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日本の名盤・基本の定番⑱(THE RHYME ANIMAL by ZEEBRA)

どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は、最近<キングギドラ>としての活動も精力的なレジェンド<ZEEBRA>の名盤についてご紹介したいと思います。ZEEBRAのソロデビュー作にして歴史的な大傑作【THE RHYME ANIMAL】です。

それではいってみましょう。

【THE RHYME ANIMAL by ZEEBRA】
ZEEBRA

<収録曲>
1. 密林都市入口
2. ORIGINAL RHYME ANIMAL
3. I`M STILL NO.1
4. SMOKIN` AT THE LOBBY(Your Turn)
5. 未来への鍵
6. THE UNTOUCHABLE 2
7. 東京の中央
8. 真っ昼間
9. PARTEECHECKA(Bright Light Mix)
10. 再起不能
11. 視点
12. LOVESQUALL
13. 永遠の記憶
14. 平和’98

キングギドラ名義でリリースした【空からの力】“日本語ラップにおける押韻の方法論”を提示したZEEBRAでしたが、彼のライミング志向主義のスタイルは、このソロアルバムにて本当の意味で完成したといえます。

ZEEBRAのインタビューでも「“空からの力”は迷いだらけのアルバムだった」と語っています。先日発売された【空からの力 20周年記念デラックス・エディション】には未発表デモ音源が入っているのですが、それを聴けば“迷いだらけ”という意味もわかると思います。声の出し方から何から試行錯誤の中で作成されたアルバムだったようです。

【空からの力】についての記事はこちら

一方で、【空からの力】から約3年後にリリースされたこのソロ名義のアルバムにおいてはZEEBRAのスキルがしっかり確立されています。このあと2ndアルバムで“USスタイルやストリート臭さの導入”という更なるスタイルの変更があるのですが、ライミングやラップの基礎要素についてはこの1stアルバム時点で確立しており、その後の変化はその基礎の上に積み重ねていかれたものに過ぎません。

発売当時「日本語ラップのスタンダードを作りたかった」と語られていた本作は、キングギドラ作品では収録されないダンサブルなパーティーチューンも意識的に収録されており「日本に新たなシーンを作る」というZEEBRAの使命感にも似た強い意気込みが感じられるアルバム構成になっています。

それではいくつか曲をピックアップして紹介していきましょう。

【ORIGINAL RHYME ANIMAL】


“無知が成す様々な悪に 尖った鉛筆 突き立てる作品”

この曲はZEEBRAが【空からの力】から試みていたスキル証明の「ある種の到達点」と語られていた楽曲です。そして「スキルの最上級は一旦この曲で完結した」とまでZEEBRA自身に言わしめていました。更には「韻のパターンにも非の打ち所がないなって思う」と自画自賛してしまう程に、楽曲を通して洗練されたライミングが聴ける楽曲です。

最近でもTwitter上で“ライミング”や“パンチライン”の定義について熱く議論を交わしていたZEEBRAですが、彼のライミングに対する美学は自身も認めるほど高く、その強い拘りが集約されたこの楽曲には、彼が熱く語る“ライミング”や“パンチライン”がビッシリ詰め込まれているのです。

また、ZEEBRAは、「この楽曲でスキルの証明ができたことで、本アルバムを硬軟織り交ぜたアルバムとして作れた」と語っています。他の曲でユルい曲があっても、【ORIGINAL RHYME ANIMAL】を作れるヤツがやってることだからと思わせられるということですね。それほどまでに信頼をおいていて、ZEEBRAが「“韻を踏む”ということに一番本気になった曲」と挙げる本楽曲は、このアルバムの中で最も重要な楽曲といえるかもしれません。

【I'M STILL NO.1】


“まさにボクサー並みの苛酷さ 孤独さ だがもうすぐ届くさ”

この曲は、このアルバムの中で私が一番好きな楽曲です。キングギドラ作品ではないような明るくダンサブルな楽曲で、軽快なライミングやパンチラインは思わず一緒に被せて歌いたくなってしまいます。

ZEEBRAはHIPHOPを広めていくことを考える上で、常にダンサーやダンスフロアを意識していると語っています。「フロアで日本語ラップがかかって、機能して初めてヒップホップだって言えると思っている」そうです。この楽曲のトラックはZEEBRA自身が作成しているのですが、まさにダンスに適したループを取り入れ、クラブを意識したトラック構成になっているのがわかると思います。

「盆踊りを除けば、日本にダンスミュージックがなかった」と語られる当時の日本において、ヒップホップをダンスミュージックとして広めていく上で、DJやダンサー達にもわかりやすく受け入れられるようにという意識でこのアルバムを作ったそうです。この話を聞くと、ヒップホップの四大要素「ラップ、DJ、ブレイクダンス、グラフィティ」の重要性を再確認させられますね。やはりヒップホップを広めていく上ではそれらは切っても切れないものなのです。

【真っ昼間】


“午前10時部屋の中は既にサウナ この暑さじゃ目が覚めちまうな”

アルバム発売前にシングルとして発表された正真正銘のソロデビュー曲です。初期のZEEBRAを語る上でも必ずと言っていいほど話題に挙がる楽曲ですね。どこかダルそうな“真っ昼間”の雰囲気がうまく表現されている曲だと思います。

このようなミドルテンポのトラックの上だと、スキルの無いラッパーではグダグダ感がでてしまうところですが、それを微塵も感じさせないところがZEEBRAの凄いところだと思います。アップテンポの早口ラップだとある程度できるごまかしが、このテンポだとできないですからね。しっかりと実力がでてしまいます。

この曲を聞くと、あるライターが「“さんピンCamp世代”がアメリカのラップをどう日本語ラップに取り込んだかという点に関して大きく2種類に分けられる」と語っていた話を思い出します。その方曰く「MICROPHONE PAGERやBUDDHA BRANDはアメリカのラップのスタイルや雰囲気を“意訳”して日本語ラップに変換した人たちで、RHYMESTERやキングギドラは英語ラップの理屈・理論を“直訳”した人たち」なのだそうです。両者の特徴を表したとてもうまい表現だと思います。

しかしながら、この楽曲を聴いていると、少なくともZEEBRAは“理屈・理論(直訳)”だけではなく、“スタイルや雰囲気(意訳)”も取り入れており、両者バランスとれた完璧な日本語ラップの形を目指していたのではないかと思ってしまいます。この曲の醸し出す雰囲気や言葉選び、ライミングスキルから「日本語でもヒップホップができるんだ」という若きZEEBRAの熱い衝動を、聴く度に私は感じてしまうのです。




さて、上記紹介した以外の楽曲も名曲揃いです。UMBを三連覇した<R指定>も、このアルバムを無人島にもっていきたいアルバムとして挙げており、「今でも全曲、全パンチライン、全韻かぶせれます」と語るほど大好きなアルバムだそうです。彼のような若いMCにも未だに影響を与え続けているという点をひとつとっても、本アルバムが日本ヒップホップシーンにおいて重要な作品だということを物語っていると思います。

今後も、たくさんの人に聴いて欲しい名盤です。ZEEBRAが審査員をつとめる高校生RAP選手権に出場する世代の方にも是非手にとって欲しいですね。

では、今回はこのへんで。



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