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日本の名盤・基本の定番⑮(空からの力 by キングギドラ)

どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は、発売から20周年記念ということで、リマスター盤が6/17に発売される<キングギドラ>の傑作【空からの力】についてご紹介します。

【空からの力 by キングギドラ】
空からの力

<収録曲>
1. 未確認飛行物体接近中(急接近ミックス)
2. 登場
3. 見わまそう
4. 大掃除
5. コードナンバー0117
6. フリースタイル・ダンジョン
7. 空からの力(Instrumental)
8. 空からの力(Part II)
9. 星の死阻止
10. 地下鉄
11. スタア誕生
12. 行方不明
13. 真実の弾丸
14. コネクション

リマスター盤がわざわざ発売されるという点ひとつをとっても、このアルバムがどれほど日本ヒップホップシーンにおいて重要で、愛され続けてきたかがわかります。

このアルバムは、<RHYMESTER>の<Mummy-D>に「日本語でラップする上で押韻の方法論を完成させた」とまで言わしめた作品です。今でこそ当たり前となっている、“倒置法”や“体言止め”などを駆使したライミング・スタイルは、その後の多くのラッパーたちに影響を与えました。

この作品をきっかけに<ZEEBRA>が徐々にシーンの中心人物となっていくのですが、それに伴い「韻を踏んでなけりゃラップじゃねぇ」という空気がより強くシーンを支配するようになりした。この作品はある意味、彼らの“ライミングの巧みさを用いたセルフボースティング作品”ともいえるかもしれません。

とにかく全編わたってZEEBRAの存在感・ライミングテクニックの高さが目立ちます。声の出し方こそ現在とは異なり、ダミ声ではない自然な発声を用いているのですが、スキル自体はこの当時から既に確立されていたことがわかります。

また<K DUB SHINE>のリリックのストーリー性と、韻の固い言葉選びも、この当時から抜群で、ZEEBRAや<DJ OASISI>がつくるシンプルだが深みのある力強いトラックと融合することで、これほどまでにないほどに完成された“唯一無二のヒップホップ”を作り出しています。

さて、では代表曲をいくつか紹介していきましょう。

【大掃除】


“何人のラッパーが
ちゃんと韻踏んでるのか数えてみよう
たぶんかなり異様に少ないぞ”


上記の動画はLIVEバージョンで、冒頭【未確認飛行物体接近中】で始まり、途中から【大掃除】になります。ライブバージョンで聴いても韻を踏みまくっているのがわかると思います。しかもここまで韻を踏みながらリリックとしてしっかり意味も通していることに改めて驚かされてしまいます。

現代でこそ、それができるラッパーは増えましたが、この当時、これほどまでのクオリティで実現できたのは、おそらく彼らくらいだったのではないでしょうか。まさに“ライミングの教科書”といっていいほどの楽曲です。

そして、この曲の特記事項としては<K DUB SHINE>の巧妙なリリックについても触れておく必要があるでしょう。気を抜いて聴いていると取り逃がしてしまいますが、彼はこの楽曲において“1”から“1,000,000”まで順番に数字を入れ込むという技巧的なリリックを書いています。以下、その部分の抜粋です。

“連れてかれた 位置(1)(2) (3) 途の川
誰も 死(4) (5) ろく(6) な名(7) 前とかもらわず
影の過激 派 地(8) (9) 自由(10) におびやかし中 死亡数 10
まさかの技にキャプテン翼もイラつく 百(100) 点のうまさ
言葉の化学を駆使したMC
地上に降りた最後の 戦(1,000)
遺伝子が繊細 遺伝した天才
自然の変化 軽く盗る天下
余は 満(10,000) 足じゃ
百万(1,000,000) 石の貫禄 誇る弾力性
向こうにフローが着く間に
そこらWACK MC達 大パニック”


このような技巧を凝らしたリリックは、最初に気がついたとき嬉しくなり思わず人に説明して回りたくなります。まぁ、この曲はあまりに有名すぎて今更それもできないですが。笑

【スタア誕生】


“一瞬よぎった やめればよかった
思った時には もう遅かった”


社会的・政治的なメッセージ性がキングギドラのひとつの特徴でもあるのですが、それら楽曲の中でも最も有名で、当時聴く人達に大きな衝撃を与えたのがこの楽曲です。

スタアを夢見て上京した少女が、薬物依存で身を滅ぼすまでの悲しいストーリーが描かれており、光り輝く芸能業界の裏に漂う不穏な空気に対する痛烈な社会風刺曲となっています。当時はこのような事件が多く起きていたようです。現代は、果たして変わっているのでしょうか?

私にとっての【スタア誕生】との最初の出会いは、カラオケで友人がこの曲を歌ったことがキッカケでした。画面に映る悲惨な少女の姿を描く歌詞があまりにもショッキングで、その後のカラオケの時間が暗い気持ちになってしまったことを覚えています。

このように衝撃的でエグい表現をさせたら、キングギドラの右に出るラッパーは少ないのではないかと思います。ちなみに、この曲に<K DUB SHINE>楽曲である【ECDのロンリー・ガール】、【禁じられた遊び】を加えた3曲が“GALモノ3部作”と呼ばれているそうです。興味のある方はそちらもチェックしてみてください。

【空からの力:20周年記念デラックス・エディション 】
空

さて、今回紹介したものは原盤のほうなのですが、6/17に発売されるのは「20周年記念デラックス・エディション」ということなので、内容もパワーアップしているみたいです。

まずリマスタリングにより音質が現代作品と遜色ないほどに高音質化しているそうで、あとは激レア音源が追加されていたり、デラックス盤には当時のライブ映像等も入っていたりと盛りだくさんの内容のようです。ファンにはたまらない代物ですね。この作品を知らない若い世代などにも、これを機に聴いてもらいたいなと思います。

また、この20周年を機にキングギドラも本格的に再稼働をはじめており、先日5/10にはRHYMESTER主催の野外音楽フェス『人間交差点』に出演したのも話題になっていました。

今後も5/23にはリキッドルームにて開催される『P-VINE40周年記念イベント』や、ZEEBRAがプロデュースする夏のヒップホップフェス『SUMMERBOMB』への出演も決定しているようです。今後も彼らの活動から目が離せませんね。これからもどんどんヒップホップ界を盛り上げていただきたいです。

では、今回はこのへんで。

[修正]発売日が延期したので修正しました(5/20→6/17)



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