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日本の名盤・基本の定番⑤(緑黄色人種 by Shing02)

どうもPto6(ぴーとろっく)です。

前回記事からの流れで、今回も日本の名盤についてご紹介です。一度名盤を漁りだすと止まらなくなりますね。今回も、日本のヒップホップを語る上で欠かせない作品のひとつである<Shing02>の【緑黄色人種】を紹介します。

【緑黄色人種 by Shing02】
緑黄色

<収録曲>
【ディスク:1】
1. 冒頭
2. 頂
3. ¥都
4. 誰も知らない
5. 真吾保管計画
6. 少年ナイフ
7. No.13
8. 休憩
9. Bonus Video :星の王子様(Movie)

【ディスク:2】
1. -
2.人生ゲーム
3. 星の王子様
4. イカルス
5.ひとつになるとき
6. 応答セヨ
7. 3/4の詩
8. 終局(哀愁)
9. -
10.担当者各位
11. No.13(Reprise)


前回の記事でご紹介した<THA BLUE HERB>の【STILLING,STILL DREAMING】とほぼ同時期に出たアルバムで、こちらも日本のヒップホップ界を「メジャー」と「アンダーグラウンド」とに二分化する引き金ともなった作品と言われており、当時のアンダーグラウンドシーンを象徴する代表的な作品とされています。

【STILLING,STILL DREAMING】の紹介記事はこちら

ただ実は私が<Shing02(シンゴツー)>を知ったのは彼の出世作となったこの作品ではありませんでした。日本が誇る世界的トラックメイカー<Nujabes>の作品が初めてのShing02との出会いでした。もしかしたら、私のような人も多いかもしれませんね。NujabesとShing02による作品は多々有りますが、その中でも特に代表的なのはこの【Luv(sic)】シリーズでしょう。

【Luv(Sic)Pt. 2】


現在までにこのLuv(Sic)シリーズはPt.1~Pt.6まであります。2010年にNujabesが交通事故で亡くなった際には、その死を悲しむと同時に、このシリーズの続編が聴けないことについても誰もが落胆していたと思います。しかしNujabesの死後もShing02とNujabesが作ったレーベル<hydeout productions>が総力をあげ、Nujabesの未発表トラック等を利用しながら、Pt.6まで完成されるに至りました。それほどまでに世界が待ち望む大人気シリーズなのです。

少し話が脱線してしまいましたが、私とShing02の出会いはこのように「英語ラップ」でした。こんなにも英語ラップがうまくて世界的にも認められている日本人ラッパーがいたのか、という感動が私が彼にもった第一印象でした。しかしその側面は彼のひとつの側面でしかなかったのです。

Shing02はバイリンガルである特権を用いて「日本語」と「英語」を使い分けて作品をつくります。しかもよくあるバイリンガルラッパーのように日本語と英語を織り交ぜる構成ではなく、作品毎に完全に言語を使い分けるのです。まさに二刀流ラッパーですね。

そんな彼の「日本語」という刀を用いた代表的作品がこの【緑黄色人種】です。まぁ、英語ラップより実は日本語ラップの方が作品数は多いので、彼にとっては日本語ラップの方が本流なのですが。

さて、アルバムの中身ですが、今聴いても本当に前衛的な内容となっています。だってまず冒頭から日本の国家【君が代】のメロディのギターソロから始まるのですから。

また、様々なテイストの曲があり、一見これってヒップホップ?と思う曲もあるのですが、社会風刺を交えた強いメッセージ性や、鳴っているビートトラックは間違いなくヒップホップそのもので、作品全体の印象としては、「これこそヒップホップの王道なのでは?」とさえ思ってしまいます。

とにかくアルバムとして振り幅が大きいですが、大きくな特徴として分けると「痛烈な社会風刺の曲」「ポエトリー・リーディング的曲」の2つに分かれると思います。

「痛烈な社会風刺の曲」の代表としては【真吾保管計画】と【少年ナイフ】があがるでしょう。

【真吾保管計画】は当時の芸能人や有名人の実名が次々に出てきます(ビートたけし、松本人志、手塚治虫など他多数)。また、タイトルからもわかるように、アニメ「エヴァンゲリオン」の要素も用いられています。そして最後にはあの猟奇的事件「サカキバラ事件」のことにも言及します。痛烈なメッセージを感じる楽曲です。

【真吾保管計画】


また【少年ナイフ】は当時の「キレる若者」をテーマとした社会風刺になっていると思われる作品でラストは衝撃的です。予想はついていてもラストが近づくにつれ心拍数があがってしまいます。

【少年ナイフ】


こんな痛烈な社会風刺的曲があるかと思いきや、ほとんど語りに近いスタイルによる、ファンタジー色やストーリー性の強い「ポエトリー・リーディング的曲」もあるのです。その代表曲はこの【星の王子様】と【イカルス】でしょう。

【星の王子様】は同タイトルの童話小説を彷彿とさせながらも、それとは異なるストーリーを持った作品となっています。10分を超える曲にもかかわらず、物語に引きずり込ませ最後まで聴かせる力は本当にすごいなと思います。

【星の王子様】


また、【イカルス】は<芥川龍之介>の有名作【蜘蛛の糸】を彷彿とさせる物語を中心に、様々な宗教的ワードが出てくる構成になっています。これもメッセージの解釈が人によって異なりそうな曲ですね。

【イカルス】




ここで紹介した曲を聴いてもらっただけでも、Shing02はヒップホップの枠に捉えられないアーティストであると感じるのではないかと思います。しかし私は、あくまでも彼の音楽はヒップホップであり、そのヒップホップの音楽を芸術の域まで昇華しようと挑戦し続けているアーティストがShing02だと思っています。

今聴いてもこのインパクトなのですから、この作品が投下された当時のヒップホップシーンが受けた衝撃は計り知れません。シーンが大きく動いたのも頷けるほどの衝撃作にして、紛いもない名作だと私は思います。

さて、今回は動画中心の紹介をしてしまいましたが、この作品については言葉より実際に聴いてもらうのが一番だと思ったからです。この芸術性を私の拙い言葉で表現できるはずもありませんし、きっと聴いてみて、それぞれがもつ感想は千差万別だと思います。芸術にとって過度な解説は蛇足以外の何物でもないですよね。

たまには、こういった一風変わったヒップホップを味わってみるのも面白いと思います。興味をもった方は是非聴いてみて、この衝撃を味わって下さい。

では、今回はこのへんで。

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