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珍しく海外クラシック⑤(Like Water for Chocolate by COMMON)

どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は、久しぶりに海外作品について書きたいと思います。<COMMON>の4thアルバム【Like Water for Chocolate】です。この作品もアルバムとして聴き通せる心地よさと完成度をもった素晴らしい作品です。

それでは、いってみましょう。

【Like Water for Chocolate】
common

<収録曲>
1. Time Travelin' (A Tribute To Fela)
2. Heat
3. Cold Blooded
4. Dooinit
5. The Light
6. Funky For You
7. The Questions
8. Time Travelin' Reprise
9. The 6th Sense
10. A Film Called (Pimp)
11. Nag Champa (Afrodisiac For The World)
12. Thelonious
13. Payback Is A Grandmother
14. Get To Heaven Part Two
15. A Song For Assata
16. Pops Rap III...All My Children

自身のブログを書いていて良かったと思えることはいくつかありますが、その中でも“自分の大好きな作品について自由に語る場がある”という幸福には、幾度と無く喜びを感じてしまいます。今回紹介するこの作品も、個人的にとても大切に聴いている作品のひとつです。

音楽作品を好きになるパターンは大きく分けて2つあると思います。1つ目は“繰り返し聴くことでじんわりと作品の良さが染み渡り好きになるパターン”。そして2つ目は“一聴してすぐに好きになるパターン”です。私は得てして1つ目のパターンで好きになった作品を長く聴き続けることが多い気がします。それは、徐々に信頼関係を積み上げた友人関係が簡単には壊れないのと同じように、その作品と私との間に長い付き合いにより培った心地の良い関係が築けているからだと思います。

しかし、本作【Like Water for Chocolate】は、実は2つ目のパターンで好きになった作品でした。しかも、アルバムを通して一聴した時点ではなく、アルバム1曲目の冒頭を聴いただけで好きになってしまったのです。まさに一目惚れならぬ“一耳惚れ”でした。そのような出会いから何年経ったでしょう。未だにこの作品は私にとって大切な友人のひとりです。

<COMMON(コモン)>シカゴ出身のMCで、1992年のデビュー以来、現在も尚活躍を続けるMCです。過去には<John Legend>との共作でグラミー賞も獲得したこともあります。また、その活躍は音楽だけに留まらず、俳優としても【ターミネーター4】等の有名作へ出演するほど成功を納めています。本当に才能溢れるアーティストなのですね。

彼はこれまで10作のアルバムを発売しています。今回ご紹介するこの【Like Water for Chocolate】は4thアルバムで、彼の作品群の中でも最高傑作とも言われている作品です。(2thアルバム【Resurrection】、6thアルバム【Be】も人気・完成度共に高い作品で、本作と同じくらいそれらを推す声も多いですが。)

この作品のどこが素晴らしいのか。まずはトラックが全て素晴らしいです。それもそのはず、本作のほとんどの曲をプロデュースした<Soulquarians(ソウルクエリアンズ)>というクリエイター集団は錚々たるメンバーで結成されているのです。<D'Angelo(ディアンジェロ)>、<Questlove(クエスト・ラヴ)>、故<J Dilla(ジェイ・ディラ)>、<Erykah Badu(エリカ・バドゥ)>と、その時代のブラックミュージックシーンにおいて重要人物とされていた人達ばかりです。

その音は“ジャズ”“ソウル”“ファンク”といったブラックミュージックたちの最も美味しい部分を使って“ヒップホップ”という極上の料理を作ったかのような味わいです。とかく“音の黒さ”などが語られるHIPHOPの世界ですが、この作品で私は初めて“黒い音”の魅力というものを教えられた気がしました。

前述したアルバムの冒頭を飾る【Time Travelin' (A Tribute To Fela)】を聴いてみてください(原曲が無かったので、下記動画はInstrumentalです)。アルバムにおける単なるイントロ曲としての位置づけの楽曲ですが、ブラックミュージックの美しい世界に一気に引き込まれてしまいます。楽器の生音で構成されたトラックの良さを改めて再確認させてくれる楽曲だと思います。

【Time Travelin' (A Tribute to Fela)】


トランペットの音色とアフロビートが本当に心地の良い曲です。素晴らしい物語の始まりを思わせる静かなる高まりは、アルバムへの期待感を一層膨らませてくれます。このアルバムでは、このような心地の良いミュージックが、楽曲毎の曲間も絶妙に繋ぎ合わせられていることで、アルバムを通して一つの楽曲かのようにシームレスに楽しむことができます。それは一日中でも聴いていたくなるほどの心地よさです。はまりだすとなかなかぬけ出すことができません。

また、そのような最高のクリエイター軍団がほぼ全てのプロデュースを手がけている本アルバムですが、アルバムの中には数少ない例外の曲もあります。そして、その例外の1曲をプロデュースするのは、“プリモ”の愛称で世界中から絶大な支持を受けるHIPHOP界における最高のプロデューサー<DJ Premier>が手掛けるものです。なんとも豪華なアルバムではないでしょうか。駄作のないことで有名なプリモですが、この楽曲でもとてもいい仕事をしています。

