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新作音源に小さく貢献⑧(Luv(sic) Hexalogy by Nujabes feat Shing02)

どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は、本ブログ2015年最後の記事として、今月発売された新作アルバムについてご紹介したいと思います。故NujabesShing02による大人気Luv(Sic)シリーズを1枚にまとめたアルバム【Luv(sic) Hexalogy】です。

それではいってみましょう。

【Luv(sic) Hexalogy】
lovsic

<収録曲>
【Disc 1】
1.Luv(sic)
2.Luv(sic) Part 2
3.Luv(sic) Part 3
4.Luv(sic) Part 4
5.Luv(sic) Part 5
6.Luv(sic) Grand Finale
7.Luv(sic) 12" Remix
8.Luv(sic) Part 2 Acoustica
9.Luv(sic) Part 3 Ta-ku Remix
10.Luv(sic) Part 4 LASTorder Remix
11.Luv(sic) Part 5 Jumpster Remix
12.Luv(sic) Part 6 Uyama Hiroto Remix
13.Perfect Circle

【Disc 2】
Instrumentals

このアルバムの発売が発表された当初、正直なところ私は購入するかどうか迷っていました。というのも、このアルバムはこれまで異なるアルバムや媒体で発表されてきたLuv(Sic)シリーズを1枚にまとめ直したもので、Nujabesファンの私からすると、それらの曲のほとんどを既に持っていたからです。

しかし、結局はその所有欲をくすぐるジャケットの素晴らしさと、発売後のTwitter上での口コミを見て購入することを決めました。そして、購入してから何度もこの作品を聴く度に、その判断は正しかったという確信を深めるばかりです。私のように他作品で収録曲のいくつかは既に持っている方向けに、私が購入してよかったと思うポイントを下記に列挙しておきます。是非参考にされてみて下さい。

■本作を改めて買って良かったと思うポイント
・Disc2に全曲のInstrumental版が収録
・厳選された秀逸なRemix楽曲が収録
・アナログ版のみ発売だったシリーズ曲を収録
・【Part 3】がフル構成&再録Verで収録
・Shing02による全曲解説付きのブックレット
・細部にまで拘られた紙ジャケ仕様パッケージ


また、もちろんこれまでLuv(Sic)を聴いたことない方や、聴いたことはあるけど作品はもっていなかった方にとっては、これ以上ないNujabesの入門版となっていますのでお勧めです。

では、私も大好きなこのLuv(Sic)シリーズについて、僭越ではございますが各曲それぞれに個人的な感想なようなものを書かせていただきたいと思います。

各曲の感想

【Luv(sic)】
シリーズ6曲の中で最もドラムのビートが前面に出ている曲です。トラック構成としてもシンプルなつくりで、HIPHOP楽曲としての潔いカッコ良さをもった楽曲だと思います。Shing02の楽曲解説の中でも、Nujabesからこの曲のオファーが来たときに、Nujabesのトラックにおけるドラムの音色を聴いてHIPHOPへの理解を感じ取り、オファーを受託することにしたと語っていました。

この“ドラムの音色でHIPHOPか否かを嗅ぎ分ける”というのは、実は私もいつも意識的に活用しています。例えば、KREVAの楽曲があれだけポップなメロディにも関わらずあくまでもHIPHOPとして聴けるのは、KREVAがドラムの音に強い拘りを持ち続けているからです。彼はトラックメイクの際に、往年のレコードからドラム音をサンプリングし、MPCに取り入れ改めてリズムパターンを構築し直すことでビートを作っているといいます。Nujabesもそれと同様に、このLuv(Sic)シリーズはもちろん、彼が手がける全ての作品において、HIPHOPとしてのビートへの拘りを感じさせてくれます。

また、この楽曲におけるShing02のラップも、これ以降のシリーズ曲と比べ力強い印象を持ち、それがこの楽曲のHIPHOPとしてのカッコよさを更に高めている要因になっていると思います。フック部分もシンプルでキレが良くカッコいいですよね。私は昔どうしてもこのフック部分が歌えるようになりたくて、何度も練習した思い出があります。そのおかげで今でもその部分だけは暗唱できるので、この曲を聴くたびに思わず一緒に歌ってしまいます。私にとってはそれくらい思い入れのある曲です。

