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このDVDが良い雰囲気⑧(戦極MCBATTLE12章 関東乱舞編)

どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は、遂に直前に迫った今年最大級の注目大会戦極13章-全国統一編-を迎えるにあたり、今年の春に行われた戦極の前回大会戦極12章-関東乱舞編-について、DVDで改めて振り返ってみたいと思います。

戦極13章の出場MCの豪華さが発表以来とても騒がれていますが、実はこの戦極12章の面子もかなり豪華で、メンバー発表当時は相当騒がれていた記憶があります。まぁ、もっと言えば戦極は10章あたりから章を増す毎にエントリーMC数が増え、出場MCが豪華になり、会場規模もどんどん大きくなっている印象があるのですが。

関連記事【戦極13章】はこちら

戦極13章も過去最大の会場規模にも関わらず、かなり早い段階でチケットが完売していました。この調子だと果たして来年はどれだけの規模になっているのか想像もつきません。今年はUMBがLibraと9sariの分裂があり、多少失速してしまったということもありましたが、それを抜きにしても最近の戦極の勢いは完全にシーン全体を飲み込んでいるような印象を受けます。そして、そのような戦極の兆しは、今回振り返るこの12章の頃から漂い始めていたように私は思います。

この12章が現代のバトルシーンにおける歴史の転換期となったことは、以前の【戦極12章ベストバウト動画】の記事にも書いたので割愛しますが、2015年が終わろうとしている今、改めてこの大会を見返してみるとまた違う意味で驚きを感じてしまう大会だと思いました。

【戦極12章ベストバウト動画】の記事はこちら

それでは、改めてDVDでこの大会を振り返っていきましょう。

戦極12章-関東乱舞編-出場MC

12章関東乱舞

<出場MC>
言xTHEANSWER/GADORO/K-razy/Lick-G/MC KUREI/Komatsu Yoshihito/呂布カルマ/オロカモノポテチ/踏剣/1horse/BATTLE手裏剣a.k.a渡邉4:20/CORON/BASE/Mr.Smile/CHICO CARLITO/ENEMY/凛太朗/ACE/PONY/chez/WATA the FreeMen/あっこゴリラ/エイジ/K.Lee/SAKA the GAMI/RYOTA/フォレスト55/KissShot/ゆうま/田中光/M-6PO/カクニケンスケ/KMC/8busuru/WOODSMAN/押忍マン/タムチャオThe二コミスタ/BALA a.k.a SHIBAKEN/P.PONG/bunTes/椿/BOZ/B.A.D/萌黄/LIPSTORM/CHARLES/X/MC松島/句潤/Luiz/KZ/ふぁんく/MOL53/gAwn/HIDE/HI-KING aka TAKASE/FEIDA-WAN/ヘタレビーボーイ/ONE/LEON/フータロック/ジジ/datemegiri/風来坊

HIPHOPの聖地【渋谷HARLEM】で行われたこの大会は、振り返ればその後の2015年において、MCバトルシーンを大いに盛り上げるMCが軒並み出場していた大会だったということに気づきます。

この大会後、第8回高校生RAP選手権に出場する言xTHEANSWERLuizLEON。9sariUMBで数々の名勝負を生み出すLick-G押忍マンHI-KING aka TAKASEGADORO呂布カルマ。LibraUMBで本戦出場を決めることとなるK-razyBASE句潤MOL53。そしてフリースタイルダンジョンへの出場で大きな話題を呼ぶENEMYKissShotHIDEBALA a.k.a SHIBAKENCHICO CARLITO。その他にも、今年数多くの大会でその名を轟かせることになったBATTLE手裏剣a.k.a渡邉4:20や、あっこゴリラbunTesまでいます。まさにこの大会後の大活躍を予知されていたかのように今年のオールスターが一堂に会していたことがわかります。改めて彼らを選出したMC正社員の先見の明には驚いてしまいますね。

印象に残ったMC

さて、ここではそんな今年を代表するMCたちの中でも、この大会において私が個人的に印象に残ったMC達について書きたいと思います。正直、挙げ出したらキリが無いほど書きたいMCはいるのですが、今回はその中でも特に印象に残った5名を選び書かせていただくことにします。

【bunTes】
BUN

この戦極12章以降、今年はとにかく彼を賞賛する声を多く聞きました。数年前からバトル自体には出場していましたが、そこまで強い印象をもっていなかったのが正直なところです。それが今年は一気に大ブレイク。それを決定付けたのはなんといってもUMB東京予選での大躍進でした。MC正社員も「今年になって一皮剥けた」とUMBPodcastで語っていたほどで、晋平太も彼のことを高く評価しているようでした。

bunTesの魅力はなんといってもその個性的なフローです。スキルを見せつける為に奇をてらったフローを繰り出すMCは少なくないですが、彼のフローは決してバトルビートを無視しないところにとても好感がもてます。あくまでも“音楽”として感じさせる彼のフローは、聴いていて非常に面白く、その多彩なビートアプローチは聴く者に新鮮な感動を与えてくれます。