【The 6th Sense】


さて、これまで本アルバムの魅力の一つとしてトラックの素晴らしさをご紹介してきました。しかし、コモンというアーティストを語る上で欠かせない要素である“リリック”についても少しだけご紹介したいと思います。所謂“ギャングスタ・ラップ”とはまったく違う、ポジティブなメッセージを含んだヒップホップミュージックのことを“コンシャスヒップホップ”と呼びますが、コモンはその代表格とも言われるアーティストです。

日本人である私にとって、海外HIPHOPは心地よいトラックとグルービーなラップのフローを楽しむ為に聴くことがほとんどです。英語で書かれたリリックについては、どうせ聴き取ることができないので、あまり興味の対象になることはありません。しかし、ことコモンの作品については、しっかりと歌詞カードと日本語による対訳を片手に聴きたくなってしまいます。もちろんリリックの良さが評価されているアーティストだという事前知識の影響も大きいのですが、彼のどこか知性を感じさせるラップを聴いていると、自然と「どんなことを歌っているのだろう」という強い興味が湧いてくるのです。

ちなみに先ほどご紹介したプリモとの楽曲【The 6th Sense】は、冒頭こんな風に始まっています。

“革命はテレビで放送されることはない ここで革命が起こるぜ”
"The revolution will not be televised the revolution is here"

そう、この曲はコモンによるある種のセルフボースト曲なのですね。しかしその表現の中にはやはり独特の感性を感じさせるリリックが多々でてきます。ただの“俺様は凄いぜ”と連呼するだけの楽曲にはなっていないところに興趣を感じられます。

“俺は嘘で固められた音楽業界の中の真実
俺はリアルなライムをしてる
俺のライムは永遠に死に絶えることはない
革命が映画だとしたら 俺はその主題歌”


“ヒップホップはどれだけの人々のソウルに影響を与えたのか考え始めたよ
このアートがどれだけの魂を生き返らせたか
このカルチャーがどれほど多くの国を結びつけたか”


“俺はただ新生面を開き 人々の考えを刺激したいだけ
世界を旅し現代を理解する 平和と知恵を求めて
そのラップでみんなに知らせるんだ 俺はヤツらの味方だって”


心地よく韻を踏みながら深いテーマについて唄う知性的で内省的なコモンのリリック。洋楽における英詩をしっかりと聴く機会は少ないかもしれませんが、興味のある方は是非一度歌詞カード片手に聴いてみてください。更にコモンを好きになることができると思います。特にこの作品は、アルバムジャケットからもわかるように、“黒人差別”等の社会問題についても考えさせられるリリックも多いです。(ジャケットの冷水機には“COLORED(有色人種) ONLY”の悲しき文字が。)

さて、最後に本アルバムで最も人気のある楽曲をご紹介して終わりたいと思います。故<J Dilla(ジェイ・ディラ)>による美しいトラックと、コモンの包容力溢れるラップが印象的な楽曲【The Light】です。愛する人に向け綴られた極上のラブソングです。

【The Light】


“君のために俺は空にライムを書く
寒いシカゴの夜を暖めてくれるのは君の光なんだ”


今回は、久しぶりに海外のクラシック作品をご紹介しまいした。本日はこの心地良いミュージックに一日中身を委ねたいと思います。もしこの記事を読んで少しでも興味をもっていただけた方がいらっしゃいましたら、休日のお供の一枚としてこのアルバムを候補に入れていただけたら幸いです。

では今回はこのへんで。



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2 Comments

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774

Can I Borrow A Dollar?を紹介すべきだと思うけど
2000yリリースをClassicって違和感ある

2015/11/21 (Sat) 21:17 | EDIT | REPLY |   

Pto6  

Re: 774

> Can I Borrow A Dollar?を紹介すべきだと思うけど
> 2000yリリースをClassicって違和感ある

コメントありがとうございました。
アルバムの選出に関してはかなり個人的嗜好で選ばせていただいています。この度はご希望に沿う選出ができずにすみませんでした^^;

また、クラシックという言葉についてもご指摘の通り、元来の意味では少し違和感があるかもしれませんね。ただ、何年経ったらクラシックと呼んでいいかという定義は曖昧で、最近では誇大解釈された“クラシック”という言葉が様々な使われ方をされているような気がします。その為、私もそのような解釈の上で使わせていただきました。そのことで気を害してしまったなら大変すみません。(ちなみに私個人的には、10年以上時の洗礼を受けたらそれはもうクラシックと呼んでもいいのではと思っていたりもします^^;)

今後もこのタイトルで2000年代の作品もご紹介させてもらうことがあるかもしれませんが、その点については目をつぶっていただけると幸いです。厳密な言葉の意味では、ご指摘いただいた通りですが、ご理解いただけたら嬉しいです。すみませんがよろしくお願いいたします。

2015/11/23 (Mon) 13:13 | EDIT | REPLY |   

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