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新作音源に小さく貢献⑤(REVIVAL by MOL53)

どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は、先日発売されたばかりの<MOL53>の1stアルバム【REVIVAL】について書きたいと思います。戦極MCバトルのレーベル<戦極CAICA>所属アーティストが発表された時から、アルバム発売を心待ちにしていましたが、やっと聴くことができました。

それではいってみましょう。

【REVIVAL by MOL53】
REVIVAL

<収録曲>
1. INTRO -episode II-
2. Prologue
3. STAY STRONG feat. 椿
4. BACK STREET ANTHEM
5. GET READY feat. 押忍マン
6. ILL990
7. COME CLEAN
8. skit
9. TOUCH THE SKY
10. FIRST BASE feat. REIDAM
11. REQUIEM
12. REVIVAL feat. OLD DRIP JUICE & JECT
13. skit
14. 禁断症状 feat. 座敷屋
15. FM 88.2
16. 六畳一間
17. -220- OUTRO

まず、アートワークが格好いいですよね。ジャケ買いする人も続出しそうです。MOL53の纏う独特な雰囲気が良く表現されており、聴く前から本作に対する期待感をくすぐってくれます。そして、重要なアルバムの中身も、決して「見かけ倒し」ではない素晴らしいアルバムとなっています。

最初にアルバムを通して聴いた時の印象としては、「なんて渋いアルバムなんだ」というものでした。まさにデビューアルバムにして“いぶし銀”という言葉がぴったりの、ベテランの風格すら感じさせる作品になっています。“1stアルバムにして最高傑作”という公式キャッチコピーは、新人ながらに既に確立されたスタイルを貫く本作を、本質的にも良く表した言葉だと思います。

また、本作を聴いて改めて気付かされたのは、MOL53のリリシストとしての非凡な才能です。MCバトルでも、彼の吐き出す言葉のチョイスに、他のMCたちとは違うものを感じていましたが、音源で聴くと更にその実力を再確認させてくれます。言語センス言葉に持たせる説得力、ストリート言語を織り交ぜながらも、どこか文学性すらも感じさせる彼のリリックは、決して平坦ではなかったこれまでの人生を歩み手に入れた、彼だけが表現し得る言葉たちなのだと思います。

そして、そんなMOL53のリリカルな言葉たちを引き立てているのが、本作をフルプロデュースしている九州が誇るトラックメイカー<NEZUMI>です。“MOL53の言葉を伝える”ことが本作の最重要事項とまでに、どの曲においても他の音にMOL53の声が埋もれておらず、彼の声をしっかりと前面の中央に据えるマスタリングが施されている印象を受けました。その為、全ての言葉が効果的に響き、リリックが自然と聴く者に入り込んできます

トラックも全曲秀逸です。アルバム全体でまとう空気感の一貫性を保ちながら、楽曲ごとに異なる表情を見せる、クラシカルな古き良き時代のHIPHOPを感じさせてくれるトラックばかりです。ハイセンスな上モノ使いもさることながら、私は彼のトラックビートにおけるドラムの音、特にバスドラムの音が好きです。ビートの礎ともなるその音が自分好みの音の為、全編通して心地よく聴くことができます。MOL53との相性もバッチリだと思います。

そのような多彩なトラックで構成されていながら、本作が“渋い”という印象を受ける理由としては、MOL53が楽曲毎にあまりフローを変えず、バイブスも抑えてラップしているからだと思います。MCバトルにおける彼の魅力である多彩なフローバリエーション、時に声を高音に歪ませるほどに漲らせる熱いバイブスが本作ではずいぶんと鳴りを潜めています。

しかし、よくよく考えてみれば彼は既にスキルについてはある意味証明済みであるわけで、今更ひけらかす必要性はないのです。ただトラックと曲のテーマを鑑み、それにあった自身のフローで、“リリックを伝える”ことに重きをおいているのだと思います。小細工なしのド直球、己の言霊だけで勝負しているのですね。アーティストが音源を出すとき、得てして自身の音楽性の幅を見せたがる傾向にあると思います。それがデビュー作ならその傾向も更に顕著でしょう。しかしMOL53はブレずに自身の信じるHIPHOPのみを表現しているのです。その為、ファーストにしてMOL53節を既に確立できているのだと思います。

