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新作音源に小さく貢献④(Bitter, Sweet & Beautiful by RHYMESTER)

どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は、本日発売されたばかりの<RHYMESTER>大注目のニューアルバム【Bitter, Sweet & Beautiful】について書きたいと思います。発売前から心待ちにしていましたが、高い期待を裏切らない素晴らしいアルバムでした。

それでは、いってみましょう。

【Bitter, Sweet & Beautiful by RHYMESTER】
SWEET

<収録曲>
1. Beautiful -Intro
2. フットステップス・イン・ザ・ダーク
3. Still Changing
4. Kids In The Park feat.PUNPEE
5. ペインキラー
6. Beautiful -Interlude
7. SOMINSAI feat.PUNPEE
8. モノンクル
9. ガラパゴス
10. The X-Day
11. Beautiful
12. 人間交差点
13. サイレント・ナイト
14. マイクロフォン

RHYMESTER史上過去最長の制作期間をかけただけあり、これまで以上にハイクオリティな作品となっています。更に、“移籍第一弾アルバム”で且つ、“キャリア通算10枚目となる記念碑的アルバム”となれば、このアルバムに対する彼らの想いはさぞ強かったことでしょう。彼らのターニングポイントになる重要な作品ですが、それを担うだけの素晴らしいアルバムになっています。

本作もRHYMESTERお得意のコンセプト・アルバムになっており、テーマとしては発売前から随所で発言していたとおり“美しく生きること”。そして含みとして“人は正しさのみにて生くるにあらず”というメッセージも込められています。甘くほろ苦い人生賛歌の数々が、前作【ダーティサイエンス】と対比的になっているのが興味深いですね。

前作【ダーティサイエンス】の紹介記事はこちら

アルバムのテーマは、アルバムタイトル“酸いも甘いも美しい”や、アルバム内の楽曲中に散りばめられた“正しさ”“美しさ”という言葉、そして一見美しく見える薔薇のアルバムアートワークに一匹の蜘蛛を忍ばせているところでも表現されています。

また、音楽的なテーマとしては〈A.O.R.=アダルト・オリエンテッド・ラップ〉ということを語っており、アルバム全体がメロウネスな作りになっています。まさに大人も楽しめるHIPHOP。彼らと一緒に歳を重ねられることの喜びを改めて噛み締めてしまいました。

ちなみに、音楽的な方向性のサンプル作品として、以前このブログでもご紹介した<KREVA>の傑作アルバム【心臓】を挙げていました。その時点で、私にとってドストライクな作品になるはずですね。大好物な路線です。

【心臓 by KREVA】についての記事はこちら

また、プロデューサー陣も大変豪華で、<PUNPEE>、<KREVA>、<BACHLOGIC>と、今をときめく面々ばかり。中でも新時代を担うと称される<PUNPEE>はアルバム14曲中で5曲をプロデュースしており、彼のずば抜けた才能が中心に据えられたアルバムとなっています。しかし、これだけの面々をひとつの作品に集められるのも<RHYMESTER>だからこそ成せることでしょう。

それでは、この素晴らしいアルバムからいくつか楽曲を紹介していきましょう。

【Kids In The Park feat. PUNPEE】


“コドモにできて オトナにできぬ 訳などないさ ボクらはできる”

実は一聴した際に、一番衝撃を受けたのはこの楽曲でした。宇多丸がラジオで「PUNPEEの決定的な自信作」「PUNPEEトラックの中でもネクストレベル」と手放しで絶賛していた楽曲だったので、聴く前から注目していたのですが、正直期待を軽く飛び越えていきました。

RHYMESTERの二人が「これはPUNPEEの次の代表作になるトラックだから俺らに提供しないほうがいい」と説得を試みたというエピソードも紹介されていましたが、その気持もわかるような気がします。しかしそれでも譲らず、こんな傑作トラックを先輩のアルバムに提供してしまうPUNPEEには頭が下がります。もしかしたら彼の頭の中では、トラック作成時から既にRHYMESTERの声が聴こえていたのかもしれませんね。

とにかく聴いただけで、すごく拘って作られた楽曲だと伝わります。PUNPEEの強い拘りとのせめぎ合いの末、試行錯誤を繰り返し完成させた楽曲だとラジオやインタビューで語られていました。しかし、その甲斐もあってアルバムの中でも特別なクオリティを誇る楽曲になっていると思います。

また、この楽曲における“子ども・公園”というメタファーを通して語られる“世間的な正しさやルールとは違う、自分たちで作る秩序”というメッセージは、本アルバムのテーマともばっちり合致しています。

PUNPEEの秀逸なトラックでRHYMESTERのこれまでにない新たな魅力が表れた最高の楽曲だと思います。良曲が並ぶ本アルバムの中でも大好きな楽曲です。

【ガラパゴス】

“したり顔の根拠は ただ『らしさ』こそ正しさ
多分ご存じないのか その『らしさ』の疑わしさ”


