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日本の名盤・基本の定番⑩(ダーティサイエンス by RHYMESTER)

どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は<RHYMESTER>の野外フェス「人間交差点2015」の開催直前特集として、彼らの2010年代の名盤【ダーティーサイエンス】について書きたいと思います。

【ダーティサイエンス by RHYMESTER】
RHYMESTER

<収録曲>
1. ダーティー
2. ゆめのしま
3. スクリーム
4. ドサンピンブルース feat.キエるマキュウ
5. ダーティーサイエンス
6. グラキャビ
7. ナイスミドル
8. サバイバー
9. Deejay Deejay
10. ノーサイド
11. It’s A New Day
12. The Choice Is Yours

活動停止前をRHYMESTER第1章、活動再開後を第2章とするならば、この作品は第2章の3作目となる作品です。

第1章でのRHYMSTERは、この作品のようなエモーショナルで感情に訴えかけるリリックは書いていませんでした。というのも「そういうものは歌ものの世界でやることだ」、「ヒップホップはシニカルな視点から見たリアルを表現すべきだ」という持論をその当時持っていたからだそうです。しかし第2章を機に「価値のあるものを残したくなった、ヒップホップの音楽的な力を信じるようになった」と歌詞の書き方を大きく変えています。

その為、このアルバムでもしっかりとしたアルバムコンセプトが考えられていて、それに基づき歌詞を書いています。「ヒップホップはメロディで人を気持ちよくできないから、リズムと内容で人を引っ張っていかないといけない」と語っていた彼らの、歌詞への強い拘りが今作でも表れています。

そんな今作のアルバムコンセプトは大きく2つです。
①ヒップホップに知性を取り戻す
②3.11以降の日本社会を歌う


コンセプト①は、所謂コンシャスヒップホップ(知的でリリカルな歌詞を歌うヒップホップ)といわれるもので、メインストリームから支持を受けづらいとされているジャンルですが、それに敢えて彼らはこのアルバムで挑戦しました。本作で扱う知性は、野蛮でダーティな知性です。

ヒップホップにおいては、知性を出し過ぎるとただの歌詞として読み飛ばされてしまう恐れがあります。そのため「知性を隠す知性が必要だった」と彼らが語っていました。あるライターが「江戸時代の洒落者は表ではなく裏地にこだわることを粋といったが、このアルバムの歌詞はそれにも似た日本的美意識で紡がれている」と書いていましたが、言い得て妙だと思います。

またトラックについても、アルバムコンセプトが決定した時点で<The Anticipation Illicit Tsuboi(キエるマキュウ)>にトラック作成を依頼したそうです。たしかに私も「野蛮でダーティなヒップホップ」といわれたら真っ先に彼が思い浮かびます。

彼がRHYMESTERに提供した8曲のうち、このアルバムでは5曲が採用されています。もともとは8曲がすべてつながって1曲になっているような作りだったそうです。トラックの至るところにレコードの針の音が入っていて、アナログミュージックに対する彼らの強いこだわりを感じさせられます。

一方、コンセプト②は半分は意識的に、そして半分は無意識的に自然に歌詞ににじみ出たものだと思います。日本にいるどんなアーティストにおいても、3.11の震災後に初めて出す作品は、このテーマが少なからず影響しているのではないかと思います。

さて、アルバムにおける重要曲をいくつか紹介していきましょう。

【ゆめのしま】


この 曲はアルバム収録曲のうち【The Choice Is Yours】の次いで2番目につくられた曲です。この曲ができた時点で、【ゆめのしま】で始まり【 The Choice Is Yours】で終わるアルバムの構成の骨格ができていたらしいです。

楽曲タイトルである「ゆめのしま」はその字面通りの夢溢れる島国という意味と、東京のゴミ埋立地「夢の島」のダブルミーニングになっています。「言葉」も謂わばダブルミーニング的な要素があり、言い方次第で毒にも薬にもなりますが、そういう言葉の力を使って「希望」を与える歌を作ろうとして生まれた曲なんだそうです。

【It’s A New Day】


こちらの曲もアルバムの最初期につくられた楽曲です。このアルバムにおいてはこの【It’s A New Day】がラスト、そしてその後の【The Choice Is Yours】がエンドロールの役割が与えられているのだそうです。アルバムにおいて何度もSKIT的にこの曲のイントロが流れる構成からも、ラストのこの曲へ向けてアルバム全体が作られているのを感じます。

またこの曲については<Mummy-D>が「ラッパーではなく一般人視点から書いた曲で、ヒップホップファッションは全然着ていない」と語っており、3.11の日本について誰もが共感できる曲となっているのではないでしょうか。

【The Choice Is Yours】


この曲はアルバム収録曲の中では一番早くできた曲で、アルバム前のリードシングルとして発売されました。3.11後の混沌とした日本社会をテーマに「自分の責任で選択を行え、他人に責任をなすりつけるのは止めよう」というメッセージが込められています。

しかし、リスナーからは安易な批判ソングと誤解されることも多いようで、「やっぱアイツら腐ってますよね」とか言われてしまうそうです。実際のこの曲の構成としては、「悪者」とされている「政治家」、「国家」等が次々と列挙されていきますが、最後にそれを全部ひっくり返して「他の誰でもなく君だ」となる流れになっています。

【同タイトルの映像作品】
DVD

ちなみに、私はこのアルバムが大好きだったので同タイトルのBlu-rayも買いました。ツアーを追ったドキュメンタリー形式で、ライブ中心のこれまでの映像作品とは異なるつくりになっています。

最終ライブ地である鹿児島でのライブにおいて、機材トラブルにより急遽披露したアカペラVer「サバイバー」がとても秀逸でかなり格好いいです。「サバイバー」のMummy-DのバースはこれまでのRHYMESTERの楽曲名やリリックが散りばめられている構成となっているのですが、この歌詞によって、このツアーで歩んできた旅路や、これまで築いてきた彼らの歴史が頭の中でフラッシュバックされ、とても感動してしまいます。



RHYMESTERは結成から25周年を迎えていますが、現在も精力的に活動しています。それは「自分たちの世代が作ってしまったヒップホップの誤解を解く」ことを自分たちに最終課題として課しているからだそうです。しかし、ヒップホップを日本に根付かせるにはまだまだ高いバードルがあると考えており、だからこそ頑張れるとも語っています。

是非とも日本HIPHOPの更なる発展のためこれからも活動を続けて欲しいと思います。これからも、格好いいオジサン代表である彼らの活躍に期待しましょう。5月10日にある野外フェス「人間交差点」も、以前紹介した4月29日発売の新曲も楽しみですね。

では、今回はこのへんで。

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