ巧みさで、プロの表現者としての格の違いをまざまざと見せつけてくれるのです。更にはそれをビートに乗せ、音楽性をも纏わせることができるのですから、羨ましいことこの上ありません。

そして、その自身との向き合い方と表現力は、前作と比べても格段に進化しているように思います。情景描写も織り交ぜた多層的なリリック構成、感情を瑞々しく描く表現方法、そこに込められた強いメッセージ性。そのどれもが、2年前の前作よりもアップグレードされているのです。

「前作は0枚目のアルバム、本作を1stアルバムと捉えて頂いて構わない」という本人の言葉からも、成長した今の自分を見て欲しいという自信と矜持が窺えますよね。今作において表現のスタイルが確立できたという手応えを、本人も感じているのではないでしょうか。(未だに1stアルバムも大好きな私としては、是非ともそちらも聴いて欲しいなと思うのですが。)



2.内から外へ

“内から外へ音を届けに来た”

冒頭曲【JUST】でそう歌われているように、このアルバムでは様々な形で“内から外へ”ということが歌われています。

に秘めた感情をへと向け言葉にするということ。向きの性格を克服しの世界と向き合うためにやってきたこと。シーンの側だけでなくその側にも音楽を響かせたいという想い。国から海へと飛び出しその目で実際に見てきたもの・・・。

もっとも顕著なのは、8、9曲目の2曲を用いて表現された“内から外へ”です。【From...】においては、に閉じこめていた心を溶かし、の世界へと徐々に関心を向けるようになった変化を丁寧に描きつつ、【New Day】への曲跨ぎを用いて、暗いトンネルを抜け、明るいの世界へ出たことを明示的に表現しています。

また、2曲における時間軸という観点でみてみても、今となっては自身の側にしかない“過去”の記憶の話から、側の世界で刻々と展開されていく“今と未来”の話へと移っていきます。そしてなにより、に秘めていた自身の“夢”が、の世界で叶っていくという喜びが全面的に表現されていますよね。

これらの曲における幾重にも重ね合わせた“内から外へ”のイメージは、本当にお見事だと思います。このアルバム全体を通しても、特筆すべき表現のひとつではないでしょうか。


3.ポジティブなメッセージ

前述した“内から外へ”の意識と共鳴するように、今作ではとにかくポジティブなメッセージが強く印象に残ります。作品全体の印象という意味では、前作からこの点が一番変わったのではないかなと私は感じました。

前作では内省的な表現が中心に据えられており、その中にはネガティブな感情フラストレーションのようなものも多く語られていました。しかし今作においては、ほぼ一貫して前向きなメッセージが語られているのです。

理不尽なことも多い不条理なこの世界において、できる限りポジティブな要素を汲み上げ、伝えようとしているかのような意志を感じられますよね。それはもちろん、無理をしてそのようにしているというわけではありません。そのように生きることが自分たちの人生にとってプラスになる、ということを伝えたいのではないでしょうか。

前作を出してからの2年間の経験で得た自信と感動、そして音楽や表現に対する心境の変化のようなものを感じさせてくれますよね。そしてなにより、現在夢に向かって歩み続けているTKda黒ぶちが、ポジティブな感情に満ち溢れているということの表れではないかと思います。

シンプルでストレートなメッセージに、持ち前の饒舌により肉付けがされることで、聴き手には特大のパンチとしてぶつかってきます。落ち込んだときなどにこのアルバムを聴いたら、とても勇気づけられるのではないでしょうか。


4.楽曲のつながり

前作と同様、厳選された珠玉の10曲のみで構成されている本作。曲の順番はもちろん、曲間も気持ちよく繋ぎ合わされていることで、コンセプトアルバムとして統一感を持たせた前作とはまた違った意味で、1枚としての高い作品性を感じさせてくれます。

また、曲と曲の繋がりをみると、その曲の歌詞に出てきたサブテーマ次の曲でメインテーマとして歌われる、といったような心地よいテーマの連鎖が見られます。話がどんどんと繋がり発展していくので、なんだかTKとふたりで腹を割って語り合っているような、そんな暖かい感覚に包まれていきます。

特に6曲目から9曲目におけるテーマの連鎖は顕著です。【Do The Right Thing】では、夢からの逆算により自身の行動に規律を設けることの重要性がメインテーマとして歌われていますが、その中で『変化』していくことについての話がでてきます。すると次の曲【Change】では、その『変化』がメインテーマに据えられ、そのことについてより深く語られていくのです。またそれと同様に、その中で過去の『roots』と現在の『View』についてが歌われると、その次の【From...】では過去の『roots』が、その次の【New Day】では現在の『View』が歌われていくという、テーマの連鎖が展開されていくのです。