ちなみに本アルバムに収録されているRemix版も、一聴時はあまりにも原曲と異なるので戸惑いを覚えてしまったものの、聴いていくうちに、その原曲とのギャップが逆に心地よくなり、だんだんとクセになってきました。アルバムを通して聴く際の良い意味でのひっかかりとなる曲で、本作品における重要なアクセントになっていると思います。ちなみに、アルバム【HydeOutProductions2】に収録されている【Luv(sic)ModalSoul Remix】という別VerのRemixは残念ながら本アルバムには収録されませんでしたが、そちらも良いRemixなので興味のある方は是非聴いてみてください。

【Luv(sic) Part 2 】
Luv(Sic)シリーズを世に広く知らしめ、今の人気を作るきっかけとなった楽曲です。やはりLuv(Sic)と言えばこの【Part2】を思い浮かべる人が多いのではないかと思います。繊細な上モノのメロディとビートとのバランスがとにかく絶妙なトラックだと思います。

Shing02は、9.11直後にこの【Part2】のオファーをNujabesからもらい、トラックを聴いて「9.11直後の絶望の中の希望について歌いたくなった」と楽曲解説で語っています。私はそのエピソードを知り、この曲から感じられる“優しい温もり”の正体がわかった気がしました。彼の優しさに満ちたラップには、悲しみに暮れる世界中の人々に向けられた愛が込められていたのですね。

Remix版には<haruka nakamura>による【Acoustica ver】が収録されています。この曲が収録されているアルバム【MELODICA】も持っているのですが、初めて聴いた時から、この曲のRemixとしての完成度の高さに驚いた記憶があります。ドラマチックな構成が原曲の持つ神秘的な魅力を引き立てているように感じます。

【Luv(sic) Part 3 】
このPart3はシリーズ通して私が初めて聴いた曲で、また、最も好きな曲でもあります。Shing02曰く、海外では圧倒的にこの【Part3】の人気が高いらしいです。てっきり海外でも【Part2】が人気だと思っていたので意外でしたが、なんだか嬉しい気持ちになりました。

本作に収録されているこのPart3は、アルバム【modal soul】に収録されているVerとは異なり、Shing02がもともと作ったままのフルVerの構成で収録されています。双方の異なる点としては、【modal soul】収録Verは2バース構成なのに対し、今回収録されているフルVerは3バース構成になっている点です。つまり【modal soul】ではNujabesの意向でカットされ聴けなかった、幻の3バース目が聴けるということですね。

更には、今回このアルバムにフルVerを収録するにあたり、Shing02が改めてラップを再録しています。その為、聴きなれた1、2バースについても新鮮に響き、楽曲を通して新しい曲として聴くことができます。Nujabesファンにこそ是非聴いてもらいたい1曲です。

【Luv(sic) Part 4 】
Luv(Sic)シリーズは、前半のPart1~Part3と、後半のPart4~Grand Finaleでそれぞれ三部作構成となっています。そしてこの【Part4】から始まる後半の三部作は「出会い・別れ・再会」というテーマで描かれています。そして、前半3曲はNujabesが亡くなる前に作られたもので、後半の3曲はNujabes亡き後に作られたものになっており、やはり後半の曲たちには、どことなく哀切を帯びているように感じてしまいます。

新たなLuv(Sic)三部作を作るにあたり、Shing02はNujabesに新たなチャレンジを求めるプレッシャーを与えていたと語っています。そして、何度も挫けそうになりながらも、苦労の末、その高い期待に応え得る納得のいくトラックを完成させたNujabesは、Shing02にその曲を送り届けた後、ボーカル録音をする数日前に、不慮の事故でこの世を去ることになったそうです。なんとも突然のことでした。

Nujabes亡き後も、悲しみの中、それでも彼の意思を継いで作業を続け、この【Part4】を完成させたShing02や、Nujabesのレーベル<hydeout productions>のスタッフ達には本当に頭が下がります。この曲の発表が、世界中のファン達にとってどれだけ救いとなり、嬉しいニュースだったか。その当時の喜びは今でも思い出すことが出来るほどです。

