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日本の名盤・基本の定番⑲(GREEN by SEEDA)

どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は、久しぶりに“私的”名盤のご紹介をしたいと思います。天才トラックメイカー<I-DeA>トータルプロデュースによる<SEEDA>の3rdアルバム【GREEN】です。

それでは、いってみましょう。

【GREEN by SEEDA】
GREEN

<収録曲>
1. Intro
2. Where I'm From
3. Rowch ft. L-VOKAL
4. U Send Me
5. I Just Smoke
6. Owlz On Da Treez ft. Manny&Big 'Aki' Dogg of SCARS
7. Call (Skit)
8. Hustle In Da Bustle ft. Manny of SCARS
9. Path ft. Manny of SCARS,BES of SWANKY SWIPE
10. Back In Da Days ft. ESSENCIAL
11. Noize Reduction
12. Set Me Free ft. SAGGA of YING YANG
13. 偽
14. 時鳥
15. Life ft. L-VOKAL
16. Azure ft. lecca
17. Think Back

SEEDAの作品をこのブログでご紹介する上で、最初にどのアルバムをご紹介するべきかと、実はしばらく考え込んでいました。というのも、彼のアルバムは作品毎に変化が大きく特色が異なる為、その時々の聴く側の心境によって、好きな作品が変わってくるからです。その為、最初に書く作品がなかなか決めきれずにいました。

しかし、今回こうして【GREEN】を選んで書くことに決めたのは、やっぱり単純に自分にとって一番思い入れが強い作品を書こうと思ったからです。世間的評価においても、SEEDA自身の認識としても、彼の最高傑作は4thアルバム【花と雨】でしょう。そしてセールス的に最も成功した作品はメジャーで発売した5thアルバム【街風】で、コアなSEEDAファンの間では6thアルバム【HEAVEN】も評価が高い作品だと思います。

そんな優れた作品が多数ある中、それでも私にとって最も思い入れが深く、最初に聴いた時に最も衝撃を受けた作品はこの3rdアルバム【GREEN】でした。上記に列挙したこの作品以降の代表作で見せるSEEDAとは全く異なる魅力が味わえる、そんな作品になっています。

この作品はSEEDAにとっても大きなターニングポイントとして語られる作品です。というのも、この作品を最後に、彼はそれまでの最大の特徴であった“英語と日本語をシームレスに織り交ぜた早口ラップ”というスタイルを捨て去り、“リリックを伝える、内容重視”の現在のスタイルに大きく変化させたからです。

とは言え、本作においてもSEEDAはリリックにしっかり力を入れています。歌詞カードを見れば、“意味”も“意志”も通しながら韻も踏むという高次元なリリックを堪能できると思います。しかしながら、それを曲として聴くと聴き取ることができません。そのことで、周囲の人から「何言ってるかわからない」と言われたことにショックを受け、次回作【花と雨】から「伝える」ということを自身の最重要事項とするのです。

私は、この大きなスタイルの変化は、SEEDAが売れて今の地位を築く上では必要な変化だったと思います。この作品までのスタイルをずっと続けていたとしたら、SEEDA自身も語っているように、おそらく現在の人気はないでしょう。彼のキャリアにおいて、正しい決断だったと私は思います。

そして、それだからこそファンとして強く思うことは、その大きな変化をする直前に、【GREEN】のような旧スタイルの集大成とも言える完成度の高い作品をSEEDAが残してくれてよかったということです。彼が売れる上で必要だったスタイルの変化、その直前にこの【GREEN】という作品を残してくれたことは、旧スタイルを愛する多くのファンにとって大きな救いとなっているのです。

それでは、このアルバムにおける楽曲をいくつか紹介していきましょう。

【Rowch feat. L-VOKAL】


客演のL-VOKALから始まるこの楽曲、注目は2バース目のSEEDAパートです。今は無き当時の彼のスタイルを十二分に堪能できます。唯一無二の魅力が爆発していますね。

そして、特筆すべきは、このアルバムの総合プロデューサー<I-DeA>による美しいトラックです。私は、このアルバムをSEEDAの作品というよりも、“SEEDAという類まれなる個性をもった楽器”を使いこなしたプロデューサーI-DeAの作品だと実は捉えています。「I-DeA Presents...」と作品名についているのも、当時I-DeAの方が知名度が高かったという理由だけではないのではないでしょうか。

それほどまでに、このアルバムでのI-DeAのトラックは神がかっています。このアルバムでは「東のI-DeA・西のB.L」という東西2大トラックメイカーがトラックを提供しているという豪華な作品なのですが、正直このアルバムに関してだけ言えばBACHLOGICは完全にI-DeAに食われていると思います。B.Lのトラックがダメというわけではありません、I-DeAのトラックが素晴らしすぎるのです。

イントロから間に挟まれるSKITも含めて、すべてのトラックが秀逸です。SEEDAの歌詞が聴き取れないことが、この作品の価値を下げない理由としては、このアルバムを手に取るとき、“ラップ”ではなく“楽曲”を聴きたいという気持ちが強いからというのもあるかもしれません。I-DeAのプロデュースの前ではSEEDAの声も一つの音にすぎず、トラックの一部、作品のひとつのピースなのだと感じさせられるほどです。

