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日本の名盤・基本の定番⑳("Yes"rhyme-dentity by LITTLE)

どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は、<Zeebra>の発言が発端で最近Twitter上において議論が飛び交っている「日本語ラップの押韻について」という話題をきっかけに、久しぶりに聴き返したアルバムについて書きたいと思います。

「押韻がすごい日本語ラップ」といった時に、<ICE BAHN>と共に私の中で浮かんでくるアーティスト<LITTLE>のソロ3枚目にしてソロデビュー10周年記念作品【"Yes"rhyme-dentity】です。

それではいってみましょう。

【"Yes"rhyme-dentity by LITTLE】
LITTLE

<収録曲>
1. KARMA feat.BIG RON
2. Gradation feat.MICRO,SMALLEST,SHOGO
3. Sing Sing Sing
4. Stand by me
5. Very Special
6. FREE STYLE 男女 feat.COMA-CHI
7. 恋のクロスフェーダー
8. 彼方
9. 楽 feat.Metis
10. ワンマンショウ (album ver.)
11. 夢のせい
12. 足跡の中を旅してる feat.CUEZERO,童子-T,Mummy-D
13. Yes!! ~a raison d’tre~

言わずと知れた大人気ユニット<KICK THE CAN CREW>のリーダーとして知られているLITTLEですが、自称している「東京一小さなMC」という通り名と共に“リリックの天才”という呼ばれ方でも知られています。「リズムよくライミイングをしながら、しっかりと歌詞の意味を通す」スキルについては、やはり彼は優れている印象を持っています。

ちなみに、この作品のタイトルも、自身が世の中で一番好きな言葉“YES”と、自身が最も大切にする“rhyme”による“identity”を組み合わせた造語“rhyme-dentity”からなっています。作品タイトルからも、ライミングへの拘りが見られますね。

そんなライミングスキルを見せつけている象徴的な楽曲が、このアルバムに収録されている【彼方】という楽曲です。注目はなんといっても2バース目の冒頭のリリックです。是非下記を一度声に出して読んでみてください。

“ただただ ワガママ
あらわな ハダカは
華やかさか はたまた 儚さか
あからさまな 浅はかさが
若さならば やっぱ輝かなきゃ”


お気づきですね。すべて母音“a”だけで韻を踏んでいます。この曲のフック部分も“彼方から 貴方から ラララララ~”と母音“a”が並びますし、一曲通して母音“a”の技巧的な使われ方がされています。このバースがとても有名な本楽曲なのですが、動画サイトには残念ながらアップされておりませんでした。その為リンクは貼れませんが、是非一度は聴いてみてもらいたい一曲です。

そして、このバースが素晴らしいと思う点が、ただ韻を踏むために無理やりな踏み方をしているのではなく、あくまでもリリックのテーマに沿って意味を通しながら、自然にライミングが施されていることです。このアルバム前までの作品では、LITTLEも“押韻重視”の傾向が見られ、“韻ありきのリリック”がたまに見られたのですが、この作品においてはどの曲でも不自然なライミングが少なく、“伝えたいメッセージを前面に出しながらも、当たり前のように韻を踏む”という高次元なスキルを見せつけています。

また、ソロデビュー10週年の記念作品として自身の誕生日に発売された本作は、客演陣、トラックメイカー陣がとても豪華なのも特徴のひとつです。特にトラックに関しては、「とにかく一流のトラックの上でラップしたかった」と本作への意気込みを語っていたLITTLEの想いが叶った形となっており、どのトラックも個性があり、バリエーションに富んでいて、アルバムを繰り返し何度も聴いてもなかなか飽きが来ない作りになっています。

【客演陣】
MUMMY-D(RHYMESTER)、CUEZERO(BY PHAR THE DOPEST)、童子-T、MICRO(HOME MADE家族)、SMALLEST(トリカブト)、BIG RON、SHOGO(175R)、Metis、COMA-CHI

【トラックメイカー陣】
Mr.Drunk(MUMMY-D)、DJ FUMIYA(RIP SLYME)、NAOKI-T、TAICHI MASTER、Nao'ymt、熊井吾郎(くレーベル)、Mitsu The Beats、BUZZER BEAT