ストリーミングサービスが浸透し、『アルバム』という概念が形骸化しつつある現代。このアルバムは、その流れにおいてもなお昔ながらの愉しみ方にしがみつく時代遅れな自分を、少しばかり肯定したくなる気持ちにさせてくれます。やはりこういう仕掛けがあるからこそ、私はいつまでも『アルバム』として音楽を味わっていきたいなと思ってしまうのです。


5.極上のビート群

本作は選び抜かれた極上のビートばかりが揃っています。私は本作を聴いて、アルバムを作る上でのビート選びプロデューサ選びは非常に重要な要素だなと改めて感じさせられました。また、楽曲タイトルにプロデューサ名をしっかりと明示しているところからも、TKのプロデューサ達に対する高いリスペクトを感じますよね。

Aaron Chouraiは、そんな本作で最多となる3曲を手がけているプロデューサーです。ジャズに精通している彼らしいジャジーなビートが、聴き手の高揚感を巧みに煽っていきます。特に冒頭曲【JUST】は、即興でのジャズセッションのような展開が印象的なビートです。TKda黒ぶちとの相性も抜群なようで、伸び伸びとラップをしているように感じられますよね。

また前作からビート提供をしているELIONEは、本作では2曲を提供しています。2曲がシームレスに繋ぎ合わされた楽曲【Make It Better/HeART】と、最終曲【終わらない夜に】です。どちらもTKda黒ぶちの新しいフローを引き出しており、シーンの流行も意識されたような楽曲に仕上がっています。【終わらない夜に】では、ZORNの【My Life】をも彷彿とさせるような、ピアノの泣きの旋律が印象的ですよね。

同じく前作からの継続となるDJ PERROによる【After The Morning】のビートは、John Hicksの同タイトル曲のネタが全編通してサンプリングされています。このネタはNujabesFlowersでも使われていますよね。NYの街を歩いているときに、で渦巻いた感情とで起きた出来事が、繊細な描写で語られていきます。(余談ですが、リリックの中でポール・オースタートゥルー・ストーリーズに触れられているのが個人的には嬉しかった点です。NYの街並みを想像しながら、私も思わず本を手に取り、読み返してしまいました。)

前述したとおり、本作において重要な意味をもつ楽曲【From...】【New Day】は、それぞれMICHITAFKによって手掛けられたビートです。2曲の対比がとにかく見事で、音としても“内”と“外”が巧みに表現されていますよね。異なるプロデューサのビートを使って、ここまで連鎖した物語をつくれるというのは、TKda黒ぶちの手腕があってこそでしょう。

またMVも公開されたSTUTSによる【FiREE】のビートも秀逸です。音が流れ始めたその瞬間から多幸感に包まれてしまいます。またこのビートが10年前にもらったものだという背景込みで聴くと、なおさら感慨深く響きますよね。ちなみにタイトル『FiREE』については、自由(FREE)な状況に自身(i)を置いたとき、火(FiRE)が点る場所こそが“情熱の在り処”だ、という解釈を勝手にしています。

【FiREE】


そして本作における一番の目玉曲で、TKda黒ぶちにとって憧れの存在でもあるMUROが手がけた【Dream】のビートは、誰の期待をも裏切らない素晴らしいものでした。これぞ一級品と言えるような、音の一つ一つにまで拘りを感じさせられる秀逸なビートです。TKda黒ぶちのラップからも、憧れのMUROと楽曲が作れたこと、長年の夢が叶ったことへの感動が滲み出ていますよね。そしてそのことが、この曲で歌われている“夢”に、なによりもの説得力を纏わせているように思います。

【Dream】


さて、今回は私にシンパシーとジェラシーを感じさせてくれる、TKda黒ぶちの作品【Live in a dream!!】について書かせてもらいました。やはり彼の作品と向き合うときは、いつも以上に言葉が沸き上がってくるように感じます。彼の饒舌に促されるかのように、聴けば聴くほど書きたいことが浮かんでくるのです。きっと、これからもどんどんと語りたいことが増えていくことでしょう。

聴いたら聴いた分だけ応えてくれる、聴く人に何かをもたらしてくれる作品だと私は思っています。是非とも多くの人に聴いてもらいたい、そして何度も聴いて親密になってもらいたいなと思う作品です。

それでは、今回はこのへんで。






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最終更新日2018-04-24
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