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日本語ラップ・MCバトルの“今”を語るブログ

名曲の提供⑤(DO MY THING by NORIKIYO)

どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は、“私的”名曲紹介の第5弾をお送りします。第4弾では、ジャンルの枠を超えた普遍的な魅力をもつ楽曲をご紹介しましたが、今回は逆に、“これぞHIPHOP”というカッコ良さをもった楽曲をご紹介したいと思います。

<NORIKIYO>のデビュー作に収録されている楽曲【DO MY THING】です。

それでは、いってみましょう。

【DO MY THING by NORIKIYO】


“ひきずったティンバー 削れたソールのぶん何を得てきた?”

シンプルだからこそクセになるHIPHOPトラックと、軽快なライミングがとにかく突き抜けてカッコイイ楽曲です。その楽曲のテーマもストリート描写あり、セルフボーストありで、まさにHIPHOPの王道的魅力が詰まった楽曲だと思います。

NORIKIYOの1stアルバム【EXIT】はデビュー作ながらに名盤として讃えられているアルバムです。彼自身2ndアルバムまでを「がむしゃらにやっていた時期」だったと語っていますが、まさにそんなHIPHOPに対する初期衝動が詰め込まれた当時の楽曲からは、鬼気迫るほどのパワーを感じられます。

NORIKIYOはこの楽曲を作った頃、人生のどん底にいました。それは誰のせいでもなく自分自身が招いてしまった悲劇的状況でした。自由奔放な学生生活を送り、逮捕、停学により会社員生活を始めたNORIKIYOは、その後も更生しきれない荒れた暮らしを送っていました。そんなある日、些細な苛立ちからクラブで喧嘩を起こし、相手に怪我をさせ警察に通報される事態になります。警察への差し出しの為にトイレに監禁されたNORIKIYOは泥酔状態の中、逮捕から逃れようとある行動に出ます。そう、ビル4階にあるトイレの窓から、地上への飛び降りを図るのです。

結果、背骨と両足の粉砕骨折という大怪我に見舞われたNORIKIYOは、当時医師から「一生車椅子は覚悟してください」とまで告げられました。病院のベッドの上で絶望に打ちひしがれたNORIKIYO。そんな彼を救ってくれたのはHIPHOPでした。お見舞いに来た<DJ ISSO>が持ってきてくれた<SEEDA>のRemixアルバム。それに感銘を受けたNORIKIYOは、病室にシンセサイザーとサンプラーを持込み、取り憑かれたように楽曲制作を始めるのです。ファーストアルバムに収録されている楽曲【IN DA HOOD】は、そんな中で生まれた曲だといいます。

当時を振り返る際に、NORIKIYOはその時同室で入院していた片足のオジサンとのエピソードを語ります。夜な夜な楽曲制作に励むNORIKIYOから話を聞くと、オジサンは「お前、それちゃんとやっと方がいいよ」と彼を鼓舞します。そして、無理やり片足で立ち上がると、NORIKIYOに向かってこう言い放つのです。「オジサンは片足でもこうやって立てるんだよ!お前はまだ両足付いてるじゃねぇかよ!」と。その言葉に強い感銘を受けたNORIKIYOは、その日を境に絶望を捨て、HIPHOPという希望を握りしめることにしたのです。

病院での楽曲制作とレコーディングに明け暮れる日々を送っていたNORIKIYOは、その湧き上がる生命力のおかげか、3ヶ月での早期退院を果たします。その後は車椅子でのLIVE活動をはじめ、これまでのアンダーグラウンドな生活を捨て、ラッパーとして精力的に活動を展開していくようになるのです。

本楽曲【DO MY THING】はそのような「もう俺にはラップしかない」という追い込まれた環境の中、そして何より“ラップができる幸せ”を噛みしめる圧倒的なモチベーションの中で生まれた楽曲です。“ ただ Do my thing”という言葉は、何の偽りもない、自分自身に対する誓いの言葉なのです。

NORIKIYO

さて、そんな環境の中から乗し上がったNORIKIYOは、現在では誰もが認める日本HIPHOPシーンの重要人物のひとりにまでなりました。精力的な制作活動は今でも健在で、絶え間なく作品を発表しては、作品ごとに毎回新たなスタイルを見せ、ファンを魅了し続けています。しかし、そんな数多くの作品が生まれた現在でも、未だに根強く人気の高いこの【DO MY THING】をはじめとする1stアルバムの楽曲たち。そんな状況をNORIKIYO自身は「悔しい」と語っています。

「俺も思い入れあるけど、ファーストの頃の曲って俺にとってはもうスゲェ昔話なんですよ。世の中の人が『(ライブで)聴きたい』って言ってくれるのはすごい嬉しいんだけど、自分的にはもっと違うモノを見せたいんですよね。」

現に、NORIKIYOは3rdアルバム【メランコリック現代】から大きく作品に取り組む姿勢を変えます。“1ラッパーからミュージシャンへの脱皮”と表現されていたその“進化”は、その後作品を重ねる毎にさらに大きなものになっています。“よりリリカルに新しい表現を生み出していきたい”と進み続ける彼を正確に捕らえる為には、常に“最新のNORIKIYO”を、つまりは、“過去最高のNORIKIYO”を追いかけ続ける他に手段はなさそうです。

そんな彼の歩いた道を辿る出発点として、私は今後もこの楽曲【DO MY THING】を聴き続けることでしょう。彼の歩いた距離を正確に測る為に。そして、いつまでも彼を支えるHIPHOPの原風景を確認する為に。NORIKIYOがその“一度は砕けた両足”で今なお“歩き続けている”という幸せを噛み締めながら

最後に、NORIKIYOが以前ヒップホップについて語っていた言葉をご紹介します。

「ヒップホップって、自分の個性を芸術というツールを使ってディベートできるっていうか、どっちが優れたものか、その瞬間に決められる。さらにそこで負けたからって、ずっと負けっぱなしじゃないし、また戦うチャンスがある。それが見えたときに、ヒップホップって、ああ、こういう考え方のことを言うんだってわかったんです。」

何度負けても立ち上がる。そう、自分にはまだ両足が付いているのだから。それこそが、NORIKIYOにとってのヒップホップの原点であり、今尚挑戦をし続けている理由なのだと私は思います。

では、今回はこのへんで。



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2 Comments

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度々コメントしている者です。
NORIKIYOが過去、あるケジメをとるためにビルから飛び降りたとはきいたことありましたが、まさかそんなことがあったとは...。
貴重なお話ありがとうございました。

2015/11/25 (Wed) 19:11 | EDIT | REPLY |   

Pto6  

Re: タイトルなし

> 度々コメントしている者です。
> NORIKIYOが過去、あるケジメをとるためにビルから飛び降りたとはきいたことありましたが、まさかそんなことがあったとは...。
> 貴重なお話ありがとうございました。

いつもコメントありがとうございます^^
NORIKIYOをより深く知ることに少しでも貢献できたとしたら、とてもうれしいです。この記事を書いた甲斐がありました。複数の書籍のインタビューを元に書かせていただきましたが、私も最初知った時はとても驚きました。ラッパーはそれぞれいろんなドラマを背負って歌っているんですね。さらに応援したくなりました。そんな風に思ってくださる人が私の他にもいてくださると、とてもうれしいです。

2015/11/25 (Wed) 21:28 | EDIT | REPLY |   

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