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新作音源に小さく貢献⑩(たりないふたり by Creepy Nuts(R-指定&DJ松永))

どうもPto6(ぴーとろっく)です。

今回は、今週発売された新作をご紹介します。Creepy Nuts(R-指定&DJ松永)の1stミニアルバム【たりないふたり】です。高いラップスキルとポップな音楽センスが融合した、二人の魅力がぎゅっと詰まった痛快な作品です。

それでは、いってみましょう。

【たりないふたり】
Creepy Nuts(R-指定&DJ松永)

<収録曲>
01.合法的トビ方ノススメ
02.みんなちがって、みんないい。
03.爆ぜろ!! feat. MOP of HEAD
04.中学12年生
05.たりないふたり

レギュラーである【フリースタイルダンジョン】をはじめ、【ワケあり!レッドゾーン】【ナカイの窓】と、最近地上波での活躍も話題を呼んでいるR-指定。バトルシーンから成り上がり、UMB3連覇という偉業を達成した彼が、メディアに引っ張りダコになり、スターの階段を確実に上がっているという事実は、現在バトルシーンにいるあらゆるMCに夢と希望を与えていることでしょう。R-指定くらい突き抜けた実力と実績があれば、フリースタイルだけでも注目を浴びることができるという最高の成功例ではないかと思います。同じく日本最大のMCバトル大会BBPで3連覇したKREVAとは、また異なる形での売れ方ではないでしょうか。

そして、彼の露出に伴い、着実に大きくなっているMCバトルシーンへの注目度。戦極主催の「芸人ラップ王座決定戦」や、吉本主催の「ディスペクト ~芸人VSラッパー~」などのイベントも大盛況だったようですし、少なくともお笑い芸人界隈ではMCバトルの認知度は非常に高くなっており、彼らの発信力により、今後これまで以上に一般層へも広く拡散されていくことでしょう。私は冗談抜きで、今年こそアメトーークで「MCバトル大好き芸人」が実現するのではないかと思っています。

さて、そんなフリースタイルで注目を浴びているR-指定としても、やはりラッパーたるものアーティストとして音源での評価は欲しいものです。“ただ一芸の秀でたイロモノ”としての扱いに満足するのではなく、現在の注目度を最大限活用しながら、作品を通して確固たる人気と地位を築くことを目指したいところだと思います。

そんな中リリースされた本作。結果としては売れに売れまくっているようです。全国のCD大型店舗では軒並み完売し、現在Amazon、TOWER RECORD、TSUTAYAのWebストアでも完売で、再度追加プレスも決定したようです。そして、そんな品切れ中でもオリコンデイリーチャートでは20位を獲得、更にはiTunesチャートではHIPHOPチャートで連日1位、全ジャンル含めた総合ランキングでも現在4位をキープしています。いくらCDや音源が売れない時代とは言え、ここまでくると大ヒットと言っていいのではないでしょうか。

そして、その内容もタイトル「たりないふたり」が言い得ているように、どこか足りない魅力的に歪んだ二人だからこそ作れるミュージックが詰め込まれた満足度の高い5曲となっています。ミニアルバムとして名刺代わりの最高の一枚だと私は思います。

それでは、曲数も少ないので各曲についての感想を書いていきたいと思います。

■1.合法的トビ方ノススメ


“高嶺の花様お慕いしております。ですから押し倒して乗ります。”

本ミニアルバムのリード曲。一度耳にしたら離れない、思わず口ずさんでしまうくらいキャッチーな楽曲です。R-指定のライブではしばらく前から定番の曲となっているので、ファンとしては待望の音源化ですね。危険なアンダーグラウンドの世界をシニカルにユーモアたっぷりに描いたR-指定のラップは流石の一言。“合法的トビカタ”という言葉を考えついた時点で勝負は決まっていたとさえ思います。ヒップホップシーンにおいて未だ根深く残る“非合法的”な文化を“音楽の力”で一掃させるという構図がまさに痛快で、ひねくれ者の彼らしく、「古臭い固定概念を俺にまで押し付けるな」というニヒルな声が聞こえてくるような気がします。

そして、ついR-指定のラップに注目を集めがちになってしまいますが、本楽曲におけるDJ松永の仕事っぷりも相変わらず素晴らしいです。レトロな空気を醸すサンプリングネタが散りばめられた古き良きループトラックが、“洗礼されたスキルを持ちながらも、どこか垢抜けないR-指定のラップ”と絶妙に絡み合っているように思います。また、キャッチーなフック部分についても、音楽センス溢れたDJ松永の功績が大きいのではないかと思っています。R-指定の楽曲は、DJ松永と組むようになってフックがよりポップで大衆に受け入れやすい形になりましたよね。そういう意味でも、日本HIPHOPシーンにおけるニューアイコンとなることを目論むR-指定にとって、DJ松永は最高の相方と言えるのではないでしょうか。