もともとネットラップ出身というbunTes。最近では第8回高校生RAP選手権でもネットラップ出身MCのANATOMIAが出場していましたが、彼もフロー巧者でしたよね。私も数年くらい前に(らっぷびと全盛期頃)、ネットラップを熱心に追っていたことがあるのですが、その当時も、個性的なフローや独特のライミングスキルを持つラッパーが多かった印象をもっています。また最近では、アーティストとしても<電波少女>や、<ぼくのりりっくのぼうよみ>等のネットラップ出身者がどんどん世に出てきていますよね。今後、バトルシーンにおいても、これまで以上にネットラップ出身のMCが増えてくるかもしれません。私も時間を見つけて、最近のネットラップ動向についてチェックしていきたいと思っています。

【CHICO CARLITO】
CHI

UMB、罵倒、戦極という年末の三大大会への出場を決めたCHICO CARLITOは、フリースタイルダンジョンでの活躍も相まって、すっかり今年のバトルシーンの主役にまで躍り出ました。CHICO CARLITOについては呂布カルマも、この戦極12章の優勝者インタビューで、過去の試合を例に出して「ラップがうまい、カッコイイ」と賞賛していたほどです。

CHICO CARLITOはとても総合力が高いMCで、欠点と言えるところが特に無いばかりか、その琉球仕込みの自由自在なフロー余裕あふれる魅力的な佇まいなど、長所を挙げだしたらキリがないほどです。その中でも私が思う彼の最大の武器は、そのハイセンスな言葉のチョイスなのではないかと最近思うようになりました。彼のそのHIPHOP的言語センスの高さは、バトル中に繰り出す何気ない言葉の端々にまで至ります。

MCバトルにおいて、バースとバースの行間を埋める為、もしくは韻をつなげてリズムを高める為に“つなぎのライム”を繰り出すことは、全てのMCにとって必要不可欠なことです。相手へのアンサーとなるバースに挟まれ、本来バトルにおいて意味をなさないその“つなぎのライム”ですが、最近ではそこにこそMCのセンスが強く出てしまうのではないかと思うようになりました。

近年MC達のバトルスキルは全体的に高まってきており、勝負を決めにくる所謂パンチラインでは、どのMCもある程度の強度をもった“沸かせられるライン”を繰り出してくる印象をもっています。つまり、並程度のパンチラインだけでは勝敗がつきにくくなっている現状なのです。その為、そのような全体のレベルが高まった今だからこそ、パンチラインに至るまでの“つなぎ部分”という些細な部分までもが、勝敗を大きく分けるほどの重要性をもってきているのではないかと思います。

そして、このCHICO CARLITOは、達文な文章家が “接続詞”を効果的に使いこなすのと同じように、的確に、そして鮮やかに“つなぎのライム”を放つことができるMCだと、私は思います。それこそが、この強者ひしめくMCバトル乱世時代において、彼がシーンの中心に躍り出るまでに至ったひとつの理由ではないでしょうか。

【PONY】
PONY

この戦極12章で久しぶりにMCバトルに出場したPONYでしたが、この大会で改めて彼のすごさを再確認することができました。そして、最近は音源やLIVEなどアーティストとしての活動を中心にしていただけあって、彼の繰り出すバースからは大会を通じて、即興なのにリリックのような洗練さを感じ取ることができました。

圧巻はなんといってもP-PONGとのバトルです。持ち前の自由なスタイルで観客を味方につけるP-PONGに対し、的確に、そして優雅に音に乗り言葉を繰り出すPONY。実力者同士による見応えのある戦いは、結局延長戦までもつれ込み、結果PONYが勝利しました。熱いバトルが多数あったこの大会の中でも、強く印象に残っているバトルのひとつです。

PONYは、来年1月末にアルバム発表を控えています。その為、今後は更にアーティストとしての活動に尽力することでしょう。是非、音源やLIVEの方でも頑張って欲しいと思います。そして、また今回のように久しぶりに彼のバトルを見られる時がもし来たならば、その時は、更にパワーアップしたPONYの姿に期待したいと思っています。

【MOL53】
53

MOL53も、この大会でその魅力を改めて再認識させられたMCのひとりでした。その姿からは、現在のシーンにおいて彼ほどHIPHOPのド真ん中を突き進んでいるラッパーはいないのではないかと感じてしまう程でした。それは“筋を通す”ことを最大の美学とするヤクザの姿を彷彿とさせるほどに、愚直なまでに“己のHIPHOP道”を貫き通している印象を持ちます。

そんな彼は、バトルにおいても不器用なまでに真っ直ぐな姿勢を貫きます。バトルの戦法として、時に相手をすかしたり、論点をずらしたりという狡猾な戦い方を選ぶMCも多い中、彼は常に相手に対し真正面からのぶつかり合いを挑んでいる印象があります。そして、それは時にテクニカルな交わし方を試みる相手すらも、力で自身のフィールドに引きずりこみ、ねじ伏せることができるだけの豪腕を発揮するのです。MOL53はボクサーに例えるとまさにインファイタータイプです。観ている観客を最も沸かせることができるタイプのMCだと思います。