とはいえ、本作はなにも一辺倒で地味なアルバムなわけではありません。個性豊かな客演陣が、本作において絶妙な変化と刺激を与えてくれています。<座敷屋>、<椿>、<押忍マン>、<REIDAM>、<OLD DRIP JUICE>、<JECT>という九州の実力者たちが、本作に多彩なエッセンスを加え作品の幅を広げています。NEZUMIのトラックと客演陣の個性がバリエーションを与え、MOL53のブレない姿勢がこのアルバムに一本のぶっとい芯を通すのです。まさに三位一体で作り上げた素晴らしい作品だと思います。

それでは、現時点でMVが公開されている楽曲を紹介しましょう。

【TOUCH THE SKY】

“ガキは鵜呑み 大人は知らんぷり”

まさに本アルバムを象徴する楽曲だと思います。アルバム発売前に一番最初に公開された楽曲でしたが、単体で聴くのと、アルバムの中で聴くのでは少し印象が変わってくるのが面白いです。アルバムにおいてはこの曲の直前にSKITが挟まれており、第3部まである本アルバムにおいて、第2部1曲目の役割を果たしています。まさにアルバムの核心部へと牽引する役を担う楽曲です。

本アルバム発売前に、STREET ALBUM【KAKATO】を発表していますが、そこでの表題曲【KAKATO】は、繊細で美しいトラックに、キャッチーなフック、MOL53らしいリリックが乗せられた、所謂“万人向け”とも言える素晴らしい楽曲でした。しかし、MOL53自身は、Twitter上で「KAKATOだけ聴いて俺を語るなよ?あくまでKAKATOは寄せたんだからな?」と発言していました。きっと、彼が本当に表現したいHIPHOPはこの【TOUCH THE SKY】のような楽曲なのでしょう。だからこそ、重要な1stアルバムのリード曲としてこの楽曲をチョイスしたのだと思います。

【BACK STREET ANTHEM & REQUIEM】

“唯一無二 それが存在の証明”
“シーンはオチの無い一冊の小説”

2曲のダイジェストによる構成されたMVです。まず1曲目の【BACK STREET ANTHEM】は、渋い本アルバムの中でも最も渋い楽曲で、“ドープ”という言葉が似合う楽曲だと思います。リリックを聴くとMOL53自身のことを歌っていることがわかります。まさに自身にとっての『ANTHEM』ともいえる楽曲なのではないでしょうか。ゆったりとしたフローに乗せられた重いリリックが、まるで“遅効性の毒”のようにリスナーの身体にじんわりと浸透していきます。気づいた時には完全に心がロックされている、そんな味わい深い楽曲です。

そして2曲目【REQUIEM】は、MOL53のテクニカルな早口フローが味わえる本アルバムにおける唯一の楽曲です。とにかく格好いいですね。対してフック部分はスロウなフローになっており、緩急のエッジが聴いた刺激的な楽曲だと思います。鋭利な言葉で鮮やかに切り裂き、現在のシーンに突きつける“鎮魂歌”。アルバムの中でも最も高い即効性と攻撃性を兼ね備えた楽曲だと思います。


上記2曲の他にも良曲ばかりです。格好いいトラックとラップでいきなり持っていかれる【Prologue】、押忍マンがキレキレの【GET READY feat. 押忍マン】、文学的なリリックが味わえる【ILL990】、メロウな雰囲気が心地良い【FM 88.2】など、是非聴いていただきたい楽曲ばかりです。今後、このアルバムからあと2曲MVが公開されるようなので、それも楽しみですね。

[追記]上記のMVが公開されました。
【GET READY feat. 押忍マン】


【220】


本作は所謂スルメアルバムだと思います。購入してから本日までずっと聴き続けていますが、聴けば聴くほど作品の魅力に気付き、どんどん好きになっていきます。いい作品の持つ特徴ですね。また作品への印象の変化とともに、この記事も随時追記していきたいと思います。

では、今回はこのへんで。



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