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日本の名盤・基本の定番④(STILLING,STILL DREAMING by THA BLUE HERB)

どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は久しぶりに聴き返した日本の名盤をご紹介します。<THA BLUE HERB>のファースト・アルバムにして金字塔的作品【STILLING,STILL DREAMING】です。

【STILLING,STILL DREAMING by THE BLUE HERB】
blue

<収録曲>
【DISC1】
1.THIS ’98
2.ONCE UPON A LAIF IN SAPPORO
3.¥
4.SHOCK-SHINEの乱
5.BOSSIZM
6.STOICIZM PRELUDE
7.STOICIZM
8.孤憤
9.COAST 2 COAST 2
10.続・腐食
11.ペンと知恵の輪
12.ペンと知恵の輪(WE LOVE IT MADLY)
13.あの夜だけが
14.AME NI MO MAKEZ

【DISC2】
1.SHOCK-SHINEの乱(1 PREMISE)
2.RAGING BULL
3.知恵の輪(THIRD HALLUCINATION CHAOS)
4.北風(WIND FOR WIN)


“針は変えたんだろうな”

アルバムの冒頭、札幌駅に到着した電車の音から始まり<BOSS THE MC>の放つこの一言だけで一気にアルバムの世界に引きずり込まれます。

それにしても電車の音から始まるなんて以前紹介したアメリカのクラシック作品<NAS>の【Illmatic】を彷彿とさせますね。

【Illmatic】の紹介記事はこちら

このアルバム全体からは、当時の「東京中心」の日本ヒップホップシーンへの怒りにも似たフラストレーションがほとばしっています。またリリックのテーマもHIPHOPのテーマに絞られていることも影響し、アルバム全体に緊張感が漲っています。

彼らはこのアルバムで評価され、アンダーグラウンドシーンの主役にまで踊り出ます。その為、これ以降の作品からはこのアルバムにある怒りの要素は薄まっていきます。そういう意味でも、ファンの中にはこのファーストアルバムと他のアルバムとでは異なる見方をしている人もいるみたいです。

この作品が発売された98年から評価される99年にかけては、日本のヒップホップシーンにおいても大きな変革期でした。あの<Dragon Ash>と<ZEEBRA>の作品【Grateful Days】がヒットチャートを賑わしていた時です。

ヒップホップの曲がメジャーチャートにランクインされるようになってきた傍ら、アンダーグラウンドでは<Shing02>やこの<THA BLUE HERB>が現れ、ヒップホップシーンの分散が顕著化してきたのです。「当時のラッパーは、メジャー路線とアンダーグラウンド路線どちらに進むかを選択に迫られていた」とも、当時を振り返り<サイプレス上野>が以前語っていました。

それほどまでにシーンに影響力を与えた本作品です。すごいですね。当時は東京シーンでもすぐに話題になり、<RHYMESTER>なんかも気に入り周りに紹介していたらしいです。なんでもあの名曲【耳ヲ貸スベキ】のこのラインは、BOSS THE MCのことを歌っているとの説もあるくらいです。

“北の地下深く 技磨くライマー”

さて、THA BLUE HERBの紹介を少ししますと、MCの<BOSS THE MC>(外部作品ではILL-BOSSTINOと名乗る)と、トラックメイカーの<O.N.O>、ライブDJを務める<DJ DYE>の3名からなる北海道の札幌から生まれたグループです。

彼らの最大の魅力はやはりBOSSのリリックです。彼が吐くバース一つ一つの言葉の説得力と伝わる真剣味は他とは一線を画すように思います。とりわけこのアルバムでは終始当時のヒップホップシーンに対する不満感をぶちまけている訳ですが、「本物のMCは東京以外にもいるんだ」という強いメッセージは、結果としてシーン全体を動かしました。

現在のMCバトル界、ヒップホップ界においても、このような「ローカルの叫び」はよく耳にします。まさに彼らはその走りとなり、また同時に「ローカルからでも革命は起こせる証明」ともなりました。ローカルを拠点とするラッパーにとってはこの上ない希望となっていることでしょう。

さて、MCバトルの話をもっとすると、このアルバムで出てくるBOSSのバースは現在のバトルにおいて多くのMCたちにサンプリングされています。例えば以下のラインたちは、バトル好きな人たちなら一度と言わず聴いたことがあるのではないでしょうか。

“東京への用件はわずかそれくらい” 【ONCE UPON A LAIF IN SAPPORO】
“キャリアを口にする前に技を学びな” 【ONCE UPON A LAIF IN SAPPORO】
“北から頂く” 【COAST 2 COAST 2】

現在のMCバトルシーンにも多大なる影響を与えているのがわかりますね。それほどまでに彼らのリリックは格好いいのです。BOSSはダブル(レコーディングで自身の声を被せること)をあまり使わないので有名です。ダブルを使わずとも力強いラップができるし、そもそもの言葉に強度があることへの自信の表れかもしれません。

さて、この作品はもちろん全曲すべてすばらしいインパクトを抱えているのですが、改めて聴いて私が一番衝撃を受けたのは8曲目【孤憤】でした。この曲は雑踏の中でBOSSがフリースタイル調でリスナーに語りかける構成となっています。その中で語られていることの一部抜粋がこちらです。

“スピーカーの前のお前が
西暦何年なのか、どこの国か街かは想像できねぇ。
皿は旅をする。時を軽く超える”


まさに、98年から現在に、レコードで作られた音源が今やiPhoneで聴かれている。北海道から遠路はるばる私の元まで届いている。まさに時空と距離を超えて音楽が届いている。これって本当にすごいことですよね。きっとこれからも日本のヒップホップにおける名盤としてさらに長い時と距離を超えて語り継がれていくことでしょう。

さて、やはり名盤といわれる作品はすばらしいですね。またしばらく日本の名盤を聴き返したくなってきました。みなさんも是非改めて聴いてみてはどうでしょうか。

では、今回もこのへんで。

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