この曲を初めて聴いた時、その美しさに涙を流してしまった記憶があります。もちろんNujabesの死という背景もあったからですが、これほど優しく、哀しく、美しい曲はそれまで私は聴いたことがありませんでした。後半の三部作の中で最も好きな楽曲です。

【Luv(sic) Part 5 】
この曲はシリーズを通して最も暗い曲です。曲のテーマが“別れ”なので仕方ありませんが、Nujabesは当初、このトラックはLuv(Sic)シリーズとしては相応しくないとまで考えていたそうです。

この【Part5】は、現在のVerが公式に発売される前に、2、3別のトラックで【Luv(sic) Part 5】と称され、曲が発表されていた記憶があります。また、その異なるVerでライブなどでも披露されていました。その為、このVerが正式に【Part5】として発売された際には、これまで聴いていたものと異なるものだったので、当初戸惑いを覚えた記憶があります。もしかしたら、それだけ完成までに長い試行錯誤があったのかもしれませんね。悩み悩んだ難産の末に生まれてきた楽曲なのではないかと想像します。

上記のようなことがあったこともあり、実はこの曲は、これまで私にとってシリーズ曲の中で最も印象が薄く思い入れの小さい曲でした。しかし、このアルバムの発売を機に改めて聴いてみると、数々の新たな発見があり、その悲しみの中に灯される小さな光の輝きに、胸を揺さぶられる想いを感じました。きっとこれから、どんどん思い入れが深まっていっていくだろう、そんな予感がしています。

【Luv(sic) Grand Finale】
このシリーズ最後の曲は、Nujabesの携帯に【Luv(sic) Grand Finale】というタイトルで残された作成途中のトラックを、Uyama HirotoとShing02の二人が中心となり完成させたものだそうです。Nujabesが温めていたシリーズ完結のイメージをしっかりと形にしてくれたおかげで、こうしてこのLuv(Sic)シリーズは、“完成された物語”として後世に語り継ぐことができたと思います。Nujabesも、空の高いところから喜んでくれているのではないでしょうか。私はそう思います。

壮大な物語の最後を飾るに相応しい、神秘的で神々しいトラックが印象的なこの曲は、聴く度にまたPart1から聴き返したくなってしまう、そんな魔法の様な効力をもっていると思います。これまで世界中の多くの人に愛され、聴かれてきたこのシリーズの楽曲達。きっとこれからも、常に新たなファンをつくりながら、末永く愛され、聴かれ続けていくことでしょう。私もこれからもずっとずっと、聴き続けていきたいと思っています。

最後に、このLuv(Sic)シリーズ曲で唯一オフィシャルPVが作られている【Luv(sic) Part6 - Uyama Hiroto Remix】をご紹介したいと思います。全編通して奏でられる、アコースティックギターの哀愁漂う旋律が聴く者の心を揺さぶる素晴らしいRemixだと思います。そのポジティブな雰囲気を気に入り、Shing02の意向でオリジナルVerではなく、このRemixの方でPVを作ることを決めたそうです。映像も素晴らしく、思わず見入ってしまいます。是非見てみて下さい。

【Luv(sic) Part6 - Uyama Hiroto Remix】


最後に

ヌジャベスアルバム

さて、このアルバム購入に伴い、改めて大好きなLuv(Sic)を聴き返す機会を得ることができました。そして、この記事を書くことでこれまで以上に楽曲たちを好きになれた気がします。この記事を読んで、一人でもこの作品を手にとってくれる方がいらっしゃれば、これ以上幸せなことはありません。そして、このアルバムを機にNujabesを気に入った方には、是非オリジナルアルバムの方も聴いてみていただきたいと思います。

【Modal Soul】by Nujabesの記事はこちら

また、このNujabesの記事を持って、今年2015年の“筆おさめ”としたいと思います。今年の途中から小さなきっかけで開設し書き始めたこのブログでしたが、HIPHOPが非常に盛り上がった年だったということもあり、これまでとても楽しく書き続けることができました。

このブログを読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。読んでくださる方々のおかげで、これまで楽しく続けてくることができたと思います。来年も、これまで通りマイペースに書き続けたいと思っていますので、また時間を持て余した際のお供として読んでくだされば幸いです。

では、今年はこのへんで。
みなさま、よいお年を。

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