■2.みんなちがって、みんないい。


“俺は文章も書ける BEEFも仕掛ける バトルも勝てる 解説もできる”

このアルバム発売後において、一番話題になった楽曲といえばこの曲ではないでしょうか。1曲を通して、実に11種類ものラッパーのスタイルを真似てR-指定が歌うのです。それぞれのラッパーの特徴を非常に良く捉え、それを完成度高く再現するR-指定。その観察眼の鋭さとスキルの高さを改めて痛感させられます。

11タイプのラッパーの中には、特定の人物をモデルとしたものも、不特定多数のラッパーを模したものありますが、中には相手を小馬鹿にしていると捉えられかねないほどの皮肉が効いたモノマネもあります。しかし、楽曲としては決してdisではなく、あくまで「みんなちがって、みんないい。」という多様性を肯定する体裁を整えているのです。そこがなんともR-指定らしく、KING OG DISの異名をもつ彼の良さ(悪さ?笑)がでた楽曲だと思います。

この曲が発表されて以来、どのパートが誰をイメージして唄っているのかという予想話がネット上で繰り広げられています。フロウが激似の<SALU><KOHH>をはじめ、リリックの中身から<MC松島><呂布カルマ>までその名が挙げられています。他にも、<jinmenusagi>や、<daoko><CIMA>など、様々な憶測が飛び交っているようですね。おそらく本人たちからの正解発表は無いでしょうが、日本ヒップホップシーンに多少なりとも興味のある方なら、とても楽しめる楽曲だと思います。私も引き続き色々な予想を楽しもうと思います。

■3.爆ぜろ!! feat. MOP of HEAD

“虎の威を借る狐がちらほら 豚も雌ならちやほや”

ミニアルバム発売に先立ち、iTunesで先行配信された楽曲。タイトル通り、ライブでは爆発的に盛り上がりそうな楽曲です。私はこの曲を最初聴いた時は正直あまりピンとこなかったのですが、聴いていく内にどんどん好きになってきて、今ではアルバム内でも特に好きな楽曲のひとつになりました。リリックも、R-指定の豊富なボキャブラリが堪能できてとても聴き応えがあります。

ただ一辺倒にハイテンションなのではなく、楽曲の中にドラマチックな展開があるのがこの曲の魅力のひとつだと思います。一番盛り上がるフック部分から始まるこの楽曲ですが、しばらくすると一旦穏やかな鎮まりを迎えます。そして、その後一度抑制されたテンションがまた徐々に開放していくように、少しづつ高まっていき、最後はまた最高潮のフックを迎えるのです。ミクスチャーバンドの楽曲でもよく見られるこのような楽曲構成には、展開がわかっていても思わず気持ちが昂ぶってしまう魅力があります。いつかライブで見たいなと思わせてくれる一曲です。

■4.中学12年生


“皆のユートピア ミラノ風ドリア”

中二病という厄介な病が未だに完治しないと告白するR-指定。そんな彼が、恥ずかしくも懐かしい学生時代の黒歴史を紐解き、振り返るというなんとも青臭い楽曲です。メルマガでの紹介文でR-指定は、「中二病の治療法として最も効果的なのは、正面から向き合い、自覚し、認めること」と語っています。このようにイケてなかった学生時代の思い出と、その時に得た歪んだ感性は、今ではR-指定の立派な武器の一つとなっています。この楽曲でもルサンチマン精神が気持ち良いくらいに爆発しています。

ちなみに、【フリースタイルダンジョン】の<ENEMY>戦で見せた“有刺鉄線⇒中学12年生”のライムは、この楽曲からの引用だったようですね。おそらく番組の撮影時には既にこの楽曲の作成にとりかかっており、バトル中に出た“壁”という言葉から“有刺鉄線”、“中学12年生”というこの楽曲中でも使われているラインが頭に浮かんだのでしょう。また、相手も“童貞”だと自身で語るENEMYだったからこそ、“自分も未だに中二病をこじらせている”というそのラインがぴったりハマったのでしょう。この楽曲を聴いて、“中学12年生”という表現は、こじらせ感を漂わせつつ、洒落も利かせた良い表現だなと改めて思いました。

■5.たりないふたり

“無いものだらけで 無いものねだりの 最低のろくでなし”

アルバムのタイトル曲です。人間として何かが“足りない”ということを自覚し一方では嘆きながらも、その一方では、それを認め、開き直り、むしろ誇りにすらして生きていこうと高らかに歌う楽曲です。まさに、自身の弱さや、イケてなさすらも武器として戦っている二人だからこそ作れ、説得力を持って唄える楽曲だと思います。憎悪や憤りすらも活用すればエネルギーになり、劣等感も尖らせれば武器になるのです。