今年MOL53は、数多くのMCバトル大会に出場し、音源のリリースやLIVEなど実施したことで充実した1年を過ごせたように思います。勢いそのままに年末の大会でも大活躍を期待したいですね。そして、いずれかの大きなタイトルをひとつ手にすることで、また更に彼は強く、魅力的なMCになるような気がします。年末は大いに期待しましょう。

[追記]
残念ながら、MOL53が全ての年末大会に欠場することが正式に発表されました。上記にも書いたとおり、今年の彼には個人的にとても期待していた分、非常に残念な知らせでした。様々な憶測が飛び交っていますが、正式発表は“一身上の都合”ということです。本当に勿体無く思います。とても残念です。


【呂布カルマ】
ryohukaruma

この大会。結果として振り返れば、終始、呂布カルマの独壇場でした。彼が言葉を発すれば、観客は面白いように声を上げ、更に次の言葉への期待感を高めているような状態でした。その状況の中で呂布カルマは、その高い期待すらも軽々と飛び越える言葉を吐きだし続け、とめどない興奮の渦を、大会を通じて巻き起こしていました。

前述した【戦極12章ベストバウト動画】の記事でも書いたように、この呂布カルマの優勝により“言葉の重さ”という尺度の重要性がシーンにおいて、これまで以上に高くなった印象があります。今月頭に行われた【ENTER MC BATTLE】のグランド・チャンピオンシップにあたる【SPOTLIGHT】で呂布カルマが優勝したことも、まさにそれを象徴するような出来事でした。

大阪という土地柄もあり、この【SPOTLIGHT】では例年ライミング巧者が優勝する傾向がありました。しかし今年は、韻に重きを置くそんな大阪の大会においても、必要最小限のライミングで呂布カルマが優勝を勝ち取ったのです。これは今年のバトルシーン全体の風潮が強く反映された結果だと私は感じました。果たして、年末の三大大会でもその傾向は引き続き継続するのでしょうか。非常に注目したいポイントです。

また、このDVDに収録された優勝者インタビューにおいて呂布カルマは、「バトルでは戦った相手に“呂布カルマとは二度と戦いたくない”と思わせるような戦いをしたい」と語っていました。「自分は悟空のように“強い奴と戦いたい”という願望は一切ない」と言い、UMB2014でもR-指定が早く負けることを願っていたと、躊躇いも無く話していたのがとても印象的でした。バトルにおいて戦いたくない相手は「友達」と即答するあたりも、彼らしくて面白いなと感じました。呂布カルマも年末の大会での活躍が期待されますね。戦極13章も優勝し連覇ということになれば、彼のプロップスも青天井でしょう。とても楽しみです。

最後に

さて、これまで私が気になったMCについて書いてきましたが、最後にこの大会の特徴についても少しご紹介したいと思います。この大会は見てみたかった注目カードが多数実現したというのがひとつの特徴でした。【bunTes vs CHICO CARLITO】【GADORO vs CHICO CARLITO】というバトルシーンの新時代を担う若手同士の対決や、【KZ vs K-razy】という大阪の中堅と若手による世代対決なども実現しました。また、【呂布カルマ vs BASE】という<JET CITY PEOPLE>所属MC対決と、【MOL53 vs ACE】という<戦極CAICA>所属MC対決も比較して観ると非常に興味深かったです。前者のバトルでは互いにリスペクトを送り合った戦いをしていたのに対し、後者のバトルでは喧嘩寸前のマジバトルを繰り広げていました。当たり前ですがレーベルによっても大きく雰囲気は異なるようですね。

また、結局ギリギリのところで直接対決は実現されなかったものの、他のMCとのバトル中もお互いを意識する発言をするなどの場外戦を繰り広げた【MOL53 vs GADORO】の宮崎対決も大会を通した大きな見どころのひとつでした。お互い逆のトーナメントで順調に勝ち上がり、決勝戦での直接対決を期待していましたが、結局それぞれ準決勝で敗れてしまいました。二人の対決は2012年のUMB宮崎予選を最後にその後は実現していません。それ以降、Twitter上で激しい口撃戦を繰り広げる等、二人の間には常に緊張感が漂っているので、再び戦った際には、これまで以上に熱い試合が見られることでしょう。いつか実現するだろうその日を、期待することにしましょう。

さて、いろいろ書いてきましたが、改めて見返してみるとこの戦極12章は非常に見所が多い大会だと感じました。現在、戦極13章が待ち遠しく気持ちが高ぶっている人も多いと思われますが、13章の予習も兼ねて、この12章を復習してみてはいかがでしょうか。今年を代表するMCたちの伸び伸びとした躍動感を感じることができると思います。

では、今回はこのへんで。

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