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日本の名盤・基本の定番㉒(拓く人 by LIBRO)

どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は、今年の春に発売された名盤をご紹介したいと思います。今年3枚ものアルバムをリリースする等、精力的な活動をみせたアーティスト<LIBRO>のソロ名義初のフルアルバム【拓く人】です。

それではいってみましょう。

【拓く人 by LIBRO】
libro拓く人

<収録曲>
1. なにはともあれ
2. 拓く(人+言)
3. タイムトラベル
4. 周波数 feat. JUNY THE DOPE BOY
5. 解除
6. SKIT(オリジナルルーティン)
7. 音楽と会話
8. 0119
9. まごころと深切
10. 自由型スキル feat. 漢 a.k.a. GAMI
11. 追い風
12. フィーリンググッド feat. 嶋野百恵
13. 音信 remix

この作品は、おそらく私が今年において一番繰り返し聴いた作品です。とにかく全編通してGOOD MUSICなこのアルバムは、聴き手のコンディションやテンションに左右されることなく、また、聴く際のシチュエーションやロケーションにも影響を受けずに聴くことができる作品です。その為、自ずと聴く回数も増えたのでしょう。現に今年、私は1週間あまり某南国に滞在する機会があったのですが、その際もこのアルバムCDを現地に持って行きずっと聴いていました。そんな、どんな場所でも、どんな時でも聴くことができる抜群の安定感を持った、私にとっては絶対の信頼をおけるアルバムです。

年末年始によく見られる【2015年の私的ベストアルバムランキング】的なことは、私はとても恐れ多くてやるつもりはないのですが(選べと言われてもとても選ぶことはできませんが)、仮にもしやったとしたら必ずランクインしたであろう作品です。また、他の方がやられたランキングをいくつか拝見させてもらったですが、その中にはこのアルバムや楽曲がランクインされているものも多かったので、とても嬉しくなりました。やはり私個人だけではなく、日本HIPHOPシーンにおいても今年を代表する重要な1枚だったのだと思います。

LIBROは1990年台後期にデビューし、ミニアルバム【胎動】等の作品がシーンにおいて高く評価されました。しかし、その後はトラック提供などの裏方に回ることが多くなり、一時期においては活動を止めていた時期もありました。しかし、昨年リリースした【COMPLETED TUNING】を機に本格的に活動を再開し、今年においては本作をはじめ合計3作の作品(【GEAR】、【拓く人】、【オトアワセ】)をリリースし、まさに今年のシーンを牽引するMVP的な活躍を見せてくれました。その他アーティストへの楽曲提供や9sariUMBへのバトルトラック提供なども話題になりましたね。

LIBROの作品には“日本語ラップへの深いリスペクトと愛”が詰まっています。どこか柔らかで優しさを帯びたビートは、日本語がもつ特有の丸みを活かされたラップと相まって、心地良い絶妙な相乗効果を生み出しています。彼の生み出すトラックからは、日本人に深く染み付き、愛され続けてきたポップなメロディイズムを感じられますし、彼のラップからは、日本語の響きや味わいを知り尽くした上で、それらがもっとも輝くようにライムやフローを構成し作られているような感覚を得ます。私は、そのようなLIBROの作品を聴く度に「これぞ日本のHIPHOPだ」と、とても誇らしい気持ちになってしまいます。

【“拓く人”アルバムtrailer】


さて、上記のアルバムtrailerでもアルバム全体の雰囲気を感じ取ることができるのですが、アルバムの中で特に私が好きな楽曲についてもいくつか紹介したいと思います。

■拓く(人+言)

“葛藤や逆境の日々こそ発想の滑走路さっそうと離陸”

アルバムタイトルからみてもわかる通り、本作品を象徴するような楽曲です。上記のアルバムtrailerでは(0:13~)から始まる楽曲です。とにかくポップなトラックの上に、巧みなライミングが施された良質なリリックが乗っています。上記に引用したリリックにはとても感銘を受けました。これだけ韻を踏みながら、楽曲テーマに沿った機知に富んだ深い表現ができる。日本語ラップの表現方法としての高いポテンシャルを感じさせてくれるような、そんな味わい深く、洗礼されたリリックだと思いました。