この楽曲の元ネタは、お笑い芸人の山里亮太若林正恭による深夜番組「たりないふたり」からきています。この番組も、人見知りで社交性・恋愛・社会性の”たりない”ふたりが、コンプレックスを武器にコントや漫才を披露する番組でした。Creepy Nutsの二人も強いシンパシーを感じて観ていたことでしょう。妬み、僻み、恨み、辛み、嫉み、それらのパワーを笑いに変え、現在の人気と地位を獲得した山里と若林のように、R-指定とDJ松永もそれらのパワーを音楽に変え、音楽シーンを登りつめていって欲しいと思っています。

【たりないふたりTrailer】


さて、今回は現在大ヒット中のCreepy Nuts(R-指定&DJ松永)のデビューアルバム【たりないふたり】をご紹介しました。発売日に購入して以来繰り返し聴いていますが、まだまだ飽きそうにないアルバムです。普段ヒップホップを聴かない一般層への訴求力もありそうなポップさと、HIPHOPヘッズも納得のスキルを兼ね備えた本作。もっともっと売れて欲しいと思います。

R-指定の音源における歌唱力や表現力も、作品をつくる度に向上している印象があるので、次回作も非常に楽しみですね。おそらく次はフルアルバムでしょうか。期待して待っていたいと思います。

では、今回はこのへんで。



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4 Comments

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いつもブログ読ませていただいてます。
オリコンのランキングですが、ウィークリーではなくデイリーでは?まだ発売から一週間経っていませんしね。
それにしても、初回プレスがもっと多ければランキングももっと上がっていたのでは・・・と、少しもったいない気がしてしまうほど売れてますね。

2016/01/24 (Sun) 01:21 | EDIT | REPLY |   

Pto6  

Re: タイトルなし

> いつもブログ読ませていただいてます。
> オリコンのランキングですが、ウィークリーではなくデイリーでは?まだ発売から一週間経っていませんしね。
> それにしても、初回プレスがもっと多ければランキングももっと上がっていたのでは・・・と、少しもったいない気がしてしまうほど売れてますね。

コメントありがとうございます!
たしかに、デイリーチャートでしたね^^;すみません。記事の方も修正しようと思います!ご指摘ありがとうございました。

そして売上の方も、おっしゃる通り少し勿体無かったですよね。レーベルとしてはデビューしたばかりのアーティストだからリスク考えて、プレス数を現実的な数に抑えるのはわからないでもないですが、せっかくのチャンスなのにと思ってしまいます。

ただ、今回も作品の評価は高いですし、売上実績もできたわけですから、次回作は今回の反省を活かしてプレスしそうですよね。次回はフルアルバムでしょうから、そこが本当の意味での勝負作になるわけです。その時に大ヒットできたら、今回の件も無駄じゃなかったと思えるので、是非次回作は今作を超えるくらいヒットしてほしいなと思います^^

2016/01/24 (Sun) 07:50 | EDIT | REPLY |   

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度々コメントしている者です。
合法的トビ方のススメの音源化自体は1年2ヶ月前の松永のサーカスメロディーのタワレコ特典で実現されています。その後のCreepy Nutsのお試しサンプルにも収録されていますし。
Rが松永と組んだことで、明るくキャッチーでメロディアスな楽曲の路線に進むのも勿論、大賛成なんですが、Rにセカンドオピニオンからハマった自分としては、劣等感やルサンチマンの塊を内面からドス黒く表現していたソロもまた捨て難いんですよね。
それに彼が有名になっていくのは喜ばしいことなんですが、どこか寂しくて、歯がゆい感じがありますね(笑)

2016/01/24 (Sun) 11:16 | EDIT | REPLY |   

Pto6  

Re: タイトルなし

> 度々コメントしている者です。
> 合法的トビ方のススメの音源化自体は1年2ヶ月前の松永のサーカスメロディーのタワレコ特典で実現されています。その後のCreepy Nutsのお試しサンプルにも収録されていますし。
> Rが松永と組んだことで、明るくキャッチーでメロディアスな楽曲の路線に進むのも勿論、大賛成なんですが、Rにセカンドオピニオンからハマった自分としては、劣等感やルサンチマンの塊を内面からドス黒く表現していたソロもまた捨て難いんですよね。
> それに彼が有名になっていくのは喜ばしいことなんですが、どこか寂しくて、歯がゆい感じがありますね(笑)

コメントありがとうございます。
合法的トビ方のススメ、そういう形では音源化既にしていたんですね!知りませんでした。情報共有ありがとうございます^^
私も、セカンドオピニオンも好きですよ!確かにあの時のRも、捨てがたいといえば捨てがたいですよね。
でもきっとフルアルバムでは、そこらへんのエッセンスもバランス良くとりいれてくれるのではと期待していたりします。

そして、昔から好きなR-指定が、売れてほしいのに売れてほしくないという微妙な心境もわかる気がします。笑
ただ、そこはRの為にも、HIPHOPシーン全体の為にも、応援していきましょう!
彼が新時代を切り開けばきっともっともっと面白いことが起きそうです!

2016/01/24 (Sun) 18:05 | EDIT | REPLY |   

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