【Path feat Manny,BES】


これまたI-DeAの珠玉のトラックの上、実力派の客演二人と高次元なラップを披露しています。このアルバムは、客演陣もスキルフルな面々が揃っていることも魅力です。この楽曲でも三者三様のラップが心地よく、特に<BES>が主役SEEDAをも食ってしまうほどの格好いいラップを繰り出しているのが印象的です。

彼の独特なフローと卓越したリズム感がシリアスなトラックとばっちりマッチしています。スローテンポなビートの上でも、自身のラップを際立たせることができるということは、高いスキルを持っている証明です。SEEDAもそんな強力な客演陣を前に、負けじとラップを繰り出し、結果として相乗効果でこの楽曲のレベルが高まっていると感じます。

【Back In Da Days feat. ESSENCIAL】


またまた、I-DeAによる極上のトラックと魅力的な客演陣、そしてSEEDAの伸び伸びとしたラップという、このアルバムを象徴するような魅力が詰まった楽曲です。確実に日本語で歌われているにも関わらず、楽曲の至るところから海外作品の匂いを感じます。フックの作りなどをとってみても、海外HIPHOPのそれを彷彿とさせています。

これはこのアルバム全体にも言えることですが、本作は海外作品と日本作品のちょうど中間に位置するような作品だと私は思っています。本来、どっちつかずの作品というのは得てして中途半端になりがちなのですが、この作品に関してはそれが当てはまらず、双方の“良いとこ取り”になっているように感じます。それは私の贔屓目からくるところなのでしょうか。

さて、最後のデザートとして、このアルバムで最も甘い楽曲で締めさせていただきます。SEEDAには珍しい恋愛をテーマに歌った楽曲です。これまたI-DeAによるサンプリングの妙が冴え渡るトラックが、心地よく身体を揺らしてくれます。

【U send me】


今回ご紹介した曲以外も、本当に聴いて欲しい楽曲ばかりです。イントロ後の最初の曲【Where I'm From】は、一気に作品に引きずり込むほどの力強さを持っている曲ですし、5曲目【I Just Smoke】では、日本人離れしたSEEDAの魅力を堪能できます。他にも8曲目【Hustle In Da Bustle feat. Manny】、14曲目【時鳥】など挙げ出したらキリがありません。

SEEDAはこのアルバムの次に出したアルバム【花と雨】から「本気で音楽やっていこうって思った」と語っています。それは、そう決意するほど、この【GREEN】が世間に受け入れられなかったことがショックだったということですし、それだけこの作品に込めた想いが強かったという裏返しだと思います。

この作品の後から「音楽で食べていくこと」を真剣に考えてスタイルを変えたSEEDA。そのSEEDAが世間からの評価の目を気にせずに作った最後の作品、世間に合わせて自身のスキルにリミッターをはめる前の作品として、やはりこの【GREEN】は他の作品にはない重要な意味をもっていると思います。

もちろん、それ以降の「伝えること」に重きをおいたSEEDAも私は大好きです。これからもSEEDAの留まらない進化を楽しみにしていきたいと思います。

では、今回はこのへんで。

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2 Comments

MCよしたけ  

SEEDAのアルバムはどれを聴いても常に新しいSEEDAを発見することが出来るからいいですよね

SEEDAの記事を心待ちにしてたんで、楽しく読ませて頂きました
機会があればさんぴんCAMPの記事なども是非書いて頂きたいです

毎回楽しく読ませて貰ってます
次回の更新も楽しみにしてます

2015/08/31 (Mon) 03:27 | EDIT | REPLY |   

Pto6  

お礼

> SEEDAのアルバムはどれを聴いても常に新しいSEEDAを発見することが出来るからいいですよね
> SEEDAの記事を心待ちにしてたんで、楽しく読ませて頂きました

コメントありがとうございます。
私としても「日本HIPHOPを扱うブログ」を書いてるにも関わらずSEEDAを語らないわけにはいかない、とブログ開始当初から考えていたのですが、記事にも書いた理由で、こんなに遅くなってしまいました。お待たせしてすみません。笑

結構想いを込めて書いた記事でしたので、そのようにおっしゃって頂けると、とても報われる気持ちです^^ありがとうございます!

> 機会があればさんぴんCAMPの記事なども是非書いて頂きたいです
> 毎回楽しく読ませて貰ってます
> 次回の更新も楽しみにしてます

さんぴんCAMPにそこまで精通しているわけではありませんが、日本のヒップホップシーンを語る上で避けては通れないイベントだと思いますので、当時の作品等をご紹介するときなどに、話題に触れることができればと思います。語れるようになるまで、勉強させていただきます!

更新を楽しみにしてくださり光栄です。個人的な好みが強いブログですので、テーマやアーティストが偏ってしまいがちだとは思いますが、これからも暇な時にでも読んで頂けたら幸いです。

暖かいコメント、本当にありがとうございました^^

2015/08/31 (Mon) 19:29 | EDIT | REPLY |   

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