またタイトル【拓く(人+言)】というのもいいですよね。リリックを読みながら、そのタイトルの持つ意味についていろいろと想像してしまいます。そのまま算術式として括弧を展開し、「拓く人と拓く言葉」と読むのも良いですし、括弧内で文字を組み合わせ、リリック中にでてくる“信念”という言葉に呼応するように「拓く(信)」と読んでも良い気がします。また、そのまま「拓く(人言)」と読んでもいいかもしれませんね。本人の解説もなく真相はわかりませんが、いずれにせよ本楽曲のリリックからは、人生を自ら切り拓く上でのヒントがたくさん見つけられた気がします。このように、タイトルの付け方一つをとっても、魅力的な言葉の使い方をされる人だなと感じてしまいます。


■タイムトラベル

“生涯にわたって消えない感動というトラウマは癒えない”

アルバム発売に先立ちMVが発表された楽曲です。このトラックのもつ人肌の暖かさ淡々と吐き出される言葉の中にも感じられる深いメッセージ性は、まさに本アルバムにおいてどの楽曲も持っている共通要素です。本アルバムで唯一1曲を通してMVが公開されている楽曲ですので、是非聴いてみてください。

 【タイムトラベル MV】



■0119

“それでもまだ足りないものばかりなのに夢なんて見ないと物分かり良い振りして自分の物語生きてないならしょせん他人の秤の上”

これまた意味を深読みしてしまうようなタイトルがついた(0119→オイイク→老い行く?)この楽曲は、本アルバムにおいて一番ご機嫌な曲です。そして実は私が一番好きな楽曲です。このアルバムが今年最も繰り返し聴いたアルバムだと前述しましたが、その中でもこの曲は、私が今年一番繰り返し聴いた楽曲だと思います。とにかく明るいこの曲は、とても短い曲で、アルバムにおいてもそれほど重要な意味を持たない楽曲だとは思うのですが、その敷居の低さも相まって、私にとってはとてもお気に入りの一曲です。(上記のアルバムtrailerでは1:22~)

日常の何気ない描写が中心となるリリックなのですが、それ故に、そこに含まれたメッセージには一切押し付けがましさがなく、自然と心に入り込んできます。私が昔好きだった日本作家の小説に出てくる好きなセリフに「本当に深刻なことは陽気に伝えるべきなんだよ」というものがあるのですが、私はこの楽曲を聴くといつもその言葉を思い出します。ご機嫌な曲に乗せて語られる、一見取るに足らない言葉たち。しかしそこには、ささやかながらもとても大切な意味が込められていると私は思います。少なくとも私はこの一年、この楽曲からたくさんの元気をもらうことができました。


■音信 remix

“次に日常に溢れるただのノイズをアートに変えるのはどこのどいつ”

このアルバムに先立ち今年9sariレーベルから発売されたEP【GEAR】に収録されている楽曲のRemixです。Remix版とはいいますが、このアルバム全体がもつ暖かさが付与されたRemixトラックは、オリジナル版にも勝るとも劣らない出色の出来となっています。是非オリジナル版と聴き比べ、双方の良さを感じ取って欲しいと思います。

レーベルからの公式アルバム紹介文でも使われている“裏切らない裏切りで楽しませる”というリリック。それをまさに体現するように、今年は年間を通じて私たちを楽しませてくれたLIBRO。是非来年も“楽しい裏切り”をたくさん提供してくれますことを切に願っています。

【音信(オリジナル版) MV】


今回ご紹介した曲以外も、全曲本当に素晴らしい曲ばかりです。過去に【マイクロフォンコントローラー】でも絶妙のコンビネーションを見せてくれた<漢a.k.a.GAMI>との楽曲【自由型スキル feat. 漢 a.k.a. GAMI】では、相変わらずに伸び伸びとした漢とLIBROのラップが聴けます。また、R&Bシンガーの<嶋野百恵>との楽曲【フィーリンググッド feat. 嶋野百恵】も、その後共作として【オトアワセ】というアルバムを発表したことからもわかるように、とても相性良く双方の良さが組み合わさった素晴らしい楽曲になっています。その他にも、きっと聴く人それぞれに大切な1曲が見つかると思います。それほどまでに本作にはたくさんの魅力が詰まっているのです。

2015年も残すところあと2週間あまり。今年を締めくくる上で、最後にもう一つなにか良い作品を聴きたいと思っている方がいましたら、是非この作品を手に取ることを検討してみてはいかがでしょうか。きっと素晴らしい今年の締めくくりとなることと思います。一人でも多くの人に今年を代表するこの素晴らしい作品が聴かれることを願っています。

では、今回はこのへんで。



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