プロデューサーは<BACHLOGIC>。HIPHOPの枠を超えたトラックメイクで常に新たな風をシーンに巻き起こしてきた彼ですが、まさにこの楽曲のテーマを訴える上で最適なプロデューサー抜擢だと思います。

アルバム発売前に先行してPVが発表されましたが、それ以来、リリックやPVに映る黒板の文字などから、以前Twitter上における発言で物議を醸した元プロ陸上選手<為末大>へのアンサーであるとか、日本HIPHOPのレジェンドたちに向けた楽曲を作った<NORIKIYO>や<SALU>へのアンサーだとか、様々な憶測がネット上を騒がせていました。

実際に、為末大の「日本で生まれ育った人がヒップホップをやるとどこか違和感がある」という発言が本曲を作るキッカケとなっていることは、インタビュー等で本人たちも認めており、PVにNORIKIYOとSALUを起用している点から見ても、彼らのレジェンド・ディスへのアンサーの側面も含んでいることも間違いないでしょう。

しかし、そのような要素はあるにしろ、それだけでこの楽曲を語るのはあまりにも勿体無いと思います。これほどまでに、日本のHIPHOPへの愛と強い想いを込められた楽曲を、私は聴いたことがありません。

日本にHIPHOPが生まれて以来、これまで何度もぶつけられてきた「本場のヒップホップはこんなのじゃない」、「本場のヒップホップの猿真似じゃないか」という堂々巡りの批判に対する、これ以上ないほどの論理的で的確なアンサー。まさに「これで最後」とばかりに決着をつけてくれています。

“元の『らしさ』からは常にはみ出すしかないのさ
そんな隙間にこそ海を越えて種が根付く
ここの土地とここの水に合う新種が芽吹く”


純血文化なんてものは基本的に存在しません。そうやってあらゆる文化が、混ざり合い、その地で独自の進化を遂げていくのが自然の理なのであって、すべての国のあらゆる文化は謂わばどれも“ガラパゴス”なのです。本来ネガティブなイメージのあるガラパゴスという言葉を、ここまでポジティブに力強く響かせることができるなんて、本当にRHYMESTERの言葉の力はすごいと再認識させてくれます。

また、フックの部分が空間的で浮遊感のある歌モノになっているのもこの楽曲の肝です。言葉を詰め込まず敢えて空けられた行間から、彼らの筆舌に尽くしがたい日本HIPHOPへの熱い想いや愛を読み取ることができ、それが言葉よりも雄弁に聴く者に語りかけてくるのです。

思わず泣いてしまいそうになる程、グッときてしまう曲です。

【人間交差点】

“点と点が線と線になって交わるけれどぶつかんない”

プロデューサーは<DJ JIN>です。ヘッドフォンで改めて聴くと、小気味よく動くベースラインがとにかく心地良くて、アナログなサウンドに拘るDJ JINのトラックの魅力を再確認させてくれます。シングルとして4月には発表された曲なので既に聴き慣れた楽曲でしたが、やはりアルバムとして聴くとまた違った印象を与えてくれます。

ラジオでの解説によると三幕構成となっている本アルバムにおいて“クライマックス”の役を担う楽曲だそうです。ちなみに本曲に続く【サイレント・ナイト】が“エンドシーン”で、最後の曲【マイクロフォン】は“エンドロール”なのだそうです。

DJ JINはインタビューにおいて、このアルバムのトラックについて語る際に“アーバン(都会的)な雰囲気”ということを何度も口にしており、本楽曲でもその雰囲気がよく表れています。

アルバムを流れで聴いていくと、“人間交差点”という言葉に込められた意味、そしてこの楽曲で語られるリリックの深みが、より強く、そして感動的に身体中に染み渡ります。

この楽曲がリードシングルに選ばれたのは、RHYMESTER主催のフェス『人間交差点』のテーマソングとしたからという側面もあったでしょうが、それを抜きにしてもアルバムを代表するに相応しい力強い楽曲だと思います。
ライムスター

とにかく捨て曲は一切ありません。しばらくエンドレスで再生し続けるだろう、何度も何度も聴いて噛みしめたくなるアルバムです。今回紹介した以外の曲についても、公式サイトにRHYMESTER本人たちによるアルバム全曲解説もあるので、興味がある方は是非読んでみて下さい。ちなみに【Still Changing】については、以前シングル発売時にこのブログでも紹介しています。

【Still Changing】についての記事はこちら

とにかく、一人でも多くの人に聴いて欲しいアルバムです。そしてこの記事が少しでもそのことに寄与できたら幸いです。

では、今回はこのへんで。



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