私が考えるこの作品の優れた点は、しっかりとしたHIPHOP要素を取り入れながら、メジャー的なポップな楽曲に仕上げているという点です。アンダーグラウンドのMCたちにも決して負けない培われた確かなラップスキルを、メジャーシーンでも受け入れられる楽曲の形で提供していること、そこが素晴らしいなと思いました。KICK THE CAN CREW時代から一貫している“HIPHOPをメジャーシーンにも広げたい”という志を感じさせられますね。その点についてはKREVAやMCUも同じ志を持ってチャレンジを続けているような印象を持ちます。

さて、このアルバムについては、先ほどの【彼方】のように動画がアップされている楽曲が少ないのですが、その中からいくつかの楽曲を紹介したいと思います。とりあえず、聴いてみてください。

【Stand by me】


“ノーベルさえも超える大爆発 エジソンも聴いたことないサウンド
マゼランも味わったことない感動 ガガーリンの観た青の色合い
ベルとつながれるホットライン ライト兄弟よりフライアウェイ”


一聴しただけでも<DJ FUMIYA>のものとわかるほど彼の特徴が出たトラックです。彼のつくるサンプリングを多用したポップなパーティチューンが私は大好きです。もともと<RIP SLYME>サウンドとも相性が良さそうなLITTLEのラップも、いつもにも増して軽快に冴え渡っているように思います。

アルバムの中では、アップテンポな曲が並ぶ前半部分から、徐々にメロウな雰囲気へと移っていく中盤部分へとうまく橋渡しをする役を担う楽曲です。このように作品の流れを意識した曲配置がされているのも、このアルバムが何度も繰り返し通して聴けるひとつの要因だと思います。

【Very Special】


“家を出て学校卒業し社会 ことごとく思う通りじゃない”

この作品では、アップテンポでスキルフルなナンバーもある反面、この楽曲のようなバラード調のナンバーの良さが目立つ作品でもあります。この楽曲もシンプルな構成ですが、リリックがしんみりと心に染み渡ります。このようなメロウな楽曲もつくれることは、ラッパーとして、特にメジャーシーンにおいて活躍するラッパーにとってはとても大きな武器になると思います。

当時32歳を迎えていた“大人”LITTLEの味のあるリリック。様々な人生経験を経て紡がれた歌詞から、彼の人間性や人生観が透けて見えるような気がします。これからも歳を重ね、どんどん味わいのある歌詞を書き続けてもらいたいですね。

【夢のせい】


“好きだってだけで付き合って 好き勝手に傷つけ合って”

MVに<北乃きい>がでてくるところをとっても、LITTLEがメジャーアーティストであることを感じさせられますね。楽曲の方は、もはやド直球なポップソングです。これぞ“セルアウト”という揶揄の対象になりそうが楽曲ですが、HIPHOPアーティストでここまでストレートな楽曲を作れる人は、他にはあまりいないのではないでしょうか。HIPHOPどうこうを置いておいて曲として大好きな一曲です

上記した楽曲の他にも、シングルカットもされた【ワンマンショウ】は動画があれば是非紹介したい一曲でした。LITLEのライミングスキルを存分に堪能できる楽曲です。せめてその一端を味わって頂くために、楽曲冒頭の歌い出しのリリックだけでもご紹介したいと思います。

“やっつけろ俺達の小せぇ日常茶飯事
それなりの人生 一応な感じ
自称伝説の大器晩成 起承転結のない未完成”


特に“自称伝説の大器晩成”“起承転結のない未完成”は脅威の15文字踏みです。圧巻ですね。ここまで多い文字数を踏むのはとても気持ちが良いものです。他の楽曲でもこのような面白いライミングが堪能できますので、もし興味をもった方がいらっしゃったら是非アルバムを通して聴いてみてください。


なにかのキッカケで久しぶりに聴き返してみて、改めて良さに気がつくアルバムはあると思います。今回の私にとってはこの作品がまさにそれでした。これを機に何度も聴き返していきたい一枚になりました。あまりリリース的にも奮わず、高い評価も受けていないようですが、個人的にはとてもいい作品だと思います。改めて聴くキッカケがあって本当によかったです。

これからも、改めて作品をいろいろ聴き返し、好きな作品についてはご紹介していけたらと考えています。皆さんも、昔買ったけど最近あまり聴いていない作品がもしあれば、これを機に聴き返してみてはいかがでしょうか。私のように、何か新しい発見があり、お気に入りの一枚になるかもしれません

では、今回はこのへんで。



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